平和な江戸時代がもたらしたもの④

逝きし世の面影1学生の頃、江戸時代は封建制で、百姓は搾り取られ、暗黒の大変な時代だったと教わってきた。

でも、どうやら違うようだ。幕末から明治にかけて日本を訪れた外国人がいろんな見聞を書き残しており、そこには貧しいけど信じられないほど明るい日本人があふれている(渡辺京二著『逝きし世の面影』)。

共同風呂に行けば男女が一緒に入っており、道ばたの垣根の陰で女性が行水をしているし、胸を出しても平気でいることに驚いたという記述がある。「東南アジアの未開地なら驚きもしないが、自分たちと同じハイレベルの日本人がどうして」と理解できなかったそうだ。

全体的に、礼儀正しいこと、親和的であること、陽気なこと、簡素であるが豊かさにあふれていることなど、現在日本人が尊敬の念で見られているほとんどの好ましいことがこの頃の人々から普通に見られたようだ。

また、江戸では庶民が普通に鉢植えや草花を育てているのも驚いたようだ。というのも、その頃のヨーロッパでは園芸などというものは王侯貴族の贅沢な遊びで、庶民のものではなかったらしい。

幕末の頃、駕篭に乗ろうと駕篭かきの集まっている方に行くと籤引きをしていて、引き当てたものが乗せてくれたという。外れたものたちも笑顔で送ってくれたそうだ。ところが20年ほどすると人力車夫が客を取り合いするようになったそうだ。西洋化した20年くらいで、人の心も随分荒んで来たというのだろうか。このような例は少なくなかったようだ。

本当の「美しい日本」とは、誰かの言う明治時代でなく、実は江戸時代にあったのではないか。明治以降の西洋化と富国強兵に突き進む中で剥ぎ取られてきたように思う。

大西

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