完全護憲の会ニュース  No.82 ……… 2020年10月10日

pdfニュース82号

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目 次

第79回例会・勉強会の報告                                 P. 1
別紙1 事務局報告                                 P. 2
別紙2 政治の現況について                         P. 3
別紙3 緊急警告045号                            P. 5
日本学術会議会員の任命拒否は戦争への道
別紙4 読者のひろば                               P. 7
別紙5 完全護憲の会 例会・勉強会のご案内          P. 11

________________________

79回例会・勉強会の報告

9月27 日、都内・三田いきいきプラザにて第79回例会・勉強会を開催した(参加者9名;会員71名)。

例会では鹿島委員が座長となり、事務局報告を福田共同代表が行い(別紙1)、続いて政治の現況を草野委員が報告し(別紙2)、順次議論を進めた。勉強会は、後藤富士子弁護士(東京弁護士会)を講師に迎え、連続講演「日本国憲法が求める司法改革」の第1回「司法制度――戦前と戦後」をテーマに講演いただき、質疑した。

事務局報告では福田代表が、袴田事件の冤罪を晴らす活動がクラウドファンディングを通じて活発化していることを報告、この活動を三鷹事件の再審を求める活動でも参考にすることが重要と強調された。

政治の現況報告では、草野委員から「安倍首相の動向」「大坂なおみ選手の黒人男性銃撃に対する抗議」「立憲民主党の動き」「自民党総裁選、菅内閣のスタート」「菅内閣世論調査の高支持率」などが提起された。議論は、直近の「安倍首相退陣と菅内閣発足の評価」が中心となった。

「安倍首相の辞任はモリカケ、桜、河井、コロナ問題など精神的に追い詰められてのものだ」「安倍から菅内閣への動きのマスコミ報道はひどい。意図的に菅内閣の高支持率を演出している」「一国の首相の病気退場に医師団が出てこないことはおかしい。仮病だったのか」「7割の国民が菅内閣を支持していることに絶望」「大衆運動が安倍を退陣させたというのは楽観的過ぎる」「息をするように嘘を吐き続けることが出来なくなったので辞めたのだろう」「安保法制によって米国は好きなように日本を使えるようになった」「米国は日本の世論を気にする。運動は米国に直接アピールした方がよい」といった意見が続いたが、一方で「改憲について国民の支持が盛り上がらず、改憲ができなかったという点では国民の反対運動を評価すべきだ」との見解も出された。

この他、アスリート、芸能人が政治に口出しを躊躇しがちな日本の環境の下で、大坂なおみ選手の勇気ある抗議は大いに教訓としなければならないことが指摘された。

勉強会では、講師の後藤富士子弁護士より約70分間、1)立憲主義の特色(要件)、2)基本的人権保障と司法、3)戦前の司法(裁判所構成法)について講義を受けた。以下、主な内容である。

「国民主権」「基本的人権」「三権分立」を基本要件とする現憲法と大日本帝国憲法との比較の上に立って、「基本的人権保障が憲法上の位置づけを持つと、それを担保する機関として司法の存在が重要になる」。この点で戦前の司法では「行政府の一員である司法大臣が裁判官を監督する」構成となっており、「裁判所の独立」「裁判官の独立」はなかった。また、判事より検事が上位という力関係の中で、弁護士はさらに一段低く、著しい格差・不平等があった。ここから戦後の司法改革は、「司法権の独立」を確立し、行政事件も含め司法権を例外なく通常裁判所に集中する(特別裁判所は設置できない)いわゆる「司法権の優越」を採用した(憲法第76条)。同時に、「裁判所と検事局の分離」(裁判所の分離独立)「裁判所の独立と権限の強化」「判事・検事・弁護士の資格の一元化」=「法曹一元」などが課題として意識されているが、「これこそが日本国憲法の核心」である。戦前においては「裁判官の独立」は意識さえされなかった。

約30分の質疑では、「特別裁判所とは何か」「三権分立の下、司法権の優越とは何か」「最高裁の国民審査と司法への国民参加」などが出された。

なお、10月の勉強会は引き続き後藤富士子弁護士(東京弁護士会)の「日本国憲法が求める司法改革」について、第2回「憲法と裁判所法が描く司法・裁判官」をテーマに開催する。<別紙5>

<別紙1>   事務局報告      

福田玲三(事務局)

1)後藤富士子弁護士と柳澤修氏よりブログ投稿をいただいた。
来信の情報2件と時事川柳の投稿6句もあわせて参照されたい。⇒⇒<読者のひろば>

2)新冊子シリーズ10『三鷹事件・巨大な謀略の闇』の発行遅延

8月発行を予定していた冊子シリーズ10『三鷹事件・巨大な謀略の闇』は、成文の遅れに、担当委員の急病が重なり、10月上旬発行となった。ご了承願います。

3)郵便不正の証拠改ざん事件10年について

大阪地検特捜部による郵便不正事件の証拠改ざん発覚から10年になる9月21日、「東京新聞」はこの事件に巻き込まれた元厚生労働次官の村木厚子さん(64)を取材し、「密室の取り調べ、なお課題」と指摘している。

4)集会案内

・『週刊金曜日』南部読者会

日時:10月23日(金)18:30~20:30 場所:大田区消費者生活センター(JR蒲田駅東口5分)

・袴田事件の現地調査と無罪判決を求める集い(静岡県清水市)

現地調査:10月24日(土) 13:00~16:00 清水辻生涯学習交流館2F講義室

無罪判決を求める集い:10月25日(日) 13:30~16:00 清水テルサ6F研修室 参加費500円
主催:袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会 https://www.hakamada-sukukai.jp/

5)当面の日程について

第80回例会・勉強会
10月25日(日)13:30~16:30
三田いきいきプラザC集会室

第81回運営委員会
11月 1日(日)13:00~
新橋・ばるーん

第81回例会・勉強会
11月22日(日)13:30~16:30
三田いきいきプラザA集会室

第82回運営委員会
11月29日(日)13:00~
新橋ばるーん202学習室

第82回例会・勉強会
12月27日(日)13:30~16:30
三田いきいきプラザ

<別紙2>   政治の現況について 

(1)主なニュース一覧(2020/8/21-9/20)

安倍晋三首相、連続在任日数歴代単独1位の2799日となる。(2020/8/24)

大坂なおみ選手、全米オープン前哨戦準決勝棄権 黒人男性銃撃に抗議(2020/8/27)

安倍晋三首相、辞任表明記者会見(2020/8/28)

合流新党「立憲民主党」スタート。代表には枝野幸男氏(2020/9/10)

ミサイル阻止(敵基地攻撃)へ安倍首相が談話(2020/9/11)

菅義偉氏、自民党両院議員総会で岸田、石破両候補を抑え自民党新総裁に(2020/9/14)

衆参両院、菅義偉自民党総裁を第99代首相に選出。菅内閣スタート(2020/9/16)

菅内閣各紙世論調査で64%~74%の高支持率(2020/9/17)
 

(2)新聞社説、ニュース記事(議論の活発化のため、あえて意見の異なる主張も掲載)

①日刊スポーツ 2020年8月27日  ※ニュース記事

大坂なおみ「1人の黒人女性として」声明全文

2度の4大大会優勝を誇る世界10位の大坂なおみ(22=日清食品)が、23日に米ウィスコンシン州で起きた警官の黒人男性銃撃事件に抗議し、27日に予定されていた準決勝の同22位エリーズ・メルテンス(ベルギー)戦を棄権した。大坂の声明は次の通り

◇   ◇

こんにちは。多くの人が知っているように、私は明日、準決勝を戦う予定でした。しかし、私は、アスリートである前に、1人の黒人女性です。そして、1人の黒人女性として、自分のテニスを見てもらうよりも、今すぐに、気がつかなければならない、もっと重要な問題があると感じています。

私がプレーをしないことで、何か劇的に変わることはないとは思いますが、白人の人たちが多いスポーツの中で、いろんな議論ができれば、それが正しい方向への1歩だと感じています。

警察による黒人への大量虐殺を見るたびに、胃が痛くなり、ヘドが出るような気持ちになります。(この黒人差別に対して)数日おきに、新しいハッシュタグが作られることにも正直、疲れました。また、何度も何度も、この問題について、同じ議論をするのもとても疲れました。いつになったら、(この議論が)十分になる日が来るのだろう。

②読売新聞 2020年9月17日

社説菅内閣発足 経済復活へ困難な課題に挑め

◆改革の全体像と手順を明確に

感染症が蔓延まんえんする世界的な危機の中で、7年9か月ぶりの首相交代である。新政権は、様々な困難を克服し、経済再生を果たさねばならない。

菅内閣が発足した。菅首相は記者会見で「国民のために働く内閣を作る」と述べ、各分野で改革を断行する方針を示した。再任が多く、派手さはないが、安定性を重視した堅実な布陣と言えよう。

新型コロナウイルスの感染拡大は、デジタル化の遅れや組織の連携不足など、日本の政治、経済、社会の各分野に解決すべき課題が多いことを浮き彫りにした。

◆国民の理解が不可欠

首相は、省庁の縦割りを打破し、規制改革を進めるという。その方針は妥当だが、まず改革の全体像と手順、具体策を示すことが不可欠だ。国民の理解を得ながら取り組むべきである。

新政権の人事では、自民党総裁選後、麻生太郎副総理兼財務相と二階俊博幹事長の再任が真っ先に固まった。前政権を内閣と党で支えた2人の続投で、政治の安定を図る狙いがあるのだろう。

内閣の要である官房長官には、厚生労働相として感染症対策に当たってきた加藤勝信氏を起用した。同じポストへの再任は8人に上り、閣内での横滑りは3人、初入閣は5人だった。

総裁選を戦った岸田文雄前政調会長と石破茂元幹事長は、重要ポストに登用しなかった。岸田派、石破派の議員を閣僚に起用することで配慮したとみられる。

最優先の課題は、感染の抑止と経済活動の両立である。

西村康稔経済再生相が引き続きコロナ対策に当たる。加藤官房長官や再登板となる田村憲久厚労相らと連携し、効果的な手立てを講じなければならない。

首相は、検査や医療体制を拡充し、メリハリの利いた感染対策を行うという。PCR検査は思うようには増えていない。様々な目詰まりを解消し、いかに流行を抑え込むか、重要な試金石となる。

行政・規制改革相に、河野太郎氏を防衛相から横滑りさせた。抵抗を排する突破力への期待があろう。携帯電話料金の引き下げは、武田良太総務相が担う。

デジタル庁創設に向けて、平井卓也氏をデジタル改革相として再入閣させた。関連する部署は現在、内閣官房や経済産業省、総務省などにまたがっている。

地方自治体にもかかわる行政のデジタル化をどう進めるか。それにふさわしい組織はどうあるべきか。総合的な戦略を示して計画的に実施してもらいたい。

経済を成長軌道に乗せるには、前政権で不十分に終わった成長戦略を改めて描き直し、着実に実行に移すことが必要だ。

◆成長戦略をどう描くか

麻生氏と西村氏のほか、梶山弘志経済産業相、赤羽一嘉国土交通相らも続投させた。

年末に向けて企業の倒産を防ぎ、雇用維持を図るのはもちろん、景気を底上げしていくことが責務である。事業者への切れ目ない支援に努めてほしい。

2021年度予算編成では、コロナ対策と夏の東京五輪・パラリンピックをにらみ、歳出圧力が強まるのは確実だ。中長期的な財政健全化にも目を配ることが大切である。

③毎日新聞 2020年9月17日

社説 菅義偉・新内閣が発足 まず強引な手法の転換を

前政権を継承し、前に進めるというだけで果たして乗り切れるだろうか。大きな不安を抱えながらのスタートだ。

菅義偉内閣がきのう発足した。

約8年ぶりの首相交代だ。ただし、安倍晋三前首相の突然の辞任表明を受け、急きょ行われた自民党総裁選で決まった後任だ。緊急避難的な内閣と言っていい。

菅氏もそれを意識したのだろう。「暫定内閣」と見られるのを避けるため半数以上の閣僚を入れ替えた。河野太郎氏を防衛相から行政改革担当相に横滑りさせたのは独自色のアピールと思われる。

だが総じて、自民党役員人事を含めて各派閥のバランスを重視した人事だ。女性閣僚は2人に減り古い体質から脱皮できていない。

政権の骨格は変わらず

麻生太郎副総理兼財務相が再任されたのにも驚く。本来は、森友学園問題で財務省が手を染めた公文書改ざんが発覚した時点で引責辞任すべきだったのだ。

党側の二階俊博幹事長の続投も含め、政権の骨格は変わらない。

言うまでもなく当面は新型コロナウイルス対策が課題となる。

忘れてならないのは、これまで後手に回ってきた政府の対策については菅氏も官房長官として重い責任を負ってきたことだ。何が欠けていたのか、きちんと検証するところから始める必要がある。

コロナ対策に限らない。アベノミクスをはじめとする経済政策やロシアとの北方領土交渉など外交も、安倍前首相の体調悪化前から行き詰まっていた。それを謙虚に認めないと前に進めない。

何より求められるのは、政治手法を改めることである。

異論に耳を傾けず、与党の数の力で強引に突き進む。そんな政治を菅氏は安倍前首相と二人三脚で推し進めてきた。

力ずくの手法の一つが、内閣人事局を使って中央官庁の幹部人事に強く関与してきたことだ。総裁選中も菅氏は、政権の決めた政策の方向性に反対する幹部は「異動してもらう」と明言した。

しかし官僚が人事を恐れた結果、官邸の意向を忖度(そんたく)し、行政手続きの公正さや透明性が損なわれる政治を招いたのではなかったか。ゆがみを直ちにただすべきだ。

菅氏は、官僚と違って「私たちは選挙で選ばれている」とも語った。選挙で勝ちさえすれば全ての政策が国民に信任されたとばかりに、一切の批判や反対意見を排除する姿勢が垣間見える。

コロナ問題や米中対立など世界は今、簡単には解答が見つからない状況にある。いつにも増して多様な意見や提案を吸い上げる必要があるはずだ。国民の声に耳を澄ます一方、官僚組織の総合力をいかに生かすかが課題となる。

菅氏は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題も担当してきた。そこで見せてきたのは、地元の根強い反対がありながら、強硬に移設を推進しようとする姿だ。

指導者は強大な権力を抑制的に行使すべきであり、国民の理解と納得を得るのが責務だ。ところが前首相と菅氏は、権力は極力、使うものだと考えてきたと思われる。普天間問題が解決しない現状が示すように、その姿勢を変える時だ。やはり、継承するだけでは済まされない。

解散前には論戦が必要

新内閣の発足により、与野党ともに関心は衆院解散・総選挙の時期に移っているようだ。もちろん首相が交代した以上、国民の信を問うのが筋である。

自民党内には早期解散を求める声が強い。「新内閣発足直後は支持率が高そうだから、早めに選挙をした方が得策だ」と考えているのだろう。だがそれは身勝手で、菅内閣はむしろ仕事をしない方がいいと言っているのに等しい。

全国一斉に選挙ができる状況かどうか、新型コロナの感染状況を慎重に見極めることが不可欠だ。そして、十分な国会論戦を行ったうえで衆院選を行うべきである。

秋に再び臨時国会を開くやいなや、議論もせずに解散するといったことはあってはならない。

安倍前政権下では、国会はまるで内閣の下請けであるかのように軽んじられた。政府を監視する国会の機能は薄れ、政権に都合がよい時期に、総選挙をする大義も乏しく衆院を解散するのが当然のようになってしまった。

野党が再整理された時期でもある。国会を立て直すきっかけとしたい。

 

<別紙3>  緊急警告045

 日本学術会議会員の任命拒否は戦争への道

日本学術会議は今年9月末で会員の半数が任期満了を迎えることから8月31日、計105名の新会員の推薦書を首相あてに提出した。ところが、9月末に事務局に示された任命者名簿には推薦した新会員のうち6名が記載されておらず、菅義偉首相が任命を拒否したことが分かった。

任命を拒否された6名は、芦名定道(京大・宗教学)、宇野重規(東大・政治思想史)、岡田正則(早稲田大・行政法学)、小沢隆一(東京慈恵会医科大・憲法学)、加藤陽子(東大・日本近代史)、松宮孝明(立命館大・刑事法学)の各教授。

この政府の対応に同会議は9月30日、菅首相に対し文書で理由の説明を求めるとともに10月1日の総会において、「創立(1949年)以来、自立的な立場を守ってきた。説明もなく任命が拒否されることは存立に大きな影響を与える」(山極寿一・前会長)と危機感を訴え、翌2日、菅首相に対して「1.推薦した会員候補者が任命されない理由の説明、2.任命されていない方の速やかな任命」の2点を要望した。

同会議はこれまで、政府に対する多くの勧告や提言などを行ってきた。科学者が戦争に協力したことへの反省から1950年と67年に、軍事目的の研究を行わないとの声明を出した。また2017年には、軍事応用できる基礎研究費を助成する防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」の予算を安倍政権が大幅増額したことを踏まえ、「政府による介入が著しく、問題が多い」と批判した。

これら批判の背景には苦い歴史がある。戦前、多くの科学者が、戦争に邁進する政府に有無を言わさず協力させられたという教訓に学んだのだ。つまり、1933年、京都帝国大学の滝川幸辰法学部教授が著書(『刑法読本』)や講演内容について思想的に問題があるとして罷免された「滝川事件」、1935年、美濃部達吉の憲法学説が糾弾され否認された「天皇機関説事件」、それらがその後の軍部の暴走を助長した。1937年、東京大学経済学部教授・矢内原忠雄は日中戦争を批判し、辞職をやむなくされた。また1939年、早稲田大学教授で歴史家の津田左右吉は皇室の尊厳を冒涜したと訴えられ、以後、学問研究や国民の知る権利が著しく制約され、全国民が戦争に総動員される道を開き、内外に二度と繰り返してはならない多大な犠牲をもたらした。

菅首相は10月5日、内閣記者会のインタビューで、任命拒否問題は「首相の任命権に基づく対応だ」と答弁し、その理由についても「個別人事に関するコメントは控えたい。総合的、俯瞰的(ふかんてき)活動を確保する観点から判断した」と抽象的で無内容な官僚的答弁に終始し、6名の任命拒否の理由にはまったく答えなかった。答えられるはずがなかったのだ。

6名の学者はいずれも社会科学系の学者であり、この間、安倍政権が強行してきた集団的自衛権容認の安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの憲法違反・法律違反の数々の法案に対して、それぞれ専門的な立場から反対を表明してきた人々であり、これらの学者の任命拒否は、そうした反対表明をしてきた学者を見せしめ的に排除した結果だからである。

そもそも、同会議の独立性と自律性は内閣総理大臣の所轄でありながら、「日本学術会議は、独立して左の職務を行う。」(日本学術会議法第3条)の規定によって守られている。

このため、推薦・任命にかかわる法解釈について、1983年の国会で当時の中曽根康弘首相は、「政府が行うのは形式的任命にすぎない」と答弁し、当時の丹羽兵助総理府総務長官も「学会の方から推薦していただいた者は拒否しない。その通りの形だけの任命をしていく」と「第3条」に則った答弁をしており、これが今日に至るまで政府の公式見解となっている。

ところが、菅首相は同会議の会員任期満了を機に、法を無視し、歴代政府の公式見解も一方的に反故にし、国家行政の最高責任者としての説明責任さえ完全に無視し、同会議の変質を狙い政治介入してきたのだ。

この菅政権による6名の任命拒否と同会議への露骨な政治介入が強行されるならば、日本の学術研究は時の政府の下請け機関に成り下がり、多様な角度から真理を追究することが制約されてしまう。日本国憲法23条が保証する[学問の自由]を侵すことにとどまらず、19条[思想及び良心の自由]、20条[信教の自由]、21条[集会、結社及び表現の自由]を侵害していくことは明らかである。

さらに深刻なのは、菅政権のその後の対応である。日本学術会議のあり方に問題があるかのような論点のすり替えを行ない、大学における軍事研究に批判的・非協力的な現在の学術会議のあり方を変え、産軍学共同の軍事研究体制を構築しようとしていることは明らかである。

安倍政権は集団的自衛権を認める安保法制を強行採決し、検察庁法を違法に解釈変更するなど、目を覆うばかりの憲法軽視、法律無視を繰り返してきた。そして今回、安倍政権を継承し政権の意に沿わない官僚は排除すると公然と豪語している菅首相は、安倍政権以上の露骨さで学術の分野にまで触手を伸ばしてきた。

日本学術会議はその歴史と活動が示しているように、日本の学術を代表し、その科学者としての良心と倫理に基づき広く学問のあり方を点検し、「人類社会の共有資産としての科学の創造と推進に貢献する」(日本学術会議憲章第6項)重要な機関である。私たちは、携帯電話料金値下げやGoToキャンペーンなどの大衆受けする政策で国民の支持拡大を狙う一方で、日本学術会議への政治介入という時の権力者の民主社会への挑戦を断じて許してはならない。

任命拒否の撤回を求めるネット署名は10月6日12万人を超え、全国各地・各方面から抗議の声がわき起こっている。この広範な世論の反対によって菅政権の反動的な動きを阻止しよう。

それは戦争に向かう道を明確に拒否することに通じる。

(2020年10月6日)

<別紙4>   読者のひろば

(通信・ご意見・ご指摘など、なるべく600字以内で投稿歓迎)

ブログ:コロナの夏に憲法を考える――「主権」と「自治」

後藤富士子(弁護士)

1.「主権」というとき、その主体が誰かによって「国家主権」と「国民(人民)主権」に区分される。

日本は、第二次世界大戦で負けるまで、他国を武力侵略して植民地化した経験はあっても、他国によって自国が植民地化されることはなかった。敗戦によっても他国の植民地になることはなかったが、沖縄問題や日米安保体制・地位協定にはっきり刻印されているように、「独立国家」は見せかけにすぎない。
一方、「国民主権」についていえば、戦前は絶対主義的天皇制であり、「主権在民」を叫べば「国体の変革を企てる」という理由で、治安維持法により殺人的な弾圧を受けた。「主権在民」は日本国憲法によって初めてもたらされたのである。
しかし、日本国憲法には、条文として「国民主権」を定めたものが見当たらない。前文第1段落第1文に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と謳われている。そして、第1章は「天皇」であり、第1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と定められている。
ちなみに、韓国の憲法第1条は、「大韓民国は民主共和国である」「主権は国民にあり、すべての権力は、国民から発する」と規定している(孫引きです)。
アメリカ独立宣言は1776年、フランス革命は1789年である。それに比べると、日本国民が主権者になったのはたかだか74年の歴史である。しかも、日本国憲法がGHQに与えられた「棚からぼた餅」だったとすれば、主権者意識の脆弱性は無理もない。日本の「独立」が見せかけにすぎないのも、そのためである。すなわち、「国家」というのは存在するにしても、「国家主権」の在り様は、結局のところ、主権者である国民一人一人にかかっているというほかない。

2.「自治」という言葉も、日本国憲法第8章「地方自治」に初めて登場する。戦前は中央集権的官僚国家であったから、内務省の官僚が知事に任命されて、中央政府の統制を貫徹させていたのである。
ところで、ここでも「自治」というとき、その主体が誰かによって「団体自治」と「住民自治」に区分される。そして、「国家主権」と「国民(人民)主権」の関係と同じように、「団体自治」の在り様は、結局のところ、「住民による自治」にかかっている。「地方自治」が「民主主義の学校」と喩えられるのもそのためである。しかし、GHQの民主化政策によって「棚からぼた餅」のように降ってわいた「地方自治」から、日本国民は、どれだけ「民主主義」を学んだのか、心もとない。

3. 香港の「1国2制度」が揺れている。香港は、1997年に中国に返還されて特別行政区となり、香港基本法で「高度の自治」が規定されている。立法会(香港の議会)選挙は1998年に初めて実施され、今年9月に7回目の選挙が予定されていた。

昨年11月の区議選で民主派は85%以上の議席を得て圧勝し、今回の立法会選挙でも「政府の妨害がなければ、民主派は過半数を取る可能性が高い」と期待されていた。さらに、今年7月11日、12日に実施された民主派の「予備選」(共倒れ防止のために候補者を絞る)では、目標とした17万人を大幅に超過した61万人が投票した。それは、ごり押しされた国家安全維持法(国安法)への市民の抗議の意思であった。一方、国安法6条は「踏み絵」条項で、選挙の候補者は署名か宣誓によって「香港基本法を擁護し、香港特別行政区に忠誠を尽くす」と示す必要があり、ここで立候補が閉ざされる可能性もあった。
ところで、香港政府が提出する予算案や重要法案は3分の2で可決されるので、民主派が3分の1を超える多数になれば否決できる。そして、香港基本法52条では、否決後に行政長官が立法会を解散し、再選出された立法会が再度否決すれば、行政長官は辞任することになっている。そうなれば、民主派が史上初めて合法的に政権を倒すことができる。このような状況の中で、政府は、民主派の伸長を恐れて、新型コロナウイルス感染拡大防止を口実に、立法会選挙を1年延期する暴挙に出た。
香港の事態は困難を極めているが、「自治」と「自由」について改めて考えさせられる。それは、表裏一体のものである。自由は自治なくして得られない。しかし、人々の自由がなければ、自治も成り立たないのである。

4. 「民主主義」は制度である。しかし、それを支えるのは「生きている人々」である。
自民党は「民主的に」行われた国政選挙で繰り返し多数派を占め続け、安倍晋三首相自身も3度にわたって自民党総裁選で「民主的に」選出されて総理大臣の職にある。政権が国会に提出したさまざまな法案は、共謀罪も、特定秘密保護法も、安全保障関連法案も、すべて「民主的に」国会で採択された。かように、制度としての民主主義は今日も元気に生きている。
しかし、「民主主義の心」が死に始めた、と内田樹さんは言う。「民主主義の心」とは、国民の側の「民主主義を生き続けさせるための努力」であり、制度は生きているが、その制度を賦活させ、生かすための力は枯渇している、というのだ。ここでも、最後は「人」の問題が出てくる。換言すれば、民主主義政体は、自分の頭でものを考えることのできる成熟した市民を一定数確保できなければ、独裁制に退行するのである。
日本国憲法に定められた、人権保障を含む「制度」は素晴らしい。しかし、主権者である国民が、これに倚りかかり消費者として振舞う限り、日本国憲法も死んでいくのではなかろうか。

【参考資料】 第3項  しんぶん赤旗日曜版 2020年8月2日号
第4項  週刊金曜日8/7・14合併号
内田樹「凱風快晴ときどき曇り」『枯渇する民主主義の心』

ブログ: 菅首相は日本学術会議が推薦した会員候補6名の任命拒否を直ちに撤回せよ

栁澤 修(完全護憲の会 会員)

日本学術会議(以下学術会議)が会員候補として推薦した105名のうち、6名が政府に任命拒否された事実が10月1日明らかになった。学術会議会員の定数は210名、任期が6年。3年ごとに半数が入れ替わることになっており、次の会員候補は学術会議が推薦し、首相がその推薦に基づき任命することになっている。

今回の問題における日本学術会議法(以下「法」という)の関係条文は次の通りである。

第1条第2 日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする。

第3    日本学術会議は、独立して左の職務を行う。(以下略)

第5    日本学術会議は、左の事項について、政府に勧告することができる。(以下略)

第7条第2 会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する

第17条    日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする

 

会員の選出方法は、1983年の法改正までは投票制であったが、同年の法改正により現在の形となった。推薦・任命にかかわる法解釈について、当時の中曽根康弘首相は国会で、「政府が行うのは形式的任命にすぎません」と答弁。更に丹羽兵助総理府総務長官も、「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない。その通りの形だけの任命をしていく」と答弁しており、これが今日に至るまで政府の公式見解であり、法解釈は変わっていないはずである。

ところが菅首相は10月5日の内閣記者会インタビューで、自らが主体的に判断して任命拒否したことを認めたのである。

 インタビュー要旨は次の通り。

「(退任する)会員が後任を指名することが可能な仕組みだ。推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲して良いのか考えた。それぞれの時代の制度の中で、法律に基づいて任命を行っているという考え方は変わっていない」と強調。

6人は安全保障関連法や特定秘密保護法の制定に反対してきたこと、任命拒否は(憲法で保障される)学問の自由の侵害ではないかとの質問に対しても、「6人の見解と任命拒否の判断は全く関係ない、学問の自由とは全く関係ない」と断言。拒否の具体的理由を問うと、「個別の人事には答えられない」という常套句で、明言しなかった。

学術会議は、第2次世界大戦に科学が協力したことを反省し、1949年に設立された団体で、法第3条の通り、政治等の干渉を受けない独立した機関として位置付けられた。その独立性を保つために、法第1条第2項の「所轄」に管理・監督は含まれず、歴代政権は人事に手を付けることがなかったのである。

今回の任命拒否問題発覚後、ここに至る伏線があることが判明した。安倍政権下の2018年、内閣府が内閣法制局に「推薦者を拒否できるか」との問い合わせを行っており、法制局は憲法第15条の「公務員の選定・罷免は国民の権利」を持ち出して「拒否できる」旨回答していたのである。しかし、この内閣法制局の見解は公表されていなかった。更に1年遡った2017年の前回推薦時には、学術会議は官邸から定員を上回る候補者推薦を求められ、これに応じていた。また、2016年と2018年には、欠員の補充会員推薦に際しても複数の候補の提出を求められ、本命が拒否されたため、欠員のままとしていることも明らかになった。政府も学術会議もこの事実を公表せず、問題化することもなかったのである。

さて、今回の任命拒否のどこに問題があるのかを整理すると、大きな憲法問題が浮かび上がってくる。

第23条 学問の自由は、これを保障する。

学術会議は学術研究者を会員とする独立機関であり、政治の介入は学問の自由を阻害するもので、決して許されない。学術会議に要求される政府への勧告にも、政権への忖度が波及し、大きな影響が出る。

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

今回任命拒否にあった学者6名はすべて人文・社会科学系の学術研究者で、安保法制や秘密保護法等に疑義を唱えた方たち。首相は口が裂けても言えないはずだが、政権批判する学者を排除する意図は誰の目にも明らか。言論・表現の自由を否定する行為であり、学術研究者の萎縮を招く。

第41条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。

日本学術会議法は国会の審議・採決によってできた法律であり、その法解釈についての明確な国会答弁がある。政府が勝手に変更することは国会への冒とく行為である。また、かつて「法の番人」と言われ、法的安定性を守るべき内閣法制局が、今や「政権の門番」に成り下がっているのは、極めて由々しき事態である。

安倍政権は集団的自衛権を認める安保法制を強行採決し、検察庁法を違法に解釈変更するなど、目を覆うばかりの憲法軽視、法律無視を繰り返してきた。そして今回、学術の分野まで触手を伸ばしてきた。安倍政権を踏襲するというスローガンで首相についた菅政権もまた、同じ道を歩むことが、今回の問題で明らかになったのである。

菅首相は長期間官房長官を勤め、その間手に入れた人事権という強力な武器を持ち、その使い方と効果を熟知している。就任早々から、政権の意に沿わない官僚は排除する旨、明言もしている。その人事権をフルに活用して、表では携帯電話料金値下げやGoToキャンペーンなど、大衆受けする政策で人気を保ちながら、裏では憲法軽視、法律無視の政策を強引に進め、危険な独裁者になる可能性がある。日本は、既に中国や香港の現状を他人事として見過ごすことができない状況になっている。国民はしっかりと監視し、大きな声を上げていく必要がある

その第一歩が、「菅首相は日本学術会議が推薦した会員候補6名の任命拒否を直ちに撤回せよ」ではないか。     (10月6日)

来信:映画『侵略』上映委員会「上映委ニュース」9/18、№137より。

特集:安倍とアベなるものを撃つ!!           森 正孝

1.スガ政権が受け継ぐ安倍政治の4つの問題点!

(1)民主主義を根本から破壊

(2)政治の底なしの劣化

(3)私利私欲に血まなこになった政権

(4)トランプ米国の言いなり、ヘイトスピーチ・排外主義を生んだ右翼政権

2.不正・悪政の根源­=官邸独裁政治と三つの問題!

(1)「内閣人事局」による各省庁への恐怖支配!

(2)公認権と選挙資金を通しての自民党員への恐怖支配!

(3)官邸は、新聞・TVのメディアそして、お笑いにも手を突っ込んできた!

3.改憲との闘いは続く!引けば必ず攻め込んでくる!

4.菅政権はどんな政権になるのか?

(1)《アベの悪行蓋閉じ》政権!

(2)異を唱える者は徹底的に排除する!

(3)韓国とはさらに敵対的に。辺野古新基地問題に関してはより悪化する!

(4)政治の私物化が安倍以上に進む!

5.これから私たちはどうすべきか!?

(1)「負の遺産」を終わらしてはならない!

(2)同調圧力に屈せず、主権者意識をより強固に!そして正確な情報を!!

来信:講演会録画の紹介(神奈川県・T氏より)

「中国脅威論の嘘」を海上保安庁のデータを示して説明しております。

https://www.youtube.com/watch?v=C7lb2gMSFqM&t=191s

「中国脅威論の嘘と自衛隊南西シフトの脅威」高野孟 2020/09/21 にライブ配信

※(当会編集より)政府マスコミがいかに荒唐無稽なシナリオで仮想敵国の恐怖をあおり、米軍基地拡大と自衛隊軍備増強を図ってきたか、データと現場取材が証明する実態、必見です。

時事川柳

二階まで 階段上って 勝負あり   (二階幹事長の支持で勝敗決定) 【柳井修功】(9/17)

負の遺産 後は頼むと あべスガる (安倍が菅に負の遺産処理をお願い)【柳井修功】(9/17)

選挙にて 辞めさせたかったアベさんよ                【曲木草文】(8/30)

開かぬも 辞めるも持病のせいにして                 【曲木草文】(8/30)

コロナ禍や 一強無策の辞任劇                    【曲木草文】(8/30)

コロナには 官邸威光効き目なし                   【曲木草文】(8/30)

 

<別紙5>  完全護憲の会 例会・勉強会のご案内

日本国憲法が求める司法改革

「戦後日本の司法制度が手にした最大のものは、違憲法令審査権である」(『官僚司法を変える――法曹一元裁判官』後藤富士子著 現代人文社)と言われる。

だが、「憲法の番人」である裁判所はこの役割を果たし得ていない。果たしていないどころか、多くは憲法判断を回避するか、憲法違反の悪法を合憲として追認している。司法が社会の悪化を加速させているとも言える。

この司法の現状を改革することなくして、社会の悪化は止められない。

日本国憲法が求める「司法改革」とは何か。長年、「司法改革」の必要性を訴えてきた後藤弁護士に前回に引き続き講演していただき、学びたいと思います。多くの皆様の参加をお待ちします。


日 時  10月25日(日)
 午後3時~4時30分 (例会は13:30~14:50)

講 師  後藤 富士子 氏(弁護士・みどり共同法律事務所)

テーマ  「憲法と裁判所法が描く司法・裁判官」

会 場  三田いきいきプラザ A集会室(東京都港区芝4-1-17)

都営地下鉄 三田線・浅草線 「三田駅」A9番出口より徒歩1分

JR 山手線・京浜東北線 「田町駅」西口より徒歩8分

https://shiba-ikiiki.com/mita/access/

資料代  300円(例会資料含む)

※新型コロナウィ会HPを参照するか、又は下記事務局までお問い合わせください。

・完全護憲の会HP:https://kanzengoken.com/

・事務局電話番号:03-3772-5095

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