政治と反社会的宗教団体の関係を徹底解明せよ

2022年12月10日、「法人等による寄附の不当勧誘の防止等に関する法律」(被害者救済新法)が、自民・公明・立憲民主・維新・国民民主の賛成多数で可決・成立した。7月4日、安倍晋三元首相が銃撃され、その容疑者が統一教会(※)に恨みを持ち、広告塔的存在の安倍元首相が狙われたことが発覚。その後、統一教会への多額の寄付が原因で信者や家族が悲惨な状況に追い込まれた実態が多数明らかになったことから、被害者救済新法の制定を野党が迫り、急遽臨時国会の大きなテーマとなり成立したものである。与野党妥協の産物としてできたことから、①マインドコントロール状態と自由な意思の認定、②被害者家族の取消権の範囲、③寄付金額の上限規制など不十分な部分が多く、被害者や家族、弁護士などからは骨抜きで実効性がないとの批判もあるが、附帯決議にある「新法の適用外となる被害者」を含めた被害者救済に必要な措置を、政府は早急に進めなければならない。

※世界基督教統一神霊協会(統一教会)は、2015年に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に名称変更したが、実態は変わらないことから、本稿では「統一教会」と表記する。

さて、今回の銃撃事件をきっかけにあぶりだされた統一教会に関する問題は、大きく分けると次の二点になる。

1.憲法で「信教の自由」が保障されていることを利用して、正体隠しの勧誘や高額寄付を募るなど、「公共の福祉」に反する行為を繰り返し、困窮などの被害者を多数出していたこと。

2.国や地方の議員に接触して選挙応援等で支援し、自らの思想に基づく政策の実現を図ろうとし、議員は結果的に反社会的集団の広告塔となり、政策実現にも関与した疑いがあること。

上記「1」については、冒頭に記した「被害者救済新法」を制定するほか、文科省が宗教法人法に基づき質問権を行使し、正体隠しの勧誘やマインドコントロール下の多額寄付、宗教二世、合同結婚式、養子縁組斡旋、多額寄付金の韓国への送金などの問題を調査しており、宗教法人法上の認証取消も視野に入れている。銃撃事件の容疑者は信者ではなかったものの、多くの宗教二世は憲法が保障する信教の自由を親に制限され、幸福追求の権利も奪われていたことは許しがたく、早急な救済が求められる。

「2」の政治との関係、特に自民党と統一教会の癒着の構造は何も解明されていない。自民党現職国会議員の約半数が何らかの接点があり、その結果、政策に何らかの影響があったのではないかとの疑問は残されたままである。にもかかわらず岸田政権は、各議員の自主点検と称する曖昧な調査結果を公表しただけで収束させる構えである。

憲法20条1項及び3項は、信教の自由と政教分離について次の通り規定している。

第1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

第3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

統一教会は、その傘下にいくつもの団体を作り、反共や伝統的な家族観を訴えて巧みに議員に近づき、選挙応援をする代わりに、その思想の実現を政治家に託してきた。特に、長期政権に君臨した安倍元首相の政治思想と一致するところが大きく、国家の政策に何らかの影響があったとも考えられる。来春設置される「こども家庭庁」の名称が、当初の「こども庁」から急遽変更された経緯などが典型である。逆に韓国の徴用工補償に最も強く反発していた安倍氏が、真逆の思想(アダム国家とエバ国家)をとなえる統一教会になぜ接近していたのか。統一教会票を差配していた事実も前議員から証言されており、選挙の為なら手段を選ばない姿も垣間見える。だが、岸田首相は本人が死亡したので調査できないと拒否している。

その他、細田博之衆議院議長の細田派会長時代の関わり、下村博文元文科大臣の名称変更問題への関与、萩生田光一政調会長の密接な関係など、何ら解明されないままである。

憲法20条における政教分離主義は、「創価学会と公明党」に見られるように、宗教団体が政治に関わってはならないという解釈ではないとされるが、統一教会のような反社会的宗教団体と政治が結びつくことは、全く論外で許されない。

統一教会と政治家の関係で明らかになったのは、政治家は「来る者拒まず」、即ち票になる、あるいは選挙応援してくれる団体ならば、見境なく受け入れてしまうという危険な体質である。「関係団体との認識がなかった」という言い訳ばかりが聞こえてきたが、関係団体の運営資金と人は、統一教会が提供しているのであり、言い訳は通用しない。我々国民は、反社会的団体に関わった政治家には、選挙でNOを突きつけなければならない。

2022年12月26日 柳澤 修

アベの国葬は”国葬を見る会“と通称すべし!

アベによる“桜を見る会”は、国費を使っての、極めてプライベートな宴会に過ぎませんでした。が、この度の国葬もほぼ同じものだと断じてよいと考えます。

もし仮に、アベが国葬に相応しい人物であるとするならば、世の中には国葬にすべき人々が数え切れないほど現れて、我が国では毎日々々国葬をし続けなくてはならないと思います。いいえ、国民は全て国葬としなくては、釣り合いが取れなくなってしまうとさえ申せましょう。

敢えて乱暴な書き方をしておりますが、同じく銃撃によって殺害された“中村哲さん”などは、アベなどよりも遥かに国葬に相応しい人物でありましたし、もしもその様な形のトータルな判断基準を設定した上で、アベを国葬にするというのであれば、実際に我が国は、年がら年中国葬を繰り返さなくてはならなくなってしまうでしょう。

いずれにしても、今回のアベの国葬は、我が国の歴史における重大なる汚点となるしかないものと断言させていただきます!

勿論、今回の国葬を決めたのは岸田総理でありますし、その意味ではアベの罪ではありません。ましてや彼は悲劇的な死を遂げておりますので、私自身も死者を鞭打つつもりはないのです。が、しかし、死んだからと言って生前の罪がすべて帳消しになる訳もなく、その様な罪に対しては、きちんとケジメを付けることこそが、国家なる存在が示すべき公正な態度と考えます。

であるにも拘わらず、今回の国葬は、正に彼が仕出かした罪の数々を隠蔽し、更にはこれまでの与党政治の悪しき部分を洗い流してしまいたいという思惑が見え々々の形で執り行われようとしているものなのです!

アベという人物は、自己満足するために、徹底的に政治を私物化してまいりました。その為に手段を選ばぬやり方は、どこか統一協会的な手法に似ております。例えば、自らの命令に逆らえぬ者達のみを人事的に配置して、組織全体を牛耳ってしまおうとするやり方とかが、実によく似ております。

その手の事柄を、きちんと検証する時間があれば、この国の闇を暴き、一気にこの閉塞した状況から抜け出す切っ掛けを作り出すこともできると信じます。

だからこそ、アベの国葬などさせてはならないのです。それがマネーロンダリングならぬ、悪質政治のロンダリングを意図するものであることが明らかだからです!

国葬をすることによって、何もかもが水に流されてしまうことは、私だって思いたくありません。ですが、この国の歴史においては、暫々その様なことが起こるのです・・・。

岸田内閣の仕切りにより、感動的なセレモニーへと演出された国葬が、多くの日本人にどの様な感覚の変化を生じさせるか?私には予想し切れません・・・。多分、その為の演出は、念入りに検討されている筈です。それこそ徹底的に!

そもそも国葬とは誰のためにするものなのでしょうか?今一度乱暴な決めつけを記すことをお許し下さい・・・。それは“現行経済の為”だと思います。宗教以上にカルト化しつつある、現行の経済システムの為にです!

その様な意味からも、アベの国葬などしてはならないのです。そして、それが一部の人々の極めてプライベートな欲求に過ぎないことを知らしめる為に、アベの国葬は“桜を見る会”ならぬ“国葬を見る会”であると強調したいのです!

2022年8月30日  川村茂樹

国葬を憂う 2 時事短歌2首

                         曲木草文

憲法も法も無視した宰相を 「勇気の人」と讃えし国葬

元帥を夢見ていたか霊柩車 防衛省のみ回りしは

安倍元首相の国葬に反対する。

     前川平氏(元文科省次官)は東京新聞(7月17日)「本音のコラム」で「国葬には反対だ」と要旨、次のように書く。

 岸田首相が挙げた国葬の理由は、どれもこれも理由になっていない。「憲政史上最長」の在任期間は、国葬に値しない。「国内外から幅広い哀悼、追悼の意」というが、多くは外交辞令だ。「日米機軸の外交」は歴代首相に当てはまる。「日本経済の再生」は事実に反する。「暴力に屈せず、民主主義を守り抜く決意を示す」というが、安倍氏追悼がなぜ民主主義を守る決意表明なのか。

 私は前川氏の意見に賛成だ。

 当会の会員ブログに投稿した柳澤修氏は、

「安倍氏については、……モリ・カケ・サクラ問題では説明責任を果たさず、安保法制や秘密保護法、共謀罪など、戦前回帰的な政策を強行したことも分断の切っ掛けとなった。外交的成果も、トランプ大統領とプーチン大統領と個人的な繋がりを深めただけで、実は何もないのである。逆に最も気を配るべき極東の隣人、中国・韓国・北朝鮮との関係は、悪化したとしか思えない。……

 安倍首相名の「桜を見る会招待状」を営業ツールに使い、多額の資金を集めていたジャパンライフの詐欺被害者と、旧統一教会により家庭を崩壊された銃撃事件の容疑者は、つながる部分もある。」

 私はこの批判に賛成だ。

 その上で、私はもう一つの問題を挙げる。それは戦後最悪といわれる日韓関係の真因だ。

 懸案の徴用工訴訟で、日本政府は「徴用工をめぐる問題は日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決したことを確認しており、韓国大法院の判決は国際法違反であり、戦後の国際秩序への重大な挑戦だ」と一貫してはねつけている。

 これに対して、韓国大法院(2012年)は、日韓請求権協定(1965年)は、「サンフランシスコ講和条約に基づき両国間の財政的・民事的債権債務関係を政治的に合意により解決するためのものであり、日本の植民地支配に対する賠償を求めたものではない」と位置づけ、「請求権協定で放棄した請求権に、不法な支配による損害の賠償は含まれていない」との結論を導いている。

 つまり、日韓請求権協定は日本の植民地支配に対する賠償を求めたものではないから、今改めて、その分の損害賠償を請求するということだろう。この言い分は筋が通っており、日本はこの韓国大法院の判決を尊重すべきだ。この言い分を認めない者は、植民地支配時代への痛切な反省が欠けている。

 安倍晋三首相は2018年11月の衆議院予算委員会で「政府では『徴用工』という表現ではなく、『旧朝鮮半島出身の労働者』と言っている。(原告の)四人はいずれも『募集』に応じたものだ」としたうえで、「あり得ない判決で、国際裁判も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然と対応する」と語った。(『歴史認識 日韓の溝』19頁)

 朝鮮半島からの労働者動員は、1937年に日中戦争勃発によって不足した労働力を補うための政策だった。1939年に「募集」という形で始まり、1942年からは「官斡旋」の制度により、1944年からは「徴用=強制動員」によった。

 原告の四人は1944年以前に来日しているから徴用工ではない、と日本政府はいう。

 だが、1939年から敗戦までに朝鮮半島から動員された労働者は数十万人と推計されており、募集であれ、官斡旋であれ、必要な人員を集めるのは容易でなく、実態は強制連行だったという証言が多い。

 安倍内閣は2014年1月、教科書検定基準を改定し、それを受けて菅内閣は2021年4月、教科書における「強制連行」の表現を不適切とした。

 2002年9月、安倍氏は監房副長官として小泉純一郎首相に随行し、2004年5月ふたたび小泉訪朝に同行し、このときの強硬姿勢で「拉致の安倍」の名を挙げ、総理への道を開いた。その後、2020年9月に総理を辞任するまで16年間、拉致問題で何らの実績もあげぬまま、他方で、上記のように、朝鮮半島から数十万人の実質的強制連行の歴史の抹消に専念した。

 今日、戦後最悪の日韓関係を招いた真因はここにある。拉致問題は被害者家族にとっては痛切な事件であるが、同じ思いを朝鮮半島の数十万の被害者家族も抱いたのだ。その規模は4桁違う。

 村山富市首相が「植民地支配と侵略」につきアジア諸国にお詫びを表明して以後、この謙虚で初々しい態度は、橋本竜太郎、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦と9次の内閣に引き継がれたが、安倍晋三の8年8ヶ月にわたる内閣の間に、傲慢で、強面、厚化粧の態度に一変した。

 この変貌が、戦後最悪の日韓関係をもたらしており、安倍元首相の罪過は深い。

 安倍元首相は、「森友学園」問題で実直な公務員の死を招き、元統一教会との結びつきで凶行者を生んだ不徳の政治家だ。衆参両院でウソの証言を118回重ねながら、「信なくば立たず」と公言する二重人格者だ。

 このような不徳の政治家を国葬で遇すれば、現世代は恥を千載に残すだろう。

 安倍元首相国葬案を廃棄させよう。

 2020年5月「検察庁法改正案」は、ツイッター900万件の抗議で断念させた前例がある。

 故人の不慮の死は静かに悼めばよい。

2022年7月22日
福田玲三

安倍元首相暗殺事件と国葬

2022年7月8日(金)、奈良市で参議員選の応援演説中、銃撃され亡くなった安倍元首相については、彼が改憲論者であり、戦前回帰的な思想を持っていたとしても、むごたらしい犯罪事件であり、容疑者にどんな理由があるにせよ、決して許されるものではない。ご本人及びご家族の無念はどれほどのものか計り知れない。

そのうえで、あえて言わなければならないのは、岸田内閣が故安倍晋三氏を国葬で遇すると早々に決めたことである。天皇以外で国葬となったのは戦後の講和条約を結んだ吉田茂氏のみ。佐藤栄作氏や中曽根康弘氏の死去に際しても、自民党の一部から国葬で遇するべしとの声が上がったようであるが、結局はならなかった。選挙中に亡くなった大平正芳氏も、勿論国葬ではない。岸田首相は、安倍氏が歴代最長の在任期間を記録し、多大な業績を残したこと、海外からの弔意が多いこと、選挙期間中の銃撃というテロ行為に対して、民主主義国日本の姿勢を示すためとの理由をあげたが、安倍氏については、国民世論的には様々な意見があり、ある種分断を招いたとの指摘もある。モリ・カケ・サクラ問題では説明責任を果たさず、安保法制や秘密保護法、共謀罪など、戦前回帰的な政策を強行したことも分断の切っ掛けとなった。外交的成果も、トランプ大統領とプーチン大統領との個人的な繋がりを深めただけで、実は何もないのである。逆に最も気を配るべき極東の隣人、中国・韓国・北朝鮮との関係は、悪化したとしか思えない。

国葬により安倍氏を神格化し、過去の闇の部分をすべてチャラにしたいという、自民党の清話会や保守派からの相当な圧力があったことが推測される。

安倍首相名の「桜を見る会招待状」を営業ツールに使い、多額の資金を集めていたジャパンライフの詐欺被害者と、旧統一教会により家庭を崩壊された銃撃事件の容疑者は、つながる部分もある。安倍氏にそんな意図はなかったかもしれないが、首相という地位は、いわば日本国の「最高権力者=最も信頼すべき人」という存在であり、広告塔となるリスクがある限り、細心の注意が必要な役職なのである。そうしたことを怠った安倍氏を、早々に国葬に遇すると決めるべきではなかった。少なくとも、世論の動向をもう少し観察すべきだったのではないか。

銃撃で不慮の死となったことの無念さは認めつつ、今回の決定は残念である。

2022.07.17 栁澤 修

公文書改竄の国家賠償請求訴訟 国が全額支払いで真相解明から逃げる

森友事件での公文書改竄で自死した赤木俊夫さんの妻雅子さんが、事件の真相を知るために国と当時の理財局長を相手どり損害賠償を求めている裁判で、12月15日に国は突如、賠償金を全額支払うことを明らかにし、裁判が終わることになった。賠償請求金額は1億700万円。

国賠訴訟は、その90%が原告敗訴となるのが通例で、死刑冤罪事件でも裁判で認められないケースがほとんど。森友事件でも、財務省の公文書改竄に対して検察は不起訴としており、改竄に犯罪性を認めてはいないし、財務省も身内調査で解決済みとしているだけで、再調査には応じていない。1億700万円の原資は税金であり、国はそう簡単に全額認諾などという解決方法は出来ないはずであり、原告もお金を欲しているわけではない。にもかかわらず、全額支払いを認めて早く裁判を終結したいのは、真相を闇に葬りたいという政府の下心の表れであり、何とも納得しがたい態度である。

雅子さんは、こういった国の態度に「ふざけんなと思う」「夫がなぜ死んだのかを知りたい」「また国に殺された」と憤りをあらわにした。

かつて郵便不正事件で冤罪被害者の村木厚子氏が、同じく事件の真相を知るために国賠訴訟を提起したものの、議論を嫌った国が簡単に全額、3,770万円の支払いを認諾し、決着したこともあった。当時村木氏は、「簡単に認諾されないように、もっと請求金額を大きくして、真相を明らかにしたかった」と語っていた。

この例があったことから、雅子さんは1億円以上の請求をしたにもかかわらず、国の態度は村木氏の時と同じである。自分たちに都合の悪い国賠訴訟は簡単に認諾し、そうでないものはとことん裁判で争い、判例に沿って裁判所は原告敗訴の判決を下すというパターンがいかに多いことか。

雅子さんは、元理財局長の佐川宣寿氏にも550万円の損害賠償を求めており、こちらはまだ続くことになるが、少しでも真相が明らかになることを願いたい。

2021年12月15日 柳澤 修

安倍元首相の台湾有事発言は許されない

安倍晋三元首相は12月1日、台湾で開かれたシンポジウムに日本からオンライン参加し、緊張が高まる中台関係で、「台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本の有事であり、日米同盟の有事でもある。この点の認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」と語った。(『朝日』11月2日)

これに対して中国外務省は「中国内政に粗暴に干渉するものであり、日本は歴史を反省し台湾独立勢力に誤ったシグナルを送ってはならない」と強く抗議した。

第2次世界大戦で日本が敗北し、1972年に田中角栄総理が中国を訪問して国交を回復した際の「日中共同声明」(1972年)の前文で、「日本側は、過去に日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」と記し、その第3条には「台湾が中国の領土の不可分の一部であることを、日本は理解し、尊重する」旨、さらには「満州、台湾および澎湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還する」旨が述べられている。

1978年に結ばれた「日中平和友好条約」でも、この「共同声明が両国間の平和友好関係の基礎となるべきものであること」が明記されている。
安倍元首相には、この責任も反省のかけらもない。
かつて、ナチスの官僚、ゲーリングは「民衆などというものは、いつでも支配者の思いどおりになる。……攻撃されるぞと恐怖をあおり、平和主義者の奴等には愛国心がなく、国を危険に晒していると非難しておけばいい。このやり方は、どこの国でもうまくいく」と述べた。

わが国の例でも、第2次安倍政権下で自民党は「敵基地攻撃能力の検討」を提言してきたが、さる10月に行われた衆院総選挙ではこの能力の「保有」を公約としてかかげ、攻撃されるぞと絶えず恐怖をあおっている。

この一連の動きの中における安倍元首相の台湾有事発言も、恐怖をあおって国民を脅し、ゆくゆくは「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こる」(憲法前文)ことにつながるものものであり、けっして許されるものではない。
私たちが願うのは不安ではなく安心、戦争ではなく平和だ。
福田玲三 (12月4日)

総務省幹部官僚違法接待問題と菅義偉首相の責任

「(長男は)今もう40(歳)ぐらいですよ。私は普段ほとんど会ってないですよ。私の長男と結びつけるちゅうのは、いくらなんでもおかしいんじゃないでしょうか。私、完全に別人格ですからね、もう」

これは、2月4日の衆議院予算委員会で、首相の長男が東北新社の社員として接待に同席していたことに対して、顔を強張らせながら、感情をあらわにして言い放った答弁である。

違法接待疑惑が明るみに出たのは、同日発売の週刊文春が報じた記事。昨年10月~12月にかけて4回、総務省の幹部官僚4人がそれぞれ個別に、東北新社から高級飲食店で接待を受け、お土産やタクシー券を手渡している場面が写真付きで報じられた。この時期は、飲食の自粛、不要不急の外出を控えるように、都知事が訴えていた時期とも重なる。その後の総務省の調査で、この4人が2015年以降、12回にわたって接待を受けており、そのすべての席に首相の長男が同席していたことが明らかになった。

国家公務員は、「国家公務員倫理法」で利害関係者からの金品の受領や接待を固く禁じられているが、衛星放送事業は総務省の許認可が必要であり、その事業を大きな柱とする東北新社が利害関係者にあたることを、監督官庁の担当局長が知らないはずがない。

国家公務員倫理法 第3条第3項

「職員は、法律により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等の国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならないこと。」

週刊誌報道後国会での追及が始まったが、与党は4人の官僚のうち次期次官候補を含む上位2人の予算委員会出席を拒否、秋本情報流通行政局長と湯本審議官が答弁することになったが、信じられないような答弁が繰り返された。

「東北新社が利害関係者とは思っていなかった」

「東北新社の事業や衛星放送、CS・BSの話は出なかったと記憶している」

「東北出身者の集まりだった」、「忘年会だった」等々。

こうした虚偽答弁を覆すべく出てきたのが二発目の文春砲。秋本局長接待時の会話の録音テープが報道され、今までの答弁が虚偽であったことも明らかになった。

総務省は、2月4日の報道以来、省内調査を徹底的にやると言いながら、武田総務大臣は調査の途中にも拘らず、「行政がゆがめられたことは一切ない」と言い切るなど、身内の調査の甘さが図らずも露呈した。

上述の通り、今回の違法接待は極めて分かりやすい構図で、贈収賄の疑いも濃厚な国家公務員倫理法違反であるが、菅政権は早々に二人の更迭人事を行い、国会に出席させない戦術をとることが懸念され、更には4人の官僚の懲戒処分で終結を図ることも予想される。

しかし、この問題の核心は、何故幹部官僚がリスクを冒してまで易々と接待に応じていたかである。菅首相は、小泉政権時に総務副大臣となり、総務省人事の権限を握ったとされ、第一次安倍政権では総務大臣に就任、第二次安倍政権でも官房長官として総務省に絶大な影響力を持ってきた。そんな菅氏が総務大臣就任時、大臣の政務秘書官に当時定職がなかった25歳の長男を起用したのである。その後、菅氏と同郷である東北新社創業者に依頼して、同社に入社したとされ、いまでは40歳にして本社部長兼子会社「囲碁・将棋チャンネル」取締役を務める。こうした経緯を考えると、「自助」を重視する菅氏が、身内に対しては自分の地位と権力を使って「公助」する構図が浮かび上がる。「息子は別人格」などと、堂々と言える資格はないと考えるのが庶民の感覚である。

森友問題における佐川理財局長と同じく、総務官僚もまた父親の影響力を恐れて、息子の誘いを断ることができず、リスクを冒して接待に応じていた可能性は否定できない。

菅首相は、東北新社社長から個人献金として2012年~2018年の間で500万円受領しており、パーティー券も受領を肯定している。更には、会食も行っているが、時期については記憶が定かでない旨、曖昧な回答しかしていない。

この接待疑惑問題は、官僚の贈収賄や倫理問題だけではなく、首相という最高位の公務員の倫理、または犯罪が問われているといっても過言ではない。

菅首相には是非とも憲法第15条第2項を再認識してもらい、自身の責任を明らかにしてほしい。

「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」

国会と司法が試されるとき

「桜を見る会前夜祭」で、安倍前首相の事務所が会費を補填していたことが、東京地検特捜部の捜査で明らかになった。そもそも都内一流ホテルで会費5,000円、領収書は参加者個人にホテルが発行、明細書も何ももらっていないなど、信じがたい国会答弁を繰り返してきた前首相だが、すべてが虚偽であったことが白日の下にさらされつつある。こうした国会や国民を馬鹿にした答弁を繰り返してきた前首相がとる戦術が、「秘書が独断でやったことで、知らなかった」であることは容易に想像できる。そして、検察は「政治資金規正法も公職選挙法も不起訴」とする方向との報道も取りざたされる。果たしてそれでいいのか。国会は国民の負託を受けた国権の最高機関であるが、国会及び国民は行政の最高権力者の嘘に1年近く騙され続けてきたのである。

野党は国会で安倍前首相の証人喚問を要求しているが、菅首相もまた同罪であることから、前首相の負の遺産を見事に継承し、国会を愚弄した答弁を続けるだけで、全く信用できない存在。

しかし、かつてはリクルート事件で中曽根元首相、佐川急便事件で竹下元首相が証人喚問されたこともあり、自民党政権時代であっても、首相経験者の証人喚問の実績がある。自民党議員もこの1年間騙されてきたこと、そしてモリ・カケ・サクラ・定年延長など、数々の政治の私物化疑惑のある安倍前首相の証人喚問に応じることは、国会議員の矜持を示す時でもある。行政監視機関としての国会の機能が試されている。

そして検察・裁判所の対応である。かつて政界のドンと言われた金丸信が、5億円の闇献金問題が明るみになったが、東京地検特捜部は金丸に事情聴取もせずに略式起訴し、東京地裁が20万円の略式命令をしたことから、その刑罰の軽さに関して司法が世論の大反発を受けたことがあった。その反発を受け、その後検察は脱税で金丸を逮捕・起訴せざるを得なくなった。今回安倍前首相を不起訴にするような判断は決して許されるものではない。

安倍前首相は9月に体調不良で突然辞任したが、最近はすこぶる元気だったとのこと。現役首相で前夜祭問題の真相が発覚することを恐れたための辞任とも推測される。安倍前首相には、議員辞職という形で政治責任を取ってほしいものである。

2020.11.29 栁澤

菅首相は日本学術会議が推薦した会員候補6名の任命拒否を直ちに撤回せよ

日本学術会議(以下学術会議)が会員候補として推薦した105名のうち、6名が政府に任命拒否された事実が10月1日明らかになった。学術会議会員の定数は210名、任期が6年。3年ごとに半数が入れ替わることになっており、次の会員候補は学術会議が推薦し、首相がその推薦に基づき任命することになっている。

今回の問題における日本学術会議法(以下「法」という)の関係条文は次の通りである。

第1条第2   日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。

第3    日本学術会議は、独立して左の職務を行う。(以下略)

第5条    日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。(以下略)

第7条第2項 会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する

第17      日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする

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