最近、知人から紹介されて 『私の孫たちへ――平和憲法を手離すな』と題する冊子(A5判72ページ 2016年6月23日発行)を読んだ。著者は高村譲氏。1934年(昭和9年)生まれの82歳、元小学校教諭。
「私の孫たちへ」とのタイトルにもあるように、まさに次世代のために思いを込めて書かれた一文と言える。
著者は若いころ、政治的には「呑気学生」だったようだ。戦後の「逆コース」が始まって「再軍備反対」などの激しいデモなどに少しは興味を持ったが、それでもデモは「他人事」だったと言う。そして後になって、この時に自ら行動を起こさなかったことを「悔いとして」いると言う。
こうして自分史を語りながら戦後70年の政治史を振り返り、「戦後間もなくから、日本の政治は弧を描くように、戦時中、私が経験した時代に帰り始めていた」のに、これを「食い止めることができないできた私たち世代の不甲斐なさと責任」を感じていると言う。
自らの人生の反省も踏まえながらの、次世代の子や孫たちへの切なる訴えに共感を覚える。
自費出版とのことゆえ、残部があるかどうか不明だが、関心を持たれた方は、直接下記にお問い合わせください。(草野)
横浜市泉区和泉町中央南3-14-37
高村 譲
高村譲『平和主義憲法を手離すな』を拝読しました。
内容は「今に禍根を残すもの」
「時の流れに思うこと」
「改憲草案、最も気になること」
「憲法改悪の根源”自衛隊”の歴史と歴代政権の政治姿勢」
「平和とは『戦争がなくて、世が平穏』であること」
「『一億総活躍』変じて『一億精神総一括』」
になっていて、後段になるほど筆がさえており、感銘を受けました。特に「外国から攻めてこられたらどうする」への回答として、吉田松陰と福沢諭吉の意見を反面教師として掲げ、さらに「使ったことのない脳みそを使え」と説いているところは出色でした。
評者は最近、田中彰『小国主義』(岩波新書)に、自由民権期の私擬憲法(五日市憲法草案を含む)から大正デモクラシー期の石橋湛山らによる小国主義の伏流が現日本国憲法に結実した、とあるのを見て感動を覚えました。
ひるがえって高村譲氏の冊子のような在野の著作の出現を心から歓迎します。これらが伏流となっていつか大輪の花を咲かせることを熱望しています。
福田玲三