ロシアのウクライナ侵攻を日本の核武装・核共有に結び付けるな

自民党の安倍晋三元首相は2月27日のフジテレビ番組で、「北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採用している、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する“核共有”政策について、日本でも議論すべきだ」との考えを示し、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ「世界の安全がどのように守られているのか。現実の議論をタブー視してはならない」と述べた。(2022.02.27共同通信)

ロシアのウクライナ侵攻は、プーチン大統領による長期独裁政権が、主権国家の自由と安全を武力で圧殺する蛮行である。しかも、自国の核兵器使用も辞さない脅しをかけ、世界中に脅威を煽っているのは、最早狂気の沙汰であり、どのような理由があるにせよ、国連憲章、国際法破壊への挑戦であり、決して許容できるものではない。ロシア軍の即時撤退による停戦を祈るばかりである。

さて、このロシアのウクライナ侵攻に伴い、日本国内では右派勢力を中心に核武装論が盛り上がりつつある。冒頭の記事は、安倍元首相の極めて不適切な発言である。1年少し前まで8年間も首相をつとめた人物のこうした発言を聴くにつけ、この浅薄な人間を日本政治のトップに据えていたことの情けなさを思わずにはいられない。

岸田首相は3月2日の参議院予算委員会で、「自民党の内外、そして世の中に様々な意見があることは承知しているが、政府において“核共有”は認めない。議論は行わない」と明確に答弁し、非核三原則を堅持していくことを強調した。曖昧な答弁が多いとされる岸田首相であるが、この答弁については評価すると同時に、安倍氏等右派勢力や日本維新の会などの一部野党の圧力には、断固とした態度で撥ねつけることを期待したい。

唯一の被爆国として、核の脅威を最も身近に経験した日本は、平和憲法を定め、その下に非核三原則(持たず、作らず、持ち込まず)を国是として掲げてきた。核共有は、アメリカの核兵器を日本に配備し、アメリカの許可又は了解のもとに、日本が核兵器の運用を担うことである。中国を仮想敵国としているアメリカにしてみれば、日本が希望すれば核共有を容認する可能性も十分にある。核共有によって「持たず、持ち込まず」がなくなり、非核三原則は完全に放棄されるのである。核共有により「抑止力」が強化されるという推進派の意見は全く的外れで、核共有によりアメリカと軍事的に一体化した日本は、平和的な外交努力が通用しなくなり、最初の攻撃目標となるだけである。

ロシアのウクライナ侵攻で日本が思い出さなければならないのは、90年前に日本が犯した中国での蛮行である。柳条湖事件を故意に仕組んで満州事変を勃発させ、これに乗じて中国東北部を占領し、そこに傀儡の満州国を建国したのである。「満蒙は日本の生命線」と勝手に解釈した関東軍の暴走を日本政府は止められず、軍の暴走は激しさを増す。国際連盟総会で日本の軍事行動が42対1(1は日本)で正当性が否定され、ついには連盟を脱退し、世界的に孤立していく。現在進行形のロシアのウクライナ侵攻に酷似する構図である。

かつて日本も同じような蛮行を行い、その結果被爆という大きな犠牲を払い、今の平和憲法ができたことを胸に刻むときである。決して核武装や核共有などという言葉を軽々に使うべきでないことを肝に銘じるべきである。

2021年3月6日  柳澤 修

2022年3月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : o-yanagisawa