緊急警告040号       新型コロナを憲法への「緊急事態条項」導入に繋げてはならない

新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づく緊急事態宣言が4月7日に7都府県に発せられ、4月17日には全国に拡大、さらに5月末までの延長が決定された。日本においては、PCR検査の絶対数が圧倒的に少なく、発表されている感染者数・死亡者数が信頼できる数値であるかに大きな疑問があり、はたして「感染拡大を回避し、減少に転じさせることができた」(5月4日安倍首相記者会見)と言い得るのか定かではない。

自民党内では、今回のコロナショックをチャンスと見て、日本での感染者発生初期のころから憲法への「緊急事態条項」付加の改憲論議が高まっており、一部野党にも呼び掛けてきた。

そして5月3日の憲法記念日、安倍首相は自民党総裁名で日本会議系の改憲団体向けに例年通りビデオメッセージを送った。その内容は、私たちが警戒していた通り、現下の新型コロナ危機を前提に、「緊急事態において、国家や国民がどのような役割を果たし国難を乗り越えていくべきか、そのことを憲法にどのように位置づけるか、極めて重く大切な課題だ」と訴えるものであり、引き続き任期中の改憲を訴えた。まさに『ショック・ドクトリン』を地で行く、新型コロナの混乱に乗じた発言である。

当会緊急警告でも何度か発しているが、自民党憲法草案における「緊急事態条項」の基本は、時の政権が緊急事態と認定した事象に対して政令一本で基本的人権を制限できるようにするというもので、国権の最高機関たる国会は完全に無視される。安倍発言の狙いは、当時もっとも先進的な人権規定を持っていたといわれたワイマール憲法下、ナチスを生んだドイツのような独裁を許しかねない極めて危険な代物であり、決して憲法に付加すべきものではない。

4月14日の衆議院厚生労働委員会において、改憲に前向きな日本維新の会の藤田文武議員が質問に立ち、「新型コロナの緊急事態のため一般質疑はしません。緊急事態では新型コロナ問題以外の法案審議は先送るべし」などと発言し、35分の持ち時間のところ3分で質疑を終了した。国民の負託に応えるべき国会議員が自らの存在を否定し、緊急事態時は余計な国会審議はするな、政府に協力しろ、と暗に主張しているかのようだった。

緊急事態が発生した際に警戒し注視しなければならないのは、このような考えだ。メディアの報道もコロナ一色のなか、政府への同調圧力が国民に蔓延し、「緊急事態条項やむなし」といった世論が高じてしまうことが最も危険なことである。

そうならないために、新型コロナへの危機対応と憲法の緊急事態条項は全く別物であることを、国民がひろく認識できるよう国会やメディアが日本国憲法の理念のもとに正常に機能することが求められている。

新型コロナ感染拡大と経済の疲弊、国民の恐怖と不安に乗じた安倍政治の「緊急事態条項」導入の動きを断じて許してはならない。
(2020年5月4日)

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