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完全護憲の会ニュース №56 2018年8月10日

                 <例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>
              発行:完全護憲の会
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          目 次

   第55回 例会・勉強会の報告                   P.1
     別紙1 東京新聞より「社説」(7月11日・14日付)       P.1
         東京新聞より「本音のコラム」(7月15日・17日付)   P.3
     別紙2 事務局報告                      P.3
     別紙3 岡部さん追悼                     P.5
   第53回 運営・編集委員会の報告(略)              P.6

     第55回 例会・勉強会の報告

      7月22日(日)、三田いきいきプラザの会議室で開催。参加者6名、会員69名。
 司会は草野運営・編集委員長が担当。岡部共同代表ご逝去にともない、「政治現況報告」に代えて、政治の現況を代表する新聞の社説を取り上げて討議することとし、まず試みとして、『東京新聞』7月11日社説:「参院選挙の改変 民主主義の土台壊すな」、同紙7月14日付社説:「『国会改革』論 熱意と実行を注視する」ほかと「本音のコラム」:「耐えられない軽さ」(山口二郎)、「前夜の祝祭」(鎌田慧)(別紙1)を提示した。
 これらの記事について、以下の討議があった。
 「7月14日付社説を取り上げた理由は?」「自民党小泉進次郎副幹事長らの同党内若手有志が提起した『国会改革』論には、特別調査会を設置し、国政調査権を行使して事実を徹底究明することが求められており、時宜を得ている」「小泉氏は自民党の次世代を担うと目されながら、国会で政府首脳が真実を隠し、偽って、いたずらに審議を長引かせているのを、人ごとのように見逃している。そのことを脇において、国会改革論を出すのには同意できない」。
 ついで「事務局報告」(別紙2)が福田共同代表から提示された。
 勉強会では伊藤真弁護士語りおろしDVD『憲法ってなあに?憲法改正とはどういうこと?』が上映された。この語りおろしには次のような意見があった。
 「伊藤先生の話を初めて聞いて、自分をほめたくなった。私の考えとすっかり一致していた」「伊藤弁護士は自衛隊に縛りをかけているが、自衛隊の存在を否認していない。この限度が必要だ。完全に否定すれば、世論は改憲に向かうだろう」「自衛隊を専守防衛で縛ればよい。非武装・中立では、世論の流れに抵抗できない」。

<別紙1>  東京新聞より「社説」(7月11日・14日付)

◆社説1:「参院選挙の改変 民主主義の土台壊すな」(7月11日付より)

 政権与党の傲慢(ごうまん)さが極まったのではないか。自民党が今国会成立を目指す参院選挙制度改革案。民主主義の土台である選挙制度を、自党の都合を優先して強引に変えることが許されてはならない。
 これほど露骨な選挙制度の改変が、かつてあっただろうか。自民党が提出し、参院政治倫理・選挙制度特別委員会で審議されている公職選挙法改正案である。
 参院議員定数を埼玉県選挙区で二(三年ごとの改選数では一)、比例代表で四(同二)増やし、比例代表の一部に、各党が定めた順位に従って当選者を決める「特定枠」を導入する内容だ。
 「一票の格差」是正のための定数増を一概には否定しないが、依然、三倍近い格差が残る。
 特定枠は提案した自民党の動機がそもそも不純だ。二〇一六年の前回参院選から「合区」が導入された「鳥取・島根」と「徳島・高知」両選挙区で公認に漏れた現職議員を比例で救済する狙いだからだ。自党の議席維持を優先する党利党略と批判されて当然である。
 国会は三年前の前回改正で、一九年の参院選に向けて「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする」と改正法の付則に明記し、抜本改革を約束していた。
 最高裁が前回一六年参院選での格差三・〇八倍を「合憲」と判断したのも、抜本改革という国会の意思を評価したためだろう。
 国会は、国民との約束である抜本改革を怠ったばかりか、司法判断をも顧みない高慢さである。
 伊達忠一参院議長も役割を果たしたとは言えない。野党側が求めていたあっせん案の取りまとめを拒み、各党に法案提出を促し、審議するよう求めただけだからだ。
 確かに、選挙制度をめぐる各党間の隔たりは大きく、意見を集約し、各党が受け入れ可能な案を提示するのは容易ではない。
 しかし、困難な仕事に取り組んでこその議長ではないか。数に勝る自民党案の成立を容認するだけでは、三権の長としての責任の放棄にほかならない。
 自民党はきょうにも参院特別委で可決し、二十二日までの会期内成立を図る構えだが、民意を正しく測るための選挙制度を幅広い合意もなく、拙速に決めてはならない。
 審議を通じて各党案も明らかになった。自民党案の今国会成立は見送り、秋の臨時国会で仕切り直しすべきだ。周知期間は短くなっても、真剣な議論の末での結論なら、有権者の理解も得られる。

◆社説2:「国会改革」論 熱意と実行を注視する(7月14日付より)

 与野党の中堅・若手議員の間で国会論戦の在り方を見直すべきだとの声が高まっている。疑惑追及は必要であり、本来の政策論議も置き去りにはできない。そのためにも「国会改革」は急務だ。
 森友、加計学園問題をはじめ次々噴出する疑惑を追及する野党側を、紋切り型答弁でかわす安倍晋三首相ら政府側。予算委員会を中心に、今国会では何度こんな光景が繰り返されたことか。
 国会の役割とは言うまでもなく法案審議だ。できるだけ多くの政府提出法案を成立させたい与党に対し、野党は自らの主張にそぐわない法案については廃案を狙う。
 与党の事前審査をへて提出される法案に修正の余地はほとんどなく、いきおい国会は与野党の日程闘争に陥る。政権絡みの不祥事は野党には最優先の攻撃材料となり、審議拒否の口実にもなる。与党は多数をもって採決を目指す。政策論議は滞り、疑惑究明も中途半端となりがちだ。
 状況打開のため「テーマごとに論戦の“車線”を振り分けよ」と提言したのが、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長ら党内若手有志の勉強会だ。
 安全保障、社会保障の展望など国家ビジョンは党首討論、個別の法案や政策は常任・特別委員会、そして疑惑の解明は特別調査会を設置し委ねる。
 調査会は、参考人・証人招致、関係機関からの資料提出などによって事実を徹底究明し、報告書を作成すると位置付けた。
 党首討論は二週に一回、国民が視聴しやすい夜間開催を提案している。
 目玉の調査会は着眼すべきところだ。国政調査権という憲法の保障する強力な権能は、今度の疑惑解明にどれほどの役に立ったか。国民はあきれもした。
 党首討論の改革も当然だ。小泉氏らの呼び掛けで発足した超党派の議員連盟「『平成のうちに』衆院改革実現会議」も十二日、党首討論を含む改革案を発表した。
 議連内では、採決の際の党議拘束をなくすべきだとの意見も出ているという。与党による法案事前審査の変革にもつながる。十分に検討してほしい。
 国会改革はどの国でも繰り返される議論だ。高まる政治不信は国会運営も一因と自認し、与野党を挙げて取り組みを急ぐときだ。若手らの動きをパフォーマンスと呼ぶのはたやすいが、国民は国会に対しその熱意と実行を見ている。

東京新聞より「本音のコラム」(7月15日・17日付)

◆本音のコラム1:「耐えられない軽さ」 山口次郎(法政大教授)(7月15日付より)

 西日本を襲った大水害は、我が国の政治の底知れぬ堕落をあぶり出している。
 七月五日夜、気象庁が今までに経験したことのない集中豪雨について警告を発しているさなかに、総理大臣、防衛大臣、官房副長官が大勢の自民党議員と議員宿舎で酒宴を催した。多くの議員がこの宴会の写真を会員制交流サイト(SNS)にあげた。
 この件について官房副長官は国会で野党議員から追及され、謝罪し、情報発信には今後気を付けると述べたとNHKニュースは報じた。百人以上の人命を奪う大災害が起ころうとしている時に危機管理の責任者が能天気に酒宴を催したことを反省するのではなく、情報発信について反省しているとはどういうことか。指導者の軽さには耐えられない思いである。
 おそらく、安倍首相の最大の関心事は九月の自民党総裁選挙で三選を果たすことであろう。そのために、自民党の議員を手なずけ、パリ祭の行事に参加する可能性を最後まで追求した。
 虚偽、捏造(ねつぞう)の内閣は、国民の生命に対する責任感まで捨て去った。このことに国民が怒らないならば、危機感を持たないならば、日本は安倍政権もろとも滅びの道を進むしかない。山体の崩壊は、政治の崩壊を暗示している。異常気象だけでなく、政治の劣化に対しても緊急警報を鳴らすべき時である。

◆本音のコラム2:「前夜の祝杯」 鎌田 慧(ルポライター)(7月17日付より)

 サッカーW杯決勝戦の高揚もあって、もう忘れられているかもしれない。が、わたしはまだ七人一挙死刑断行にこだわっている。七人にとどまって十三人全員でなかったのは、それではジェノサイド、国際世論に反する、との意見もあったからとか。七人でも大量処刑に変わりはない。
 死刑執行命令書に署名した上川陽子法相が、処刑前夜の五日、東京赤坂議員宿舎のパーティーで安倍首相のそばで、にこやかに笑いながら親指を立てていた。明朝七人が絞首台からぶら下がることを知らない訳はない。
 死刑執行命令書へのサインを拒んで、任期を全うする法相は過去何人かいた。拒否しなかったにせよ、サインした法相は自分の指をみつめ、死者の冥福を祈っている、と想像したりしていたがそれは感傷にすぎない。
 百七年前の一月、大逆事件で二十四名の死刑判決(十二人は減刑)を出したあと、「法官等は横田大審院長の室に集まり三鞭(べん)(シャンパン)の盃(さかずき)を挙げ書記給仕に至る迄茶菓の饗応(きょうおう)を受けたり」とは、「東京朝日新聞」松崎天民記者のスクープである。今は首相の取り巻き議員が、自慢げにツイッターに投稿する。
 なにがあっても世の中変わらない。もやもやして苛立(いらだ)たしい。未来もよく見えない。その閉塞(へいそく)感と悪いやつはきっぱり抹殺する快哉(かいさい)が、つながっているなら、怖い世の中だ。

<別紙2>  第55回例会 事務局報告

                 福田玲三(事務局)2018.7.22
1) 岡部さん追悼
 さる7月14日、都内内幸町で大阪外大フランス語同窓会が行われ、故岡部太郎氏を追悼した。外大で下級生だった女性は、岡部さんが在学中に設立した熟柿会(古美術鑑賞会)に参加した折に感じた、故人の大きな包容力をたたえた。また、同級生だった女性は、岡部さんの強い音楽愛好心について報告した。岡部さんと共に完全護憲の会で行動した福田は、故人を愛惜する言葉(別紙3)をささげた。参加者約30名。

2) シリーズ6『朝鮮半島をめぐる情勢と私たち――北東アジアの平和と繁栄のために』
  * 同シリーズ6を7月10日発刊、部数1000部、次の挨拶状を添付。
 新しいパンフレットへのご支援をお願いします
 暑い日が続いていますがお変わりございませんか。
 本年に入って平昌五輪の頃から、朝鮮半島情勢がにわかに動き始め、6月12日にはシンガポールで米朝首脳会談が実を結びました。
 米トランプ大統領の移り気な性格には気を許せませんが、シンガポール共同声明と韓国文在寅大統領、朝鮮金正恩国務委員長による板門店宣言路線を支持し、朝鮮半島情勢の好転を喜びたいと思います。それにつけても戦前朝鮮を侵略し支配し、戦後は今日に至るまで南北の分断をもたらし、両国国民に苦痛を与えた日本の罪を痛感しないわけにはいきません。
いま朝鮮半島に統一と平和の機運が高まっているとき、最も近い隣国の日本として、この新展開に貢献し、ひいては北東アジアに平和と繁栄をもたらすことができれば、これに勝る喜びはありません。
 しかし、前途は予断をゆるさず、意識的あるいは偶発的な妨害や危険と困難に満ちています。北東アジアの平和と繁栄という気高い使命達成の一助として、このたび当会シリーズ№6『朝鮮半島をめぐる情勢と私たち』を発刊しました。
 当パンフを友人、知人に広めてくださいませんか。
 あわせて恐縮ですが、夏季カンパへのご協力をお願いします。

  * 大畑龍次氏の紹介で在日組織から10冊を受注。
 ほかにも、「小生が知りたいと思ったこと、疑問など全てが述べられており、大変勉強になると同時に勇気づけられました」の添書きがついた5冊の注文をうけ、また「着実、タイムリーな活動、敬服しています」の添書きをつけた受注などをいただいた。

3) 次の例会・勉強会
 8月26日(日)13:30~16:30 三田いきいきプラザ
 DVD上映『9条を抱きしめて--元米海兵隊員の戦争と平和』(50分)、ついで意見交換。
 (参照⇒添付のチラシ表裏画像)

4) 集会の案内
①『週刊金曜日』東京南部読者会
 拉孟(らもう)戦(1944年、中国雲南省)の報告:遠藤美幸(神田外大非常勤講師)
 8月24日(金) 18:00~20:30 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)
②憲法を考える映画の会 8月25日(土)13:30~19:05
 13:30~16:00 映画『在日 歴史編』17:00~19:05 映画『在日 人物編』 
 文京区民センター3A会議室(地下鉄大江戸線/三田線:春日駅 丸ノ内線/南北線:後楽園駅)
 参加費:一般1000円 学生500円
③朝鮮半島和解と東アジア新秩序の模索 8月25日(土)13:30~17:30(開場13:00)
 明治大学 グローバルホール(グローバルフロント一階)
 参加費500円(資料代として) ※必ず、事前申し込みが必要です。
「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」主催 「村山首相談話を継承し発展させる会」後援
④日朝ピョンヤン宣言16周年:朝鮮敵視政策を改め日朝国交交渉の再開を!9・15集会
 講演:高野孟さん 特別報告:朴金優綺さん 記録映像:アピール・ソウル平和統一大会など
 9月15日(土)18時開場18時半開会 資料代1000円
 文京区民センター 3A (地下鉄「春日」or「後楽園」下車すぐ)
 呼びかけ 2018 9・15集会実行委員会
 連絡先 日韓民衆連帯全国ネットワーク/ピースボート/「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター/許すな!憲法改悪・市民連絡会/反安保実行委員会/在日韓国民主統一連合

<別紙3>    岡部さん追悼          福田玲三

 ご承知のように、私は例の学徒出陣で外地に出て、佐世保に復員したのは1947年10月でした。この年すでに5月に日本国憲法は施行されており、したがって憲法施行前の熱心な議論を経験していません。
 その後も、憲法については特に関心を寄せることなく時をすごしましたが、30余年勤めた国労書記を1984年に定年退職したあと、労働運動関係の雑誌をボランチアで手伝っているとき、Nさんと知り合いました。
 Nさんは東大学法学部出身、大蔵省で事務次官のコースでしたが、日本国憲法の熱烈な支持者であったため、主流から外され、退職後この雑誌に寄稿していました。彼の主張の特色は、第9条だけでなく、この憲法の全条項を高く評価していることです。彼の主張に感化され、私はこの憲法の貴重な意義について考えるようになりました。
 そのうち安倍自民党政権が改憲の企図を進めるにつれて、今こそ、この貴重な憲法を擁護すべき時であるとの思いに突き動かされました。
 しかし、政治的な経験も常識もない私に、そのような運動が成り立ち得るのかどうか、不安でした。相談できる人は岡部さんだけでした。それまで岡部さんには同窓会でお会いしましたが、言葉を交わしたことは一度もありませんでした。
 そして、2013年11月8日金曜日の午後、内幸町のプレスセンター9階談話室で、俳句の会を終えて一人で待っていた岡部さんに会い、命運をかけて質問しました。「いま全面護憲論を主張するのは非常識ではないでしょうか」。岡部さんは「そんなことはない。みんな何かを求めている」と答え、さらに「私が役立つなら使ってもらってよい」と付け加えられた。
 この嬉しいニュースをNさんに伝え、後日、港区赤羽橋近の済生会病院の控室で、初めて三人で会いました。岡部さんはもうこのとき透析を受けていられました。
 最初の月例会は、翌2014年1月26日に神田神保町の学士会館で開き、ここで岡部さんの次の年賀状が披露されました。「謹賀新年/右に跳ねる癖に手綱や午の春/久しぶりに危機感を持って迎える新春です。(中略)本年もよろしく」。
こうして勉強会を重ね、1年後の2015年に小冊子『日本国憲法が求める国の形』を作成しました。そして岡部さんが、素人の私たちを指図し、記者会見の日時、場所、案内状の文案など、すべてを先頭に立って進め、こうして3月20日、プレスセンター9階の会議室で記者会見を開きました。
当日、司会を担当した私に、岡部さんは「マスコミとの関係があるから自分は控えに回る、Nさんを前に立ててもらいたい」さらに「面倒な質問があれば自分に回してもらえばいい、私が何とかする」と、なんとも控えめでありながら頼もしい指導者でした。
翌日の東京新聞を見ておどろきました。「戦争体験だから護憲」の5段抜きの大見出しで記者会見の模様が掲載され、この記事によって冊子への注文とカンパが相次ぎ、会の基礎が作られました。
その後、岡部さんは壊死を防ぐため片足ずつ切断する闘病生活のなかで一度も休むことなく例会に「政治現況報告」を寄せ続けられました。「継続は力なり」は岡部さんのモットーでした。
岡部さんからの最後の原稿は、今年3月28日の例会における次の報告でした。
 「2月の政局レポートでも触れた国内・国外の二つの問題が、3月に入ってさらに大きく展開。(中略)この問題の急展開によって各新聞社の内閣支持率は2月より10ポイント程度マイナスになった。共同通信社によると17,18日の全国電話調査で9.4ポイント急落し、38.7%に落ち込んだ。不支持率は9.2ポイント増の48.2%で逆転した。また財務省文書の改ざんで「安倍首相に責任」66.1%「責任はない」25.8%。明恵氏国会招致必要65%。朝日も毎日も時事通信も10ポイント近くの急落だった。」
亡くなられる1カ月前、岡部さんの頭脳にいささかの乱れもありませんでした。翌4月9日、発熱のため緊急入院、19日不帰の客となられました。享年86歳。数えの米寿のお祝いが用意されていた最中でした。
私が最後にお会いしたのは去る3月23日、プレスセンターでした。そのとき岡部さんは車椅子に乗り、奥様とお嬢様の付き添いで来られ、「現政権退陣まで頑張る。そのあとは後進に交代したい」と言われていましたが、志半ばの急逝が惜しまれてなりません。そのご遺志を引き継ぎ、憲法を守りぬきます。
そのおおらかであるとともに節度をもった生き方は、私たちの模範であり、今日までお付き合いいただいたことを深く感謝しています。

     当面の日程について
1)第56回例会・勉強会
  8月26日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
  勉強会:DVD『9条を抱きしめて--元米海兵隊員の戦争と平和』(50分)
      上映後、意見交換 会場費300円(20代以下は無料)⇒作品については添付画像のチラシ表裏を参照
2)第54回運営・編集委員会 8月29日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
3)第57回例会・勉強会   9月23日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
4)第55回運営・編集委員会 9月26日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
5)第58回例会・勉強会   10月21日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
             ⇒10月の例会は、都合により第3日曜に変更
6)第56回運営・編集委員会 10月24日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ

完全護憲の会ニュース №55 2018年7月10日

                 <例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>
                          発行:完全護憲の会
              〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312
              電話:FAX 03-3772-5095
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              ホームページ:https://kanzengoken.com/

               目 次
           第54回例会・勉強会の報告         P.1
            別紙1 米朝首脳会談後の北東アジア    P.1
            別紙2 第54回事務局報告         P.4
           第52回 運営・編集委員会の報告(略)    P.5

       第54回例会・勉強会の報告

      6月24日(日)、三田いきいきプラザ会議室で開催。参加者6名、会員67名
 司会は草野運営・編集委員長が担当。まず大畑龍次氏より6月12日にシンガポールで開催された「米朝首脳会談後の北東アジア」(別紙1)が報告された。

 この報告に対して以下の意見が交換された。
 「まず何よりも朝鮮と付き合いを始めるべきだ」「(大畑)拉致問題は基本的に解決済みと朝鮮側は言っている。そのうえで何を解決するのか?まず植民地支配に対する賠償から始めなければならない。両国の関係改善が最大の安全保障だ」「安倍政権は朝鮮の核武装を利用しているだけだ。本気で安全保障を考えるのであれば、まず原子力発電を止めなければならない」「安倍政権はこれまで北の崩壊を前提にしていた」「(大畑)2000年6月15日の南北共同宣言で『吸収統一』はしないことを明らかにしている」「安倍政権のいう『国難』がなくなれば、改憲の必要は遠のく。安倍政権は危機に陥る」「今回の米中首脳会談の開催に貢献したのは、韓国のキャンドル革命による政権交代だという説と、北の核開発だという説がある」「韓国から日本にキャンドル8000個と電池が贈られたそうだ」「日本の国会周辺の過剰警備に韓国の人は驚いているという」「(大畑)韓国民は軍事政権と闘って勝利した経験があり、闘争に命をかけている」「日本政府の対朝鮮対応はトランプ大統領の動向に左右され自主性がない」「拉致被害者家族会もトランプ大統領が一時首脳会談中止を述べたとき、それに賛成していた」「朝鮮との国交回復はまず朝鮮高校への補助再開から始めるべきだ」「9月の自民党総裁選前に国交回復はできないだろう」
ついで「事務局報告」(別紙2)が福田共同代表から提出され、了解された。

<別紙 1>
         米朝首脳会談後の北東アジア

                 大畑龍次(アジア問題研究者) 6月24日

 6月12日、歴史的な米朝首脳会談がシンガポールで持たれた。会談は両首脳だけの会談後、拡大会合、昼食会、合意文書署名、トランプ大統領の記者会見と続いた。今年は朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の建国から70周年にあたるが、その節目に敵対関係を続けてきた米朝両国の首脳会談が開かれたことは歴史的なことであり、その成功を心から歓迎したい。合意文書の要点は次の通り。

 1 平和と繁栄を願う両国人民の念願に基づいて新たな米朝関係を樹立していくことにした。
 2 朝鮮半島で恒久的で強固な平和体制を構築するために共に努力する。
 3 朝鮮民主主義人民共和国は2018年4月27日に採択された板門店宣言を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを確約した。
 4 戦争捕虜および行方不明者の遺骨発掘を行い、すでに身元が確認された遺骨を即時送還することを確約した。

 第4項以外には具体的な言及はなく、全体として包括的な内容となっている。第一項の「新たな米朝関係を樹立」の確認からは、今後米朝国交交渉へ向かうことが期待される。当面は連絡事務所の設置などが糸口になるだろうと思われる。第二項の「恒久的で強固な平和体制を構築」は、終戦宣言から平和協定締結へと向かうかが焦点だろう。第三項は、朝鮮が「朝鮮半島の完全な非核化に努力する」ことを表明したものである。これはこれまでも表明していたことの再確認といえる。なお、前文にトランプが朝鮮に「安全の保障を提供すると確言」したとあるが、これはいわゆる「体制保証」とまでは言えない。
 日米のマスコミの反応は、「金正恩にやられた」という論調が大勢のようだ。会談以前にトランプ政権がCVID(完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄)を声高に主張していただけに、その落差が大きすぎるというところか。米議会も「不満」を表明しているし、金正恩に軍配というのがおおかたの評価。今後もトランプ政権は、朝鮮の非核化を要求することは明らかで、その進展に合わせて「新たな米朝関係」と「恒久的で強固な平和体制」の協議に応じるものと思われる。関係改善の具体化はこれからだが、敵対関係を転換して関係改善に向かうことに合意したのは大きな成果であろう。
 その後、6・12首脳会談の具体化の動きも見られる。この夏の米韓合同軍事演習の中止が決定されたのは、「恒久的で強固な平和体制」の第一歩であり、朝鮮がロケットエンジンの発射施設の廃棄を打ち出したのも朝鮮半島の非核化にむけた行動と評価できる。また、第4項の「戦争捕虜および行方不明者の遺骨発掘」では朝鮮が早くも実施しており、200柱からの遺骨が身分証などとともに引き渡されるという。

 6・12首脳会談の波紋

 米朝首脳会談の波紋が広がっている。
 第一に、南北の板門店宣言推進の環境が整ったことだ。6・12米朝首脳会談によって米朝の関係改善が行われたため、南北は大手を振って南北の関係改善に向かうことができる。すでに高位級会談と将官級会談が開催され、板門店宣言の具体化が進んでいる。南北の合同連絡事務所を開城公団内に設置することが合意され、韓国側は現地視察を行った。アジア・スポーツ大会への合同選手団による参加、8月の金剛山での離散家族再会事業が決まった。京義線と東海線を連結するための会談も行われ、事前の調査活動を共同で実施するという。秋には南北首脳会談が行われることから、それまでにはより具体的な成果が期待される。特に、終戦宣言と停戦協定締結が実現するかが注目される。6月中旬の統一地方選挙で文在寅政権は圧勝したばかりであり、政権への支持と期待は広がっている。
 第二に、安倍政権が日朝首脳会談に言及しはじめたこと。6・12米朝首脳会談によって安倍政権は対朝鮮政策の変更を余儀なくされた。「いまは圧力のとき」という情勢認識ではもはや通用しないことがはっきりした。しかし、朝鮮は安倍政権の「豹変」ぶりには批判的であり、「拉致問題は基本的に解決済」なる公式見解を改めて明らかにしている。安倍政権もまた、拉致問題の解決の見通しの「感触」がなければ首脳会談には応じられないという。
 日朝平壌宣言時の朝鮮の状況とは雲泥の差がある。その頃、朝鮮は八方ふさがりの状況のなか、日朝関係改善に情勢の好転をかけた側面がある。そのためにそれまで否定していた拉致問題の関与を認め、朝鮮の植民地支配にも賠償から経済協力方式という、思い切った要求ダウンに応じた。しかし、現時点は朝鮮側が追いつめられた状況はない。日本以外の関係諸国とは良好な関係にあり、南北関係も板門店宣言の履行過程にある。いわゆる「朝鮮専門家」が主張していたように「朝鮮は日本の経済支援が必要」という状況ではないのである。中韓ロからの経済的支援が期待できるし、米国が動く可能性もある。したがって、日朝交渉の必要性は日本側にこそあっても、朝鮮側は差し迫ってはいない。もちろん、日朝対話は喜ばしいことだが、その主導権は朝鮮側にある以上、安倍政権は思い切った政策変更が必要だろう。
 第三に、中朝ロ関係の前進。金正恩委員長は6月19日、本人3度目となる中朝首脳会談のため北京を訪問した。米朝首脳会談の報告を兼ねながら、①朝鮮半島の非核化の段階的解決、②経済協力を確認したと思われる。朝鮮からは経済視察団がすでに中国を訪問し、金正恩自身も経済関連施設を訪問している。中国はかねてから朝鮮に「改革開放」路線を勧めてきたが、一層拍車がかかるとみられる。中朝国境では経済交流の進展を見込んで不動産価格が値上がりを始めたという。また、ロシアはウラジオストックで9月に開かれる東方経済フォーラムに金正恩委員長を招待していると伝えられる。この間の朝鮮外交の展開から見ると、朝ロ首脳会談に進むことは容易に理解しうる。ここでも朝鮮半島の非核化の段階的解決と経済的連携の確認が行われるだろう。ロシアを訪問した文在寅は韓国、朝鮮、そしてロシアに繋がる経済連携の推進を呼びかけた。南北間では東海線の鉄道・道路連結が板門店宣言によって合意されていることを念頭にした発言である。これまでもパイプラインをロシア、朝鮮、韓国へと伸ばす構想が語られてきたので、一層の具体化に進むだろう。朝鮮の羅津地区の経済特区への投資推進の可能性もある。

 日本は北東アジアの阻害要因か

 このように歴史的な米朝首脳会談によって北東アジアは、友好的な関係が作り出されつつあり、平和に向かっている。このような融和的なムードのなか、関係改善が見られないのは日朝関係だけである。これまでは日本が「蚊帳の外」にあるといわれてきたが、いまや阻害要因と認識すべきなのではないだろうか。安倍政権は「圧力一辺倒」から「対話を模索する」姿勢に変わりつつあるが、いまだとして対話は実現していない。日本は核・ミサイル開発と拉致問題の解決なしに国交交渉に進まないという姿勢を崩していない。核・ミサイル開発は基本的には米朝間で解決されるべき問題であるから、個別問題としては拉致問題の前進がネックとなるだろう。日朝双方が関係改善へのプロセス合意したものに「ストックホルム合意」(2014年5月)がある。この合意にしたがって朝鮮は特別調査委員会を立ち上げ、在朝日本人の調査に着手した。しかし、日本が朝鮮の核・ミサイル開発に対して独自制裁に踏み切ったため、朝鮮は合意に反するとして調査委員会を解散して店晒し状態にある。これまでの経過から考えると、ストックホルム合意の再稼働が必要だろう。そのためには店晒しの原因となった独自制裁を解除すべきだ。米朝首脳会談の成果を尊重するならば、制裁解除は可能だろう。さらに、ストックホルム合意を再稼働するとすれば、朝鮮側の調査報告書を受け入れることが必要だ。朝鮮国内の調査は主権にかかわる問題であり、日本には限界がある以上、基本的には朝鮮の調査を受け入れる姿勢が必要だ。さらに、よりドラスチックに関係改善に向かおうとするなら、懸案事項の解決→国交交渉再開という基本姿勢を改めることだ。「国交正常化ありき」を先行させ、そのなかで懸案事項を解決することだ。これはオバマ政権がキューバとの国交正常化でとった手法であり、学ぶべき価値がある。
 安倍政権はマスコミ各社に拉致問題の優先的報道を要請している。その結果、国民世論は「拉致被害者は生きている」、「北朝鮮は拉致被害者を返せ」という認識になっている。したがって、安倍政権はこの期待に応えられないとき、政権維持の危機に陥る可能性がある。事前の秘密接触によって確かな「感触」を得ることがなければ、前進できない。この数年、そうした努力をせずに時間だけが流れたのではないか。これでは拉致問題の政治的利用と言われてもしかたがない。
 安倍政権は拉致問題の偏重をやめ、日朝関係改善と北東アジの平和のために大局的な政策転換をしなくてはならない。日本の朝鮮侵略の過去を清算するために国交交渉に向かうことを声高に訴える必要がある。そうした声をあげることが求められている。北東アジアが敵対から友好へと好転するなか、日本は阻害要因になってはならない。いま一度、日本の朝鮮侵略の清算と国交交渉の再開を求めるときだ。

<別紙 2>
         第54回例会 事務局報告

                    福田玲三(事務局)2018.6.24

1) 来信
 自民党(改憲)草案の社会を描いた「未来のダイアリー」や日弁連の「こども憲法カレンダー」を30人ほどの友人・知人に送り、私からのメッセージを伝えて来ました。日弁連からのポストカードも分けていただき、国民投票になったときの準備としています。「平和に向けて活用したい道徳」の冊子も、私からのメッセージにしたいと思っています。ありがとうございます。全部読んだらまた連絡させていただきます。
 今の平和を次の世代にも! 戦争から1ミリでも遠ざかるように!(埼玉県・N氏)

2) シリーズNo.6『朝鮮半島をめぐる情勢と私たち――北東アジアの平和と繁栄のために』(仮)
 さる6月12日、シンガポールで開催された米朝首脳会談の論評と今後の展望を加えたテキストが、大畑龍次氏より6月15日到着、仮綴じ本として6月例会で検討した後、成文を作成し、月末に刊行の予定。

3) 岡部共同代表の後任要請
 さる6月12日、運営・編集委員会の大西・福田が国会議員会館にK議員を訪ね、5月に逝去された岡部共同代表の後任について相談したが、議員活動が多忙なため、就任要請を受けたことを光栄とするものの、と辞退された。

4) 集会の案内
①盧溝橋事件81周年 明治150年徹底批判!
 侵略と植民地支配の歴史を直視し、アジアに平和をつくる集い
 日時:2018年7月5日(木)18時~
 会場:文京区民センター3階・3-A会議室
    文京区本郷4-15-14 03-3814-6731
 主催:村山首相談話の会
 資料代:800円
②報告会:朝鮮半島情勢について 講師:大畑龍次
 日時:7月8日(日)13:30~
 場所:松戸市民会館101号室
 主催:市民自治をめざす1000人の会
 連絡先:090-4606-9634 吉野
③被爆者の声をうけつぐ映画祭2018
 7月14日 武蔵大学江古田キャンパス大講堂 18:00から吉永小百合さん登場。
   15日 8号館8階8802
      https://hikakueiga.exblog.jp/
④第14回平和学習会
 「レ・ミゼラブル」から読み解く憲法 報告者:王道貫
 7月22日13:30~16:30 東京ボランティア市民活動センターC会議室(飯田橋)
 資料代:200円
⑤『週刊金曜日』東京南部読者会
7月27日(金) 18:30~20:00 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)

当面の日程について

1)第55回例会・勉強会 7月22日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
勉強会:伊藤真弁護士語りおろしDVD『憲法ってなあに?憲法改正ってどういうこと?』の上映 (55分)、ついで意見交換。
 三田いきいきプラザ(地下鉄三田線・三田駅出口A9より徒歩1分、JR山手線・田町駅西口より徒歩10分)
 港区芝4-1-17
 http://shiba-ikiiki.com/mita/access/
 会場費 300円
2)第53回運営・編集委員会 7月25日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
3)第56回例会・勉強会   8月26日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
4)第54回運営・編集委員会 8月29日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ

完全護憲の会ニュース №54 2018年6月10日

                 <例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>
           発行:完全護憲の会
           連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312
              電話・FAX 03-3772-5095
              Eメール:kanzengoken@gmail.com
              ホームページ:https://kanzengoken.com/

          目 次
 
      第53回例会・勉強会の報告           P.1
      別紙1 『朝鮮半島をめぐる情勢』        P.2
      別紙2 事務局報告               P.4
      第51回 運営・編集委員会の報告(略)      P.5

      第53回例会・勉強会の報告

        5月27日(日)、港勤労福祉会館和室で開催。参加者8名、会員67名
 司会は草野運営・編集委員長が担当。会場が新たな場所で迷った参加者があり、30分ほど遅れて開会、まず「事務局報告」(別紙2)が福田共同代表から読み上げられ、ついで大畑龍次氏から、前回の仮綴じ本に、4月27日に開催された南北首脳会談への論評を加えた資料『朝鮮半島をめぐる情勢――北東アジアの安全と平和のために――』(別紙1)による報告が行われた。この報告をめぐって次のような意見が交わされた。
 「6月12日の米朝首脳会談後はどのように想定されるか」、(大畑)「米日は朝鮮に一方的な非核化を主張しているが、段階的な、対話による進行になるだろう。これが国際的な世論であるからだ」「米のいうリビア方式の適用とは?」、(大畑)「ボルトン大統領補佐官の主張だが、この非核化方式でカダフィ大佐が反政府勢力によって殺害された。米は金正恩委員長の断首作戦まで公言している。だがトランプ大統領が最近、朝鮮半島の非核化に言及した(在韓米軍の非核化も含まれる)。もっとも、朝鮮半島を非核化しても、米は大陸間弾道ミサイルや原子力潜水艦、グアム基地の核爆撃機を使えば、核攻撃は可能だ」「ストックホルム合意とは?」、(大畑)「日朝平壌宣言以降に、国交正常化のための予備折衝として合意された。そこには朝鮮側7項目、日本側7項目の課題が示され、それぞれの行方不明者の調査の実施などが合意されている。その後、日本が独自の朝鮮制裁を開始したことで、この合意は無効になった」

 ついで、「シリ-ズ6 検討資料集」(大久保敏明、大野和花、柘植淳平、福田玲三、草野好文の5氏から寄せられた文字校正をふくむ意見を収録)を参考にした意見交換に入り、とくに「自衛的核武装」「内政問題」「朝鮮は好戦的ではない」などの言葉をめぐり、独裁体制に内在する好戦性への批判が弱いのではないかとの指摘に対して、(大畑)「日本国内における圧倒的な朝鮮パッシングへの反論として本冊子を用意した。批判が朝鮮の核武装、体制批判、人権問題、最高権力者の世襲に向けられているが、これらの国際的な批判がダブルスタンダードであることは明瞭であり、また基本的に内政問題であることを理解されたい」。
 この討議では「国際社会には国際法がある。そこには第一に内政不干渉があげられ、また武力による威嚇と武力の行使が禁止されている。人権問題が恣意的に国際外交に利用されていることに注意すべきだ」との発言があり、今後さらに討議を深めることになった。
 ついで『平和に向けて活用したい道徳』についての勉強会に移り、まずこの冊子への批判的な意見が下記のように紹介された。
●この冊子は学校での道徳教育を必要なものとして、肯定的に評価する立場に立っているように思えるが、それは正しいことなのか。学校での道徳教育自体は特定の価値観を子どもたちに刷り込み、強要するものであり、そのような教育はやってはならないものだと思う。
●道徳を学校授業の教科にすること自体の問題性と危険性に対する認識が弱いのではないか。教科としての『道徳』に明確に反対を表明すべきだと思うが、その表明がない。まして評価点を付けるなどという、やってはならないこと、やれるはずもないことをやらせることに明確な反対表明がなされていない。
●現政権や右翼的勢力が目論む戦前の「修身」の復活としての道徳の教科化に、明確な反対姿勢を貫けず、これに融和的な部分改良的な提起になっているのではないか。
●現在行われている「道徳」の授業内容についての分析・検討がなされていない。したがって、現状にいかなる問題点があるのか、あるいはないのか、が不明である。
●現在の教育現場の状況下で、道徳の授業を「平和に向けて活用」できると本当に考えているのか。それは可能なのか。

 これらの批判に対して、「日の丸、君が代に反対して教師をやめた人がいる。いい先生をやめさせる制度になっていて、そこに先生が追い込まれている。だが、やめていいのか。残された子どもたちはどうなるのか。それと同じく、理念として道徳反対、だけでは済まない段階になっている」との執筆者からの表明があった。また、「『平和に向けて活用したい道徳』というタイトルが誤解を招く。道徳に「」を付けるべきだ」との意見もあった。これに対して執筆者は、『原爆の子』の編者である長田新氏の「このような『平和のための人間』を育成することこそ道徳教育の使命でなくてはならない」以下「平和を築くことを、人間としての最高の道徳と考えるような人間」の育成などの記述(冊子100頁)を挙げ、この冊子のタイトルはほとんど、この長田氏の言葉をそのまま使ったと述べた。
 討議はさらに道徳という言葉自体の解釈についても続けられ、その関連で、1940年に北海道で綴方指導に熱心な教員が多数逮捕された事件が報告された(道新選書47 『獄中メモは問う 作文教育が罪にされた時代』 1400円)。討議は今後も続行される。

<別紙 1> 朝鮮半島をめぐる情勢 (4月27日「板門店宣言」以降の追加部分について)

             大畑龍次 (アジア問題研究者)

連続する首脳会談
 南北、米朝の首脳会談が具体化するなか、3月26日に電撃的な中朝首脳会談が行われました。中国が朝鮮の核・ミサイル開発に批判的姿勢をとって関係の冷却化が伝えられていたし、朝鮮は習近平(シー・ジンピン)が平壌よりも先にソウルを訪問し、2015年の戦勝70周年の軍事パレードでは朴槿恵前大統領を天安門のひな壇に立たせたことに不満でした。こうした韓国重視の姿勢に対し、朝鮮は中国と距離をおいてきました。2017年11月には習近平が党対外連絡部の宋濤(ソン・タオ)部長を特使として朝鮮に派遣しましたが、金正恩には会うことができませんでした。こうした冷却した中朝関係のなかでの首脳会談は予想もできないことでした。南北、米朝首脳会談を前にして中国との関係回復に出たものと思われます。この北京訪問は金正恩の初外遊となり、外交デビューでした。この会談が注目されているのは、ひとつは中朝関係が改善されたことであり、もうひとつは金正恩が非核化問題について「段階的解決」を発言したことです。米国が一括解決を主張していることを牽制する意味がありました。
歴史的な南北首脳会談は4月27日、板門店の韓国側施設「平和の家」で開催され、「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」が出されました。この宣言によって朝鮮半島の平和・繁栄・統一のロードマップが明らかになりました。板門店宣言は三つの部分から構成されています。それらを見てみましょう。
 第一に、「共同繁栄と統一」。ここでは自主統一の原則が明らかにされ、これまでの南北間の合意を履行・発展させるべく協議していくとされました。具体的には
①開城地域に南北共同連絡事務所を設置、
②6月15日などの共同行事開催と2018アジア大会(8・18~9・2)への共同出場、
③8月15日の離散家族再会事業、
④10・4共同宣言の履行と、一次的なものとして東海線および京義線の鉄道と道路の連結事業。
 なお、10・4共同宣言にはそのほかに多くの共同事業が合意されているので、順次進められることが予想されます。10・4宣言では推進のために副首相級の「南北経済協力共同委員会」を組織するとされているので、そのような組織が作られるでしょう。
第二に、南北の「軍事的緊張緩和」。軍事的敵対行為を中止し、非武装地帯を平和地帯に、西海北方地域(海の軍事境界線)を平和水域にするとされました。今後、軍事緊張緩和のための軍事当局間会談を持つこと、5月中に将官級会談を開催すると合意されました。すでに非武装地帯の敵対宣伝とビラ散布は中止されています。韓国政府は脱北者団体の敵対行動を阻止しました。
第三に、朝鮮半島の「恒久的平和体制の構築」。武力行使をしない不可侵合意と段階的な軍縮の推進。年内の朝鮮戦争の終結を目指し、停戦協定を平和協定へと実現すべく三者(南北と米)あるいは四者(南北と米中)の協議を推進するとされています。こうした南北の合意は米軍の武力行使をつよく牽制するものとなるでしょう。そして、「完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」。この「核のない朝鮮半島」の表現は米国の核の傘も想定されています。そうでなくては「共同の目標」にはならないからです。宣言の最後には、文在寅大統領の平壌訪問も合意されました。文在寅が望んでいた首脳会談の定例化に一歩前進したことになります。半年後の首脳会談によって宣言の進捗状況「実りの秋」が確認されるでしょう。
 朝鮮半島をめぐる諸問題のうち、南北だけでは解決できない問題がいくつかあります。ひとつは朝鮮半島の非核化問題です。この問題はどちらかというと、米朝間の問題です。朝鮮半島における核問題というとき、中ロの核は含まれず、対峙関係にある米朝の核を指しています。また、朝鮮の核武力は朝鮮敵視政策をとっている米国に対する自衛的なものであるとされてきました。したがって、米国の朝鮮敵視政策の放棄、平和協定締結と国交交渉によって体制保障が担保されなくてはなりません。板門店宣言が朝鮮半島の非核化を目標としたものの、朝鮮が保有する核に言及がないとする批判はあたりません。それは米朝対話において話し合われるべき問題だからです。もうひとつは、停戦協定を平和協定にする問題ですが、そもそも停戦協定に署名したのは米中朝なのですから、少なくとも三者による協議が必要です。より正確に言えば、米国ではなく国連軍であり、中国ではなく中国義勇軍でしたが、実質的には米中といっていいでしょう。しかし、停戦協定によって対峙している韓国を抜きの協議は考えられないことから、四者による協議が妥当でしょう。日本政府が要請した拉致問題はあくまでも日朝間の問題であり、取り上げる理由はありません。その後、文在寅大統領が拉致問題を取り上げたことが伝えられ、金正恩委員長が日朝対話の用意を伝えています。米日中ロの関係国の反応でいえば、日本以外はおおむね歓迎の意を表しているといっていいでしょう。

米朝首脳会談をめぐる神経戦
 舞台は米朝首脳会談に移りましたが、米朝間の神経戦が続きました。
 朝鮮は4月20日、朝鮮労働党中央委員会総会において核・ミサイル開発の中止、核実験場の廃棄を決定したと明らかにしました。核実験の廃棄措置は5月23~25日に行い、米韓などに公開するとしました。核武力の完成によって必要性が減少したこともありますが、米国へのメッセージとなりました。板門店宣言でも「北側が取っている自主的な措置が、朝鮮半島の非核化のための大胆で意義ある重大な措置」として南北によって認識されました。また、中朝首脳会談において金正恩委員長は「段階的措置」に言及しました。六者協議共同声明でも明記されている「約束対約束、行動対行動の原則」にしたがって段階的に進むことができれば、朝鮮半島の非核化は可能だという立場です。さらに朝鮮は5月9日、拘束中だった韓国系米国人3人に恩赦を与えて解放しました。トランプ大統領夫妻が深夜にかかわらず出迎え、自らの成果として大宣伝を展開しました。トランプが米朝首脳会談の開催地と日程を正式発表したのはその直後でした。
 さて、首脳会談を前に米朝間の暗闘はどのように進んだのでしょうか。米国はふたつのポイントで自らの立場を表明しました。ひとつは朝鮮が具体的な非核化措置をとることであり、もうひとつはそれが行われるまで最大限の圧力を行使するというものです。朝鮮が非核化に合意すれば、体制保証と経済建設に協力するとしました。ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)がもっとも強硬な姿勢を貫き、リビア方式を主張しました。一方、朝鮮側はあくまでも段階的な解決を主張し、一方的な非核化を拒否しました。米朝間の意見対立があるのは明らかで、金正恩委員長の2度目の中国訪問が5月7~8日に行われたことに端的に示されています。米朝首脳会談を前にして意見調整と経済協力を取り付けたものと思われ、その後朝鮮の経済視察団が派遣されました。中朝の親密化で米国への揺さぶりをかけた格好です。朝鮮側の揺さぶりはさらにエスカレートしました。米韓両空軍による合同演習が実施されたことに抗議し、5月17日に予定されていた南北閣僚級会談の無期限延期を通告しました。この会談は「板門店宣言」を受けた協力事業を論議するはずでした。さらに、この通告があった16日、金桂寛(キム・ケグァン)第一外務次官が談話を発表し、「米国が一方的な非核化を要求するなら、首脳会談の再考もありうる」ことを明らかにしました。金桂寛は長く朝鮮外交を主導してきた人物。こうした朝鮮側の攻勢は、米朝首脳会談の日程と場所が明らかになってからのことで、朝鮮外交の面目躍如ぶりを見た思いでした。ただし、朝鮮の公式メディアは金桂寛談話を取り上げておらず、一定の配慮をしました。米国報道は「朝鮮の非核化」だけを取り上げていますが、朝鮮側は「板門店宣言」にしたがって年内の終戦と平和協定を提案しているはずですし、米朝国交問題も取り上げたと思われます。

<別紙 2>    第53回例会 事務局報告

                福田玲三(事務局)  2018.5.27

1)来信  Y・T氏(兵庫県)より
 週刊金曜日で見ました。『平和に向けて活用したい道徳』とある冊子書名の「道徳」の文字を目にしてさえ、この新学期から教科化(強化?強制化? 歴史的にはまさしく強制化の道を辿って来ています)された「道徳」の方向性にあざとさと危うさとを感じずにはおられない元教員として、ぞわっとした気分になったりもしますが、かつて、現場で、いつも、いつでも、反「日の丸・君が代」を、敢えてひとり孤立無援で、、、、大昔、連帯を求めて孤立を恐れず、と言う親炙されたフレーズが有りましたが、私の日々の学校現場での、孤立の抵抗運動、抵抗の表現は、胸の中で常に無言に、連帯を求めて孤立を恐れず、の思いを反芻しながら、断固として、同時に淡々と行ってきたと振り返ることが出来ます。
なので、現役時、その時々の道徳時間割では、如何に徳目の対極を行く授業を作るか、そういう工夫がいかない場合には、悪いけど、道徳時間割パスという手も使ったりしながら、30年この方をかつかつ過ぎ越してきた、という思いもあります。
そんな抵抗の教員として構える姿勢をつらぬいた(つもりの)当方としてみれば、教科化「道徳」というものに、「完全護憲」という思想的な対置を企図する「完全護憲の会」の問題意識はいたく共感できます。
ということで、本題。週刊金曜日で目にした『平和に向けて活用したい道徳』冊子を、少ない部数で申し訳ないですが、4冊購入したいと思います。
昨日は、二つながら隣国である南北の首脳会談を目にして、かつて教員稼業の最後に辿り着いた夜間中学で、数多くの在日朝鮮人ハルモニ・ハラボジ生徒さん達と過ごした9年間を思い出していました。
 彼らの故地(祖国)と、この国の狭量な政治屋達の虚々実々と言うには歴史の虚々の方が喧伝されやすい、政治空間、言説空間を巡って、生の議論をし、東アジア近現代の歴史を深掘りした日々を振り返っていました。
 昨日の両首脳の映像を見ていたら、ふと老在日生徒さん達の気持ちになって、目の奥に熱いものが通り過ぎました。

2)会員の拡大
 前回以後、会員は1名増加し、逝去者1名で、計66名。

3)岡部さん逝去
 さる4月19日午前2時、岡部太郎共同代表が逝去され、通夜は4月24日18時から京王線幡ケ谷駅近く代々幡斎場で、葬儀は翌25日11時から同斎場でおこなわれた。当会運営・編集委員と事務局員の全員が参列し、在りし日の献身的な指導に感謝の念を捧げた。

4)シリーズ6『朝鮮半島をめぐる情勢――北東アジアの安全と平和のために』(仮題)
 さる4月27日、板門店で行われた南北首脳会談と、6月12日、シンガポールで開催予定の米朝首脳会談への論評を加え、6月末に刊行の予定。

5) 集会の案内
①第13回平和学習会 「コスタリカに学ぶ平和国家の創り方」 【報告者】 楽団ひとり
 軍隊を持たない国、コスタリカに何度も足を運び、政府関係者へのインタビューを重ねるなど、実体験豊富な報告者が、コスタリカの現状と現地の人々の「生の声」をお伝えするとともに、真の平和国家の創り方を参加者とともに考えます。
 6月15日(金)18:30~20:45  【資料代】 200円
 東京ボランティア・市民活動センター(TVAC) A会議室
           (JR飯田橋、セントラルプラザ10階)

②社民党憲法連続講座 第3回 「平和憲法と「緊急事態条項」の危険」
 講師 水島朝穂(早稲田大学法学学術院教授) 
 自民党の改憲案は、緊急時の国会議員の任期延長や、政府への権限集中を規定しようとしています。「緊急事態」を口実に、憲法のルールをなし崩しにする手法は、ナチス政権をはじめ多くの強権体制が悪用してきたものです。安倍改憲を立憲主義の視点から批判します。
 6月20日(水)18:00~ 衆議院第1議員会館 大会議室

③『週刊金曜日』東京南部読者会
 6月22日(金)18:30~20:00 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)

④上映会『コスタリカの奇跡』 
 1948年に軍隊を廃止。軍事予算を社会福祉に充て、国民の幸福度を最大化する道を選んだ国。
 6月28日(木)上映1回目:10:00~ 2回目:18:30~
 お話し:20:00~21:00池川広太さん
 ココネリホール(3階)有楽町線・副都心線・大江戸線・みなとみらい線
           「練馬駅」中央北口から徒歩1分
 参加費:1,000円(18歳未満・学生・障がい者は500円)
 ※予約不要 主催:ねりま九条の会

※お知らせ:下記の集会は主催者身体不調のため延期
 第29回「7・1閣議決定」違憲訴訟勉強・相談会 6月15日(金)13:30~16:30
 (予定)安倍晋三を考える/川村茂樹 憲法9条の意味/土取英輝
    私にとっての戦争/福田玲三 通例報告/長坂伝八

当面の日程について
1)第54回例会・勉強会    6月24日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
2)第52回運営・編集委員会  6月27日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
3)第55回例会・勉強会    7月22日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
4)第53回運営・編集委員会  7月25日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ

完全護憲の会ニュースNo.53 2018年5月10日

                  <例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>

              発行:完全護憲の会
              連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312
                  電話・FAX 03-3772-5095
                  Eメール:kanzengoken@gmail.com
                  ホームページ:https://kanzengoken.com/

   目 次 

       第52回例会・勉強会の報告          P.1
       別紙1 事務局報告              P.2
       別紙2『朝鮮半島をめぐる情勢』        P.4
       第49回 運営・編集委員会の報告(略)     P.4

         第52回例会・勉強会の報告

             4 月22日(日)、港区・三田いきいきプラザで開催
                         参加者6名、会員67名
 司会は草野運営・編集委員長が担当。まず、4月19日に85年の生涯を閉じた岡部太郎共同代表を偲んで1分間の黙とうを捧げた。ついで「事務局報告」(別紙1)が福田共同代表から読み上げられ、質疑、意見なく、2:00から勉強会に移り、講師の大畑龍次氏から、用意された資料『朝鮮半島をめぐる情勢――北東アジアの安全と平和のために――』(別紙2)に基づく報告が行われた。これに対して次のような意見が出された。
 「北朝鮮は米国の軍事的圧力に弱腰になったのか?」「(大畑)朝鮮は核兵器を持って米国と対等になった。武力行使に出れば100万人を超える戦死者が予想されると米軍軍事専門家は言っている。韓国、中国、ロシアが武力行使に反対している。だから米国は軍事行使できない。朝鮮は、自国を国として認めよ、体制を保障せよ、停戦協定を平和協定に移せ、と一貫して求めている」
 「朝鮮は核を手離さないだろう。金正恩は頭の切れる人物だとの評価が出ている。不思議なのは米国の変化だ」「文大統領は世界史的転換の時代に入ったと言っている」「制裁をあまりあおると、日本が日米開戦に追い込まれたように、逆効果になる」「北朝鮮の核開発で日本に核武装論のでる恐れがある」「イスラエルの核と北朝鮮の核への対応を見るとダブル・スタンダードは歴然だ」「日本のテレビは朝鮮を敵視している」「今日本にとって必要な行動は何か?」「(大畑)日朝国交回復交渉に入ることだ。中国と米国の力関係はいずれ逆転し、米国はアジアから手を引くだろう」「朝鮮半島の非核化を金委員長も文大統領も明言していることを確認したい」「“ほんらい日本政府がやるべきことは……戦争状態になったとしても「備えは十分」であることを国民に説明し”とテキストにあるが、戦争になれば終りだ。外交によって戦争回避に全力を尽くすべきだ」「今、何をなすべきか?」「(大畑)拉致問題で曇らされているが、過去の植民地支配を反省し謝罪することが大切だ」……
 以上のような討議ののち、用意されている資料『朝鮮半島をめぐる情勢』に疑義や意見があれば次の勉強会までに提出をお願いして勉強会を終えた。

<別紙 1> 第52回例会 事務局報告

                  福田玲三(事務局)2018.4.22
1)来信
  ※水野スウ氏より(『わたしとあなたの けんぽうBOOK』著者)

 いつもお知らせお送りくださってありがとうございます。
 来週、再来週と東京にいきます。

 20日@調布のクッキングハウスさん/22日@千葉のカフェどんぐりの木さん/23日@府中の IZAKAYA風さん/26日@目白の日本女子大で、お話させてもらいます。詳しくは以下。
 タイトルには明記されてなくても、9条に自衛隊を明記することについて、思っていることを語るつもりです。

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 4月20日(金)調布のクッキングハウスにて、今年で14回目になる「スウさんのピースウォーク」、松浦さんから出された今年のテーマは、「私たちは 平和のメッセンジャー」。
 13:30?16:30 @レストラン2階のクッキングスター  参加費は1500円

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 4月22日(日)千葉は稲毛海岸のかふぇどんぐりの木さんにて。
前にもお話の出前によんでいただき、定例のよりみちカフェ憲法勉強会にまぜてもらったこともあります。絵本も畳の間もあって、おちついたやわらかい感じのカフェ。
 今回は、よりみちカフェVol.8「憲法はじめの一歩」の特別企画。水野スウお話会「平和はつくるもの~わたしとあなたと未来の子どもたちのために~」
 どんぐりさんとよりみちカフェからの呼びかけです。
 ↓
 平和な日常、平和な未来は、自分たちでつくっていくもの。そのためにも、今こそ知っておきたい憲法改正のこと、緊急事態条項のこと、国民投票法のこと、など、エッセイストの水野スウさんがわかりやすく温かな言葉で語ってくれます。
 憲法なんてよく分からないという大人の方、小学生~学生さん、憲法勉強中の方、自分の言葉で伝えたいという方・・・お子様連れも大歓迎!
 13:00open 13:30~おはなし 15:00~茶話会 16:30終了  【参加費】1000円(お茶つき)18歳以下・学生/無料
 【会場・お申し込み】cafeどんぐりの木 電話・fax 043-301-2439 メール donguri35506★yahoo.co.jp  (メールするときは★マークを@にかえてね)

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 4月23日(月)「スウっとばーる」というタイトルでお話します。 @IZAKAYA 風 (府中市片町1-6-1-102)
去年のクッキングハウスのお話会の時に聞きにきてくださった佐藤さんが、ご自分のお店でのおはなし会を企画してくださいました。
 10:30?昼くらいまでお話。紅茶の時間のこと、ほめ言葉のシャワーのこと、社会のことふつうにはなせる場になっていったこと、憲法のことも語り合って、紅茶の時間が13条的な場だなあ、ってきづいていった過程の話、など。
お昼ごはんを一緒にとって、お茶飲みながら交流の予定です。昼ごはん用意の都合上、要ご予約。昼からの参加、昼までの参加もOKですが、ご連絡をお願いします。
ご予約お問い合わせ先  よつばーる 風 tel. 080-5188-5468 (さとうさん) 
yotsubar.kaze★gmail.com(メールするときは、★マークを@にかえてくださいね)

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 4月26日(木)第5回 平和を求める日本女子大学有志の会の企画、「日本国憲法を考える」上映会&トークで、母校にお話にいくことになりました。
 15:00~ 松井久子監督の「不思議なクニの憲法 2018」上映会 17:00~ 
 「私たちを生かす憲法 私たちが活かす憲法」と題して、卒業生の水野スウがお話しします。
 @日本女子大学目白キャンパス 新泉山館1階第会議室(山手線目白駅からスクールバスもでています。バスはキャンパス内まで入りますが、いったん外にでて通りを渡った向かいの8階建ての新しい建物が、新泉山館。私も行くのははじめて)
参加費は無料です。19:00?の懇親会に参加される方は、参加費1500円をお願いします。
 この平和を求める有志の会は、日本女子大の現役の先生や職員さん、卒業生、大学に関係する人たちのつくった会で、3年前の9月、安保国会の夏に誕生したそうです。
 自分の通った学校でお話させてもらえる、こんな貴重な機会をつくってくれたのは、かつての同級生たちです。どういうことからこういう運びになったのか、不思議でしょ?私だってそう思う、そのこともその日お話しますね。
 映画だけでも、トークだけでも、ご都合のよい時間にいらしてくださいませ。学校外の方でもどなたでも、性にかかわらず、どうぞご参加くださいな。この上映会とトークに、学生さんがきてくれたらすごくうれしいです。
 ちなみにこの週は連続講座として、4月23日、24日と、ジャン・ユンカーマン監督の「映画 日本国憲法」上映とディスカッションもあるそうです。いずれも上映は18:15?
 23日は西生田キャンパス 九十年館14番教室 24日は目白キャンパス 百年館6階603教室 こちらもどなたでも、どれか一回だけでもどうぞ、とのことです(一部省略)

2)会員の拡大
 前回以後、会員は7名増加し(うち4名は徳島県)、退会者1名で、計67名。

3)岡部さん近況
 発熱のため、4月9日、入院。月例の「政治現況報告」執筆は無理な模様。
 (追伸) 4月19日午前2時、かねて療養中の岡部太郎共同代表が逝去されました。通夜は4月24日18時から京王線幡ケ谷駅近く代々幡斎場で、葬儀は翌25日11時から同斎場で。

4)山岡聴子氏のインタビュー記事
 「週刊金曜日」による山岡聴子氏インタビュー掲載誌は4月27日刊行の予定。

5)「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」第1次送付
 集まった署名の第1次集約をし、13枚65筆を4月6日発行元へ送付。
 
6)集会の案内
① 第12回平和学習会
 「沖縄にとって憲法とはなんだったのか」 報告者:宮原真弥(流通経済大学教授)
 5月18日(金) 18:30~20:45
 東京ボランティア市民活動センター 会議室A (JR飯田橋駅隣 セントラルプラザ)
②『週刊金曜日』東京南部読者会
 5月24(木) 18:30~20:00 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)
③「なぜ隠すのか! 問われるメディアの力! モノが言えない空気を引き裂く!」
 望月衣塑子(東京新聞記者)/金平茂紀(ジャーナリスト・キャスター)
 5月27日(日) 13:00開場 13:30~16:00 目黒区民センター・大ホール 参加費500円
 主催:「戦争はごめんだ、いのちを守るオールめぐろの会」
④ 講演会「中学校道徳の検定教科書の問題点」
 講師 朝倉泰子さん(教科書ネット21常任運営委員) 
 6月10日(日)13:30~ 大田区消費者生活センター(蒲田駅東口より歩5分)参加費無料
 中学校道徳教科書を考えるつどい実行委員会 kyokashotakumin@gmail.com
⑤ 第29回「7・1閣議決定」違憲訴訟勉強・相談会
 (予定)安倍晋三を考える/川村茂樹 憲法9条の意味/土取英輝
     私にとっての戦争/福田玲三 通例報告/長坂伝八
 6月15日(金)または6月16日(土)13:30~16:30 神明いきいきプラザ(JR浜松町駅徒歩5分)

<別紙 2>
 『朝鮮半島をめぐる情勢――北東アジアの安全と平和のために――』
      (仮綴じ冊子 87 pp)
                  大畑龍次
  目 次
はじめに
1. 朝鮮半島問題とは何か
2. 南北関係の過去と現在
3. 朝鮮はなぜ核・ミサイル開発を進めたのか
4. 金正恩政権をどうみるか
5. 文在寅政権の誕生と課題
6. 緊迫する朝鮮情勢 ―朝鮮半島2017
7. 新進展を見せる朝鮮半島
8. 日朝平壌宣言と拉致問題
9. 安倍政権の対朝鮮政策を問う
おわりに 私たちに何ができるのか

資料
・南北共同声明(1972年7月4日)
・南北共同宣言(2000年6月15日)
・南北首脳宣言(2007年10月4日)
・日朝平壌宣言(2002年9月17日)
・ストックホルム合意(2014年5月29日)

朝鮮半島略史
(本文は省略)

 当面の日程について
 1)第53回例会・勉強会   5月27日(日)13:30~ 港勤労福祉会館別館・和室
 2)第51回運営・編集委員会 5月30日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
 3)第54回例会・勉強会   6月24日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 4)第52回運営・編集委員会 6月27日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ

★ ひとくちメモ ★ 6月に教科書展示会

 批判高まるなか、小学校では道徳の「教科」が始まりました。来年は教科化が中学校に拡大…。
 6月には毎年恒例、来年度の教科書の展示会が全国で始まります。各都道府県のホームページに順次、その詳細が掲載されます。東京ではすでに発表され、6月から約1カ月間、都内34個所で展示の予定。「東京都 教科書展示会 平成30年度」をキーワードにネット検索すると、正確な展示期間と開催場所が一覧できます。例えば大阪のスケジュールを知るには: 検索⇒大阪府 教科書展示会 平成30年度
 少し予習してから現物を見にいきたいと思っています。検索⇒道徳 教科化 問題点

完全護憲の会ニュース No.51 2018年3月10日

              <例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>
              <当会への入会費は1000円です。会費は無料>

         連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
         電話・FAX 03-3772-5095
         Eメール:kanzengoken@gmail.com
         ホームページ:https://kanzengoken.com/

    目次
       第50回例会・勉強会の報告                P.1
       別紙1 政治現況報告                  P.1
        ※編集より備忘録 「働き方改革関連法案」8法案の内訳 P.3
       別紙2 事務局報告                   P.3
       緊急警告028号「憲法擁護義務に違反し、自衛隊員の命を
          危険にさらす安倍首相は即時辞任せよ!」  P.4
       緊急警告029号「安倍首相は慰安婦問題被害者に直接謝罪せよ!」 P.4
       第48回 運営・編集委員会の報告(略)           P.5

       第50回例会・勉強会の報告

    *2月24日(日)、港区・神明いきいきプラザで開催。参加者10名、会員57名。
 司会は大西編集委員が担当、まず岡部共同代表からの「政治現況報告」(別紙1)を大野委員が代読。これに対しては「分かりやすく、良くまとめられている」「『働き方改革関連法案』には8本の法案が抱き合わせになっており、審議しにくくされている」「残業代なしの長時間労働になり、結果としてますます若者の結婚を困難にし、少子化につながる。法案提出者はそのことが分かっていないのか」「格差拡大により内需が減るほど、経済は確実に縮小する」などの意見が出された。
 ついで「事務局報告」(別紙2)を福田共同代表が提出、同報告に含まれる緊急警告第28号と29号を審議。一部字句の加除の外、第29号「安倍首相は慰安婦問題被害者に直冊謝罪せよ!」について、「韓国の前政権と日本が交わした国と国との約束は、政権が代わっても、守られるべきか?」「朴槿恵前政権は憲法裁判所によって罷免され、文在寅新政権は前政権の慰安婦合意の破棄・再交渉を公約として当選している」などの意見が交わされ、さらに「まだ生きている人には誠意をつくして謝罪すべきだ」「心に届くまでの謝意が必要」などの意見があり、承認された。
 勉強会にうつり、浜地道雄氏(「9条・地球憲章の会」世話人)から、「『地球儀俯瞰』で知る『美しい日本』~憲法9条こそ、その原点」のテーマについて、世界各地の映像をつかった報告があった。安倍首相が愛用する用語をつかって、逆に、首相が世界の状況にいかに無知であるかを、とくにイスラム教徒15億人、ヒンズー教徒10億人という現実から説き明かし、結論として日本国憲法9条は世界の宝であり、これを地球憲章にしてゆく運動の重要性を強調された。

<別紙 1>    第50回例会 政治現況報告

             岡部太郎(元『東京新聞』政治部長) 

 無風と思われていた今年の通常国会で思わぬ突風が吹き始めた。安倍内閣が最大のテーマとし、閣議決定の上、近く国会提出予定の「働き方改革関連法案」につき、首相が予算委員会で、自身の答弁を撤回し、陳謝したからだ。政府は労働条件を緩和するため、長時間労働の是正を図る法案と裁量労働制の対象拡大を図る法案8本を一本化し提出する準備を進めていた。このうち裁量労働制拡大は財界・企業の要望により、労働者が自ら残業代こみの労働時間を設定し、毎月受け取るが、残業代は支払われず、労働側は残業代カットの長時間労働になると強く反対しているものだった。
 首相は1月29日の衆院予算委で、厚生労働省の「2013年労働時間等総合実態調査」を基に「裁量労働制で働く人の労働時間は、平均的な人と比べると一般労働者よりも短くなる」と説明、答弁した。つまり実態調査では、裁量労働制で一日9時間16分、一般で9時間37分となっていたから野党がおさまらない。
 さらに調査の結果、一般的労働者のうち9人の一日の残業時間が15時間超、一日23時間も働かされていることが判った。厚労省の調査では裁量労働制は実時間、一般労働では最長残業の日と、別の項目での調査を比較したものと解り、安倍首相の発言取り消し、陳謝となった。
 首相が国会発言を全面取り消しで、あやまるのは極めて異例。首相は「厚労省の間違い」と涼しい顔だが、内閣全体、特に任命権者である首相の責任であることは、云うまでもない。
 野党は加藤勝信厚労相の責任追及と同時に裁量労働制の撤回、働き方法案の提出断念も含めて政府を追及するとしている。政府与党としては、将来の労働力人口減少に備え、非正規社員の一掃などと共に、働き方改革を進める方針だっただけに、思わぬミスで足元をすくわれそうだ。ほかに統計自体にも117件のミスが見つかった。政府は裁量労働制の一年延期も考え始めた。
 一方、モリカケ問題も簡単に消滅しそうもない。学校法人「森友学園」の国有地売却問題は佐川宣寿前財務省理財局長の「交渉記録は全て廃棄されている」との発言が改めて問題になっている。佐川氏は国税庁長官に栄転したが追及を恐れてか就任記者会見も行わなかった。しかし2月15日の平成29年度納税確定申告のスタートには、東京をはじめ、各地で佐川氏の責任を改めて追及するデモが発生した。というのも、今年に入って理財局をはじめ、新事実が次々に明るみに出始めたからだ。まず1月29日、近畿財務局が開示した内部文書には「(新たなゴミの)撤去費を反映した評価額で買い取りたい」との学園側の要望事項や国の対応方針が明らかにされていた。佐川氏は「価格について提示したことも先方からいくらで買いたいとの希望も一切なかった」と答弁しているが、これも財務局員が「1億3千万(万円)」「ゼロに近い数字まで努力」と伝えていた。また学園側が開校予定の小学校の名誉校長、安倍昭恵首相夫人が「棟上げ式に出る」と伝えた音声データも明らかになった。
 さらに決定的だったのは、2月9日財務省が近畿財務局文書5件以外に、新たに20件(300ページ)の財務省文書を発表したことだ。同省が国会に提出したのは、学園が土地を買う前に賃貸契約を結ぶ交渉をしていた(前例はなかった)2013年8月~15年4月にかけてのもので近畿財務局の作成。「契約前には国の貸付料の概算額を伝える」と明記してあった。前例のない貸付けを懸命に考えた経過が読みとれるという。結局2015年3月に校庭からゴミが見つかり、賃貸から正規の売却へと変更。ゴミ処理費として最大限の見積もりとし、8億2千万円を割引きする超安値売却となった。いずれにしても佐川氏の食言は明らかで、野党は同氏の衆院予算委証人喚問を求めている。また昭恵夫人も参考人として要求。これに対して安倍首相は「私は一切指示していない」の一点ばり。そんな指示は閣議ならともかく、あとはアウンの呼吸の役人の忖度しかないだろうに。
 世論調査(共同)も正直で「佐川氏を国会招致すべき」66.8%「必要ない」23.2%だった。
 今月は韓国の平昌(ピョンチャン)で冬季オリンピックがあり、氷上や雪上での熱戦に沸いたが、それ以上に国際政局では、南北朝鮮の合同選手団、また金正恩(キムジョンウン)氏の妹の金与正(キムヨジョン)氏、対外的元首ともいえる党序列2位の金永南(キムヨンナム)氏の韓国派遣での南北首脳会談が注目された。
 とにかくこの一年間、太平洋をはさんで、核とミサイルで角つき合わせ、極東の緊張をエスカレートさせていた末のトランプ大統領と金正恩。そして平昌五輪への南北合同選手団と女子アイスホッケーの共同チームを呼びかけた文在寅(ムンジェイン)韓国大統領。そのエサにパクリとくいついたのが金正恩氏だった。金氏の決断は早く、すぐに文化交流として女性だけの音楽団を韓国に送り込み、それに毎回有名になった美女応援団、そして切り札は妹の金与正と金永南氏訪韓を発表してイニシアチブを取り、予定されていた米韓軍事合同演習を取り止めさせた。
 訪韓の2人は10日の五輪開会式に出席するのに先立ち、同日朝、ソウルで文韓国大統領と実質的な南北首脳会談を行い、南北融和を演出した。朝鮮半島問題は南北韓鮮二国のみで行うことで合意したほか、文大統領の訪鮮で南北トップ会談を行うことを要請した。このように北の微笑外交に対し、米トランプ大統領は表立って反対できず、訪韓したフェイク米副大統領も米朝会談の可能性に言及した。一方安倍首相も開会式のため平昌入りしたが、従来の米日韓による北朝鮮抑え込みの強硬路線を変更せず、文大統領との会談でも「五輪が終われば、直ちに米韓軍事演習を再開すべきだ」と発言。文氏に「それは内政干渉だ」とたしなめられた。
 首相は国会でも野党質問をやじって自民党委員長に注意されたり、今国会でも森友問題で朝日新聞を「哀れで惨め」とフェイスブックで攻撃したり、一国のトップとして品格のなさをムキ出しにしている。

※編集より備忘録 「働き方改革関連法案」8法案の内訳
(ウィキペディアをもとに要旨作成。3月1日の首相官邸記者会見では下記下線項目を3本柱と言及)

8法案:①雇用対策法、②労働基準法、③労働時間等設定改善法、④労働安全衛生法、
⑤じん肺法、⑥パートタイム労働法(パート法)、⑦労働契約法、⑧労働者派遣法

◆第1の柱 ①雇用対策法: 働き方改革の総合的かつ継続的な推進

◆第2の柱 ②労働基準法
(1)時間外労働の罰則付き上限規制の導入
(2)長時間労働抑制策・年次有給休暇取得促進策
(3)フレックスタイム制の見直し
(4)企画型裁量労働制の対象業務の追加 →全面削除
(5)高度プロフェッショナル制度の創設
③労働時間等設定改善法: 勤務間インターバル制度の普及促進
④労働安全衛生法と、⑤じん肺法: 産業医・産業保健機能の強化

◆第3の柱 ⑥パートタイム労働法(パート法)と、⑦労働契約法
不合理な待遇差を解消するための規定
⑧労働者派遣法: 派遣先との均等・均衡待遇または派遣元の労使協定方式を選択

その他参考サイト:2/21 衆院予算委員会 公聴会 公述人 上西充子・法政大学教授

<別紙 2>    第50回例会 事務局報告

                 福田玲三(事務局)

1) ニュース発行の遅れ
 総会の詳報は会員のみ配布とし、会員名簿を整備するのに手間取り、ニュースの発行が定例日を大幅に遅れました。前号も総会準備のために発行が遅れました。あわせてお詫びします。

2)会員の拡大
 安倍政権の軍備拡張、憲法改悪の動きが加速するなか、戦争企図を阻止するため、総会で決定した会員拡大の具体化として、下記の呼びかけをニュースとともに配信、振替用意を活用して入会手続きを簡素化した。

「完全護憲の会」への入会ご案内

 さる2月14日の衆院予算委員会で安倍晋三首相は「専守防衛は戦略的に不利」との旨を述べた。自衛隊拡大の理屈付けに熱中して、「戦力の不保持」を定めた日本国憲法の条文からどれだけ遠く離れたか、気づいてさえいない風だ。
 同予算委員会ではまた「対話のための対話では意味がない」とも繰り返した。「蒋介石政権を相手にせず」と声明して、中国侵略の泥沼に踏み込んだ近衛文麿首相にそっくりだ。
 ジャーナリストのむの・たけじ氏は「悪い平和は、良い戦争に勝る」と遺言している。
 いまこそ「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないように決意し」(憲法前文冒頭)て、主権者である国民全員が抗議の声をあげるときです。
 本会の設立趣意書と会則(同封)をお読みいただき、当会に入会してくださいませんか。
 入会金は1000円で、会費は今のところいただいていません。
ともに戦争阻止にむけて全力を尽くそうではありませんか。

入会ご希望の方は、同封の振替用紙にご記入のうえ、ご郵送ください。

なお下記に、これまで発行した印刷物の一覧があります。ご希望の方はタイトルと部数と送付先をご返信下さい。
なお、この度、会員の皆様にはご希望部数を無償でお送りし、お知り合いの方などに配布して戴き、実費、カンパなどを受け取られましたら、それを当会口座に振り込んでいただくことになりました。
恐縮ですが、当会刊行物の普及にご協力をいただけますとたいへんありがたく存じます。

(1)シリーズ1『日本国憲法が求める国の形』(原価300円)
(2)シリーズ2『安倍政権下の違憲に対する緊急警告』(原価50円)
(3)シリーズ3『戦前の悪夢・戦争への急カーブ――政治現況報告集』(原価300円)
(4)シリーズ4『明治帝國憲法下のくらし――自民党改憲草案がめざすもの』(原価300円)
(5)シリーズ5『平和に向けて活用したい道徳/教育勅語の重圧と死線をさまよった臣民たち/歴史から見る道徳の教科化』(原価400円)
                2018年2月    完全護憲の会

3)緊急警告028号と029号の発出

・緊急警告028号
 憲法擁護義務に違反し、自衛隊員の命を危険にさらす安倍首相は即時辞任せよ! (2月9日)

 さる1月24日、各党の代表質問が衆院本会議で始まった際、安倍晋三首相は「自衛隊員に『君たちは憲法違反かも知れないが、何かあれば命を張ってくれ』と言うのはあまりに無責任。議論の余地をなくしていくことは、私たちの世代の責任ではないか」と強調した。
 この言い回しは首相の十八番のようで、同趣旨の表現は何度も使われている。
 翻って日本国憲法を見れば、その前文冒頭に「日本国民は……政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」と明記されている。政府は自衛隊員に「命を張ってくれ」という前に、全力をあげて平和を守り、自衛隊員の命を危険にさらさないことに努めねばならない。これが至上命令だ。
 憲法前文の末尾には「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と、かつて戦争に明け暮れた経験に対する深い反省が示されている。
 また第九条一項は「日本国民は……武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」としている。
 武力による威嚇や行使を放棄するのであれば、後は外交によって解決する以外にない。それは相手がどのような国であろうと、その国を無視することなく、平和外交に徹しなければならない。それが憲法の明確に示す道だ。
 ましてや、朝鮮の南北分断は日本による植民地支配の後遺症だ。日本は敗戦に当たって、自国の敗戦処理を優先し、植民地を放棄し成り行きに任せた。2002年小泉訪朝によって発表された「日朝平壌宣言」に盛られている「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した」の精神に立ち返り、辞を低くして交渉を開始すべきだ。
 安倍首相の好きな言葉に「対話のための対話は無意味」というのがある。これは怠け者の言い草であり、かつ不誠実だ。
2月7日、来日中のペンス米副大統領と会談した安倍首相は、ペンス氏が「すべての選択肢をテーブルの上に置く」と述べ、軍事攻撃も排除しない方針を示しているにもかかわらず、首相は日米の「揺るぎない結束」を言明した。
 安倍首相のこれらの言動は、憲法擁護義務に反し、自衛隊員の命を危険にさらすものであり、即座の辞任に値する。

・緊急警告029号 安倍首相は慰安婦問題被害者に直接謝罪せよ! (2月14日)

 韓国の文在寅大統領は、さる1月10日、年頭の記者会見で慰安婦問題に関する日韓合意について、「被害者を排除して政府間で条件をやりとりする方式では問題を解決できない」と、憲法裁判所によって弾劾され罷免された朴槿恵前政権を批判したうえで、日本に再交渉は求めないものの、「日本が真実を認め、心を尽くして謝罪し、教訓とするときに元慰安婦も日本を許すことができ、それが完全な慰安婦問題の解決だ」との見解を示した。
 これに対し、安倍晋三首相は「韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは全く受け入れられない。日本側は約束についてすべて誠意をもって実行している」と強く反発した。
 だが2015年12月に日韓合意が結ばれた直後の16年1月、自民党の桜田義孝元文科副大臣が「(慰安婦は)職業としての売春婦だった」と発言し、党内でも問題とされた。翌2月の国連女性差別撤廃委員会で、外務省の審議官が「軍や官憲による強制連行を確認できるものはない」と述べ、委員から批判された。合意に基づいて設立された支援団体は安倍首相に元慰安婦へ謝罪の手紙を求めたが、首相は「毛頭考えていない」と拒否した。
 国連女性差別撤廃委員会は翌3月、日本政府の取り組みはなお不十分と指摘。日韓合意を実行する際は、元慰安婦の意見に十分配慮するよう求めた。さらに翌17年5月、国連拷問禁止委員会は「被害者への補償や名誉回復、再発防止策が充分とはいえない」と指摘、合意の見直しを勧告した。
 「慰安婦問題は、問題が浮上した90年代から一貫して人権問題だった。個人と国家の関係で問題が浮上したのに、国家と国家の関係で処理しようとした。これでは解決になるはずがない」という批判が日本の法学者から出ている。韓国政府の新しい方針は、国際的な人権保障の潮流を組み入れた形で慰安婦問題に取り組んでおり、国際人権法の流れに合致するものだ。
 先の戦争中、米国で日系人が強制収容されるという人権侵害があったが、米国は日本政府でなく当事者を議会に呼んで謝罪した。日本政府が韓国政府を相手にして被害者個人を相手にしないこと自体、さらなる人権の侵害になる。
 もともと謝罪する側が「最終的かつ不可逆的」とは、あまりにも傲慢で謝罪する姿勢とは到底言えない。たとえ補償金になどついて合意に達したとしても、謝罪する気持ちに終りがあってはならない。
 安倍首相がBS朝日の番組収録で、慰安婦問題の日韓合意について「1ミリも動かすことはあり得ない」と述べたことについて、さる2月2日、自民党の二階俊博幹事長が、「国のトップが1ミリも動かさないと言ったら何も動かない……自分の主張だけで通るくらいなら、家の中で考えておればいい。そうはいかないところに外交の難しさがある」と批判した。
 日本国憲法の3大原理の一つである「基本的人権の尊重(不可侵)」は隣国の被害者個人にも適用されなければならない。
 安倍首相の加害者の立場を忘れたひとりよがりな態度は、日本国憲法前文の「われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という戦前史の教訓を無視しており、最も近い隣国との友好を妨げ、重大な紛争の糸口になる恐れのあるものとして、強く警告する。

4)集会の案内
① 第27回「7・1閣議決定」違憲訴訟勉強・相談会 -最高裁への上告終了の報告
  4月20日(金) 13:30~16:30 神明いきいきプラザ(JR浜松町駅徒歩5分) D室
 Ⅰ部 講演「北朝鮮・朝鮮半島・東アジアと日本の平和憲法革命」栗田禎子千葉大教授 
 Ⅱ部 報告  参加費:200円
② 『週刊金曜日』東京南部読者会
  3月23日(金) 18:30~20:00 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)
③ 中国・北朝鮮脅威論を越えて、3・28緊急市民集会
  東アジア不戦共同体の構築をめざして 主催:村山談話を継承し発展させる会
  3月28日(水) 16:30~19:30 衆院第1議員会館B1大会議室 資料代500円
④ 安倍政治を終わらせよう!3.19院内集会「ようやく見えてきた安倍壊憲の異常性」
  3月19日(月) 17時~ 小林節・慶応大名誉教授 参議院議員会館 入場無料 
  主催:立憲フォーラム・戦争をさせない1000人委員会 (18:30~ 国会前抗議行動)
⑤「戦争に一番近い島・沖縄のリアルを語り合う 反米軍基地のグローバル・ネットワーク誕生の中で」 山城博治、三上智恵、井筒高雄、大矢英代 (検索→レイバーネットのイベントカレンダー)
  3月20日(火) 18:30~21時 文京区民センター会議室2A (文京区本郷4-15-14) 資料代1000円
  ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン(平和を求める元自衛官と市民の会)主催 Days Japan協力

5)当面の日程について
 1)第51回例会・勉強会   3月25日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 2)第49回運営・編集委員会 3月28日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
 3)第52回例会・勉強会   4月22日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 4)第50回運営・編集委員会 4月25日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ

完全護憲の会ニュース №50 2018年2月10日

                 <例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>
                 <当会への入会費は1000円です。会費は無料>

         連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
         電 話・FAX 03-3772-5095
         Eメール:kanzengoken@gmail.com
         ホームページ:https://kanzengoken.com/
            
   目次  第4回総会の概要報告         P.1
       別紙1 第4回総会 承認・決定事項  P.1
       第49回例会・勉強会の報告       P.3
       別紙2 政治現況報告          P.3
       別紙3 事務局報告          P.4
       第47回 運営・編集委員会の報告(略) P.5

        第4回総会の概要報告

 さる1月28日(日)、港区・三田いきいきプラザで第4回総会を開催。
 司会を草野運営・編集委員長が担当し、議長に大西編集委員が選出され、以下の議案の審議に入った。
1) 第1号議案 2017年度活動経過報告
2) 第2号議案 2017年度決算報告及び会計監査報告
3) 審議(質疑応答・承認)
4) 第3号議案 2018年度活動計画について
5) 審議 (質疑応答・決定)
6) 第4号議案 新役員選出

 まず第1、2号議案を福田共同代表が報告したあと、第2号議案の会計監査報告書が代読された。質疑の後、いずれも異議なく承認された。
 ついで草野運営・編集委員長が第3号議案を提案、「勉強会を多くの人の関心を呼ぶものにしたい」「勉強会に映画やビデオ上映も利用したい」などの説明があった後、異議なく承認された。
 最後に第4号議案、新役員候補が提示され、異議なく決定された。
 承認、決定された主な議案は別紙1のとおり。

<別紙 1>   第4回総会 承認・決定事項

● 第1号議案 2017年度活動経過報告

 昨年1月29日開催の第3回総会においては、経過報告、決算報告、会則の改正(編集委員会を運営・編集委員会に改称する、など)を行い、活動方針(例会、勉強会の充実、冊子の発行計画など)が承認された。共同代表には岡部太郎、福田玲三が選出されたほか、運営・編集委員会や事務局の陣容が決まった。
 その後、総会の決定に基づき以下の活動を行った。

1.冊子の発行
  ・シリーズ第4号 『帝国憲法下のくらし――自民党改憲草案がめざすもの――羽毛よりも軽かった人の命』5月1日発行、80 pp
  ・シリーズ第5号 『平和に向けて活用したい道徳――教育勅語の重圧と死線をさまよった臣民たち――歴史から見る道徳の教科化』12月15日発行、112 pp

2.緊急警告の発信
  018号 「行政府の長」が国会に改憲論議を促すのは憲法違反!(4月15日)
  019号 過去の亡霊、教育勅語の復活は違憲(4月28日)
  020号 「共謀罪」は違憲! 採決強行は許されない(6月16日)
  021号 安倍首相の改憲発言は違憲、首相は即時退陣せよ(6月16日)
  022号 自衛隊明記は口実、9条全面改悪の突破口とするもの(8月9日)
  023号 またしても臨時国会召集要求無視の憲法違反!(9月2日)
  024号 首相は国会解散の権限を持たない(9月21日)
  025号 小池都知事の改憲発言は許されない(10月17日)
  026号 内閣の改憲提案は越権、不法、憲法違反!(11月6日)
  027号 軍事的選択肢を含むトランプ大統領方針の100%支持は許されない(11月10日)

3.勉強会
  3月26日 国連「平和への権利宣言」について 講師:飯島滋明
  4月23日 道徳の教科化と教育基本法     講師:山岡聴子
  5月28日 同上(続)
  7月23日 「国連における核兵器禁止条約」について  講師:飯島滋明
  8月27日 「米国の原爆投下の責任を問う会」設立趣旨について 講師:水澤壽郎
  9月24日 道徳教育と教育基本法-新パンフレット目次案-  講師:山岡聴子
 10月29日 教育勅語と子供たち -歴史から見る道徳の教科化ー  講師:山岡聴子
 11月26日 同上(続)
 12月24日 朝鮮半島をめぐる情勢                講師:大畑龍次

4.安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名 第1次集約 12枚60筆

5.月例の例会・勉強会は1月の第37回から12月第48回まで開催した。闘病中の岡部共同代表も毎月欠かさず「政治現況報告」を執筆。その全文も含め、翌月には月例報告を会員など各方面に郵送またはBCC送信した。

6.運営・編集委員会は、例会・勉強会から1週間以内に開き、2017年度は1月の第34回から12月第45回まで開催した。

● 第2号議案 2017年度決算報告及び会計監査報告

  決算報告及び会計監査報告が承認された。

● 第3号議案 2018年度活動計画について

1.例会・勉強会について
 1)例会・勉強会は今期も毎月1回(原則、第4日曜日)開催し、内容の充実をはかる。
  ・憲法問題の議論を活発化し、小冊子の刊行やホームページを通じて発信する。
  ・勉強会は、外部講師や会員による講演のほか、映画上映なども活用して行う。
 2)会場費・資料代として参加費300円をいただく。

2.運営・編集委員会について
 1)毎月1回開催する。会員は誰でも参加して意見を述べることができる。
 2)運営・編集委員会は事務局と協力して会の運営全般に責任を持つ。

3.インターネット上での発信について
 1)日々生起する憲法違反の状況に関する違憲告発(緊急警告)を会のホームページで発信し、例会にも諮って検討を重ね、小冊子の発行につなげる。
 2)ブログやコメントの投稿も同様に、適切なものを選んで検討を加え、当会の刊行物などに活用する。

4.会の刊行物について
 1)今年度は下記2点の発行をめざす。
  ①「朝鮮半島情勢」問題 起草者:大畑龍次氏に依頼。2018年5月末発行予定
  ②(未定)

5.小冊子「日本国憲法がめざす国の形」シリーズの普及について
1)とくに好評の最新刊シリーズ5(道徳の教科化)を筆頭に、今後とも各種の集会などで刊行物の普及に取り組み、各方面にも協力をお願いする。
2)会員には希望部数を無償で配布し、販売などで得られた金額を振り込んでいただく。

● 第4号議案 新役員選出 

 1)共同代表には引き続き岡部太郎、福田玲三が選出された。(役員の任期はすべて1年)

         第49回例会・勉強会の報告

  総会終了後、例会・勉強会を開催、司会は草野運営・編集委員長が担当した。まず岡部共同代表からの「政治現況報告」(別紙2)を川本委員が代読。これに対しては労基法の大改悪が今国会に提起されているので、加筆してほしいなどの要望があり、岡部氏に伝え、加除してもらうことになった。
 ついで2月勉強会の講師を予定している浜地道雄氏から、講演のテーマ「『地球儀俯瞰』で知る『美しい日本』~憲法9条こそ、その原点」は、安倍首相の提起を裏返した皮肉であると紹介された。
 そのあと「事務局報告」(別紙3)を行ない、異議なく例会を終えた。

<別紙 2>  政治現況報告

          岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)2018年1月28日 
                      
 平成30年の国内政局は比較的穏やかに明けた。それは自民党内の安倍一強という構図によるものだが、平成の最後の正月ということもあり、各党とも強気の政治発言を控えたということもある。安倍の年頭の辞も、憲法改正など「今年こそ」と意欲を示したものの激しく求めず、今秋の総裁選三選を狙って、経済と国民福祉中心のおとなしいものだった。
 こんな中で1月22日第196通常国会が召集されたが、野党は民進党が進めた立憲民主党と希望の党の三大野党の国会統一会派が、それぞれの党の事情から実現せず、安倍にとっては気楽な国会となった。そのせいか施政方針演説では、憲法改正については「国会で憲法審査会を中心に議論を深めてほしい」と最後に期待を示しただけ。ただ本会議前の両院議員総会では「今年はいよいよ改憲をスタートさせる時だ」と強い調子でゲキを飛ばし、注目された。安倍首相は、国会演説や論戦では、なかなか本音をもらさず、外部で本音が続く。
 働き方改革、人づくり革命、生産性革命など目標を示したものの、その内容はいずれも具体性を欠いた。特に働き方改革は経営者側の要望に従い、賃金の上限設定、労働者の流動化を狙うもので、労働界を初め立憲民主党など野党が、労働の質の低下を招くとして強く反対している。今国会での与野党対決法案として、成立するまでには、混乱も予想される。
 そんな低調さから本会議の代表質問や予算委員会審議も、国民を驚かすような議論はなかった。自民党では、むしろ安倍三選をめぐる秋の総裁選に視線が集まっていて、対抗馬の石破茂、野田聖子総務相、岸田党政調会長、河野太郎外相、小泉進次郎氏らの動向に関心が集まっている。石破氏は閣外に出て、この総裁選が最後のチャンスと派閥も結成。全国にも出掛けているが、基本的に安倍と同じ右派で、政策的に余り差がないのが弱味。それに党内派閥での支持も多くない。憲法改正でも、安倍の「9条1、2項存続、3項で自衛隊を認める」というのに対し、石破は従来の党の主張通り、「2項の削除」と主張しているが弱い。
 野田総務相は「閣内にいても、総裁選に立候補する」と新年にも発言している。こちらは安倍の外交や安全保障、経済に対し、福祉と国民生活の向上に力点を置いている。しかし前回の総裁選で安倍の締め付けに合い、20人の推薦人が集められず涙を飲んだように、党内基盤が弱い。それに小池都知事に見られたように、女性は近直の事項、細かな政策については、男性より強いが、将来の展望、大局観について苦手だ。よい軍師が付けばよいが、小泉元総理とは、郵政選挙以来、犬猿の仲だ。岸田は原爆のヒロシマが選挙区。党主流、中道の池田派宏池会のリーダーであり、政策にも強く、一番スジは良い。ただ何分にも人が良すぎ、おとなしすぎる。今回も安倍からの次回の禅譲を狙って自重するとの声がある。政権は奪い取るものだが。河野は一番度胸があるので、面白いのだが、今まで一匹狼の時期が長すぎた。進次郎はまだ若いとなると、安倍三選有利だが、9月まで半年以上、何があるかわからない。特に外交面で混乱がありうる。そのほか小泉、細川両元首相らが原発即時廃止を訴えて、原発反対の立憲との共闘を示唆するなど、台風の目となるかも知れない。
 一方、国際問題では、この一年間、北朝鮮金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長とトランプ米大統領の間で核戦争一触即発の緊張関係が続いていた。北朝鮮が大陸間弾道弾のテポドンなどICBMの打ち上げを毎月のように繰り返し、確実に米沿岸に届くよう実績を積み上げて米側やトランプを威嚇し、また地下核実験も数回にわたって実施。トランプ新政権を挑発し続けて来た。また米側もトランプ大統領が、たびたび北朝鮮への先制攻撃や核攻撃を公言して両国と東アジアの緊張を高めて来た。
 ところが、韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、自身の選挙公約である南北朝鮮の融和のため、今年2月9日、韓国の平昌(ピョンチャン)冬季五輪に、北朝鮮の参加と南北合同選手団の結集を呼びかけていたのに対し、金委員長が元旦の「新年の辞」で、平昌五輪への代表団派遣に言及したことから、一気に雪解けムードが高まった。
 北側が参加の条件として、オリンピック期間中、米韓の合同軍事演習の中止を要求。これを米側がのんだため、一気に南北朝鮮の話し合いが進み、1月9日には両国の軍事境界線である板門店で両国五人の高官代表によるまる2年ぶりの南北会談が実現した。その結果、北は平昌五輪に参加、代表団を送るとともに、選手のほか応援団も送る、女子アイスホッケーで南北統一チームを編成、合同入場行進を行う、文化交流として、北の管弦楽団の公演を韓国で開く――などを決めたほか、朝鮮半島の問題は南北両国の当事者のみで解決することでも合意を見た。これは文大統領の公約による、弱い立場を利用して、北側が強引に要求したものと思われる。トランプは、国際的に金政権に圧力をかけ、北の核放棄に追い込むとし、安倍首相も全く同じ解決策を主張していたが、文政権の南北融和政策と北の柔軟路線への転換により、強硬論は後退を余儀なくされた。これは金外交の一応の勝利といえる。ただ9日の南北軍事担当協議や平昌五輪後は、どのような展開になるか全く解らず、結論はまだ先になる。
 この間トランプ大統領は1月20日、就任まる1年を迎えたが、支持率は相変わらず38%と過半数に届かず、また大統領選でロシアと裏取引があったとの疑惑は、さらに追及中。全米に反トランプ、退陣要求のデモも広がり、危機的状況にある。トランプ政権べったりの安倍首相が、どうカジをとってゆくのかも難しい問題になりそうだ。
 また安倍首相は平昌五輪開会式にも出席することを明言した。慰安婦問題の再交渉を要求する文大統領を説得し、できれば北代表団とも会談し、拉致問題解決のきっかけにしたいという。自民党内には反対が強いのだが。

<別紙 3>   第49回例会 事務局報告

              福田玲三(事務局)2018年1月28日

1.岡部共同代表の近況
  12月の例会出席後、年末に肺炎の疑いで緊急入院、1月12日退院。1月の総会・例会は欠席。

2.来信(珍道世直氏より)
 ニュース49号拝受いたしました。第48回例会での事務局報告で、私の「裁判官訴追審査事案決定通知」のご報告をいただき、ありがとうございました。
 いつもご注視いただいておられますことに厚く御礼申し上げます。
 第48回例会に岡部共同代表様が、1年4か月ぶりに出席されたとの御事嬉しく存じます。また、岡部様の「政治現況報告」を拝読し、その御分析と御洞察に心から敬意を表しております。(後略)

3.2月の勉強会
 講師:浜地道雄氏(「9条地球憲章の会」世話人)
 仮題:「地球儀俯瞰」で知る「美しい日本」~憲法9条こそ、その原点

4.シリーズ5(道徳の教科化)の評価
 川村茂樹氏から「“平和に向けて活用したい道徳”を非常に興味深く読ませて頂きました……ここまで説得力を持って、戦争について記された文章を私的には余り存じません……」に続いて「私は戦争の背後に有るものも又“経済”であると考えております。そして教育を歪めるものも又“経済”である……」に始まる長文のご意見。
 水野スウ氏からは、シリーズ5の冊子がとても充実した内容でたいへん参考になったとし、それに重なる意味合いのものとして、『いのみら通信』(1月17日号)の次の一節の引用をご教示いただいた。「主権者は私たち。いつもそれを忘れないで。『私たち』の多くが憲法を変えたいと望んでいない今、変えることが本当によりよい未来につながるのかどうか。戦争をしない国で生まれ育った私のアイデンティティは、憲法の平和主義に裏打ちされています。改憲で戦争する国・できる国に変われば、やがて平和の定義も変わるでしょう。平和のためには戦争もしかたがないんだと言う私に、私はなりたくありません。『死は鴻毛よりも軽しと覚悟せよ』と軍人勅諭に。風に舞い散る鳥のひとひらの羽根よりも軽いとされた兵士一人一人のいのちを思う時、自分のいのち=beが自分のものでなかった時代にほんのすこしでも逆もどりさせてはならないと思うのです。」

5.集会の案内
① 第27回「7.1閣議決定」違憲訴訟勉強・相談会 -最高裁への上告終了の報告-
 2月16日(金) 13:30~16:30 神明いきいきプラザ(JR浜松町駅徒歩5分)
        D室 参加費:200円
② 『週刊金曜日』東京南部読者会
2月23日(金) 18:30~20:00 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)
③米国の原爆投下の責任を問う会 講演会  講師:崔鳳泰弁護士
 「なぜ今、韓国被爆者が米国政府と企業に謝罪と賠償を求めて訴訟に踏み切ったのか」
 2月24日(土) 13:30~  キリスト友会会堂(港区4-8-1) 資料代1000円
④ 第11回平和学習会
 「安倍壊憲を阻止し、安保条約を破棄しよう」 報告者:宇井宙、花岡蔚、王道貫
 3月10日(土) 13:30~16:30 資料代200円
 東京ボランティア市民活動センター 会議室B (JR飯田橋駅隣 セントラルプラザ) 

完全護憲の会ニュースNo.49 2018年1月10日

               <例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>

        連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
            電話・FAX 03-3772-5095
            Eメール:kanzengoken@gmail.com
            ホームページ:https://kanzengoken.com/

    目 次 第48回例会・勉強会の報告          P.1
        第45回運営・編集委員会の報告(略)     P.2
        別 紙 1 政治現況報告          P.2
        別 紙 2 事務局報告           P.4

     第48回例会・勉強会の報告

 *12月24(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で開催、参加者15名、会員56名

 司会を草野運営・編集委員長が担当し、まず、1年4カ月ぶりに車椅子で出席の岡部共同代表から、病状の報告、ついで「政治現況報告」(別紙1)が行われた。岡部共同代表は都合により退席し、そのあと「事務局報告」(別紙2)が行われた。岡部代表の「政治現況報告」については、病気療養中にもかかわらず、ジャーナリストの真価が発揮されていると好評だった。時間の関係で、討議はすべて勉強会の「朝鮮半島をめぐる情勢」報告後に、あわせて行われることになった。
 ついで勉強会に移り、大畑龍次氏(アジア問題研究者)から、次の要旨にそって講演が行われた。
1.自己紹介
2.文在寅政権誕生の経緯
3.文在寅政権の対北政策
 ① 平和な朝鮮半島の実現
 ② 朝鮮半島の非核化
 ③ 関係国が参加する「朝鮮半島平和協定」
 ④ 経済協力と非政治的交流事業 イ、離散家族再会のための南北赤十字会談 ロ、平昌オリンピックへの参加 ハ、南北軍事当局会談の実現
4.朝鮮半島の基本構造
 ① 冷戦構造
 ② 軍事衝突の可能性
 ③ 問題は安倍政権

 約1時間にわたるこの報告に、次のような質問があった。
 「偶発的な軍事衝突が起きた場合、ストップをかけるのは、どの国か」「戦争が起きたら平昌オリンピックは開催不能か」「金正恩委員長の失脚、暗殺はあるのか」……
 講師はこれらの質問に答えたのち、さらに、平昌オリンピックに北側が参加し、南北チャンネルが軌道に乗れば、金大中・盧武鉉政権以来の高麗連邦制(北側の提案)と国家連合制(南側の提案)という民族統一構想があること、この南北の提案には本質的な違いはなく、中ロともに南北の自主的統一を支持している旨の言及があった。
 (報告者が以上のテーマに加筆し、5月に当会より新冊子発行の予定)

   当面の日程について

 1)第46回臨時運営・編集委員会 1月12日(金)14:00~ 三田いきいきプラザ
 2)第4回総会 兼 第49回例会・勉強会 1月28日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 3)第47回運営・編集委員会 1月31日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
 4)第50回例会・勉強会 2月25日(日)13:30~ 神明いきいきプラザ(JR浜松町駅)

<別紙 1>
         政治現況報告

              岡部太郎(東京新聞元政治部長) 2017年12月24日 

 政府は12月8日の閣議で、現天皇の退位を再来年平成31年の4月30日とし、皇太子が翌5月1日に即位、同時に改元も行うことを正式決定した。昨年夏に天皇が自身の老齢により健康に自信が持てなくなり、象徴天皇の役割も果たせなくなったとして、生前退位を希望されている。一年余で、天皇と皇太子のバトンタッチが実現することになった。
 安倍首相は12月1日に25年ぶりに皇室会議を招集(前回は1993年の皇太子と雅子さまの結婚が議題)、現天皇の退位と皇太子の即位、改元を決めた。平成30年末の退位論もあったが、年末・年始は天皇の宮中行事が多く、また年度替りの4月1日は、再来年、地方選挙や参院選挙、また4月は一般でも入学や転勤が多く、移動が激しいということで、4月末と5月1日が選ばれた。天皇は戦前は一世一元ということで、逝去が条件であり、生前の退位は江戸末期の1817年の光格天皇から200年ぶりのことという。新元号は来年の秋に発表の予定。
 昭和は64年と平成の倍ぐらい長く、前半は日本の軍国主義と戦争の世紀、後半は昭和20年の敗戦により、戦争放棄の新憲法による平和と民主主義、日本復興の激動の時代だった。それに比べ平成の30年は、前半は“失われた20年”の経済不況時代。後半は安倍政権登場による戦前回帰と右寄り政策による不安定な時代だった。また世界もブッシュ米政権のムリなイラク戦争の結果、IS(イスラム国)支配の中近東激震の時代が長く、ヨーロッパはまだそのイスラムのテロに揺れ続けている。その上、アメリカもタカ派トランプ大統領の勝利によって、弱肉強食、自国第一主義によって世界はもちろん、米国内さえ分裂の危機に陥っている。この右傾化は日本を含め、世界的な潮流だ。
 さらに東アジアには、北朝鮮という“ならずもの国家”が出現し、怒りやすいトランプを核実験とミサイルで挑発し続けている。
 そんな中で日本はどうか。安倍首相は9月28日の臨時国会冒頭で、衆院解散のカケに出た。
 このカケは希望の党を立ち上げた小池都知事の野党排除ミスと前原民進党党首の早トチリで野党が自滅。自民党がタナボタの圧勝を納めた。
 来年、平成30年の政局は、再来年にイベントが集まった状態で、秋の安倍自民党総裁三選がかかる総裁選があるだけ。順風満帆で三選へ駆け込む勢いだが、何があるか解らないのが政界。案外混乱のタネが転がっているかも知れない。安倍首相は調子に乗って、2020年には憲法改正などと云うが、お膝元の与党、公明党が憲法改正反対、自民・公明連立解消へカジを切ろうとしている、との見方がある。平和の党へ、もう一度立ち戻るという思いだ。それに自民党内のハト派、岸田派(政調会長).石破派など旧宏池会の流れがあり、麻生副総裁もまだ色気があり、宏池会再統合の動きがあるという。
 特に安倍にとって依然アキレス腱なのは、“モリ・カケ問題”だ。「丁寧に説明する」と云いながら、相変わらず国会でも逃げ回っている。
 もり・かけ問題は11月の特別国会でも予算委員会や科学技術審議会で野党が追及したが、特に森友学園問題では、学園と国側の折衝を示す録音テープが次々と発覚。財務省側もそれを本物であると認めざるを得なくなり、進展が見られた。特に土地売却を調査した会計検査院の河戸院長が、値引き理由となったごみ撤去費用の推計根拠が「検査で確認できなかった」と明言。財務省の太田理財局長も売却を前提に定期借地契約を結んだのは「過去数年で本件のみ」とするなど、特例ばかりだったことを認めた。
 特に学園の土地3㍍以下に埋まっているゴミについて、学園側が「3㍍より下は明確でない」と言っているのに「そこは9㍍まであったと、あいまいにすればよい」と助け舟を出し、8億2千万円値引きに決めたことが明らかになった。この問題は、来年の通常国会まで尾を引くことは確実で、特に安倍昭恵氏、加計学園理事長の証人喚問が実現するかが焦点。
 「完全護憲の会」を立ち上げて4年。私の中で結論が出ていない問題が二つあった。一つは天皇制の問題。一つは戦争放棄と米の核の傘、核の抑止力の問題だ。天皇制の問題は、はからずも今回の退位、即位の決定で、一応国民に納得のいく形で、象徴天皇時代のルールが引けた。あとは女帝と女性皇族の問題だが、これもそう遠くない時に結論が出るだろう。もう一つの米国の核の傘、核抑止力の問題は戦後70年以上たっても戦後と全く同じだった。それが一つの進展を見た。
 ノーベル平和賞にNGO(非政府組織)の「核兵器廃絶キャンペーン」(ICAN)が選ばれたことだ。ベアトリス・フィン事務局長は「私たちは偽りの核の傘の中にいる。他者を支配するために作った核兵器に地球が支配されている」とし、国連で核非保有国122ヵ国で採択した核兵器禁止条約を米ソ中など核保有国はもちろん、核の傘に入っているため禁止条約を批准していない日本などに「核保有国の共犯者になるのか」と強く警告した。また、このノーベル賞授賞式にはICANのメンバーで、広島原爆の被爆者であるサーロー・節子さん(85)が初めて出席。「核兵器は絶対悪だ」と自らの経験の悲惨さを語り、出席者の共感を得た。特に13歳の折の被曝のさい、建物の下敷きになり、遠くに見えた光を頼りに、あきらめず這い出して助かった、と報告。「核兵器禁止条約はその光。皆がそれに向かって這っていかねば」と満場の拍手を浴びた。
 確かに第二次大戦は、広島、長崎の原爆二発で終結したため、核抑止力のみが強調され、東西冷戦の中で、米ソの核増強競争が始まり、英国、仏国、インド、パキスタン、イスラエル、東アジアの片隅、北朝鮮まで核武装するようになり、現実的には抑止力にならない、使うことのできない兵器になっている。2045年は日本で原爆が使われて百年。被爆国である日本は、まずそこへ向けて、核兵器凍結へ世界をリードしてゆかねばなるまい。
 幸い再来年の5月は改元、新天皇で日本は新しいスタートになる。とりあえず2029年までの10年を原発の廃棄と決め、小泉、細川らの元首相や河野洋平氏らを中心に国民運動を展開する。
 さらにEUと米国で大西洋を非核とし、ロシアを巻き込む。太平洋では、日本、ASEAN、豪州、カナダ、チリなどが、米国と中国の核不使用をお膳立てする。核凍結は少しずつでも2045年までの間に、光へ向けて進んでゆくだろう。
 広島高裁が12月に、阿蘇噴火、火砕流の危険があるとして、伊方3号原発の停止命令を出した。河野外相も核兵器廃棄の道は2本あるが、結論は同じといっていた。広島出身の岸田元外相も、原爆廃棄で世界賢人会議を開いた。世界は動く。

<別紙 2>
         第48回例会 事務局報告

                    福田玲三(事務局)2017.12.24
1)来信ほか   
① 裁判官訴追審査事案決定通知 
 貴会におかれましては、大切な事柄に取組まれ、敬意を表します。
 私の提起いたしました「閣議決定・安保法制違憲訴訟」につきましては、今日までご注視・ご支援いただき有難うございました。
 本件訴訟につき、去る平成29年6月29日、「本件上告を棄却する」との「最高裁決定」が下されましたが、本件決定を下した最高裁判所第一小法廷裁判官全員(5人)は、「職務上の義務に著しく違反するとともに職務を甚だしく怠った(裁判官弾劾法第二条 弾劾による罷免の事由)として、罷免の訴追を求める「訴追請求状」を裁判官訴追委員会に、去る8月22日提出し、ご報告申し上げたところでございます。
 このことにつきまして、本日12月15日、裁判官訴追委員会から、「訴追請求事由は、裁判官弾劾法第2条に該当しないので、訴追しない。」との「裁判官訴追審査事案決定通知」が送達されましたので、ご報告いたします。
 貴会におれましては、ご健勝で引続き使命を果されますよう祈念いたしております。
 今日までの御支援、誠にありがとうございました。(珍道世直)

② 重慶大爆撃控訴審で東京高裁が請求を棄却

日中戦争中、日本軍による中国・重慶市や周辺への爆撃で家族が犠牲になった中国人の遺族が日本政府に謝罪と損害賠償をもとめた控訴審判決で、東京高裁は去る12月14日、請求を棄却した。
判決は日本軍が1938年以降、蒋介石政権が首都を置いていた重慶の市街地や、四川省の各地を狙って爆撃を繰り返し、多数の市民が犠牲になったことを認めた上で、「原告には当時の国際法に基づく損害賠償請求権がない……」などとした。
この重慶大爆撃は1945年3月10日、米軍機による東京大空襲の先例になった。

③ 「米国の原爆投下の責任を問う会」 第4回拡大世話人会
 標題の世話人会は12月16日に三田の基督友会会堂で行われ、高橋博子氏(明治学院および名古屋大学研究員)の講演「封印された広島・長崎」は、原爆投下後のABCC(原爆傷害調査委員会)などによる被爆者調査が、今後、原爆が使用された場合に対処するための情報を得るために行われ、冷戦思考に基づいていたこと、「患者の健康、福利、権利を向上させ守る」「個々の被験者の権利および利益に優先することがあってはならない」などの「医学研究の倫理的原則」が無視されていたことを指摘した。
高橋氏の講演の後、目的として、「無差別大量殺戮であった広島・長崎への原爆投下に対して米国の責任を問うことを原点とし、核兵器の廃絶に向って多様な行動を起こす」を掲げる会則案が提起され、拍手で承認された。

2)新パンフレットの校正と納本
 新パンフ『平和に向けて活用したい道徳/教育勅語の重圧と死線をさまよった臣民たち/歴史から見る道徳の教科化』の校正を、11月29日(三田いきいきプラザ:大西、草野、福田)、12月3日(三田いきいきプラザ:大西、大野、草野、福田)、12月8日(田町駅傍ルノアール、三田いきいきプラザ:大西、山岡、草野、福田)、12月11日(港区勤労福祉会館:大西、山岡、草野、福田)で行う。この間、八木雪雄氏よりカラーの表紙、カット届く。12月18日納本(1000部、原価400円)。この新パンフに、次の支援のお願いをつけ、順次、当会ニュース宛先あて発送。

 ご支援とご協力のお願い

 内外ともに多難だった2017年が終わろうとしています。
 憲法前文冒頭、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」を自民党改憲案は完全に削除しています。来春早々から、この改憲攻勢は始められるでしょう。
 国民を悲惨のどん底に陥れたあの15年戦争を回顧するとき、教育勅語や靖国神社などを背景にした道徳教育がいかに国民から戦争反対の悲願を奪い去ったか、痛切に実感されます。
 この度のパンフレット『平和に向けて活用したい道徳/教育勅語の重圧と死線をさまよった臣民たち/歴史から見る道徳の教科化』は、その切実な回顧から生まれました。どうか、このパンフレットを回りの方々に広めてくださいませんか。
あわせて、まことに恐縮ですが年末カンパへのご協力をお願いします。
 来年も引き続き、当会へのご支援をお願い申し上げます。
 みなさまの新年におけるご健康とご幸福を祈っています。

  2017年12月
               完全護憲の会

3)集会の案内

① 『週刊金曜日』東京南部読者会
 1月25日(木)18:30~20:30
 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)

② 第27回「7・1閣議決定」違憲訴訟勉強・相談会
  -最高裁.への上告終了の報告-
 2月16日(金) 13:30~16:30
 神明いきいきプラザ(JR浜松町駅徒歩5分)D室
 参加費:200円

③ 米国の原爆投下の責任を問う会講演会
 2月24日(土) 13:30~
 キリスト友会会堂(港区4-8-1) 資料代1000円
 講師:崔鳳泰弁護士
 テーマ:なぜ今、韓国被爆者が米国政府と企業に謝罪と賠償を求めて訴訟に踏み切ったのか

④ 第11回平和学習会 (テーマと報告者は検討中)
 3月10日(土) 13:30~16:30
 東京ボランティア市民活動センター(JR飯田橋駅隣・セントラルプラザ)
  B会議室(40人収容) 

完全護憲の会ニュースNo.48 2017年12月10日

     *例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください (予約不要 会議室代300円)

        完全護憲の会
        〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312
        電話・FAX 03-3772-5095
        Eメール:kanzengoken@gmail.com
        ホームページ:https://kanzengoken.com/

   目次  第47回 例会・勉強会の報告          P.1
       第44回 運営・編集委員会の報告(略)     P.1
       別紙 1 政治現況報告            P.2
       別紙 2 事務局報告             P.3
       別紙 3 緊急警告026号            P.5
            内閣の改憲提案は越権、不法、憲法違反!
       別紙 4 緊急警告027号            P.6
            軍事的選択肢を含むトランプ大統領方針の
            100%支持は許されない。

       第47回 例会・勉強会の報告

*11月26(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で開催、参加者6名、会員56名

 司会を草野運営・編集委員長が担当し、まず「政治現況報告」(別紙1)が代読されたのち、「事務局報告」が行われ、これらの報告をめぐり次のような意見が交わされた。
 「大阪市がサンフランシスコと、慰安婦像の設置を理由に姉妹都市を解消したとの報道に驚いている。サ市はすごく民主的な都市で、小学校では、どこから来た子どもであろうと全く差別がない。そのような思想的な理解なしに大阪市は姉妹関係を結んでいたのだろう」「憲法は制定後時間が経っているから改憲してもいいと単純に言う知人がいたので、あきれた」「新パンフレットの内容で意見の異なる箇所には、その旨の脚注を入れたらどうか」「できるだけ意見の一致を図りたい」「全部の箇所で意見が一致することはあり得ない」「基本的には同意している。個々の記述で意見が違うだけだ」「意見の対立は内輪モメではない。討論の過程だ」「戦前の男尊女卑は戦後まで余韻が残り、女子は教育しなくても良い、腰が重くなるからと言われていた」「戦前は、天皇家をモデルにして、父権を中心にした一家というイメージが作られていた」……
 ついで緊急警告026号、027号が検討され、027号について一部表現の不備が指摘され、修正された。
 その後勉強会に移り、新パンフレット第3集討議のための編集会議(11月12日)以降の要望・意見・提案をまとめた分厚い「検討資料」を参考に、新パンフレット草案の検討に入った。すでに事務局報告で紹介されている「教育勅語」の徳目評価や愛国心の評価とともに、新教育基本法成立過程における「復古的な志向」と「新しい時代への対応」の本質的な意味などについて討議したのち、執筆者の意向を尊重して、大筋合意に達し、標題も『平和に向けて活用したい道徳/教育勅語の重圧と死線をさまよった臣民たち/歴史から見る道徳の教科化』に決めて閉会した。

     当面の日程について
 1)新パンフレット編集会議 12月3日(日)13:00~ 三田いきいきプラザ
 2)新パンフレット編集会議 12月8日(金)13:00~ 三田いきいきプラザ
 3)新パンフレット編集会議(予備日)12月11日(月)13:00~
 4)第48回例会・勉強会  12月24日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
   勉強会のテーマ:朝鮮半島をめぐる情勢 講師:大畑竜次氏(アジア問題研究者)
 5)第45回運営・編集委員会12月27日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
 6)第46回臨時運営・編集委員会1月中旬( )14:00~ 
 7)第4回総会兼第49回例会・勉強会 1月28日(日)13:30~ 神明いきいきプラザ
 8)第48回運営・編集委員会1月31日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ

<別紙 1>
         政治現況報告

                岡部太郎(東京新聞元政治部長) 2017年11月26日 

 衆院選で自民大勝、野党の民進、希望の分裂を起こすなど予想外の結果を残した解散騒ぎは、11月1日に特別国会を召集。安倍晋三首相が衆参両院での首相指名選挙で第98代の首相に指名されて幕を閉じた。安倍は同日中に八月の内閣改造で就任した閣僚全員を再任。自公連立の第4次安倍内閣を発足させた。会期は12月8日(金)までだが、11月5日にはトランプ米大統領が初来日。引き続きベトナムでASEAN首脳会議があったため、実際の審議は17日の首相所信表明演説からになった。
 一方、野党は希望の党の惨敗、民進党の希望の党への合流失敗による分裂で、自民との対決どころではなくなった。まず希望の党は、日本を逃げてパリで開票を迎えた小池都知事が14日に責任をとって希望の党代表を辞任。後任の代表選出選挙で、小池氏に近く、右寄りの玉木雄一郎氏を選出。同じ民進党左派の大串博志氏を抑え、古川元久元国家戦略相を幹事長に、長島昭久元防衛副大臣を政調会長、細野豪志元環境相の憲法調査会長と、新執行部を決めた。しかし党内の対立を抱え、小池ブームの消滅で、同党の将来は暗い。現にこの後の都議補欠選挙でも、5人が立候補して1人しか当選しなかった。逆に希望の党に入党を拒否された枝野幸男代表の立憲民主党は衆院選で55人当選し思わぬ野党第一党に。民進党に残ったままの参院民進党は大塚耕平広報局長を代表に選出。38人の参院議員を中心に、旧民進党議員の団結を目指す。さらに岡田、野田など民進元委員長など11人の幹部は無所属のまま活動することになり、旧民進党は4分裂した。
 また松井大阪府知事を中心とする維新の会も衆院選で惨敗し、完全に影響力を失った。このような中で、自民党と連立を組む公明党は山口代表、北側党憲法調査会長らが、①憲法の国会発議は3分の2以上の国民の支持が望ましい②特に野党第一党の立憲との合意が必要③安倍が“結党以来の党是”としてアプローチすると失敗する④党としての改憲案を提示する予定はない――と慎重姿勢を見せた。戦争反対・平和維持を基本とする同党の姿勢が強くなると、自公連立にも響くことになる。
 こんな中で安倍首相は所信表明で対北朝鮮の核挑発について「強固な日米同盟の下、具体的共同作戦を取る」と圧力をかけ、少子高齢化を国難ととらえ、教育の無償化に力を入れるとしたが、演説時間は平成に入ってから2番目に短く、具体的提案もないため、やる気がないと不評だった。
 野党の代表質問では、立憲が憲法改正・安保法反対と反安倍を強調したのに対し、希望の党の玉木代表は9条への自衛隊加憲には反対したものの、自民に是々非々で対応すると接近も見せ、立場の違いを明らかにした。
 また自民は与野党の国会での質問時間に対し、与党議員が多いのだから、現行の与党2対野党8の比率を5対5にすべきと主張している。しかし野党の持ち時間が多いのは、立法府の国会で、現在ではほとんどの法案が政府提出となり、与党議員は自民党内での法案作成に関与できる。これに対し、野党にはその機会がないため、自民の野党時代に8対2の比率が決まったもの。とんでもない云いがかりだ。
 ただ今国会の本格論戦は27、28日の衆参予算委員会、29、30日の森友・加計問題の集中審議に持ち越されており、審議は注目される。加計問題では文科省の大学設置・学校法人審議会が、林文科相に新設“可“の答申をした(10日)。また森友では会計検査院が国有地の売却で、8億2千万円の値引き理由となった地中のゴミの量について「十分な根拠が確認できないずさん算定」に疑問を投げかけている。
 11月の共同通信世論調査によると、安倍内閣の支持率こそ9月に比べて49・5%と5ポイント上回ったものの、憲法9条に自衛隊を明記することへの反対は52・6%(賛成38・3%)、来年秋の安倍総裁三選については「続けてほしくない」51・2%「続けてほしい」41・0%だった。
 また国外では、トランプ米大統領が初めて日本・韓国・中国・ベトナム(ASEAN首脳会議)などアジアを訪問。日本では最初に2泊3日滞在した。ただ初日はゴルフ、2日目の首脳会議は1時間足らずと儀礼的で、北朝鮮への圧力を確認しただけ。トランプのミサイル防衛システムやイージス艦、戦闘機など武器の売り込みとゴルフ場に持ち込んだアメリカン・ビーフの昼食は商人ぶりが目立った。昔、池田首相が米国に「トランジスタの商人」と言われた立場が逆転したようだ。しかも武器輸入の詳細は不明だ。
 韓国のムン・テジュン大統領とは、北への統一歩調を確認したものの、ムン大統領は“同一民族”の北との調和にも言及。すれ違いも残った。それに比べ、外交上手が浮き彫りになったのが中国で、トランプのため、清王朝の宮殿“故宮”を貸し切りにして歓迎した上、両国で総額2500億ドル(28兆円)の商談を成立させ、トランプを骨抜きにした。結局トランプがやったのは、北朝鮮のテロ国家再指定だけだった。

<別紙 2>
       第47回例会 事務局報告

                福田玲三(事務局)2017.11.26

1)「もう待てない!外国籍 元BC級戦犯者問題 年内に立法解決を求める緊急集会」
 上記の集会が、さる11月15日、衆院第2議員会館第1会議室で開かれた。
 戦犯とされた朝鮮人は148名(うち死刑23名)、台湾人は173名(うち死刑21名)。その多くは捕虜監視員で、戦争を計画・遂行したA級戦犯の刑死者7名に比べ、いかに重い刑が末端の朝鮮・台湾出身者に課せられたかがわかる。
 朝鮮や台湾は当時は日本統治下にあったため、罪は日本人として負わされたが、サンフランシスコ講和条約発効にあたり、不法に日本国籍を奪われた(『日本国憲法が求める国の形』P.20)のちも拘禁され、釈放後も「日本人ではない」と補償を拒絶された。
 1999年2月、最高裁は謝罪と補償の請求を棄却したが、立法府に問題の解決を委ねた。それから18年、その間に、「特定連合国裁判被拘禁者等に対する特別交付金支給法案」が国会に提出されたが未解決で、いま提出の準備が進められている同法案骨子は次の通り。
 ① 特定連合国裁判被拘禁者(朝鮮・台湾出身の元戦犯者)が置かれている特別の事情にかんがみ、人道的精神に基づき、本人と遺族に特別給付金を支給する。
 ② 特別給付金の額は、特定連合国裁判被拘禁者1人につき260万円。
  *対象総数 朝鮮人元戦犯者148名、台湾人元戦犯者173名 必要額は2億5千万円。

2)新パンフレット草案をめぐる討議
 新パンフレット討議のための編集会議が11月12日(日)13:30~17:00、神明いきいきプラザの会議室で行われた。参加者7名。
 当日に先立って次の意見(要旨)が寄せられた。(ページ数は、先に限定配布された初期の仮綴じ本による)
 ① 教育基本法の「全部改正」という表現の引用元は?P.6、P.11
 ②「教育勅語の排除が教育の荒廃を生む一因になったという認識」の出所は?P.19
 ③「この考え方は愛国心について小泉首相が答弁した……」は削るべきでは?P.34
 ④「あまりの体験の重視は、自ら体験しなかったことはなかったことだとする考えと表裏一体であり」について、現場の教師はこのような極論は言わないと思う。P.37
 ⑤「さてこれら義勇兵のみならず…戻ったのである」の表現はまずい。P.62
 ⑥ 少年の写真と作文はどこから?P.77
 ⑦「太平洋戦争以降実は景気が良かった」は、とんでも論では?P.82
 ⑧「今年度については…学校はなかった」と言い切れないのでは?P.85
 ⑨「これまで見てきた内容」とは?P.87
 ⑩「1987年8月15日京都新聞」の引用元は?P.89【ページ順に入れ替えました】
 ⑪「徴兵制についてのある調査によると」の引用元は?P.89
 ⑫「いつかまた生まれてくる子供たち」とは?
 ⑬「確かに親孝行など一つ一つの徳目は」から「じゃがいもは良いものとして食べられなくなってしまう」まで、教育勅語の徳目に対する評価に疑問。P.51

 また岡部共同代表からは、入院先から、「さっそく『戦争とメディア』の章を読んでみた。良く書かれている」「靖国神社と国家神道への言及が簡単でも欲しい」「目次を見ただけで、良いと思った」との電話があった。

 以上の意見を巡る討議は時間切れとなり、⑬と③について保留、継続審議とされた。会議ではまた、パンフレットの標題として『「教育勅語」の重圧――死線をさまよった臣民たち』の提案があり、執筆者の山岡氏は賛成したが、冗長との批判もあり保留になった。

 討議はメールによって続行され、次の要望・意見(要旨)が寄せられた。
 ① 道徳の教科化によって行われる成績評価(採点)について言及されたい。 
 ②「教育の荒廃や学力の低下への関心の高まりも大きな影響を与えた」は、この主張(教育の荒廃)を肯定しているのか?P.6
 ③「2006年に制定された新たな教育基本法は、成立の過程から復古的な志向と新しい時代への対応という異なる方向性を持った働きかけが作用し……誕生した」。この分析に異論がある。復古的志向とグローバリズムはきわめて親和性が強いと思う。P.6、7、P.12
 ④「神話は神話として楽しむもので」の表現に疑問。P.52
 ⑤ 関東大震災で「朝鮮人や日本人が数多く殺される事態も発生した」で、人数も内容も並列的に扱ってよいか?P.64
 ⑥「母国語の理解にも匹敵するような思考回路の鋳型化」は難解。P.82
 ⑦「教育勅語を敢えて閣議決定まで行って肯定したことの意義を考えなくてはならない、の「意義」は「意味」としたらどうか。P.87
 ⑧ 保留となった教育勅語の徳目評価について、これらの徳目は置かれた条件によって評価が分かれるので、徳目それ自体に普遍的価値がないと決めつけるのは誤りだが、教育勅語にもいいところがある、という宣伝に吸引されない努力が求められる。
 ⑨ いま一つ保留になった「この考え方は愛国心について小泉首相が……答弁した内容に通じ……」では、「愛国心」教育において、小泉首相が定義した「国」とはをきちんと守らせることが大切になると思う。P.34

この2つの保留個所については、ほかからも意見が寄せられ、これらに対して草案執筆者から返信が送られており、来る11月26日の例会・勉強会では十分時間をとって審議する。

3)上記編集会議で緊急警告026号と027号案について検討し、別紙3と4の通りとした。

4)集会の案内
① 第10回平和学習会
 「ナチスの手口」を学ぶ ~「世界最先端の憲法」が崩壊した歴史を繰り返すのか?~
  報告:王道貫氏
  2018年1月13日(土)13:30~16:30 資料代:200円
  東京ボランティア・市民活動センター(JR飯田橋駅隣・セントラルプラザ)
  B会議室(40人収容)
② 第25回「7・1閣議決定」違憲訴訟勉強・相談会――上告理由書の解説――
  12月15日(金) 13:30~16:30
  神明いきいきプラザD室(JR浜松町駅徒歩5分) 参加費:200円 
③ 「封印された広島・長崎(米国の元資料から)」 講師:高橋博子氏
  12月16日(土) 14:00~17:00
  キリスト友会会堂(港区三田4-8-19) 資料代 1000円
  米国の原爆投下の責任を問う会 第4回拡大世話人会
④ 安倍9条改憲を許さない!安倍内閣の退陣を要求する12・19国会議員会館前行動
  12月19日(火)18:30~ 衆議院第2議員会館前
  主催:安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会、
     戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会。
  http://sogakari.com/?p=3201
⑤ 『週刊金曜日』東京南部読者会
  12月22日(金)18:30~20:00 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)
  会のあと忘年交流会 3000円台
⑥ 戦争とめよう!安倍9条改憲NO!2018 新春のつどい
  2018年1月7日(日)14:00~16:30 
  北とぴあ・さくらホール:JR王寺駅徒歩2分/座席数1300 先着順、入場無料、カンパあり
  お話・松尾貴史(俳優)、憲法講演・石川健治(東京大学教授・憲法学)、
  各立憲野党の挨拶、3000万署名運動リレートークなど
  主催:上記④に同じ http://kaikenno.com/?p=338

<別紙 3>
 緊急警告026号 内閣の改憲提起は越権、不法、憲法違反!

 11月1日、国会は安倍晋三自民党総裁を首相に選出、その夜の記者会見で首相は憲法改正について、「(衆参両院の)憲法調査会に各党が改正案を持ち寄って、建設的な議論をしていくことが大切だ……与野党に関わらず幅広い合意を形成するよう努力を重ね、国民的な理解を得られるようにしていきたい」と改憲議論の加速に意欲を示した。
 これに対して、公明党の山口那津男代表は両院議員総会で、衆院選について「議席数に応じた勝利感や高揚感は伴っていない」と発言。「数におごることがあってはならない。謙虚に真摯に、政権運営に取り組む」とした上で、改憲について「内閣で取り組む政策課題ではない。内閣は憲法尊重擁護義務を負っている」と述べた。
 山口代表の指摘は正しい。憲法第5章「内閣」の第66条「内閣の組織」第1項は「内閣は、法律の定めるところにより……」から始まり、第73条「内閣の職務」の第1項も「法律を誠実に執行し……」で始まり、最高法規である憲法の遵守を内閣に命じている。さらに第99条「憲法の尊重擁護の義務」ではとくに「国務大臣」がその義務を負うと記述されている。
 安倍内閣はまた、第53条「臨時会」の「いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」との明文の規定を無視したまま衆院解散に踏み切るなど、かずかずの越権の果てに、与党からも違憲を主張される蛮行に走っている。
 内閣による改憲の提起は越権、不法、憲法違反である。

<別紙 4> 
  緊急警告027号 軍事的選択肢を含むトランプ大統領方針の
              100%支持は許されない

 さる11月6日、東京で行われた日米首脳会談後の共同記者会見で、安倍晋三首相は「日米が主導し、あらゆる手段を通じて北朝鮮に対する圧力を最大限まで高めていくことで完全一致した」と述べた。
 両者の「完全一致」は日米の外務・防衛当局の筋書き通りだったと言われている。
 米国の軍事行動を含む「すべての選択肢がテーブルの上にある」という方針について首相は「改めて日米が百%ともにあることを力強く確認した」と表明。トランプ米大統領は「『戦略的忍耐』の時代はもう終わった」と言い切った。
 だが、この安倍首相の表明はまさに憲法の明文に違反している。憲法前文は言う。
 「日本国民は……政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、……全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と、そこには書かれている。
 これに併せて、2002年9月に、小泉純一郎総理と金正日委員長の間でまとめられた「日朝平壌宣言」は、第1項で「双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した」とし、第2項では「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した」としている。
 安倍首相はトランプ大統領とともに、北朝鮮による拉致被害者の家族と都内の迎賓館で面会したが、戦前、どれほどの朝鮮人が日本に強制連行されたか。当局は故意にその実態をかくしているようだが、「GHQにより送還事業が(敗戦直後から)開始され、翌1946年(3月)までに徴用者を中心に140万名が朝鮮半島に帰還」との記録が残されており、この数字がほぼ実態を示しているようだ。日本が朝鮮を植民地支配していた当時、「徴用」がほぼ「強制連行」を意味していたことは想像に難くない。
 憲法尊重義務のある日本政府の見習うべき手本が、隣国で示されている。11月7日夕に開かれた米韓首脳共同会見で文韓国大統領は「我々は、北朝鮮の核問題を平和的に解決するよう協力することで一致した」と強調した。また文大統領は11月1日の韓国国会演説で「いかなる場合にも朝鮮半島で武力衝突があってはならない。韓国の事前同意のない軍事的行動はあり得ない」と言明し、平和を守ることは「憲法が大統領に付与した責務だ」と述べた。さらに韓国は本年9月、国際機関を通じて北朝鮮へ計800万ドル(9億円)の人道支援を行うことも決めている。
 これこそ日本政府が、「歴史の事実を謙虚に受け止め」、「平壌宣言」にのっとって取るべき措置ではないか。
軍事的選択肢を排除しないトランプ大統領の立場を、日本政府が100パーセント支持することは絶対に許されない。

完全護憲の会ニュースNo.47 2017年11月10日

                <例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>

        連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
        電話・FAX 03-3772-5095
        Eメール:kanzengoken@gmail.com
        ホームページ:https://kanzengoken.com/

     目次  第46回例会・勉強会の報告         P.1
         第43回運営・編集委員会の報告(略)    P.1
         別紙 1 政治現況報告          P.2
         別紙 2 事務局報告           P.3
         別紙 3 緊急警告025号
         「小池百合子都知事の改憲発言は許されない」P.4          .

     第46回 例会・勉強の報告

 10月29(日)、港区・専売ビル集会室で開催、参加者5名、会員56名。
司会を草野編集委員長が担当し、まず「政治現況報告」(別紙1)が代読されたのち、「事務局報告」が行われ、これらの報告をめぐり次のような意見が交わされた。
 「若い人の保守化傾向が恐ろしい」「公明党がなぜむきになって立憲民主党批判をするのか理解できない」「だれが民進党分裂の筋書きを作ったのか。策略を巡らしたものがいるに違いない」「自由党の小沢一郎氏ではないか」「いや、小沢氏は野党共闘支持者だ」「「野党共闘が成立していれば自民党を減らせたはずだ」「お父さんが運動していなければ自民党に投票するだろう、と子供に言われた」「自民党支持は必ずしも改憲支持ではない」「労働者は正社員になることに必死だ。労組がないから社会運動の経験もない」「昔は臨時雇用員を正社員にするのが労組の務めだった」「連合は『無所属の会』に期待しているようだ」「社共は立憲民主党にふり飛ばされてしまった」……。
 ついで緊急警告025号「小池百合子都知事の改憲発言は許されない」の検討に入り、「敗戦時に権力者を自力で倒していないことが、護憲運動の甘さにつながっている」「いま、護憲活動をしているさなかに、改憲された後のことにまで言及するのは適当でない」などの意見が出され、さらに修正を加えることとした。
その後、新冊子「教育勅語と子供たち――歴史から見る道徳の教科化」案について、起草者安立きくこ氏から各章にわたって執筆の意図が報告され、12月初旬発行を目途に、この原案を検討する場を設けることとし、第1回を11月12日(日)13:30~と決めた。

     当面の日程について
 1)新パンフレット編集会議 11月12日(日)13:30~ 神明いきいきプラザ(浜松町)
 2)第47回例会・勉強会  11月26日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 3)第44回運営・編集委員会11月29日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
 4)第48回例会・勉強会  12月24日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 5)第45回運営・編集委員会12月27日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ

<別紙 1>
       政治現況報告     2017年10月29日

               岡部太郎(東京新聞元政治部長)

 第48回衆院選挙は10月10日公示、22日投票で行われた。安倍首相の臨時国会召集日の冒頭解散から始まって、いろいろ紆余曲折のある山あり谷ありの選挙だったが、結局は自民党が解散時と同じ284議席の絶対過半数をとって圧勝。29議席の公明党(5議席)とあわせて313議席を得て、憲法改正に必要な310議席を上回った。一方、野党は公示直前に小池都知事の都民ファーストの会が、全国組織「希望の党」を立ち上げたものの、対応がまずく、分裂選挙となり、小党が票を分散させたため、自公に漁夫の利を占められた。
 9月25日に「希望の党」を立ち上げ、自ら代表の地位についた小池氏に対し、民進党の前原代表が党を解党しても全党をあげて希望の党に参加すると表明。8月の都議選での都民ファーストの会で小池ブームを見せられた自民党に緊張が走った。小池ブームが続いていれば、民進党の小選挙区300人近い候補者は確実に戦力になり、自民党は過半数を割り惨敗することになる。私なども一瞬、安倍が破れ、護憲の会も終わりになるか、と思ったほどだ。安倍が冒頭解散に踏み切った唯一の理由は、強敵の希望の党は、まだ十分選挙準備ができておらず、候補者の人数をそろえられないと思っていたからだ。それが民進党との合同となれば話が違う。大希望の党に共産や維新の他の野党が協力、安倍に対する大野党連合が成立すれば、これ以上の強敵はない。
 しかし、この心配も僅か3日ほどで、相手のミスで霧消する。こともあろうに小池都知事が、新党について「革新的保守」と規定した上に、新党参加の条件は①安保二法の賛成、②憲法改正に賛成すること――とし、「これに合わない民進党議員は排除する」と断言した。
 ただでさえ、時の政権にタテついて、政権を狙うものは、反対勢力の全てを糾合しなければ勝てないのは常識。味方の一部を敵に回すなど、おごり以上の何ものでもない。
 小池都知事はかねてからアメリカの二大保守党(民主と共和)が交代で政権を担うのが理想としていたという。しかし大統領制で、議会と対立しているアメリカと議院内閣制で政府と首相があり、保守・革新と別れるのが普通のイギリスや日本と同じわけがない。ましてや日本も英国も島国で、黒白をつけたい性格をもっている。
 選挙民はこの小池の“排除発言”に、独裁的な面を感じ、日本の希望を託すわけにはいかない、とアッという間に冷めてしまった。小池ブームは去った。そして希望の党をシャット・アウトされた民進党のリベラル議員は枝野氏を代表に「立憲民主党」を急遽設立。13人の現職(小選挙区)を中心に選挙を闘った。その結果、200人以上を公認した希望の党は50人当選で野党の第二党に。立憲民主党は有権者の同情票を得て、現有勢力の3倍以上の票を集めて55人当選の野党第1党へ。野党共闘の思惑の狂った共産党は公示前の21人から12人と敗退。維新の党も橋下前大阪市長が党をやめたため、14人の現職が10人に減った。社民は同じ2人。民進党は希望へも立憲へも行けない野田元首相、岡田元党代表など大物が21人も無所属で出馬、18人が当選した。無所属当選者の総数は22人。三つに別れた民進党は今後の国会で野党再編に向けて動き出すだろう。
 ただ問題は投票率が非常に悪く、53・68%。前回に続いて二番目に悪く、特に心配なのは選挙権をもらった18歳が50・74%、19歳に至っては、何と32・34%だった。国民の半分が選挙に行かないことは、日本にまだ民主主義が定着せず、特に若年層が悪いのは、中・高校からの政治教育、選挙教育が絶対に必要になる。
 また、ほとんどの選挙区で2、3の野党の票を合計すると、自民党を上回るなど、小選挙区と野党協力のあり方についても再考したい。
 国会は11月1日、特別国会を召集、安倍首相が再任されるが、11月5日には、トランプ米大統領が初来日するなど、政局が動き出す。

<別紙 2>
      第46例会 事務局報告

                福田玲三(事務局)2017.10.29
1)来信
 29日はちょうど、横浜市学童保育の市政からの補助を訴える署名活動を桜木町で行ない、こちらの出席が叶いません。残念です!
 しかしながら、いまどきの高校三年生は、投票は多くが自民党、なんとなれば、「安部でないと、ぐちゃぐちゃになりそう」「トランプと仲良くできなくなりそう」「政治はニガテ」だそうです。
 東大に毎年30-40人送り込む進学校で、この様相です。(そういえばどこかの週刊誌に、「東大生は自民支持」と報道が有りました)有る意味彼らも「既得権益層」なのでしょうか。お父さんが一部上場企業の部長であったり、自らも官僚を希望していたり。
 広島出身の私としては、改憲、原発再稼動だけで、ガックリします。
 また皆様にお会いできますことを、心待ちにしております!   (神奈川県・H)

2)「安倍9条改憲NO!」3000万人署名始動
 「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」の呼びかけによる署名の第1次集約は12月20日、第2次集約は4月25日、第3次集約は5月末になっています。
 現在までに佐賀県、愛知県、埼玉県、都内から各1通(いずれも5筆)届いています。
 来る11月3日(金・休日、憲法公布記念日)には国会議事堂周辺(14:00スタート、15:30終了)で10万人規模の集会を開き、全国で100万人の参加を呼び掛けています。ご協力ください。
 当会は「署名取り扱い団体」に当会の名前を入れた署名用紙を用意しています。

3)第46回例会・勉強会の延期、会場の変更
 当初予定の10月22日が重要な選挙の投票日となったため、急遽29日に延期し、会場を変更しました。変更の案内はニュース第46号で行いました。

4)集会の案内
① 第10回平和学習会――「『ナチスの手口』を学べ~世界最先端の憲法を『ナチス』の魔手から守るために~」(仮題)
  報告:王道貫 氏
  2018年1月13日(土) 13:30~16:30  資料代:200円
  東京ボランティア市民活動センター 会議室B (JR飯田橋駅隣・セントラルプラザ)
② 第24回「7・1閣議決定」違憲訴訟勉強・相談会
   ――控訴完了:憲法前文「排除」が意味するもの――
   11月17日(金) 13:30~16:30 神明いきいきプラザ(JR浜松町駅徒歩4分) D室
   参加費:200円
③ 『週刊金曜日』東京南部読者会
  11月24日(金) 18:30~20:30 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)

<別紙 3>

 緊急警告025号 小池百合子都知事の改憲発言は許されない(10月17日)

 小池百合子・東京都知事はさる9月25日、都庁で臨時記者会見を開き、「希望の党」代表に自らが就く考えを示し、目指す政策に、憲法改正、情報公開の徹底、議員の定数や報酬の削減、原発ゼロなどをかかげた。
 4日後の9月29日、小池都知事は「希望の党」代表として記者会見を行い、安全保障や改憲で考え方が一致しない民進党離党者が、衆院選で党の公認を申請してきても「排除する」と明言した。
 さらに小池都知事は、9月30日、大阪市内で、松井一郎・大阪府知事、大村秀章・愛知県知事と会談し、改憲や脱原発などを柱とする共通政策を打ち出した。
 その小池氏は、2016年に衆院議員から都知事に転身する以前から一貫して改憲を主張している。2000年の衆院憲法調査会で小池氏は、占領下で生まれた憲法が武力行使を制約し「日本をがんじがらめにしている」と主張、「現行憲法を廃止し新しいものを作る、て・に・を・はを変えるというような議論では間に合わない」と語り、参考人として出席していた石原慎太郎都知事(当時)の現憲法廃止論に呼応した。ここに小池都知事の本心がある。
だが、公務員には憲法尊重擁護義務があり、この義務に違反する改憲発言は許されない。その趣旨の改憲発言をするなら職を辞してからするべきだ。
 閣僚の改憲発言は1999年まで辞任を招いていた(中村正三郎法相の場合)。2012年、石原慎太郎都知事はワシントンの記者会見で占領下制定憲法の無効破棄をとなえ、ついで都議会本会議で、その趣旨を再び言明した。安倍首相は、同じ2012年衆院選のさい、現憲法を「みっともない」とまでけなした。これらの憲法軽視の姿勢に習い、地方公務員のトップクラスである小池東京都知事、松井大阪府知事、大村愛知県知事まで公然と改憲を主張し、しかもマスコミをはじめ世論は、そこに今は何の抗議もしていない。
 内外2000万人の犠牲を生んだ侵略戦争に敗北した代償として、現憲法は当時世界で最も進んだ民主的潮流(日本の進歩的伝統を含む)から日本国民に授けられた。その頃の日本国民にとって夢のような民主的・平和的憲法を国民は歓呼して迎えた。ここに甘さがあった。流血によって憲法を獲得した諸国民の厳しさを欠いた。
 憲法尊重・擁護義務のある公務員が、憲法廃止発言を公言すれば、諸外国ではどうなるだろうか。弾劾を受け、即座にその職を失うだろう。日本では憲法誕生のいきさつから、当時やむを得ず現憲法を受け入れた一部の支配層が、いま「占領軍によって強制された憲法だ」と発言すれば、一瞬とまどう弱さを私たち国民は持っている。国家公務員のトップ、地方公務員のトップクラスが廃憲発言を公然と行い、黙認されるところに国民のその当時の甘さが尾を引いている。
 こうした改憲攻撃に対する長期の苦闘を経験するなかで、はじめて現憲法は真に私たちのものとなり、国民のこの至宝への愛着が広がるだろう。憲法は教えている。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない」(第12条)と。
 かれら権力者が現憲法を敵視するのは、現憲法の理念がかれらの言動を拘束するからだ。だからこそ、なおさら主権者国民は、彼らの憲法軽視を厳しくとがめ、憲法の尊重・擁護義務を果たさせることが強く求められる。

完全護憲の会ニュース№46 2017年10月10日

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◎注意! 10月例会・勉強会の日取りと会場を変更しました。
(10月22日が衆院選投票日になったため1週間延期 ⇒参照「当面の日程について」)

    目次   第45回例会・勉強会の報告       P1
         第42回運営・編集委員会の報告(略)  P2
         別紙 1 政治現況報告        P2
         別紙 2 事務局報告         P3
         <別添> 訴追請求状         P6
         別紙 3 緊急警告022号(確定)    P10
         別紙 4 緊急警告023号       P11  

     第45回 例会・勉強会の報告

 9月24(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で開催、参加者9名、会員56名。
 司会を草野編集委員長が担当し、まず「政治現況報告」(別紙1)が代読されたのち、「事務局報告」が行われ、これらの報告をめぐり次のような意見が交わされた。
 「民進党から離党者が続出している現状では、共産党に票が行くだろうか。でも共産党にアレルギーのある人もいる。民進党は決定的にダメなところまで行って折り返す以外ににない」「小池都知事は就任以来何もしていない。学校の敷地内の全面禁煙は恐ろしいことだ。どこかに抜道を作らねば」「安倍の用意している国会冒頭解散は追いつめられての逃げだ。だが、票が小池新党に流れても、安倍政権の弱体化につながるだろうか」「前原民進党は小池新党に合流するのではないか、今のままでは民進党は消滅にむかう」「共産党は党首の交代がないので、信用が置けない」「安倍を支持しなくても、地元の自民党候補は支持する人がいる。生活密着型で票を集めている」「TV5チャンネルで首相の国会解散を違憲だと批判していた」「林文科大臣は『首相大権』と言っていた(笑)」「北朝鮮対策で安倍首相は『対話に意味はない、圧力あるのみ』と言っている」「イージス艦2隻2800億円を買って、拉致問題をトランプ大統領に言及してもらった」「戦争をさせないことをスローガンにすべきだ」「迷ったときには慣れた方に行く。自民党依存症だ。憲法は埃をかぶっている。情報の中から真実をつかむ努力が必要だ」「1票の格差で最高裁は『違憲状態にある』と言っている。『状態にある』というのは、専門家の判断でない場合の用語だ。つまり最高裁判事はプロでないことを自認している。罷免に値する」「米国と自民党が組んでいる限り、現状は打破できない。日米合同委員会の密約を鳩山由紀夫元首相は知らなかったと言っている。安倍首相は密約を知っており、これを国会の上位に置いている」「安倍首相は自衛隊を国会で称揚した。憲法上、公務員に差をつけられるのか。消防や警察はどうなるのか」「事務局報告で紹介された珍道世直氏の取り組み(上告を棄却した最高裁第1小法廷の判事全員の罷免を求める訴追請求)はすばらしい」……
ついで緊急警告022号「自衛隊明記は口実、9条全面改悪の突破口とするもの」の検討に入り、自衛隊に対する「国民の信頼は9割を超え」という安倍首相の言葉を無批判に引用すべきではない、文末の「緊急事態条項」などへの言及は、この際不用だ、との意見が出された。
 あわせて行われた緊急警告024号「首相は国会解散の権限を持たない」の検討では、「閣議決定・安全法制」が「閣議決定・安保法制」に字句修正された。
 そのあと、勉強会に移り年末に刊行予定の新冊子『道徳の教科化と教育基本法』(仮題)について執筆者の安立きくこ氏より、予定目次全体について報告があり、10月の勉強会で本文の検討を行うことになった。

当面の日程について
 1)第46回例会・勉強会 10月29日(日)13:30~16:30 専売ビル8階 会議室2
(港区芝5-26-30 地下鉄三田駅出口A3歩3分 JR田町駅西口 歩5分 三田図書館裏)
 2)第43回運営・編集委員会11月 1日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
 3)第47回例会・勉強会  11月26日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 4)第44回運営・編集委員会11月29日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ

<別紙 1>
          政治現況報告      2017年9月24日
                岡部太郎(東京新聞元政治部長)

 8月初めに内閣改造をしながら、野党の要求する臨時国会に応じなかった安倍自民党が9月28日にこれを召集すると決めた途端に、あっと云う間に冒頭解散、10月22日総選挙の日程が固まってしまった。一天にわかにかき曇りが政界の常とは云いながら、この急変は何か。私が先月指摘したように、9月1日、民進党は委員長選挙で執行部が決まったばかりで、選挙の準備が全く整っていない。さらに8月2日の都議選で東京都議会第一党に躍進し、国政選挙にも野望を持つ、小池都知事の新党もまだ出来ていない。誰が見ても解散の絶好のチャンスだが、問題は自民党と安倍首相の強引な政局運営に対する反発と不人気だった。
8月の新聞各紙の世論調査で、安倍内閣の支持率は、軒並み前月より10ポイント近くマイナスの35%ぐらいに急落。もちろん不支持率も増えて、理由も「安倍首相が信頼できない」と云うのがトップだった。
 このままでは、総選挙をやっても勝利はおぼつかないし、最悪惨敗のケースもある。全ては国民の支持率の回復にかかっている、との見方があった。日本人は昔から物忘れが激しい。これは地震や台風が毎年忘れずにやって来て、悔やんでも始まらぬ、忘れようとのあきらめが強いからだ。9月の世論調査の結果は前ほどではないが、みな40%台へ支持率が回復した。これなら仮に衆議院の3分の2は確保できなくても、自民・公明の与党で過半数は確実に取れる。もちろん臨時国会で審議をすれば、安倍首相の加計学園の獣医学部問題、大阪の森友学園のスキャンダルで、再び野党の追及を受け窮地に陥ることも考えられる。解散でこのさい一挙にゼロにしてしまうと云う思惑もある。まさに「今なら勝てる」。
 首相は国連総会で「北朝鮮追討」の大演説とトランプ米大統領などとの会談を終えて22日帰国したあと解散、総選挙の日程を正式決定。25日には記者会見を開いて、ここで総選挙を実施する意味について国民に語る。
 これに対して野党側はどうか。野党第一党の民進党は9月1日の全党員選挙で前原誠司元外相と枝野幸男元官房長官が一騎打ちの結果、下馬評通り前原氏が圧勝した。(502ポイント332ポイント)
 前原氏は新執行部の目玉として当選2回の山尾志桜里元政調会長を幹事長に据えるつもりだったが、こともあろうに山尾氏が「週刊新潮」で若手弁護士との不倫をスクープされ、直ちに離党してしまった。スタートでの大失態で、幹事長は自派の大島敦氏に差し換えたが、前途多難。また細野豪志氏ら離党者も相次いでいる。前原氏は枝野氏とちがい、共産党などとの選挙協力に慎重な立場だが、急な解散・総選挙で孤立し、かつての社会党のように惨敗消滅の悲劇になる可能性もある。まさに前原氏にも民進党にとっても存亡の時と云える。野党共闘以外に助かる道はないのが現実だ。
 一方、小池都知事は若狭勝衆議院議員に都民ファーストの全国版、国民ファーストの会の設立を依頼。若狭氏は民進党を離党した細野氏らと緊密な連絡を取り合い、三者会談も11日に実現した。新党の設立を27日にも予定し、党名、綱領、政策、選挙公約などの調整に入っている。ただ今月の16日に政治塾を開校したばかりで、新人立候補者の擁立もかんたんに行きそうもない。全部で何人ぐらい公認できるかで、新党の先行きが決まりそうだ。ただ世論調査では、民進党よりはるかに政党支持なし層では支持率が高く、場合によっては一波乱ありそう。またどこと選挙協力するかも関心の的で、民進党とでもあれば一挙に政界再編へ動き出そう。ただ新党側が、民進党と提携する気はなさそうだ。また小池都知事を新党の総裁とする、東京の全選挙区に候補者を立てるなどの案もある。
 安倍首相は解散の大義として、2019年秋までに延期している消費増税を持ち出し、増税分を教育無償化と社会保障に宛てることを打ち出しており、公示と同時に各党の選挙公約が競い合う。果たしてどの政党が、国民のふり向く政策を発表できるだろうか。

<別紙 2>
         第45回例会 事務局報告     
              福田玲三(事務局)2017. 9.24

1)来信
 私の訴訟につきましては、今日まで格別の御厚情と御支援にあずかり心から感謝いたしております。
ご承知のように、『集団的自衛権の行使を容認する「閣議決定・安全保障法制」は、憲法第9条に違反する』として上告していた「閣議決定・安保法制違憲訴訟(事件名 憲法違反及び無効確認等請求上告事件)」につきましては、去る平成29年6月29日、「本件上告を棄却する」との「最高裁決定」が下されました。
 これをもって、私の裁判闘争は終了したと思っておりましたが、どう考えても、本件「最高裁決定」には承服できない為、この度、「最高裁判所裁判官の罷免の訴追請求」をすることといたしました。
 本件「最高裁決定」を下した最高裁判所第一小法廷裁判官全員(5人)は、「職務上の義務に著しく違反するとともに職務を甚だしく怠った(裁判官弾劾法第二条 弾劾による罷免の事由)」として、憲法第15条(公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である)の条規に基づき、罷免の訴追を求める「訴追請求状」を「裁判官訴追委員会」に本日8月22日提出いたしました。       

「訴追請求の事由」は、主に次のとおりです。
① 最高裁決定による「棄却の理由」には、「食違い」と「瑕疵」があり、「棄却の理由」は失当である。
② 訴追を求める裁判官は、裁判官としての職責を放棄するとともに憲法の条規に違背している。

 別添のとおり「訴追請求状」(別添)をお届けいたしますので、お目通し賜れば幸いに存じます。
 このことが、裁判官に「憲法の条規に違背すれば、その存在の根拠を失う」ことを警鐘するともに、司法改革のはじまりとなればと切望して、空しいことかもしれませんが行動をおこしました。
 どうか、今後ともよろしくお願いいたします。                                   
                      珍道世直

2)「安倍9条改憲NO!」3000万人署名始動
 「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」のキックオフ集会が9月8日に東京都中野区で開かれ、約1500人が参加した。
 結成主旨では、安倍首相が5月3日に表明した9条改憲案――1項と2項を残しつつ自衛隊を明文で書き込み、2020年に施行する――に対し、「戦争法」を合憲化し戦争への道をさらに進めることになる、と強く批判した。
 具体的な行動として、「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」に取り組み、来年の5月3日までに3000万人分の獲得を目指す。(連絡先:1000人委員会03-3526-2920、壊すな!実行委員会03-3221-4668、憲法共同センター03-5842-5611)
 今年11月3日には国会前で10万人規模の集会を開き、全国で100万人の参加を呼び掛ける。
 当会は「署名取り扱い団体」に当会の名前を入れた署名用紙を例会向けに用意した。

3)衆院憲法審、欧州視察概要メモ
 衆院憲法審査会の議員団(与野党7人)が欧州3か国を視察し概要メモをまとめた。自民党内で議論されている9条改憲について、英国の議員は「理解できない。60年も現行憲法の解釈でやってきたのだから、そのままのことを認めるだけの改正など、わざわざ行う必要はないのではないか」と話した。
 イタリアの議員は「憲法のような基本ルールを定める場合は、共通認識を醸成する努力をすべきだ」と助言した。(「東京新聞」9月15日付け朝刊)

4)集会の案内(レイバーネット全国イベントカレンダー:http://www.labornetjp.org/EventItem)
1 第9回平和学習会――報告:王道貫氏「今、日清・日露戦争を考える意味」
  11月4日(土) 13:30~16:30 資料代:200円
  東京ボランティア市民活動センター 会議室C (JR飯田橋駅隣・セントラルプラザ)
2 第23回「7・1閣議決定」違憲訴訟勉強・相談会――控訴(9月4日)について
  10月20日(金) 13:30~16:30 神明いきいきプラザ(JR浜松町駅徒歩5分) 参加費:200円
3 『週刊金曜日』東京南部読者会
  10月27日(金)18:30~20:30 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)

5)新冊子目次

一 はじめに―――耳目を集めた道徳と教育勅語
二 教育基本法と憲法
 1 教育勅語から教育基本法への転換
 2 旧法から新法へ
 3 修身と国定教科書
三 教育基本法改正に至る過程
 1 内閣による改正への取り組み
 2 教育基本法改正の理由
 3 財界の要請
 4 政界の要請
 5 中央教育審議会答申
 6 関連法の改正
四 学習指導要領
1 小学校学習指導要領
2 これまでの道徳
五 道徳の教科化
 1 考える力と愛国心 (文部科学省による解説から)
 2 わだつみのこえから考える教育と愛国心
ⅰ 愛国心に向き合う
ⅱ 愛国と個人
ⅲ 愛国と自由の抑圧
ⅳ 教育のさらされた実情
ⅴ いじめによる人間性の粉砕
ⅵ 軍隊における教育
3 道徳の授業と愛国心
六 教育勅語の時代
 1 文部省と徴兵制
 2 大日本帝国憲法と教育勅語
 3 教育勅語
ⅰ 失効した教育勅語
ⅱ 問題視された勅語の内容
ⅲ 儒教思想による成り立ち
 4 日清戦争
 5 徴兵制
 6 地方改良運動と青年会
 7 関東大震災  
 8 第二次大戦期の教育を取り巻く環境
 9 わだつみと大戦末期
10 植民地における教育
七 勅語の時代を生き抜いた人々
 1 むのたけじ
 2 山口 彊
 3 大島孝一
八 戦争とメディア
九 これからの展望

<別添> 訴 追 請 求 状
                    平成29年8月22日

裁判官訴追委員会 御中
訴追請求人
(住所)514-0823 三重県津市半田1209番地22
(氏名)珍道世直(ちんどうときなお)
(電話)■■■■■■■■

 下記の裁判官について弾劾による罷免の事由があると思われるので、罷免の訴追を求める。

               記
1 罷免の訴追を求める裁判官
  (所属裁判所) 最高裁判所 
  (裁判官の氏名) 木 澤 克 之
池 上 政 幸
大 谷 直 人
小 池   裕
山 口   厚

2 訴追請求の事由
(1)裁判所、事件番号、当事者
  最高裁判所第一小法廷
  平成29年(オ)第489号 憲法違反及び無効確認等請求上告事件
  (原審・名古屋高等裁判所 平成28年(ネ)第722号)
  
三重県津市半田1209番地22 
   上告人 珍 道 世 直 
大阪府大阪市北区西天満6丁目7番4号大阪弁護士ビル6階606号
上告人訴訟代理人弁護士代表 辻  公 雄 ほか
  
  東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
   被上告人(被控訴人) 国
   同代表者 法務大臣 金 田 勝 年
   同指定代理人    前 田 和 樹

(2)審理経過
 ①第一審 津地方裁判所
提訴日 平成27年11月16日
請求の趣旨
1.「集団的自衛権」の行使を容認・法定した「閣議決定(憲法第9条の下で許容される自衛の措置)」及び「安全保障法制(武力攻撃・存立危機事態法、自衛隊法等)」は、憲法第9条に違反する決定或は法制であり、無効であることの確認を求める。
2.「重要影響事態法」による「後方支援」、「国際平和支援法」による「協力支援」のうち、「軍事支援」については、憲法第9条に違反する支援であり、無効であることの確認を求める。
3.損害賠償請求 「閣議決定」及び「安全保障法制」によって原告は身体的・精神的苦痛を被り、憲法に規定する平和的生存権など諸権利が侵害されたので、国家賠償法第1条の規定に基づき、金10万円の損害賠償を請求する。

判決日 平成28年7月21日 1.2. 却下、 3. 棄却
 
 ②控訴審 名古屋高等裁判所
控訴日 平成28年7月29日
判決日 平成28年12月22日 1.2.3. 棄却

 ③上告審 最高裁判所(第一小法廷)
・上告日 平成29年1月4日、名古屋高等裁判所を通じ上告
・「上告提起通知書」 平成29年1月6日付、名古屋高等裁判所民事第3部より上告人宛送達
・「記録到着通知書」平成29年3月29日付、最高裁判所第一小法廷より上告人宛送達
・決定日 平成29年6月29日、最高裁判所第一小法廷より「調書(決定)」が上告人宛送達

 「調書(決定)の内容」
  裁判官全員一致の意見で、次のとおり決定。
 第1 主文
1 本件上告を棄却する。
2 上告費用は上告人の負担とする。
 第2 理由
 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告の理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
          
(3)請求の事由

 ① 最高裁決定による「棄却の理由」には、「食違い」と「瑕疵」があり、「棄却の理由」は失当である。

 ・「棄却の理由」として、「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告の理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。」としているが、本件上告は、上告状・上告理由書のとおり、「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定・安全保障法制は一見極めて明白に違憲無効であると認められるもの」として上告しており、どこが違憲か、その内容を、閣議決定・安全保障法制の具体的条規等を示して訴えている。
 「法令違反を主張するもの」では全くない。

 「上告することが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られる」としているが、上告人は、民訴法312条1項の「憲法の違反があることを理由」として上告している。
 民訴法312条2項に「判決に理由を付せず、又は理由に食違いがある」とき上告することが出来るとされているが、正に最高裁決定の「理由」には、上告人の上告の理由と「食違いがある」。

 また、決定の「棄却の理由」の中に、「その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、」としているが、「又は」の接続詞は、「新選国語辞典 新版 金田一京助ら編 小学館」によれば、『「又は」は前のことと、後のことのどちらかを選ぶかの意味をあらわす。「あるいは」「もしくは」は、同じように用いられる。』とされている。
 「棄却の理由」に、「又」ではなく(同辞典によると、『「又」は前の事がらにつけ加えたり、ならべあげる意味では、もっとも一般的に使われる。』とされている)、「又は」とされており、「事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって」ということは、「事実誤認」あるいは、もしくは、「単なる法令違反」と訳すべきであって、「棄却の理由」が、“どちらか”として、はっきり位置づけられていない。
 このような曖昧な「棄却の理由」はあってはならず、最高裁決定として瑕疵がある。
 最高裁決定による「棄却の理由」は、正に失当である。
 仮に、「法令違反の主張」というのなら、その内容を明示すべきであり、又、「事実誤認」というのなら、何をもって「事実誤認」というのか、その内容を明らかにすべきである。訴追を求める裁判官は「説明責任」を果すべきであるが、その責任を放棄している。

 ② 訴追を求める裁判官は、裁判官としての職責を放棄するとともに憲法の条規に違背している。

 国是(集団的自衛権の禁止・専守防衛)の大転換をもたらす本件「閣議決定」「安全保障法制」について、国会の内外・国民の間に「違憲」「合憲」が対立して国家的大問題となっている時、本件「違憲訴訟」に対し、最高裁判所から「記録到着通知書」(平成29年3月29日付)が上告人に送達されてから、6月29日までのわずか3カ月で「決定」を下すことについても、実体判断がなされる場合の通常の手順では短かすぎ、最高裁判所は充分な審査をしたとは到底考えられない。その証左が、先に述べた訴追を求める裁判官による失当な「棄却の理由」である。5人の「裁判官全員一致の意見」とされているが、このような失当な「棄却の理由」に誰一人異見を吐くものがいないとすれば、正に、裁判官の職責の放棄である。

    訴追を求める裁判官は憲法の次の条規に違背している。

ア. 訴追を求める裁判官は、憲法第76条(裁判官の独立)「すべて裁判官は、良心に従ひ独立して職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される」という憲法の条規に従って最高裁決定を成すべきである。
 上告人は、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定・安全保障法制は、憲法第9条に違反するとして、上告理由書(全72頁)で提起している。訴追を求める裁判官は、本件事件について、特に「憲法第9条に拘束」されて、憲法適合性を審査すべきである。
 訴追を求める裁判官は、憲法第76条に違背している。
 ・憲法第76条(司法権・裁判所、裁判官の独立)
①すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
②(略)
③すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
 
イ. 訴追を求める裁判官は、憲法第98条(最高法規)の条規に かなうよう憲法第81条(法令審査権と最高裁判所)に基づき憲法適合性を審査すべきである。
 裁判所は、憲法の条規により「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する」とされており、司法裁判所型違憲審査制(付随的違憲審査制)のみならず、憲法裁判所型違憲審査制(抽象的違憲審査制)を含め一切の憲法判断を行う権限が与えられている。
 同時に、裁判所の「裁判」する権限は、憲法第32条 国民の「裁判所において裁判を受ける権利」と表裏の関係にあり、国民の訴えに応えて、これをすべき職責を負っている。
 
・ 失当な「棄却の理由」によって、本件上告が「棄却」されたため、「当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争ではない」として「却下・棄却」した津地方裁判所・名古屋高等裁判所の判決が確定することになった。
 上告人は、失当な「棄却の理由」による最高裁決定によって、憲法第32条の「裁判(上告審)を受ける権利」が奪われた。訴追を求める裁判官は、憲法第32条に違背している。
   
・ 上告人は、本件上告理由書において、最高裁判所に対し、『上告人の「具体的争訟性」を認定、もしくは「警察予備隊違憲訴訟に係る昭和27年最高裁大法廷判決」の判例を変更して、「憲法適合性」を審査されたい。』として訴えてきた。
 裁判所は今日まで、警察予備隊違憲訴訟に係る昭和27年10月8日最高裁大法廷判決に基づき、「裁判所は、具体的事件を離れて抽象的に法律命令などの合憲性を判断する権限を有するものではない」(具体的争訟性がなければ裁判の対象とならない)として、裁判所の実務において、「付随的違憲審査制」がとられ、憲法裁判の大部分が「具体的争訟性」がないとして却下、棄却されてきた。
 「具体的争訟性」については、先に挙げた憲法及び法律(裁判所法)に条規されていない。警察予備隊違憲訴訟に係る最高裁大法廷判決の判例が、憲法及び法律の上位に位置づけられ、以来64年間、当該判例が踏襲されてきた。
 これは法理の逆転であり、憲法に違背する。
 裁判所は、この法理の逆転を正し、憲法の条規に基づき、裁判所の実務において、抽象的違憲審査制の行使に取組むべきである。

 国民のニーズと時代の要請に応えるとともに、違憲審査の国際的動向を踏まえ、
司法裁判所型違憲審査制<付随的違憲審査制>をとるアメリカにおいても、イスラム圏からの6カ国入国禁止大統領令に対し、具体的事件が生じる前に、抽象的違憲審査制を行使して、違憲を宣言し、執行を一時差止める命令を出している。

 「最高裁の判例変更」(法理の逆転を正すこと)の出来る立場にある最高裁判所こそが、今この時に、「違憲立法審査権」を行使して「憲法適合性」を審査すべきである。
 本件「違憲訴訟」について、上告を棄却し、「憲法適合性」を審査されない決定を下されたことは、正に、「違憲立法審査権」を放棄したに等しい。
 憲法第98条(最高法規)の条規にかなうよう憲法第81条(法令審査権と最高裁判所)に基づき憲法適合性を審査すべきである。
 訴追を求める裁判官は、憲法第81条、第98条の条規に違背している。

・憲法第32条(裁判を受ける権利)何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

・憲法第81条(法令審査権と最高裁判所)最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

・憲法第98条(最高法規)この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

・裁判所法第3条(裁判所の権限)裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。

ウ. 裁判官は憲法第99条の条規に基づき、憲法尊重擁護の義務を負う。
 裁判官の持つ力の源泉は憲法を尊重し、これを実践することにある。
 裁判官が憲法の条規に違背すれば、その存在の根拠を失う。
 訴追を求める裁判官は、憲法第99条の条規に違背している。
     ・憲法第99条(憲法尊重擁護の義務)天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
       
 以上の事由のとおり、訴追を求める裁判官は、職務上の義務に著しく違反するとともに職務を甚だしく怠っており、罷免の訴追を求める。
 「三審制」の中で、更なる審査を求めることが出来ないので、裁判官訴追委員会において審査され、訴追されたい。
                       (本文 以上)

<別紙 3>

緊急警告022号 自衛隊明記は口実、9条全面改悪の突破口とするもの
 (追加修正2017年9月28日)

 5月3日の憲法記念日、安倍首相は日本会議が主導する「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の改憲集会にビデオメッセージを寄せ、憲法9条に関して「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む、という考え方、これは国民的な議論に値する」「夏季のオリンピック・パラリンピックが開催される2020年を……新しい憲法が施行される年にしたい」とのべ、具体的改憲項目として、憲法9条改憲に踏み込んだ提起を行った。(憲法尊重擁護義務を負う首相がこのような改憲提起を行うこと自体の違憲性については緊急警告021号で指摘。安倍首相と安倍自民党総裁は不離一体であり、改憲提起に関する限り使い分けはできない。)
 これは9条3項に自衛隊を明記する加憲論として論じられているが、一部報道によれば、自民党は安倍首相の提起を受けて9条現行条文を維持したまま、新たに「9条の2」の別条を設け、ここに自衛隊を明記する方向で検討に入ったとのことである。
 「9条3項」加憲にせよ、「9条の2」加憲にせよ、具体的に案文が示されたわけではないので案文に沿った検討はできないが、いきなり本丸の9条改憲に手を付けてくることはないだろうとの大方の予想に反しての、安倍首相ならではの極めて危険な「クセダマ」である。案文が示されてからでは遅いので、その危険性について警告を発しておかなければならない。
 安倍首相はビデオメッセージで「例えば憲法9条です。今日、災害救助を含め命懸けで、24時間365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が今なお存在しています。『自衛隊は、違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ』というのは、あまりにも無責任です。
 私は、少なくとも私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置付け、『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきであると考えます。」と述べた。
 このメッセージは、自衛隊に対する国民の信頼が「9割を超えている」(内閣府調査、2015年1月)という現状を踏まえた、自衛隊を合憲と考えている多くの国民(9条護憲派も含めた)の心に届く言葉である。
 これまでのところ、安倍首相の自衛隊明記改憲についての世論は「9条をいじるべきではない」とする国民の根強い反対もあって、「朝日」が賛成41%、反対44%、「毎日」賛成28%、反対31%、32%(わからない)、と賛否拮抗しているが、「読売」賛成53%、反対35%、「時事通信」賛成52%、反対35%と過半数が自衛隊明記賛成となっている。
 しかしこのままでは、具体的に改憲文案が提示され、大々的なキャンペーンが行われるならば、国民投票において賛成多数となる可能性は大きいと見ておかなければならない。
 それゆえ、この自衛隊明記の安倍9条改憲に賛成する国民の選択は極めて危険な間違った選択になるということを訴えたい。
 その理由の第一は、安倍9条改憲「自衛隊明記」は単なる口実であり、憲法9条全面改悪の突破口に過ぎないからである。自民党改憲草案に明記されているように、現行9条2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これをみとめない。」を全文削除し、自衛隊を軍隊としての「国防軍」(「草案」第九条の二)とするための突破口なのである。自衛隊を大切に思う国民の自衛隊明記の選択が、自衛隊とは異なる「国防軍」という軍隊を選択することになるのである。
 第二は、これはこれまでの自衛隊(集団的自衛権行使を容認した安保法制成立以前の)を合憲と考える大多数の国民の見解に立っての立論であるが、現行憲法第9条に明記されようとしている自衛隊は、安倍内閣によって集団的自衛権容認の7・1閣議決定がなされ、安保法制強行成立によって集団的自衛権行使を付与された自衛隊なのである。「専守防衛」の「戦力」ではないとされた自衛隊であることによって、かろうじて維持されてきた「合憲
の自衛隊が、あらためて憲法違反の自衛隊となってしまったのである。このあらためて憲法違反となってしまった自衛隊を9条3項として(あるいは九条の二として)書き加えることなど不可能なことである。
 何故ならそれは、「専守防衛」を破り集団的自衛権行使によって他国の戦争にまで参加する自衛隊は、明白に現行9条1項(戦争の放棄)、2項(戦力及び交戦権の否認)と対立し、相反するからである。
 第三は、しかし論理の矛盾など意に介さない安倍政権はこれを強引に遂行するであろう。その時、現行憲法9条1項、2項は完全に無効化され、憲法に明記された集団的自衛権行使の「自衛隊」が独り歩きを開始することになる。
 独り歩きを開始した「自衛隊」は、「集団的自衛権」行使の戦争参加により限りなく軍隊としての性格を強め、軍隊としての扱いを要求してくる。結果は第二、第三の9条改憲をもたらし、自民党改憲草案がめざす「国防軍」に行き着く。
 第四は、「集団的自衛権」行使容認の安保法制が成立させられ、南スーダンに派遣された自衛隊に「駆けつけ警護」が付与されたことなどによってその兆候が現れはじめたのであるが、ひとたび「集団的自衛権」行使の戦争参加が行われるならば、「自衛隊」に応募する青年は激減する可能性がある。その結果もたらされるのは「徴兵制」である。
 第五は、「自衛隊」が「集団的自衛権」行使によって他国の戦争にまで参加するということは、国内が戦争体制下となるということなのであり、その結果、国民の基本的人権がさらに制約され、自由と民主主義が失われるということである。
 すでに安倍政権下で教育基本法改悪、盗聴法改悪、特定秘密保護法制定、安保関連法制定、「共謀罪」制定と、国民の基本的人権を制約する悪法が次々と成立させられてきたが、すべてはこの戦争体制構築のためと言わなければならない。そして今また、「大規模な自然災害」への対処を口実とした「緊急事態条項」(自民党改憲草案第98条、99条)の制定が着手されようとしている。これはナチスが全権を掌握した「全権委任法」と同質のもので、国民の自由と民主主義を圧殺し、政権の独裁を招くものである。

<別紙 4>

緊急警告023号 またしても臨時国会召集要求無視の憲法違反!
      (9月2日)

 憲法第53条は、衆参いずれか4分の1以上の議員が要求すれば、内閣は臨時国会の召集を決めなければならないとしている。
 2015年10月、第3次安倍改造内閣が発足した直後、野党5党はこの規定にもとづき、「安保法制」強行可決、環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意や新閣僚の不祥事追及を目指し、臨時国会の開催を求めたが、安倍内閣は首相の外交日程や年末の予算編成を理由に応じなかった。
 これは「安保法制」の強行可決に対して盛り上がった国民の怒りを回避しようとするもので、憲法第53条を無視する憲法違反であり、私たちは当時緊急警告002号を発して抗議した。
 これと同じ憲法無視が、さる8月3日発足した第3次安倍改造内閣でも踏襲されている。憲法53条にもとづき、野党が召集を要求したのは、内閣改造まえの6月末だった。自民、公明両党の幹事長らが、改造後の8月23日、臨時国会の召集を9月末に行う方針で一致した。ここまで召集を延期する理由として、与党は首相の外遊日程や予算編成作業を挙げている。国権の最高機関である国会の開催の要求を、下部機関である内閣の都合に合わせるという与党の見識を疑う。野党が求めているのは予算の審議ではなく、森友学園、加計学園そして陸上自衛隊の「日報」隠しをめぐる一連の疑惑の解明である。
 ここまで国会の召集を先延ばしする首相や与党の姿勢から見えてくるのは、かずかずの疑惑追及を求める国民の怒りをそらそうとする安倍内閣の一貫した術策だ。安倍内閣は教育現場に道徳を持ち込もうとしているが、彼らの行為は不誠実、権力優先であり、一時代前の「教育勅語」の復活を思わせる。このような公然とした憲法無視は到底許されない。
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