緊急警告第042号        検察庁法改悪案を廃案にせよ

「#検察庁法改正案に抗議します」
1人の女性のSNSによる#(ハッシュタグ)付きのつぶやきが、瞬く間に数百万のツイートに拡散し、新型コロナ禍でデモや集会ができない中、ネットデモが形成され、国民的なうねりとなって、検察庁法改悪案の通常国会での成立を政府に断念させた。

何故これだけ多くの国民が抗議したのか。SNSで抗議した俳優、井浦新氏の次の言葉が象徴している。

もうこれ以上、保身のために都合よく法律も政治も捻じ曲げないで下さい。この国を壊さないでください」

「モリ・カケ・桜」に代表される政治の私物化、虚偽答弁、文書の隠蔽・改竄・廃棄、安倍一強で何も言えない与党政治家と忖度官僚の増殖。そんな中、またぞろ出てきた自らの保身のための黒川検事長定年延長と検察庁法改悪問題。国民はいい加減嫌気がさしており、SNSでの拡散が引き金になり、元検事総長ら検察OBによる反対表明も相まって、世論の大きなうねりが生まれ、法案成立を断念させたのである。

コロナ禍で国民生活が大打撃を受けているさなか、安倍政権が準司法官として司法の一翼を担う検察官の独立性を損ないかねない定年延長に関する検察庁法の改悪案を国会に提出。不要不急なこの法案を成立させたい安倍政権の狙いは、今年1月、勝手に法律解釈を変更して、官邸の守護神と言われる東京高検黒川検事長を定年延長させ、これを後付けで正当化するためと言われている。
(検事長定年延長の違法性の詳細は、当会「緊急警告037号」を参照されたい)

黒川検事長の定年延長は、国家公務員法・検察庁法違反であると同時に、憲法41条と73条にも抵触している。

憲法41条:国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

憲法73条:内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。

現行検察庁法で検察官の定年年齢が明記されているにもかかわらず、内閣が唯一の立法機関である国会の承認もなく、勝手に解釈変更することは、憲法上許されない行為である。

黒川検事長問題がくすぶるなかで国会に提出されたのが検察庁法改悪案。

検察官は確かに一般職の国家公務員ではあるが、刑事事件の捜査・起訴権限を有する特別な職務であり、採用、報酬、定年等身分に関わることは検察庁法で定められ、準司法官としての独立性が保障されている。時の政権の恣意的人事で独立性を毀損する可能性のある幹部の定年延長規定が設けられることは許されないのである。

問題となった条文概要は次の通り

・検事長、検事正などの幹部は63歳で役職を降り、平の検事に戻る。ただし、検事長は内閣、検事正は法務大臣が必要と認めた場合、役職を最長3年間続けることができる。

成立断念の直後に明るみになったのが、黒川検事長自身の不祥事。

緊急事態宣言下、政府が国民に外出自粛、3密回避を強いる中、なんと3密の典型である賭け麻雀に興じたことが発覚。常習性や深夜帰宅時にハイヤーを供されていたことも明らかになった。「重大かつ複雑・困難な事件の捜査指揮のため、余人をもって代えがたい人物」のはずがこの体たらく。安倍首相、森大臣の嘘がまた白日の下にさらされた。

黒川検事長は、賭け麻雀を認め辞職したものの、法務省の処分は訓告。人事院の懲戒規則に反して、極めて生ぬるい処分で、国民の理解は到底得られない。処分にも官邸の意思が働いている可能性がある。

安倍首相は、黒川検事長定年延長は法務省が決定し、閣議請議したから承認した、検察庁法の定年延長規定案も法務省が盛り込んだものとし、すべてを法務省・検察当局の責任にする魂胆だが、いずれも安倍政権がすべて線を引き法務省に指示して、一本の線で繋がっているものである。そして未だに、解釈変更は正当に行ったとうそぶき、検察庁法改悪案も廃案になっていない。結局まだ何も解決していないのである。

首相の「閣議決定した責任は自分にある」との言葉も、過去に一度として責任を取ったことがない、極めて軽い言葉だ。

660人もの弁護士や学者が首相本人を告発した「桜を見る会前夜祭」の政治資金規正法違反問題や、河井元法務大臣夫妻の公職選挙法違反事件、カジノ汚職事件などを抱える安倍政権にとって、官邸の守護神と言われる黒川氏を何とか検事総長に、との悪だくみはあえなく頓挫した。こんな悪事は決して許されてはならないのである。

検察はいずれの事件も忖度なく捜査し、特に「桜を見る会」については、立件・起訴すべきである。黒川検事長の不祥事で傷ついた検察の名誉回復のために。

最後に、検察庁法改悪案に対して声を上げた検察OBの言葉を紹介したい。

安倍政権の勝手な法解釈変更や国会軽視は、フランスのルイ14世の言葉として伝えられる『朕は国家なり』との中世の亡霊の様な言葉を彷彿とさせる姿勢であり、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性を含んでいる。」

安倍政権の本質をつき、言い得て妙だ。

一連の検察官の問題で明らかになったのは、またしても政治の私物化と嘘の答弁、そして黒川検事長定年延長にかかわる文書の偽造疑惑である。

もうこれ以上、安倍政権に政治と民主主義を破壊させてはならない。

検察庁法改悪法案は廃案にせよ! (2020年5月22日)

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