政治と反社会的宗教団体の関係を徹底解明せよ

2022年12月10日、「法人等による寄附の不当勧誘の防止等に関する法律」(被害者救済新法)が、自民・公明・立憲民主・維新・国民民主の賛成多数で可決・成立した。7月4日、安倍晋三元首相が銃撃され、その容疑者が統一教会(※)に恨みを持ち、広告塔的存在の安倍元首相が狙われたことが発覚。その後、統一教会への多額の寄付が原因で信者や家族が悲惨な状況に追い込まれた実態が多数明らかになったことから、被害者救済新法の制定を野党が迫り、急遽臨時国会の大きなテーマとなり成立したものである。与野党妥協の産物としてできたことから、①マインドコントロール状態と自由な意思の認定、②被害者家族の取消権の範囲、③寄付金額の上限規制など不十分な部分が多く、被害者や家族、弁護士などからは骨抜きで実効性がないとの批判もあるが、附帯決議にある「新法の適用外となる被害者」を含めた被害者救済に必要な措置を、政府は早急に進めなければならない。

※世界基督教統一神霊協会(統一教会)は、2015年に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に名称変更したが、実態は変わらないことから、本稿では「統一教会」と表記する。

さて、今回の銃撃事件をきっかけにあぶりだされた統一教会に関する問題は、大きく分けると次の二点になる。

1.憲法で「信教の自由」が保障されていることを利用して、正体隠しの勧誘や高額寄付を募るなど、「公共の福祉」に反する行為を繰り返し、困窮などの被害者を多数出していたこと。

2.国や地方の議員に接触して選挙応援等で支援し、自らの思想に基づく政策の実現を図ろうとし、議員は結果的に反社会的集団の広告塔となり、政策実現にも関与した疑いがあること。

上記「1」については、冒頭に記した「被害者救済新法」を制定するほか、文科省が宗教法人法に基づき質問権を行使し、正体隠しの勧誘やマインドコントロール下の多額寄付、宗教二世、合同結婚式、養子縁組斡旋、多額寄付金の韓国への送金などの問題を調査しており、宗教法人法上の認証取消も視野に入れている。銃撃事件の容疑者は信者ではなかったものの、多くの宗教二世は憲法が保障する信教の自由を親に制限され、幸福追求の権利も奪われていたことは許しがたく、早急な救済が求められる。

「2」の政治との関係、特に自民党と統一教会の癒着の構造は何も解明されていない。自民党現職国会議員の約半数が何らかの接点があり、その結果、政策に何らかの影響があったのではないかとの疑問は残されたままである。にもかかわらず岸田政権は、各議員の自主点検と称する曖昧な調査結果を公表しただけで収束させる構えである。

憲法20条1項及び3項は、信教の自由と政教分離について次の通り規定している。

第1項 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

第3項 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

統一教会は、その傘下にいくつもの団体を作り、反共や伝統的な家族観を訴えて巧みに議員に近づき、選挙応援をする代わりに、その思想の実現を政治家に託してきた。特に、長期政権に君臨した安倍元首相の政治思想と一致するところが大きく、国家の政策に何らかの影響があったとも考えられる。来春設置される「こども家庭庁」の名称が、当初の「こども庁」から急遽変更された経緯などが典型である。逆に韓国の徴用工補償に最も強く反発していた安倍氏が、真逆の思想(アダム国家とエバ国家)をとなえる統一教会になぜ接近していたのか。統一教会票を差配していた事実も前議員から証言されており、選挙の為なら手段を選ばない姿も垣間見える。だが、岸田首相は本人が死亡したので調査できないと拒否している。

その他、細田博之衆議院議長の細田派会長時代の関わり、下村博文元文科大臣の名称変更問題への関与、萩生田光一政調会長の密接な関係など、何ら解明されないままである。

憲法20条における政教分離主義は、「創価学会と公明党」に見られるように、宗教団体が政治に関わってはならないという解釈ではないとされるが、統一教会のような反社会的宗教団体と政治が結びつくことは、全く論外で許されない。

統一教会と政治家の関係で明らかになったのは、政治家は「来る者拒まず」、即ち票になる、あるいは選挙応援してくれる団体ならば、見境なく受け入れてしまうという危険な体質である。「関係団体との認識がなかった」という言い訳ばかりが聞こえてきたが、関係団体の運営資金と人は、統一教会が提供しているのであり、言い訳は通用しない。我々国民は、反社会的団体に関わった政治家には、選挙でNOを突きつけなければならない。

2022年12月26日 柳澤 修

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2022年12月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : o-yanagisawa