安倍首相はさる5月3日、憲法記念日の改憲派集会に寄せたビデオメッセージで、憲法第9条1、2項を残し、自衛隊の存在を明記した条文を追加するなどの改憲案を示したうえで、2020年に改正憲法を施行する考えを表明。
ついで5月8日、衆院の予算委員会で野党の質問に答え、首相は改憲発言の真意は読売新聞のインタビューを読めと云い捨て、委員会室を騒然とさせた。
この後、11日に開かれた衆院憲法審査会の幹事懇談会で、野党に追及された自民党は、一連の安倍首相による発言は「党に向けて示したものと理解している」との法外な言い逃れに追いこまれ、さらに「2020年施行」と年限を切った発言に審査会は「縛られるものではない」と釈明して、ようやく18日に審査会の開催を取り付けた。
18日に開かれた同審査会では、野党からの批判が噴出、審査会の森英介会長(自民党)は「憲法改正の発議権を有しているのは国会で、与野党で丁寧な議論を積み重ねていかなければならない」となだめたが、野党の反発は収まらず、「国会の立法権を侵害すると同時に議事の混乱を引き起こす行為だ」、首相の提起は「憲法を根底から覆すことにほかならない」と民進、共産、社民の各議員がこもごも批判した。
さらに安倍首相は21日、ニッポン放送のラジオ収録番組で自衛隊の存在を明記する自民党の憲法改正原案を「年内にまとめて、お示しできればなと思う」と、自民党の改憲原案作りの期限まで明言した。
首相の改憲提起に対する野党の「立憲主義に反する」との批判に、首相は「まったく理解できない。私は内閣総理大臣であると同時に自民党総裁だ。第1党のリーダーとして、国民に訴えていく責任がある」と反論している。
裏を返せば安倍首相は自民党総裁であると同時に、総理大臣であり、憲法第99条により、公務員・行政府の長として憲法尊重、擁護の重責を担っている。首相の役割は、憲法に従って政治をすることだ。行政府の長が憲法審査会という立法府の審議に介入する権限はない。首相は越権を謝罪し、即時退陣せよ。