防衛費倍増を批判する

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、政府・自民党は防衛費の大幅増を目指している。政府が検討する敵基地攻撃能力の保有を視野に、自民党安全保障法調査会は現在の国内総生産(GDP)1%程度から2%へ引き上げる案を今後の論点整理として示した。2%なら米国と中国に次ぐ規模になる。(東京新聞44日)

 日本は今重大な岐路にさしかかっている。一発即発の危機をあおりながら防衛費倍増の道に進むか、隣国との相互理解を深めて平和の道に進むかだ。

 前者の道に進めば、絶えず隣国への敵意と憎悪をあおり、仮想敵国との軍備拡大競争に走らざるを得ない。軍備の拡大は、抑止力の確保を口実にして行われるが、常に相手の出方を伺いながら、戦々恐々としてくらしつつ、かならず戦争の暴発をまねいたことは、歴史の教えるとおりだ。

 戦争になれば、交戦両国は、甚大な人的物的な加害を競い、非人道的な惨状を眼前に展開しつつも、もはや後戻りできない。戦争に敗北すればもちろん、勝利しても、莫大な犠牲を払い、核戦争を予測すれば、交戦両国民は生き残れないかもしれない。 

 後者の道を選択する場合には、日本は過去におかした加害の歴史を反省することから始まるだろう。日本は中国の全土を侵略し、膨大な犠牲を強いた。そしてまた朝鮮を植民地支配したあげく、無謀な太平洋戦争に敗北し、その結果、朝鮮半島は南北に分断され、同胞相争う禍根を招いている。その罪を償うためには、長い年月にわたり誠意を示さなければならない。それは日本の次世代へ、負担ではなく、幸福をもたらすものだ。

 すなわち、二度とアジアの隣国と戦争をしないという幸福をまねくのだ。絶対に、戦争を開始してはならない。それがこの度のウクライナ戦争の教訓だ。日々のニュースは交戦両国の被害をなまなましく伝えている。この戦争は両国に何も利益を与えていない。戦争しないで平和に話し合う可能性はあったはずだ。どこかに両国の間に真意の誤解があったはずだ。

 日中国交回復50周年を今秋むかえるに当り、中国、韓国、北朝鮮と相互理解を深めることを提案したい。かつて、アジアの共産化を防ぐと米国の開始したベトナム戦争は、米国の敗北に終わった、その後、両国は平和に共存している。何も戦争をする必要はなかったのだ。

 敵意をあおり戦争を開始し、人殺しに血道をあげる努力に代えて、相互理解を図り、平和を守る努力こそ、最も人類に相応しい選択だ。  福田玲三(414日)

2022年4月15日 | カテゴリー : ⑦戦争 | 投稿者 : 管理人

映画『侵略』シリーズを作成した「上映委員会」ニュースより(2)

3,「次は日本だ! 台湾が第二のウクライナになる」

ロシアのウクライナ侵攻をもって「中国の『力による現状変更』に弾みがつき、台湾への軍事進攻の危機は高まった」との論調が強まっている。岸田政権だけでなく、メディアも「次は日本だ。台湾は第二のウクライナ」などと言い立てている。読売新聞の世論調査(3,4~3,6)では、「ロシアの力による一方的な現状変更が、日本の安全保障上の脅威につながると思う」と、81%が答えている。この流れに“悪乗り”する形で、安倍晋三や維新の「核共同保有(核シェアリング)」発言も出てきた。

これらが、反中・嫌中の世論を基底にした、何ら事実に基づかない〝フェイク扇動“であることは明らかだ。

基本的なことは、ウクライナは主権独立国家である、一方、台湾は国際的にも中国の領土の一部として認定されていること、である。台湾は、米・日ともに1972年に中国とそれぞれに結ばれた「共同宣言」で「一つの中国」として確認されており、国連にも加盟していない。したがって、中・台問題は中国の内政問題であり、ロシア・ウクライナ問題との基本的な違いである。

🔷中国に「停戦仲介」役を‼

その上で、中国のウクライナ戦争についての基本的立場について見ておこう。

ロシアのウクライナ侵攻が始まった翌日の2月25日「王毅外相のウクライナ問題についての中国の五つの立場」(2,26中国外交部WEBサイト・日本語版)である。

➀各国の主権と領土の一体性を尊重・保障し、国連憲章の目的と原則を誠実に遵守するべき。

②安全保障は他国の安全保障を犠牲にしてはならない。地域の安全保障は軍事グループの強化または拡大によって保証されるべきではない。北大西洋条約機構(NATO)の5次にわたる東方拡大を受け、ロシアの安全保障に関する正当な訴えは重視され、適切に解決すべき。

③すべての当事者が自制を保ち、大規模な人道危機を防止すべき。

④ウクライナ危機の平和的解決に資するあらゆる外交努力を支持する。

⑤国連による武力行使と制裁を認める安全保障理事会決議に反対する。

 

①は、明らかにロシアのウクライナ軍事侵攻が国連憲章違反にあたり、中国として「支持しない」立場を表明している。

②は、前述したOSCEの二つの宣言を守るべきだとの立場だ。NATOの東方拡大と対ロ軍事強化に反対するロシアの主張・懸念を明確に理解している。

この二つの立場は、国連憲章の尊重と非同盟主義を貫く中国の外交の基本的立場であり、日本では「ロシアを支援する“悪”の中国」のイメージばかりが強調されているが、実際には「国連ロシア非難決議」には、同じ非同盟主義をとるインドとともに「棄権」に回っていることは、周知の通りだ。

③④⑤は、平和的解決に向けた外交努力こそが、この問題の解決につながるとの中国の立場を表しているが、そこで、ウクライナのクレバ外相が、3月1日、王毅外相に電話し、ロシアの侵略を止めるために中国に「停戦仲介」役を依頼したことが明らかにされている。

実は中国はウクライナと、浅からぬ関係を持つていることは、あまり知られていない。ウクライナにとって中国は最大の貿易相手国であるとともに、「一帯一路」へ参加し、2021年9月には首都キエフから中国・西安への直通列車も開通している。また、中国が2012年に初めて就航させた空母「遼寧」は、旧ソ連時代のウクライナで建造されたものだ。

こうして見ると、中国のしたたかな国際的な立ち位置がわかる。日本政府・メディアは、いつまでも反中・中国脅威論にこり固まっていてはならない。本当に戦争を止めたいのであれば、制裁論議に明け暮れるのではなく、中国に「停戦仲介」役を演じてもらうよう、働きかけてはいかがか?

それこそが、憲法前文にある「国際社会において名誉ある地位」を得ることになるのだと思う。(了)
福田

2022年3月16日 | カテゴリー : ⑦戦争 | 投稿者 : 管理人

映画『侵略』シリーズを作成した「上映委員会」ニュースより(1)

映画『侵略』シリーズを作成した「上映委員会」からニュース3.1号が届きました。この号にウクライナ戦争について森正孝氏が書かれていますので、参考資料として、以下に紹介します。

 ロシアのウクライナ侵略戦争を糾弾する!軍隊を直ちに撤退させろ‼

ロシアのウクライナ攻撃は、明白な侵略戦争である。

国連憲章(第2条4)「武力による威嚇又は武力の行使も、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、慎まなければならない」に待つまでもなく、ロシアのウクライナ攻撃は、国連の憲章違反だ。さらに国連総会決議における「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する、又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使である」(1974年「侵略の定義に関する決議」)に、そのまま当てはまり、明らかな侵略戰爭であり、糾弾されなければならない。直ちにロシアは、軍を撤退させなければならない。

 🔷現下のウクライナ反戦平和への違和感……‟ロシアは悪! 西側は善!

今、世界は、ウクライナへの戦争反対!ウクライナへ平和を! が、大きなうねりとなってロシア戦争政策への非難がごうごうと渦巻いている。日々TVで映し出されるウクライナの被害者たちの悲嘆を見るにつけ、私は一刻も早いロシア軍の撤退を求める‼ ささやかながら、この反戦・反侵略・ウクライナに平和!の動きに身を置くものの一人だ。

しかし……このところの繰り返されるメディアこぞっての「反プーチン・反ロシア」宣伝、果ては「悪魔プーチン」「狂気プーチン」との‟ヘイトスピーチ”まがいの報道や、一方での‟米国をはじめ西側は善!”とする一連の報道・世論を見るにつけ、私は少なからぬ違和感を抱かざるを得ない。正直、「ウクライナに平和を!」と叫ぶことにも、いささかの躊躇感さえ覚える。

以下、この私の抱く違和感の要因ともなっている三点について述べてみたい。一つは「侵略と規定した米日政府」、二つは「ロシアのウクライナ侵略の原因」、そして、三つは「次は日本だ。台湾が第二のウクライナになる」論についてである。

1,「侵略」と規定した米日政府……。

EUにも先立って、このロシアの対ウクライナ侵攻を「侵略」と規定したのは米国バイデンだった。続いて、岸田首相がそれをなぞった形で「ロシアによる明白な侵略だ」と断定した。その限りでは、前記した通り、その通りだ。ロシアのウクライナ侵攻は侵略戦争だ。

 🔷どのツラ(面)さげて「ロシアは侵略した」と言えるのか‼

しかし、……。この両者(米日)に、どの面(ツラ)下げて、それを言えるのか! なんとまあ白々しい‼……と思うのは、私独りではあるまい。

それを言うなら「私たちもかつては侵略戦争を行いました。その点につきましては、カクカクシカジカ反省しておりますが、それを踏まえて、このたびのロシアの……」の能書きくらい言え‼ と言いたい。

まだ記憶に新しいイラク戦争……周知の通り、「イラク・フセイン大統領が大量破壊兵器を隠し持っている」とのデマ(フェイク)を白昼堂々国連の場で演説し、世界にフェイクをばらまいた上で、イラク侵略戦争に突入した。そしてフセインを殺し政権を倒した。そのフェイクに乗ったイギリス、オーストラリアはじめ30数か国(日本も自衛隊をサマワに派兵)の軍隊が、20万人以上の無辜のイラクの人々を殺した!米兵も4000人以上が殺されている。

ひとかけらの正当性も大義もなく、文字通り国連決議にいう「国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する武力の行使である」以外のなにモノでもないイラク戦争。侵略そのものだ。しかし、これを「侵略」と呼んだ国があったのか‼ 世界世論は、今のロシアに対するように、米国のこれを「侵略戦争」と言ったのか!

世界は、大国アメリカの言いなりに動いた。(因みに、この時、米国のイラク戦争に明確に反対した国は、ロシアであり、中国、ベトナム、そして仏、独だけだった) この時、確かに世界各地で反戦運動が展開されたが、今のようにメディアもこぞって「反米」「反ブッシュ」を叫んだか! 「悪魔のブッシュ」を叫んだか‼ 否!である。それともナニか???……イラク人の悲しみは、ウクライナ人の悲しみよりも軽い、とでもいうのであろうか‼

 🔷「侵略の定義は定まっていない」という日本政府!

日本政府も然りだ。イラク戦争への加担もそうだが、つい70数年前の朝鮮植民地支配、そして日中戦争・アジア太平洋戦争について、これを明確に「侵略」と規定しているか!

安倍晋三政権に至っては、侵略戦争を謝罪した村山富市首相談話について「内閣としてそのまま継承しているわけではない」と言い、「侵略という定義は学会的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」と述べ、さらに国会質問主意書への答弁では、同様「国際法上のについては確立された定義を含めお答えすることは困難であり、確立された定義があるとは承知していない」と。

これは、以降の外務省の公式見解にもなっていて、岸田政権でも修正されていない。ならば、なぜプーチン・ロシアの戦争を「侵略」と規定できるのか。

米日両政権の言う「ロシアのウクライナ侵略」の白々しさ、手前勝手さには辟易する。例えは適切ではないが「自分がやれば恋愛、他人がやれば不倫」の類よりも、もっと酷く醜い。

 2,米のイラク侵略や日本のアジア侵略は、被害者側には、一切の責任(侵略される原因)は無いが、ロシアのウクライナ侵略は、ウクライナ政権を含む米国・NATO側に相応の責任(原因)がある!

ロシアのウクライナ侵略には、ウクライナを含め米国・NATO西側にも責任(原因)がある。むろん、前述したようにどのような理由があろうとも、それが侵略である以上、その軍事行動を正当化できない。そのことを前提にした上で、なぜロシアはウクライナ侵攻を行ったかについて考えなければならない。この戦争の根本的解決(原因を取り除くために)にもそれが必要だ。

問題はやはり、米国のNATOの東方への拡大政策にある。

 🔷ワルシャワ条約機構は解体したが、NATOは残した‼ (略)

 🔷二つの宣言と『悪魔』プーチンの発言!

この動きに対してロシア側は、一定の‟制約”に動いてきた。それが次の二つの宣言である。1999年に署名した欧州安全保障協力機構(OSCE)による「イスタンブール首脳宣言」と2010年の「アスタナ首脳宣言」である。

日本にはあまり馴染みのないこの欧州安全保障協力機構(OSCE)は、冷戦終結後の全ヨーロッパでの紛争防止や紛争の解決へ向けた機関として生まれ、現在、57ヵ国、米国やウクライナはむろん、ロシアも加盟している。

OSCEで出された上記二つの宣言の共通した約束は、「各国は、軍事同盟を結ぶ選択・変更の権利を有するとともに、各国は中立の権利も有する。同時に、参加国は、他国の安全保障を犠牲にする形で安全保障を強化しない。」なっている。当然この宣言には米国やNATO諸国そしてロシアも署名している。

 

実は、この間、ロシア側が米国・NATO側に対しての批判の根拠となっているのが、上記下線部分である。いわく「この宣言にある約束は、法的拘束力がありそれを遵守すべきだ。米国・NATOはそれを守っていない。ロシアの安全保障に脅威をもたらす形で、ウクライナのNATO加盟誘導、及び軍事力のウクライナ駐留とミサイル配備を行っている」と。

『悪魔』プーチンの発言は、次のように明快だ。

――「米国・NATOの軍事ブロックは、軍事施設・基地を当方に1インチ たりとも拡大しないという約束を、破った(1991,3,6「NATO 東方不拡大」についての米英仏独外相ボン会議合意、及び,90,2,9 ベーカー米国務長官のゴルバチョフソ連大統領への「 NATO 東方不拡大」の約束の反故)。今日、 NATOはポーランド、ルーマニアそしてバルト3国にいる。我々を騙したのだ。そして今、弾道ミサイル迎撃装置がルーマニアに展開され、ポーランドにも展開されようとしている。この装置はトマホークを発射できるMK-41発射装置だ。つまり、迎撃ミサイルだけではなく、ロシア領の数千キロをカバーできる攻撃ミサイルだ。これは我々の脅威ではないか。そして今、彼らは次のステップはウクライナだといっている。私の言うことを注意深く聞いてほしい。ウクライナの文書には、必要ならば武力ででもクリミアを取り戻したいと書いてある。ウクライナがNATO加盟国になれば、ポーランドやルーマニアと同じように、ウクライナに攻撃兵器が配備されるだろう。ウクライナが NATO加盟国として軍事作戦行動を開始することを想像してみてほしい。我々はどうするのか。 NATOブロックと戦うのか。明かに答えは「ノー」だ。」(2022,3,3 プーチン・ウクライナ問題記者会見『朝日』と浅井基文webサイト参照)――

要約すれば、プーチン・ロシアの要求は次の2点である。

➀米国など西側はウクライナのNATO加盟を認めない。②米国など西側はウクライナに軍事力を駐留させず、攻撃型のミサイルも配備しない、である、しかし、米国バイデンはこれを拒否しつづけてきた。それが、ロシアをしてウクライナ東南部2州の独立承認からウクライナ侵攻に踏み切らせた直接の原因となったのである。

ついでに言うならば、2015年以来、米国はウクライナとの合同軍事訓練を4回行っている。さらに、昨年8月から9月にかけて、ウクライナのゼレンスキー大統領が訪米し、バイデンとの間で軍事協力文書を結び、バイデンはウクライナに対して6000万ドルの追加軍事援助を発表した。同年10月にオースティン国防長官がウクライナを訪問し、ウクライナのNATO加盟を力説している。

仮に、米国の隣国カナダやメキシコで、ロシアが軍事演習を行い、さらにカナダやメキシコに武器援助を行ったとしたら、米国はどう思うか‼ しかも、ロシア一国ではない。世界の70%以上の軍事費を有した30ヵ国が束になり、敵対的な行動をとった時、米国はどう脅威に感ずるのか?! 答えは想像するまでもない。

しかし……だからと言ってロシアのウクライナ攻撃が許されるわけでないことは、前述して通りだ。ロシアは、直ちに戦争を停止し軍隊を引き揚げねばならない。そして、直ちに米国・NATO諸国との対話を始めるべきだ。どのように時間がかかろうとも、対話による交渉(外交)以外に解決の道はないことを強く訴えたい。そのことでの中国の役割に期待したい‼

3,「次は日本だ! 台湾が第二のウクライナになる」!? 

福田

2022年3月13日 | カテゴリー : ⑦戦争 | 投稿者 : 管理人

ロシアのウクライナ侵攻を日本の核武装・核共有に結び付けるな

自民党の安倍晋三元首相は2月27日のフジテレビ番組で、「北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採用している、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する“核共有”政策について、日本でも議論すべきだ」との考えを示し、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ「世界の安全がどのように守られているのか。現実の議論をタブー視してはならない」と述べた。(2022.02.27共同通信)

ロシアのウクライナ侵攻は、プーチン大統領による長期独裁政権が、主権国家の自由と安全を武力で圧殺する蛮行である。しかも、自国の核兵器使用も辞さない脅しをかけ、世界中に脅威を煽っているのは、最早狂気の沙汰であり、どのような理由があるにせよ、国連憲章、国際法破壊への挑戦であり、決して許容できるものではない。ロシア軍の即時撤退による停戦を祈るばかりである。

さて、このロシアのウクライナ侵攻に伴い、日本国内では右派勢力を中心に核武装論が盛り上がりつつある。冒頭の記事は、安倍元首相の極めて不適切な発言である。1年少し前まで8年間も首相をつとめた人物のこうした発言を聴くにつけ、この浅薄な人間を日本政治のトップに据えていたことの情けなさを思わずにはいられない。

岸田首相は3月2日の参議院予算委員会で、「自民党の内外、そして世の中に様々な意見があることは承知しているが、政府において“核共有”は認めない。議論は行わない」と明確に答弁し、非核三原則を堅持していくことを強調した。曖昧な答弁が多いとされる岸田首相であるが、この答弁については評価すると同時に、安倍氏等右派勢力や日本維新の会などの一部野党の圧力には、断固とした態度で撥ねつけることを期待したい。

唯一の被爆国として、核の脅威を最も身近に経験した日本は、平和憲法を定め、その下に非核三原則(持たず、作らず、持ち込まず)を国是として掲げてきた。核共有は、アメリカの核兵器を日本に配備し、アメリカの許可又は了解のもとに、日本が核兵器の運用を担うことである。中国を仮想敵国としているアメリカにしてみれば、日本が希望すれば核共有を容認する可能性も十分にある。核共有によって「持たず、持ち込まず」がなくなり、非核三原則は完全に放棄されるのである。核共有により「抑止力」が強化されるという推進派の意見は全く的外れで、核共有によりアメリカと軍事的に一体化した日本は、平和的な外交努力が通用しなくなり、最初の攻撃目標となるだけである。

ロシアのウクライナ侵攻で日本が思い出さなければならないのは、90年前に日本が犯した中国での蛮行である。柳条湖事件を故意に仕組んで満州事変を勃発させ、これに乗じて中国東北部を占領し、そこに傀儡の満州国を建国したのである。「満蒙は日本の生命線」と勝手に解釈した関東軍の暴走を日本政府は止められず、軍の暴走は激しさを増す。国際連盟総会で日本の軍事行動が42対1(1は日本)で正当性が否定され、ついには連盟を脱退し、世界的に孤立していく。現在進行形のロシアのウクライナ侵攻に酷似する構図である。

かつて日本も同じような蛮行を行い、その結果被爆という大きな犠牲を払い、今の平和憲法ができたことを胸に刻むときである。決して核武装や核共有などという言葉を軽々に使うべきでないことを肝に銘じるべきである。

2021年3月6日  柳澤 修

2022年3月6日 | カテゴリー : ⑦戦争 | 投稿者 : o-yanagisawa

政府は国民の命を危険にさらすな

政府は国民の命を危険にさらすな

去る12月6日に召集された第207臨時国会の所信表明演説で岸田文雄首相は「国民の命と暮らしを守るため、いわゆる敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化していきます」と述べた。

当会は先に緊急警告044号(2021年8月15日)で「専守防衛を否定する敵基地能力の保有は許されない」と批判したが、今回改めて首相のこの所信に抗議する。

この「敵」というのが中国か北朝鮮か、その他の国かは不明だが、この「攻撃能力」は常識的に先制攻撃と解されており、わが国の憲法上決して許されるものではない。

与党の公明党は否定的な立場を取っており、自民党内でも第2次安倍政権下で準備されたこの路線の追従者を除き、穏健派の重鎮たちははこの路線に反対し、外交努力を対置している。(朝日9月25日)

憲法尊重義務に違反する国会議員その他の公務員は処罰されなければならない。

先制攻撃にせよ、事後反撃にせよ、たとえ一、二の基地を叩くことに成功しても、ただちに別の基地からの反撃を受け、双方の国民はともに甚大な被害を受け、とくに狭い国土に原発を抱える日本は一瞬のうちに廃墟と化し、1億国民が廃人になるのは必至である。

ちなみに、米中対立における立ち位置で参考になるのは、東南アジア諸国(ASEAN)の事例だ。シンクタンク「新外交イニシアチブ」のASEAN世論調査によれば「ASEANの対応力と一体性を強化して米中と対応して行く」48%、「中国と米国のどちらにもつかない」31.3%、「中国でもない米国でもない第三の道をめざす」14.7%と計94%の人々が非同盟主義をつらぬき独自の道を歩むことを選択している。(『上映委ニュース』142号12月8日)

この事例に習い、アジア共同体研究所は、「米中のミサイル配備競争の中に立つ日本は、そのポジションを利用して、両国を揺さぶり続け、両国にミサイル軍縮を迫ることが日本の責任だ」と主張している。

つまり、日本は米中の間に置かれた特別なポジション(位置)と9条という条件を利用して、主体的で英知に富んだ外交を行うことが肝要で、そのためにも、国民は政権を突き動かし、賢明な外交を行わせるような反戦・護憲運動の展開が要請されるとの主旨だ。

ひるがえって、日本の防衛費は初めて6兆円を超え、国内総生産(GDP)の約1.09%と、1%枠を超えている。防衛費の増大は、逆に軍拡競争を加速する「安全保障のジレンマ」に陥り、こうして累積する殺人兵器は、いつか出口を戦争に求める。このことは国内外の歴史の鉄則だ。

今年1月に亡くなった著名な作家半藤一利氏は言う「絶対に戦争はしてはならない」と。これは一部の狂信的好戦論者を除く、国民すべての潜在的意識だ。

来年は日中国交正常化50周年を迎える。かねて懸案となっていた中国の習近平国家主席の訪日を丁重に促し、「日中両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず……相互に善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致するところであり、また、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである」との日中共同声明(1972年9月29日)を再確認する機会としたい。その準備を官民を挙げて開始しなければならない。

われわれは改めて「政府の行為によって再び戦争の惨禍がおこることのないやうにすることを決意」(憲法前文)している。

2021年12月12日 | カテゴリー : ⑦戦争 | 投稿者 : 福田 玲三

自衛隊はなぜ「旭日旗」に拘るのか?――「安倍9条改憲」が狙うもの

(弁護士 後藤富士子)

1 朝日新聞記事によれば、韓国は、10月10~14日に韓国済州島で開かれた「国際観艦式」に関し、参加国に「自国の国旗と太極旗(開催国である韓国の国旗)だけを掲揚するのが原則」だと8月31日付で通知していた。
日本の「国旗」は「日の丸」であるが、海上自衛隊は1954年の発足時に艦の国籍を示す自衛艦旗として「旭日旗」を採用した。旭日旗は旧日本軍で使われたものであり、韓国内にはこの旗に対して「日本軍国主義の象徴」との批判がある。そのため、韓国海軍が対応を検討した結果、日本の海上自衛隊に自衛艦旗を使わないよう間接的に要請したのである。但し、「国際法や国際慣例上いかなる強制もできない」とも説明している。
これに対し、日本側は、「非常識な要求。降ろすのが条件なら参加しないまで。従う国もないだろう」(防衛省関係者)としている。また、小野寺五典防衛相は「国内法令で義務づけられており、当然(自衛艦旗を)掲げることになる」と述べ、要請にかかわらず従来通り自衛艦旗を掲げる考えを強調した。
ところが、10月5日、岩屋毅防衛相は、護衛艦の派遣を中止すると発表した。4日には、自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長が定例会見で「海上自衛官にとって自衛艦旗は誇りだ。降ろしていくことは絶対にない」と述べている。

2 国連海洋法条約は「軍艦」に対し、所属を示す「外部標識」の掲揚を求める。海自艦にとっては自衛艦旗が外部標識で、自衛隊法などは航海中、自衛艦旗を艦尾に掲げることを義務づけている。日本側は、これを根拠に韓国側に条件の変更を求めてきたという。
なお、98年と2008年に韓国で開かれた観艦式で海自艦は旭日旗を掲げてきたのに、今回こじれた背景には韓国世論がある。韓国政府は当初、「行事の性格や国際慣例などを考慮願いたい」などと国内世論に対して理解を求めていたが、大統領府ホームページの掲示板に「戦犯国の戦犯旗だ」「国家に対する侮辱だ」などとする書き込みが相次いだため、国民の支持を失うことを恐れた大統領府が対応を変えたという。
ちなみに、昨年5月、アジア・サッカー連盟(AFC)は、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のアウェー水原(韓国)戦で、サポーターが旭日旗を掲げたJ1川崎に対し、1年間の執行猶予付きでAFC主催大会のホーム1試合を無観客試合とする重い処分と、罰金1万5000ドル(約170万円)を科している。AFCの規律委員会は、旭日旗は国籍や政治的主張に関連する差別的象徴と認定し、倫理規定に違反するとされたのである。
この経緯をみると、自衛隊は、「国籍や政治的主張に関連する差別的象徴」と認定されるような旭日旗をやめて、国旗「日の丸」を掲げればいいじゃないか、と単純に思う。それに、こんな忌まわしい旭日旗を自衛官に強制して「誇り」をもたせるというのは、「歴史修正主義」による洗脳というほかない。また、「安倍日本会議政権」の日本と文在寅大統領の韓国とでは、現時点で未来の方向が真逆になっている政治の現実がある。文大統領の訪日の具体的な日程は決まらず、旭日旗に拘ることで海自艦の韓国寄港が実現する見通しが立たなくなっているというのであり、「旭日旗」は、明らかに日本の国益を損なっている。

3 国連海洋法条約29条は、軍艦の定義規定であり、「この条約の適用上、『軍艦』とは、一の国の軍隊に属する船舶であって、当該国の国籍を有するそのような船舶であることを示す外部標識を掲げ、当該国の政府によって正式に任命されてその氏名が軍務に従事する者の適当な名簿又はこれに相当するものに記載されている士官の指揮下にあり、かつ、正規の軍隊の規律に服する乗組員が配置されているものをいう。」と定められている。すなわち、「自衛艦」は、国際法上「軍艦」にほかならない。
一方、自衛隊法4条は、「自衛隊の旗」についての規定であり、1項は「内閣総理大臣は、政令で定めるところにより、自衛隊旗又は自衛艦旗を自衛隊の部隊又は自衛艦に交付する。」とされ、2項で「前項の自衛隊旗及び自衛艦旗の制式は、政令で定める。」としている。その自衛隊法施行令で、自衛艦旗は、日章が中心より左下に寄った光線16本の旭日旗であり、陸上自衛隊の連隊旗は、日章が中心にあり光線8本の旭日旗とされている。すなわち、旭日旗を自衛隊旗と定めている法的根拠は「政令」にすぎないのである。また、小野寺防衛相が「国内法令で義務づけられている」というのは自衛隊法102条1項のことであり、「自衛艦その他の自衛隊の使用する船舶は、防衛大臣の定めるところにより、国旗及び第4条第1項の規定により交付された自衛艦旗その他の旗を掲げなければならない。」と規定している。したがって、自衛艦旗である旭日旗の不掲載は、防衛大臣が決めれば足りることである。

4 自衛艦旗が定められたのは、1954年の自衛隊発足時である。一方、「日の丸」が国旗とされたのは、平成11年(1999年)に制定された「国旗及び国歌に関する法律」による。そして、「国旗」を「軍旗」としても、国連海洋法条約29条に抵触しない。ちなみに、米国、フィリピン、インドネシア、ベトナムなどは国旗と軍旗は同じである。
このようにみてくると、自衛隊を憲法に明記させる「安倍9条改憲」は、制服組トップが望む「旧日本軍」の復権を意味すると思われる。しかし、自衛隊が旭日旗を掲げることは、日本が「加害の歴史」を反省していない証であり、日本国憲法の出自と矛盾する。また、自衛隊は、憲法9条2項で「保持しない」とされた「軍隊」であってはならないのだから、旧日本軍が使っていた「軍旗」などやめるべきだ。
一方、国は、法律で国旗と定められた「日の丸」を国民に強制している。したがって、改憲論議よりも優先して、忌まわしい旭日旗を自衛隊旗とすることは止め、自衛隊法施行令を改正して自衛隊旗を「日の丸」とするべきである。
(2018.10.26)

死の五段活用と拍手の光景

「露営の歌」(死の五段活用)に関する投稿記事(河北新報からの転載 9/7)に向けて、東京新聞の発言欄に93才の方からの意見が載せられた(10/3)。

その方は、「露営の歌」の死に対する考え方への投稿者の疑問に共感し、9/26の首相の所信表明演説時の自民党議員総立ち拍手の光景(下記〔注〕)に接し、政治家の戦争責任を改めて問うている。
興味深いので、引用させていただく。

【(略)当時の国民は、軍国主義教育に洗脳され、理性を失い狂気の中にあった。その究極が靖国神社だ。毎年の例大祭などに大挙して参拝する政治家らは『国のために尊い命をささげた英霊に尊崇の念を払うのは当然』と口をそろえるが、彼らは国に死を強いられたのだ。
靖国は英霊に祀ることで死を美化し侵略戦争を聖戦化し、為政者(国)の戦争責任回避に利用されている。政治家の靖国参拝は戦死者の霊を冒瀆するものだ。
首相所信表明で、自衛隊員らに敬意を表し自民党議員が総立ちして拍手した光景に、同じ空気を感じた。】

「靖国は…為政者(国)の戦争責任回避に利用されている」という指摘は、当時の若者である93才の方からの重要なメッセージだ。どれだけ多くの若い命が、次代に命をつなぐ事なく、亡くなって行ったことか。 続きを読む

2016年10月11日 | カテゴリー : ⑦戦争 | 投稿者 : きくこ

ミュジシャン三宅洋平選挙フェス7月4日@立川駅

彼のスピーチは日々進化しています。

3日の渋谷の選挙フェスには行ってきましたが、立川では立川に相応しいスピーチです。こんな素晴らしい選挙演説ができる候補者が他にいるでしょうか。

品格があり、目がきれい。彼が代議士になり、彼のような議員が増えたら、選挙に行かなかった若い世代が選挙に行くようになるでしょう。都民でないのが残念!

https://youtu.be/ErtSgf5s8wQ

イラク派遣中の自衛官を襲った「事故」

日米同盟では、「平時から安保運用を一体化」するそうです。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015110301001418.html

「同盟」や「一体化」と聞けば、「対等」の関係をイメージしますが、現実はどうでしょうか?

2003年12月から5年以上続いた自衛隊のイラク派遣も大きな転換点になりましたが、あとになって様々な事実が明るみに出てきました。
その中のひとつ、実態を物語る象徴的な事件をご紹介、下記リンク先のほうも是非ご覧下さい。

◆イラク派遣中の自衛官を襲った「事故」が象徴する構造的問題

28人が自殺・・・。真相!戦場に行った自衛隊
http://bit.ly/1sJPGwN

上の番組録画の8分前後から話す池田さんは、Wikipedia「自衛隊イラク派遣」にも載っている池田頼将三等空曹です。

派遣先のクウェートのアリ・アルサレム空軍基地周辺で米軍主催の長距離走大会に
選手として参加中、米軍の大型バスに後ろから撥ねられ重傷

事の顛末がよくわかる講演から、多くのことが見えてきます。

診断書には「政治的圧力により治癒」
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-3630.html

「事故」が起きたマラソン大会では、池田さんと米兵2人がトップグループで走り、団子状態から離れる折り返し・給水地点で、池田さんの背後から米軍の大型バスが突っ込んできたのです。

クウェートのアリ・アルサレムは、航空写真で見るとだだっ広い砂漠の基地のようで、東京マラソンのようにビルの谷間で雑踏や車を通行禁止にするのとは別世界の風景です。
「事故」なのか「事件」なのか、詳しく検証されたのでしょうか。
少なくとも自衛隊は調べていないはずです。
日本国内でさえ、米軍が起こした事件や事故は、日本の警察が締め出される治外法権になっています。

重傷を負った同胞に対して、「米軍が言うんだから大したことないんだろう」と、まともな治療を受けさせない自衛隊。深刻な後遺症を抱える池田さんを自衛隊から追い出すべく、その後延々と続くパワーハラスメント。
政権の維持もかかる組織防衛のために、個人はここまで人権を踏みにじられるものでしょうか。

2007年に国会で発表されたイラク派遣2年半で、自衛官の死者は35人。
内訳は自殺が16人、病死が7人、そして「事故死+死因不明」が、12人…。
(一時期、「自衛隊員が初めて銃撃戦になって1人死亡」とBBCやCNNが報道した由)

現地にいる「自衛官の敵」は、イラクのテロ集団、米軍、そして、自衛隊?
何でもアリの現実を目の当たりにして心も壊れます。
2014年の報道では「現地で21人負傷、帰国後28人が自殺」
http://bit.ly/1sJPGwN

この構図は将来も、連綿と続く可能性があります。
池田さんは現在訴訟中。どんな判決が出るのか、司法の存在価値が問われています。

2015年11月4日 | カテゴリー : ⑦戦争 | 投稿者 : ガーベラ