緊急警告073号  拉致問題の解決には、まず痛切に反省せよ

年明けには拉致被害者家族の高齢化や死亡にともない、テレにはほとんど連日のように、加害者である朝鮮を難詰する家族の姿を映した。その被害者家族の心情は理解されるものの、冷静に考えなければならぬことがある。

戦時中、内地の労働者不足を補うために数十万人の朝鮮人が、「強制的」「拉致同然」(外村大『朝鮮人強制連行』岩波新書p.213)に、内地へ強制連行され、彼らは鉱山や土木事業などの危険な職場で牛馬のように働かされ、そのあげく、かなりの人々は異郷で非業の最期をとげた。

そのあまりにも哀れな身の上に同情して、彼らに接した地域住民がせめてもの慰霊として作った追悼の施設が、群馬の森におけるように、今つぎつぎと、破壊されている。日本の拉致被害者家族の悲しみが深いとしても、朝鮮半島の強制連行被害者家族数十万人の悲嘆はさらに切ないはずだ。

ふりかえれば、村山内閣時代の1995年に「植民地支配と侵略」について、さらに2002年、小泉総理と金委員長による日朝平壌宣言でも「過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明し」ていた。

だが、2015年になると一転して、安倍総理が「子や孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」という愚かな談話を発表し、ついで菅内閣は2021年、「強制連行」の表現は適切ではないとの無恥な「閣議決定」を行なって以後、異郷に朽ちた朝鮮人追悼の施設は次々に破壊され、あるいは佐渡金山などで朝鮮人に行われた強制労働の史実が当局によって隠匿されている。このような不誠実な態度に北朝鮮政府が硬化するのは当然であろう。

第一次安倍内閣以降、アメリカ帝国主義に追随し、拉致問題を種に、北朝鮮を蔑視し、敵視しはじめた愚行を今こそ改め、安倍政権以前の、現実に立脚した謙虚で誠実な態度に復帰しなければならない。

拉致問題の解決には先ず、「歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫び」を表明し、その後、具体的な交渉に入らなければならない。

このことを、拉致被害者家族を含めて、国民のすべてが理解することが必要である。憲法前文は「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と教えており、この警告は特に、拉致問題を解決するにあたって、肝要であろう。

(2025年4月5日)

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