生活保護費引き下げ違法訴訟の早期決着を

去る2025年1月29日、福岡高裁は国が生活保護費を2013年~2015年にかけて減額したのは、生活保護法などに違反するとして、一審福岡地裁判決を変更し、減額処分を取り消す判決を下した。その理由として、デフレ調整が一般世帯を対象にした家計調査に基づいている点について、「一般世帯と受給世帯では食事などの支出割合の違いが顕著」とし、デフレ調整を実施した判断の違法性を認めた。

直近の2月28日松山地裁判決でも取消判決が下され、その理由として、国が一般世帯に対して実施した家計調査をもとに物価の下落に関する調整を行ったことについて「生活保護を受給している世帯の消費実態とは異なるデータを用いていて、統計などの客観的数値との合理的な関連性や専門的な知見との整合性を欠いている」と指摘した。

国は物価変動率に合わせて支給額を変動する「デフレ調整」を踏まえ、食費や光熱費など「生活扶助」の基準額を最大10%引き下げ、約670億円を削減していた。こうした国の政策が、地方自治体へのプレッシャーとなり、群馬県桐生市では10年間に利用者が半減し、かつ満額支給されていなかった事例(現在市の第三者委員会が調査中、2025年2月朝日新聞)も見られる。

憲法25条は、国民の生存権と、国の生存権保障義務を明確に定めており、生活保護法も憲法に基づき規定されている。この憲法を軽んじる国や自治体の対応は許される者ではない。

同一訴訟は全国で31件あり、一審地裁判決は30件中19件で原告勝訴。二審高裁は5件中名古屋高裁と福岡高裁の2件が原告勝訴。大阪高裁2件と仙台高裁1件は原告敗訴となっており、いずれも上告されている。

地裁・高裁・最高裁で審理が続くが、こうした憲法に抵触する訴訟は、いち早く最高裁が判例となる判決を出すべきではないか。裁判官はあくまで自分の判断で判決を下すべきだが、同種の訴訟においては、救われる者と救われない者が生まれるべきではない。最高裁が直ちに憲法25条の趣旨に基づいて判断を下すべきではないかと思料する。もし最高裁が受給者たる原告の訴えを棄却することがあれば、人権の最後の砦は崩壊する。

(2025年3月3日  栁澤 修)

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