拉致被害者家族の記者会見を見て

この2月は拉致被害者家族の高齢化や死亡にともない、テレにはほとんど連日のように、加害者である朝鮮を難詰する家族の姿を映した。その被害者家族の心情は理解するものの、冷静に考えてもらいたいことがある。

戦時中、内地の労働者不足を補うために数十万人の朝鮮人が、「強制的」「拉致同然」(外村大『朝鮮人強制連行』岩波新書p.213)に、内地へ強制連行され、彼らは鉱山や土木事業などの危険な職場で牛馬のように働かされ、そのあげく、かなりの人々は異郷でひっそりと死んでいった。

そのあまりにも哀れな身の上に同情して、彼らに接した地域住民がせめてもの慰霊として作った追悼の施設が、群馬の森におけるように、今つぎつぎと、破壊されている。日本の拉致被害者家族の悲しみが深いとしても、朝鮮半島の強制連行被害者家族数十万人の悲嘆はさらに切ないはずだ。

村山内閣時代の1995年に「植民地支配と侵略」についてお詫びを表明して以後、2015年「子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」の愚かな安倍談話を引き継いだ菅内閣は2021年4月、「強制連行』の表現は適切ではないとの破廉恥な「閣議決定」を行なって以後、追悼施設の廃棄が強行されており、あるいは佐渡金山などで朝鮮人に行われた強制労働の史実が政府によって隠匿されている。

このような日本政府の不誠実な姿勢が続く限り、北朝鮮政府が強硬な態度を維持するのは当然と言わなければならない。拉致問題の解決は先ず、戦中戦前の「侵略」のお詫びを明確にし、その後、具体的な交渉に入らなければならない。

このことは拉致被害者家族にも理解してほしい。

(以上)

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