映画『侵略』シリーズを作成した「上映委員会」ニュースより(1)

映画『侵略』シリーズを作成した「上映委員会」からニュース3.1号が届きました。この号にウクライナ戦争について森正孝氏が書かれていますので、参考資料として、以下に紹介します。

 ロシアのウクライナ侵略戦争を糾弾する!軍隊を直ちに撤退させろ

ロシアのウクライナ攻撃は、明白な侵略戦争である。

国連憲章(第2条4)「武力による威嚇又は武力の行使も、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、慎まなければならない」に待つまでもなく、ロシアのウクライナ攻撃は、国連の憲章違反だ。さらに国連総会決議における「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する、又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使である」(1974年「侵略の定義に関する決議」)に、そのまま当てはまり、明らかな侵略戰爭であり、糾弾されなければならない。直ちにロシアは、軍を撤退させなければならない。

 🔷現下のウクライナ反戦平和への違和感……‟ロシアは悪! 西側は善!

今、世界は、ウクライナへの戦争反対!ウクライナへ平和を! が、大きなうねりとなってロシア戦争政策への非難がごうごうと渦巻いている。日々TVで映し出されるウクライナの被害者たちの悲嘆を見るにつけ、私は一刻も早いロシア軍の撤退を求める‼ ささやかながら、この反戦・反侵略・ウクライナに平和!の動きに身を置くものの一人だ。

しかし……このところの繰り返されるメディアこぞっての「反プーチン・反ロシア」宣伝、果ては「悪魔プーチン」「狂気プーチン」との‟ヘイトスピーチ”まがいの報道や、一方での‟米国をはじめ西側は善!”とする一連の報道・世論を見るにつけ、私は少なからぬ違和感を抱かざるを得ない。正直、「ウクライナに平和を!」と叫ぶことにも、いささかの躊躇感さえ覚える。

以下、この私の抱く違和感の要因ともなっている三点について述べてみたい。一つは「侵略と規定した米日政府」、二つは「ロシアのウクライナ侵略の原因」、そして、三つは「次は日本だ。台湾が第二のウクライナになる」論についてである。

1,「侵略」と規定した米日政府……。

EUにも先立って、このロシアの対ウクライナ侵攻を「侵略」と規定したのは米国バイデンだった。続いて、岸田首相がそれをなぞった形で「ロシアによる明白な侵略だ」と断定した。その限りでは、前記した通り、その通りだ。ロシアのウクライナ侵攻は侵略戦争だ。

 🔷どのツラ(面)さげて「ロシアは侵略した」と言えるのか

しかし、……。この両者(米日)に、どの面(ツラ)下げて、それを言えるのか! なんとまあ白々しい‼……と思うのは、私独りではあるまい。

それを言うなら「私たちもかつては侵略戦争を行いました。その点につきましては、カクカクシカジカ反省しておりますが、それを踏まえて、このたびのロシアの……」の能書きくらい言え‼ と言いたい。

まだ記憶に新しいイラク戦争……周知の通り、「イラク・フセイン大統領が大量破壊兵器を隠し持っている」とのデマ(フェイク)を白昼堂々国連の場で演説し、世界にフェイクをばらまいた上で、イラク侵略戦争に突入した。そしてフセインを殺し政権を倒した。そのフェイクに乗ったイギリス、オーストラリアはじめ30数か国(日本も自衛隊をサマワに派兵)の軍隊が、20万人以上の無辜のイラクの人々を殺した!米兵も4000人以上が殺されている。

ひとかけらの正当性も大義もなく、文字通り国連決議にいう「国家による他の国家の主権、領土保全若しくは政治的独立に対する武力の行使である」以外のなにモノでもないイラク戦争。侵略そのものだ。しかし、これを「侵略」と呼んだ国があったのか‼ 世界世論は、今のロシアに対するように、米国のこれを「侵略戦争」と言ったのか!

世界は、大国アメリカの言いなりに動いた。(因みに、この時、米国のイラク戦争に明確に反対した国は、ロシアであり、中国、ベトナム、そして仏、独だけだった) この時、確かに世界各地で反戦運動が展開されたが、今のようにメディアもこぞって「反米」「反ブッシュ」を叫んだか! 「悪魔のブッシュ」を叫んだか‼ 否!である。それともナニか???……イラク人の悲しみは、ウクライナ人の悲しみよりも軽い、とでもいうのであろうか‼

 🔷「侵略の定義は定まっていない」という日本政府!

日本政府も然りだ。イラク戦争への加担もそうだが、つい70数年前の朝鮮植民地支配、そして日中戦争・アジア太平洋戦争について、これを明確に「侵略」と規定しているか!

安倍晋三政権に至っては、侵略戦争を謝罪した村山富市首相談話について「内閣としてそのまま継承しているわけではない」と言い、「侵略という定義は学会的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」と述べ、さらに国会質問主意書への答弁では、同様「国際法上のについては確立された定義を含めお答えすることは困難であり、確立された定義があるとは承知していない」と。

これは、以降の外務省の公式見解にもなっていて、岸田政権でも修正されていない。ならば、なぜプーチン・ロシアの戦争を「侵略」と規定できるのか。

米日両政権の言う「ロシアのウクライナ侵略」の白々しさ、手前勝手さには辟易する。例えは適切ではないが「自分がやれば恋愛、他人がやれば不倫」の類よりも、もっと酷く醜い。

 2,米のイラク侵略や日本のアジア侵略は、被害者側には、一切の責任(侵略される原因)は無いが、ロシアのウクライナ侵略は、ウクライナ政権を含む米国・NATO側に相応の責任(原因)がある!

ロシアのウクライナ侵略には、ウクライナを含め米国・NATO西側にも責任(原因)がある。むろん、前述したようにどのような理由があろうとも、それが侵略である以上、その軍事行動を正当化できない。そのことを前提にした上で、なぜロシアはウクライナ侵攻を行ったかについて考えなければならない。この戦争の根本的解決(原因を取り除くために)にもそれが必要だ。

問題はやはり、米国のNATOの東方への拡大政策にある。

 🔷ワルシャワ条約機構は解体したが、NATOは残した (略)

 🔷二つの宣言と『悪魔』プーチンの発言!

この動きに対してロシア側は、一定の‟制約”に動いてきた。それが次の二つの宣言である。1999年に署名した欧州安全保障協力機構(OSCE)による「イスタンブール首脳宣言」と2010年の「アスタナ首脳宣言」である。

日本にはあまり馴染みのないこの欧州安全保障協力機構(OSCE)は、冷戦終結後の全ヨーロッパでの紛争防止や紛争の解決へ向けた機関として生まれ、現在、57ヵ国、米国やウクライナはむろん、ロシアも加盟している。

OSCEで出された上記二つの宣言の共通した約束は、「各国は、軍事同盟を結ぶ選択・変更の権利を有するとともに、各国は中立の権利も有する。同時に、参加国は、他国の安全保障を犠牲にする形で安全保障を強化しない。」なっている。当然この宣言には米国やNATO諸国そしてロシアも署名している。

 

実は、この間、ロシア側が米国・NATO側に対しての批判の根拠となっているのが、上記下線部分である。いわく「この宣言にある約束は、法的拘束力がありそれを遵守すべきだ。米国・NATOはそれを守っていない。ロシアの安全保障に脅威をもたらす形で、ウクライナのNATO加盟誘導、及び軍事力のウクライナ駐留とミサイル配備を行っている」と。

『悪魔』プーチンの発言は、次のように明快だ。

――「米国・NATOの軍事ブロックは、軍事施設・基地を当方に1インチ たりとも拡大しないという約束を、破った(1991,3,6「NATO 東方不拡大」についての米英仏独外相ボン会議合意、及び,90,2,9 ベーカー米国務長官のゴルバチョフソ連大統領への「 NATO 東方不拡大」の約束の反故)。今日、 NATOはポーランド、ルーマニアそしてバルト3国にいる。我々を騙したのだ。そして今、弾道ミサイル迎撃装置がルーマニアに展開され、ポーランドにも展開されようとしている。この装置はトマホークを発射できるMK-41発射装置だ。つまり、迎撃ミサイルだけではなく、ロシア領の数千キロをカバーできる攻撃ミサイルだ。これは我々の脅威ではないか。そして今、彼らは次のステップはウクライナだといっている。私の言うことを注意深く聞いてほしい。ウクライナの文書には、必要ならば武力ででもクリミアを取り戻したいと書いてある。ウクライナがNATO加盟国になれば、ポーランドやルーマニアと同じように、ウクライナに攻撃兵器が配備されるだろう。ウクライナが NATO加盟国として軍事作戦行動を開始することを想像してみてほしい。我々はどうするのか。 NATOブロックと戦うのか。明かに答えは「ノー」だ。」(2022,3,3 プーチン・ウクライナ問題記者会見『朝日』と浅井基文webサイト参照)――

要約すれば、プーチン・ロシアの要求は次の2点である。

➀米国など西側はウクライナのNATO加盟を認めない。②米国など西側はウクライナに軍事力を駐留させず、攻撃型のミサイルも配備しない、である、しかし、米国バイデンはこれを拒否しつづけてきた。それが、ロシアをしてウクライナ東南部2州の独立承認からウクライナ侵攻に踏み切らせた直接の原因となったのである。

ついでに言うならば、2015年以来、米国はウクライナとの合同軍事訓練を4回行っている。さらに、昨年8月から9月にかけて、ウクライナのゼレンスキー大統領が訪米し、バイデンとの間で軍事協力文書を結び、バイデンはウクライナに対して6000万ドルの追加軍事援助を発表した。同年10月にオースティン国防長官がウクライナを訪問し、ウクライナのNATO加盟を力説している。

仮に、米国の隣国カナダやメキシコで、ロシアが軍事演習を行い、さらにカナダやメキシコに武器援助を行ったとしたら、米国はどう思うか‼ しかも、ロシア一国ではない。世界の70%以上の軍事費を有した30ヵ国が束になり、敵対的な行動をとった時、米国はどう脅威に感ずるのか?! 答えは想像するまでもない。

しかし……だからと言ってロシアのウクライナ攻撃が許されるわけでないことは、前述して通りだ。ロシアは、直ちに戦争を停止し軍隊を引き揚げねばならない。そして、直ちに米国・NATO諸国との対話を始めるべきだ。どのように時間がかかろうとも、対話による交渉(外交)以外に解決の道はないことを強く訴えたい。そのことでの中国の役割に期待したい‼

3,「次は日本だ! 台湾が第二のウクライナになる」!? 

福田

2022年3月13日 | カテゴリー : ⑦戦争 | 投稿者 : 管理人