自民党の安倍晋三元首相は2月27日の民法テレビ番組で、「北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部が採用している、米国の核兵器を自国領土内に配備して共同運用する“核共有”政策について、日本でも議論すべきだ」との考えを示し、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ「世界の安全がどのように守られているのか。現実の議論をタブー視してはならない」と述べた。(2022.02.27共同通信)
ロシアのウクライナ侵攻は、主権国家を武力で圧殺する蛮行である。しかも、自国の核兵器使用も辞さない脅しをかけ、国際社会を威嚇する行為は、ロシアにとって危惧すべきNATOの「東方拡大」という要因があったにせよ、国連憲章、国際法破壊への挑戦であり、決して許容できるものではない。
すでにウクライナの民間人死者が2千人(ウクライナ非常事態庁発表、日テレNEWS 3月3日)、ウクライナ・ロシア軍双方の兵士の死者3千人超(共同通信 3月3日)、近隣諸国への避難民は136万人 続きを読む →
「ふざけんなと思う、夫がなぜ死んだのかを知りたい、また国に殺された」
森友学園問題での財務省による公文書改竄事件で、改竄を強要され、追い詰められ自死した赤木俊夫さんの妻雅子さんが、事件の真相を知るために国を相手どり、損害賠償を求めている訴訟。証人尋問等、今後の裁判の進め方について、非公開で開催された2021年12月15日の進行協議の場で、国は突如請求を「認諾」し、賠償金を全額支払うことを明らかにした。雅子さんは、刑事事件として捜査していた大阪地検が、値引きによる背任行為と公文書改竄行為をいずれも不起訴とし、更に財務省に再調査を依頼しても拒否され続けたため、「真相の解明」の最後の手段として、国家賠償請求訴訟に訴えたが、国は賠償請求金額1億700万円全額を支払うことで、真相を闇に葬る選択をしたのである。冒頭の言葉は、国の「認諾」に対する雅子さんの無念の叫びである。
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去る12月6日に開会された臨時国会の所信表明で岸田文雄首相は「国民の命と暮らしを守るため、いわゆる敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化していきます」と述べた。
当会は先に緊急警告044号(2021年8月15日)で「専守防衛を否定する敵基地攻撃能力の保有は許されない」と批判したが、今回改めて首相のこの所信表明に抗議する。
この「敵」というのが中国か北朝鮮か明言を避けているが、この「攻撃能力」は常識的に先制攻撃と解されており、わが国の憲法上決して許されるものではない。
与党の公明党は否定的な立場を取っており(朝日12月7日)、自民党内でも第2次安倍政権 続きを読む →
安倍晋三元首相は去る12月1日、台湾で開かれたシンポジウムに日本からオンライン参加し、緊張が高まる中台関係で、「台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本の有事であり、日米同盟の有事でもある。この点の認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」と語った。(朝日11月2日)
これに対して中国外務省は「中国内政に粗暴に干渉するものであり、日本は歴史を反省し台湾独立勢力に誤ったシグナルを送ってはならない」と強く抗議した。
日本は1895年に、清国内の不統一に乗じて日清戦争に勝利し、台湾を割譲させた。その 続きを読む →
文部科学省は9月8日、慰安婦問題や第2次大戦中の朝鮮半島からの徴用を巡る教科書の記述について、教科書会社5社から「従軍慰安婦」「強制連行」との記述の削除や変更の訂正申請があり、同日付で承認したと明らかにした。政府は4月、「従軍慰安婦」という表現は誤解を招く恐れがあるとして、単に「慰安婦」とするのが適切とする答弁書を閣議決定。朝鮮半島から日本本土への労働者の動員を「強制連行」とひとくくりにする表現も適切でないとした。(2021.09.08日経新聞電子版)
菅内閣は、2021年4月27日の定例閣議において、日本維新の会、馬場伸幸議員の「従軍慰安婦」や「強制連行」「強制労働」という表現の不適切性を訴えた質問主意書をそのまま是認した答弁書で、「従軍慰安婦」は単に「慰安婦」、「強制連行」は「徴用」の 続きを読む →
2021年8月3日、神戸地裁は旧優生保護法(以下「旧法」)の下で、障碍を理由に不妊手術(以下「優生手術」)を強制的に実施された5人の国家賠償(以下「国賠」)訴訟の判決で、旧法を違憲(憲法13条、14条、24条違反)と指摘し、国会議員が速やかに優生条項を改廃しなかった「立法不作為」を違法とする初めての判断を示し、原告に憲法17条で保障された国賠請求の権利があることを認めた。ただし、不法行為から20年が経過すれば請求権が消滅するという民法の除斥期間が経過していることを理由に国賠は却下した。(2021.08.04朝日新聞)
旧法は、らい予防法と同じく、国家による人権侵害を正当化してきた悪法である。旧法が施行されたのは1948年であり、「基本的人権の尊重」を高らかに謳った日本国憲法が施行された1947年の翌年であ 続きを読む →
2021年6月23日、最高裁大法廷は、夫婦同姓を強要する民法750条及び戸籍法74条1号が、憲法24条に違反するものではないとして、原告らの訴えを退けた。
原告である事実婚カップル3組の訴えは、それぞれが同意して別姓で婚姻届けを提出したが、役所が民法750条及び戸籍法74条により受理しなかったことから、憲法24条で保障された「婚姻の自由」及び「法の下の平等」を定めた憲法14条に反するとして、憲法判断を求めた訴訟である。
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「この土地・建物は米軍辺野古基地建設反対運動の拠点になっている可能性があるので、施設の所有者や利用者の個人情報や利用状況を調査し、利用を制限する」
こんなことが堂々とできるような危険性のある法律が、今国会で自公与党と一部野党によって強行成立させられた。
「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「重要土地利用規制法」)がその法律で、会期最終日の6月16日に参議院で可決・成立した。
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今年3月に名古屋出入国在留管理局の収容施設でスリランカ人女性が亡くなり、その死亡経緯に不審な点があることから支援団体が法務省に報告を求め、中間報告が公表された際の記事である。頻繁に面会していた支援団体は、面会のたびに体調が悪くなっていることから、「点滴を打ってほしい」と訴えていたとの記事もあった。(2021.4.8朝日新聞)
収容施設が適切な医療処置をとっていなかった疑いが出ており、国会でも問題になっている。今国会で法務省は、「出入国管理及び難民認定法」(入管法)改悪案を提出し、会期中の成立を目指しているが、外国人を含めた人権擁護を所管する省庁である法務省及び出入国在留管理庁(入管庁)の人権に対する姿勢が問われている。
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去る 2 月 1 日に中国が海警法を施行したことを機に、尖閣諸島沖に中国海警局の公船が侵入 したというニュースが相次いでいる。日本政府は 2 月 25 日、外国公船が尖閣諸島への「上陸 を目的として島に接近した場合」(読売・2/26)「危害射撃」が可能になる場合があるとの見解 を示すまでに至った。
尖閣をめぐり日中間の緊張が高まっている今、この問題の経緯を振り返る必要があろう。
1972 年、田中角栄首相が訪中して日中国交を樹立した際、周恩来中国総理が「『これ(尖閣問 題)を言い出したら、双方とも言うことがいっぱいあって、首脳会談はとてもじゃないが終わ りませんよ。だから今回はこれは触れないでおきましょう』と言うと、田中首相も『それはそ うだ。じゃ、これは別の機会に』と応じ、交渉はすべて終わり日中共同声明が実現したといわ れ て いる 」〔 横浜 市立 大 学名 誉教 授の矢 吹 晋氏 によ る〕(丹 羽 宇一 郎 元中国 大 使 東洋 経済 ONLINE 2017/09/29)。 続きを読む →