つまみぐい憲法論

つまみ食い憲法論

 

先ごろ、機会あって、野党の国会議員100人ほどの方に、当方パンフ「日本国憲法が求める国」をお渡した。そのとき痛感したのは、国会議員の方々でさえ一部の方をのぞいて、ほとんど現日本国憲法を理解されていないという現実だ。国会議員の方々さえそうなら、国民大衆はおして知るべし、ほとんど憲法に関心がないと悟るべきだ。それはまた何年かまえの無知だった私自身の姿にも重なる。事実、大半の議員は第9条(戦争の放棄)や第25条(生存権)など、個々の身近な条項を使われている――それは大事だけれども――に過ぎないように思われる。だが、現日本国憲法が、明治の帝国憲法や自民党の改憲案と根本的に異なる点は、国民主権と基本的人権の保障であり、ついでそれは平和主義、立憲主義におよぶ。この主眼を忘れて、いくつかの条文の利用にとどまるのであれば、それは日本国憲法のつまみ食いでしかない。そうなると、この憲法の理念が、それよりもはるかに崇高で、世界でも一番進んだものであることを、政治家に、さらには広範な国民大衆に知ってもらうことが、私たちの揺るがぬ使命になろう。この点で、日本に、多くの9条の会はあっても、完全護憲を提唱したのは私たちだけである。その誇りを内に秘め、前途の困難を覚悟しつつ、地道に、遠大なこの使命達成の道を進もうではないか。

つまみぐい憲法論」への2件のフィードバック

  1. 完全護憲は個別の条文への理解の積み重ねから

    「 個人 」か「 人 」かの違い(憲法13条か自民党改憲案か)は生活に直結していた

    少し前のこちらの投稿で、憲法13条~~憲法基礎講座②~~を読みました。3月2日の参院予算委で、条文の「個人」を「人」に書き換えているのはどういう意味かとの質問に対し、首相は、「さしたる意味はないという風に承知している」と答えたとの話が紹介されていました。国民が「個人」として尊重されるのか「人」として尊重されるのかという表現の違いで一体何が問題なのか、実のところよく理解できずにいました。個人でも人でもあまり変わりないのではないかと。学問上そこに違いがあったとしても、自分の実生活にはあまり関係がないと思えばそれまでです。
      ところが、この違いは、私たちの生活にものすごく関係があるということが1冊の本を通してわかったのです。「個人」という言葉は、戦争中、軍や政府がとても嫌った言葉だったんですね。知りませんでした。その本『ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆』(山口 彊  著)には、こうありました。ーーー戦中の日本人は、戦場でも銃後でも「死を恐れるな」と叱咤され続け、…生き延びること、自分の身の安全を考えることなど、非国民であり、軟弱であり、個人主義に毒された精神の持ち主であると、あらゆる言葉を尽くして否定された。ーーー
      つまり、自民党改憲案でによって、国民が人として尊重されたとしても、個人としては尊重されないということになれば、私たちは非国民にならないよう、自分の死を恐れる前にまず、国家への忠誠を考えなくてはいけないことになる危険性があります。人として尊重されるというだけでは、恐らく最低限度の生活や制限付きの自由が保障されても、国家としての大義があれば、国民はいつでも国家に奉仕することを余儀無くされることになるでしょう。たとえ自分の良心に照らして、いやだと思っても従わざるをえなくなるかもしれません。もしこれが、おおげさな心配であると言うのであれば、個人という言葉のさげすまれた過去の事実を重視し、国民は、是非とも、「人」としてではなく「個人」として尊重されるという条文を大事にすべきだと強く思いました。
      完全護憲についてですが、憲法の条文をいつも意識するほどの余裕がない人や、特に一般人にとっては、憲法違反という言葉もまた、難しくてあまり心に響かないかもしれません。過去にどのようなつらい歴史があって、それが今は憲法のどの条文があることによって、私たちの生活は格段に良くなったのだ、憲法が違うと私たちの生活はこんなに変わってしまうのだということを経験から色々教えていただけると、完全護憲への意識も高まるのではないかと思います。
     ところで、上記の本は山口さんという方が90歳を超えて書かれたものです。戦時中の雰囲気のよくわかる、とても立派な本でした。戦後がずっと続いてほしいです。

  2. きくこさま

    ご意見有難うございました。
    山口氏の著書から引用していただきました、戦前、戦中における個人の無視の事例は身につまされます。誰の耳にも容易に入ることのできる実例です。

    たしかに「違憲」などという言葉は普通の人には無縁なものに思われるでしょう。そこに通路を開ける事例を挙げていただき感謝しています。今後ともお気づきの点をご指摘いただけるよう願っています。

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