南シナ海の問題

南シナ海の問題

南シナ海問題で仲裁裁判所が先月、中国の南シナ海支配権を否定する裁定を下した。ほとんど全ての新聞が「中国完敗」あるいは「無法、不法の中国」とあおっている。果たしてそうか。
この「常識」に対する異色の反論がある。

「戦後世界の海洋秩序を形づくる大きな契機は、1945年、米国大統領トルーマンの『大陸棚宣言』にはじまる。その後『大陸棚に関する条約』を経て、82年採択の『海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)』で領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚、公海等の海洋秩序に関する包括的な『概念』になった。すなわち、現在われわれが海洋秩序という時、前提としているのは、米国による戦後世界構築の一環に位置づけられる秩序概念である。しかし、中国は主権については『歴史的主権』概念に立って発想し、主張していることに留意する必要がある。ちなみに、国連海洋法条約を米国は批准していない。
問題の核心は何か。中国は、戦後世界の米国単独覇権に異議申立てをし、新たな秩序形成に向けての決意を示しているのだ。これが、いまわれわれが目にしている『中国をめぐる言説』の背景に存在する構図である」(木村知義・ジャーナリスト、『週刊金曜日』7月29日号)。
目の覚める指摘だ。日本の大手メディアがあほらしくなる。
「思い起こすのは(安倍が)二度目の政権につくと時を同じくして発表された『アジアの民主主義、安全保障ダイヤモンド』構想だ」と木村氏は続ける。
「(これは著名な)NPO『プロジェクト・シンジケート』のウェブサイトに英文で寄稿し
たものだ。」
「この論考で安倍普三首相は、南シナ海が『北京の湖』になりつつあると警戒感をあらわにする。さらに『東シナ海で中国に屈服してはならない』と強い決意を披歴している。そして『個人的には、最大の隣国たる中国との関係が多くの日本国民の幸福にとって必要不可欠だと認める』が、『日中関係を改善するためには、日本はまず太平洋の反対側に錨をおろさなければならない』と主張する。なぜかといえば『民主主義』『法の支配』『人権尊重』といった『普遍的価値』が戦後の日本外交を導いてきたからだと。……こうした戦略観に立って『インド洋から西太平洋にかけて共有する海を守るため豪州、インド、日本、米国・ハワイをむすぶダイヤモンドを形成する』安全保障戦略を提唱した。」

これを見るかぎり中国包囲網は安倍首相の確信的綱領だ。それでいて習主席に会えば「戦略的互恵関係」を口にする。このような羊頭狗肉の姿勢が嫌われ、9月5日のG20に合せて行なわれた安倍首相と習主席との日中首脳会談では、各国首脳会談としては異例の日中の国旗なしの背景で行なわれた。
安倍首相のいう「普遍的価値」も上辺と中味は別物だ。
安倍首相の他国を無視した面従腹背の不誠実さは日本国憲法の定めに反している。日本国憲法はいう。
「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等な関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。」
自民党の改憲案は、この条項をふくむ憲法前文を全廃している。

2016年9月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : 福田 玲三