緊急警告057号 安倍元首相の「台湾有事」発言は許されない

安倍晋三元首相は去る12月1日、台湾で開かれたシンポジウムに日本からオンライン参加し、緊張が高まる中台関係で、「台湾への武力侵攻は日本に対する重大な危険を引き起こす。台湾有事は日本の有事であり、日米同盟の有事でもある。この点の認識を習近平主席は断じて見誤るべきではない」と語った。(朝日11月2日)

これに対して中国外務省は「中国内政に粗暴に干渉するものであり、日本は歴史を反省し台湾独立勢力に誤ったシグナルを送ってはならない」と強く抗議した。

日本は1895年に、清国内の不統一に乗じて日清戦争に勝利し、台湾を割譲させた。その後、第2次世界大戦で日本が敗北し、1972年に田中角栄総理が中国を訪問して国交を回復した際の「日中共同声明」(1972年)で「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」とし、その第3項には「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」とある。

日本が無条件降伏し受諾したポツダム宣言(1945年)第8項は、「カイロ宣言の条項は、履行せらるべく、又、日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並びに吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」となっている。また、そのカイロ宣言(1943年)は「一九一四年の第一次世界戦争の開始以後に日本国が奪取し又は占領した太平洋におけるすべての島を日本国からはく奪すること、並びに満州、台湾及び澎湖島のような日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還すること」としている。

さらには1978年に結ばれた「日中平和友好条約」でも、前記「共同声明が両国間の平和友好関係の基礎となるべきものであること」と明記している。

安倍元首相には、日中国交正常化及び平和友好条約締結時に示した、台湾帰属に関する日本の正式見解を遵守すべき政治家としての自覚が全くなく、無責任極まりない。

かつて、ナチスの宣伝相ゲーリングは「民衆などというものは、いつでも支配者の思いどおりになる。……攻撃されるぞと恐怖をあおり、平和主義者の奴等には愛国心がなく、国を危険に晒していると非難しておけばいい。このやり方は、どこの国でもうまくいく」と述べたが、今回もその例に漏れない。

「台湾有事」となれば、2015年に強行採決された違憲の安保法制に基き集団的自衛権を行使する、と安倍元首相は予告しているのだ。その場合、日本は米国の盾となり壊滅的打撃を受けるだろう。

いま、日本が取るべき選択は、何よりも「台湾有事」を起こさせない日本独自の外交努力が求められるのであり、断じて軍事力によって中国を脅すことであってはならない。万一、たとえ「台湾有事」が起こった場合でも、絶対に米軍と一体となって参戦するようなことがあってはならない。

それにもかかわらず、安倍元首相の「台湾有事」発言は、恐怖をあおって国民を脅し、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こる」(憲法前文)ことに直結するものであり、決して許されない。

私たちが願うのは不安ではなく安心、戦争ではなく平和だ。

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