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違憲性に対する緊急警告
緊急警告076号 自民・維新連立を選択した高市政権の右傾化を危惧する
2025年10月21日、臨時国会が召集され、高市早苗自民党総裁が首相に選出された。
10月4日に自民党総裁選で選出されてから2週間の政局を経ての首班指名にようやくたどり着く。
2025年10月4日、自民党総裁選で、党内最右派と目される高市早苗氏が総裁に選出された。安倍晋三氏の後継者を自認し、日頃から右派的な言動を繰り返してきたことから、護憲・リベラル派からは最も警戒される人物であるが、早速党の幹部人事でその傾向が現われる。
高市総裁は、総裁選で支援を受けた麻生太郎氏を副総裁、麻生氏の義弟である鈴木俊一氏を幹事長に起用した。また、旧安部派に影響力があり、裏金議員でもある萩生田光一氏を幹事長代行、総裁選に立候補した中で最も理念が近い小林鷹之氏を政調会長に起用するなど、党内融和よりもイデオロギー的同調を優先し、右派的政策決定を迅速化する人事を行った。
従来の自民党は、派閥間の調整と妥協を通じて政策を決定してきた。しかし高市政権では、意思決定の中枢が右派的イデオロギーで統一されることにより、党内での多様な意見調整機能が弱体化し、この結果、改憲や防衛政策強化といった右傾的政策が執行部主導で推進されやすい構造が生まれる可能性が大きい。
高市氏の党役員人事を見た公明党は、「政治とカネ」問題への対応に不満を示し、連立からの離脱を決定した。しかしその背景には、平和主義・福祉重視を理念とする公明党と、高市氏の国家主義的志向との根本的乖離(かいり)が存在したと考えられる。26年間におよぶ自公連立を自明の理としてきた自民党にとって強烈な打撃となった。
過半数を割り込んだ自民党は、まず国民民主党に連立を打診したが、政策協議は不調に終わった。最終的に、高市氏は議席数の多い日本維新の会と連立に合意した。維新は自民党よりも保守色が強く、改憲や安全保障強化に積極的である。両党の連立は、理念的一致を基礎とする「右派連携型連立」であり、政策的にも改憲・安全保障強化を中心課題とする方向に傾斜している。
この再編によって、公明党が果たしてきた「抑制的中道勢力」としての役割が失われ、右派的政策への歯止めが消失した。これは、戦後連立政治において見られた中道・調整型政党の存在が政治安定の鍵であったという通説から逸脱する事例といえる。
10月20日、両党は連立合意文書に署名。その内容は維新の要求を丸呑みした形だが、理念的には高市氏の従来の主張と一致している。
危惧すべき合意事項を列挙する。
・改憲(9条、緊急事態条項)に関する両党の条文起草協議会設置と国会提出
・改憲発議のために必要な制度設計
・日本国国章損壊罪の制定
・環境の変化に伴い、戦略(安保)3文書の前倒し改定
・抑止力の大幅強化のための軍事力増強
・防衛装備移転三原則の運用指針撤廃
・スパイ防止法案の速やかな策定・成立
・原子力発電の再稼働、次世代型革新炉開発の加速化
・外国人に関する違法行為対応の強化
このほか維新は、国民受けする議員定数の1割削減をこの秋の臨時国会で成立を目指すという要求まで出し、代わりに企業・団体献金廃止についてはトーンを下げている。
公明党の離脱に代わって維新が連立に加わったことで、国家主義的な色合いの濃い政策の実現性が高まることが懸念される合意内容である。
最も懸念されるのが、平和憲法の改悪である。右派二党連立合意では、改憲が単なる政策課題ではなく、具体的な政治日程に盛り込まれている。残念ながら、改憲や安全保障に関しては連立に加わらなかった国民民主党も、同じ理念を共有しており、参政党は言うまでもない。
高市政権は、短期的には政治的安定を確保するかに見えるが、実際には立憲主義的抑制と中道的均衡を失う懸念が大きい。その結果、安倍政権以上に議会無視の強権的な対応をとる可能性すら秘めている。維新との右派連携による改憲推進体制の強化は、国民民主党、参政党を仲間に引き入れて、強硬に進める可能性がある。
右派政権による改憲を阻止し、現憲法に基づく立憲主義を維持するためには、政策決定過程の透明性確保、議会における熟議の回復、市民社会による監視機能の強化が不可欠である。護憲勢力の正念場でもある。
(2025年10月21日)
緊急警告075号 政府と国会は早急な再審法の改正を図り、冤罪被害者を救済せよ
2024年9月、静岡地裁は袴田巌氏に対し、58年ぶりとなる再審無罪判決を言い渡した。さらに2025年7月には、福井女子中学生殺人事件において、前川彰司氏が再審無罪判決を受けた(8月1日、検察は上告せず再審無罪が確定)。
いずれも、警察・検察による証拠の捏造や隠蔽、そして裁判所による警察・検察を無批判的に追認する判決が長期の冤罪を生んだ典型例である。これらの事件は、刑事司法制度の構造的欠陥を浮き彫りにし、再審制度の抜本的な見直しを迫るものである。
冤罪の構造と再審制度の限界
袴田事件では、捜査機関が「みそタンクから発見された衣類」を犯行着衣と断定し、死刑判決の根拠とした。しかし後年の再現実験により、血痕の色や衣類のサイズに不自然な点が多く、捏造の可能性が極めて高いと判断された。福井事件でも、 (さらに…)
緊急警告074号 政府は違法な生活保護費減額を謝罪し、被害の回復を図れ
2025年6月27日、最高裁判所は2013年から2015年にかけて実施された生活保護費の最大10%減額措置について、「裁量権の逸脱・濫用」として違法と判断した。この判決は、生活保護制度の根幹に関わる歴史的な意義を持つものであり、憲法第25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の理念を再確認するものである。
しかしながら、政府および厚生労働省は原告に対する謝罪も補償も行っておらず、被害回復の道筋は未だ不透明である。このような行政の姿勢は、生活保護受給者に対する社会的バッシング感情と、それを政治的に利用した当時の政権の政策構造と密接に関係している。
生活保護費減額の背景と違法性
2012年の衆院選において、自民党は生活保護費の10%削減を公約に掲げて政権復帰を果たした。安倍政権はこれを実行に移し、厚労省は「デフレ調整」や「ゆがみ調整」と称して、生活扶助(*1)基準を平均6.5%、最大10%引き下げ、3年間で (さらに…)
緊急警告073号 拉致問題の解決には、まず痛切に反省せよ
年明けには拉致被害者家族の高齢化や死亡にともない、テレにはほとんど連日のように、加害者である朝鮮を難詰する家族の姿を映した。その被害者家族の心情は理解されるものの、冷静に考えなければならぬことがある。
戦時中、内地の労働者不足を補うために数十万人の朝鮮人が、「強制的」「拉致同然」(外村大『朝鮮人強制連行』岩波新書p.213)に、内地へ強制連行され、彼らは鉱山や土木事業などの危険な職場で牛馬のように働かされ、そのあげく、かなりの人々は異郷で非業の最期をとげた。
そのあまりにも哀れな身の上に同情して、彼らに接した地域住民がせめてもの慰霊として作った追悼の施設が、群馬の森におけるように、今つぎつぎと、破壊されている。日本の拉致被害者家族の悲しみが深いとしても、朝鮮半島の強制連行被害者家族数十万人の悲嘆はさらに切ないはずだ。
ふりかえれば、村山内閣時代の1995年に「植民地支配と侵略」について、さらに2002年、小泉総理と金委員長による日朝平壌宣言でも「過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明し」ていた。 (さらに…)
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