2022年3月25日札幌地裁は、2019年の参議院選挙の応援演説をしていた当時の安倍首相に対して、「安倍辞めろ」「増税反対」などのヤジを飛ばした男女が、北海道警の違法な排除を受け、憲法に保障された「言論・表現の自由を侵害された」として道に損害賠償請求した訴訟の判決で、原告の訴えを全面的に認め、88万円の賠償を命じた。
判決は表現の自由について「民主主義社会を基礎づける重要な権利であり、公共的・政治的表現の自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されるべきだ」と指摘。原告らのヤジは公共的・政治的表現行為だと認めた。さらに、警察官らは原告らのヤジが安倍氏の演説の場にそぐわないものと判断して「表現行為そのものを制限した」と結論づけた。
今国際社会の関心はウクライナ戦争で、特にロシアでは「戦争反対」を叫ぶこともできない「表現の制限」社会となっており、日本もまた太平洋戦争中は極端な「表現の制限」を経験した。また現在でも日本の表現の自由度は国際的にも低ランクと言われる中、至極真っ当な判決ながら、大ニュースにならざるを得ない現状である。
この判決の新聞社のネット報道を見ると、朝日、毎日、東京などは専門家の意見を載せるなど大きく扱っているが、読売は事実のみ、産経は記事さえ見つからない有様で、新聞社が最も関心を寄せなければならない政権批判などの「表現の自由」に対する矜持が全く感じられないのは残念としか言いようがない。
なお、排除された原告は警察官7名を刑事告発していたが、札幌地検は違法性はなかったとして不起訴処分としていた事件。全国の警察はこの判決を重く受け止めるとともに、地検の不起訴処分を根拠に、間違っても控訴などしてはならない。
2022年3月26日 柳澤 修