完全護憲の会ニュース No.26  2016年 2月10日

 連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話・FAX 03-3772-5095
Eメール:kanzengoken@gmail.com
ホームページ:https://kanzengoken.com/

目次

①第2回総会と第25回例会の議事録    1p
③  違憲に対して発信した緊急警告     4p
④  次の例会・勉強会のご案内       4p

別紙  1 第2回総会承認・決定事項                          5p
別紙  2  政治現況報告                                          9p
別紙  3  違憲に対して発信した緊急警告 001~005号       10p

 さる1月24日(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で第2回総会兼第25回例会を開催、参加者19名。入会者 計50名。

第2回 総会の議事録(要旨)      2016年1月24日

 総会は司会を編集委員長の草野好文が担当し、議長に同じく編集委員の大西喜代志を選出した。
 議事は以下の議案が事務局より提案された。
1)第1号議案 2015年度活動経過報告
2)第2号議案 2015年度決算報告
3)第3号議案 会計監査報告
4)審議(質疑応答・承認)
5)第4号議案 2016年度活動計画について
6)審議(質疑応答・決定)
7)第5号議案 新役員選出

 審議の結果、1号議案、2号議案、3号議案、5号議案については出席会員全員の賛成で承認・可決された。
第4号議案の2016年度活動計画の5項「パンフレット追補版(リーフレット形式)の発行について」の議案については、一部修正の提案があり、修正案が賛成多数で採択された。
 以上を審議して、第2回総会は閉会した。
 承認、決定された全議案は別紙1のとおり。

          第25回 例会の議事録(要旨)

 休憩をはさんで第25回例会・勉強会に移った。司会は引き続き草野好文が担当した。
1.岡部報告(別紙2)
2.野村報告
 3月パンフについて、国政と憲法とのギャップを憲法の全条項に照らして明らかにしたもので、大きな意義あるものである。パンフ発行後も、現政権は次々と違憲の政治を推し進めてきている。これにも対応すべくすでに60項目ほどの提起を行い、さらに数十項目を準備している。これらの提起の討議が遅れているのが残念、編集委員会の対応に問題あり。速やかに検討して発表にこぎ着けて欲しい。
 例えば、選挙の問題で言えば、憲法は国会議員は国民の代表であると言っているが、現在の選挙制度では自民は25パーセントの得票で、野党の得票が75パーセントであっても当選してしまう。野党協力は難しい。この場合は当然、決選投票を行うべきで、これは憲法の要請するところである。
 「地方創生」なるものは、第92条の「地方自治の本旨」に反するものである。これによる文化庁の京都移転などの中央官庁の移転は、憲法15条「すべて公務員は、全体の奉仕者」や官吏の働き方を定めた国家行政組織法に反するものである。
こうした問題も含めみんなで議論していただいて、もんでいただいて、発表にこぎ着けられるよう進めて欲しい。
3.ホームページ担当の川本氏から、完全護憲の会ホームページのトップページに違憲性に対する「緊急警告」を掲載できるようにした。編集委員会で検討し発信して欲しい。ここには会員登録しないでもコメントできるようにしたので、ぜひ、コメントを入れて欲しい(会員ブログの方は会員登録が必要)。また、ツイッターなどで拡散して欲しい、との説明がなされた。(25日現在、緊急警告001号発信済)

4.新参加者紹介
1)K氏  週刊金曜日見て参加。
2)Mさん 週刊金曜日見て参加。

5.質疑・討論
 国会解散が総理大臣の専権事項とされていることなどにつき、さまざまな角度から意見交換が行われた後、質疑・討論を終了。

      違憲に対して発信した緊急警告

 第2回総会の決定による違憲緊急警告を001号~005号(別紙 2)まで発信した。この各号はそれぞれ「コメント欄」で意見を求めるとともに、2月の例会でも内容の検討を予定しているので、事前の一見をお願いしたい。

      次の例会・勉強会のご案内

日時   2月28日(日) 13:30~16:30
場所 港区・神明いきいきプラザ・「憲法研究会」
〒105-0013 港区浜松町1-6-7    電話03-3436-2500
JR 山手線・京浜東北線、浜松町駅北口から徒歩4分
都営地下鉄、大門駅A2 出口から徒歩4分、B1出口から徒歩3分
報告   1)政治の現況について   岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
2)緊急警告発信した001号~005号の検討     事務局
議事   質疑・意見
会場費  300円
(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)

   お願い
「戦争法の廃止を求める統一署名」主催の実行委員会は署名者 2000万人の達成を4月25日締切で、目指しています。1月の集約23枚(215筆)。5人の署名欄が埋まりましたら、第2次として2月末までに当会あてお送り下さるようお願いします。(事務局)

   ご案内
「日中歴史 和解への道」(高文研刊)定価1,500円(本体)研究会
著者 松岡 肇(中国人強制連行・強制労働事件全国弁護団幹事長)出席の予定。
3月5日(土) 14:00~ 、大阪経済法科大学6階B会議室 労働運動研究所研究会
(港区麻布台1-11-5 電話03-3582-2922 地下鉄神谷町、1出口から、東京タワー方向へ徒歩3分左側)
<図書紹介>
内田博文著『刑法と戦争』(みすず書房刊)定価4,600円(本体)
「完全護憲の会」に相応しい名著です(推薦者 田中 伸)

<別紙 1>
          第2回総会 承認・決定事項

第1号議案     2015年度活動経過報告

 2015年は、資料に示すとおり、毎月、例会と編集委員会の開催をつみ重ねた。
この間、1月の例会では、第4次案まで検討したパンフ『日本国憲法が求める国の形』を、4月に投票が予定される統一地方選前に発表することとし、その発表記者会見を3月20日にする日程を決めた。
 3月20日、プレスセンターへのマスコミ出席者は少数だったが、翌21日『東京新聞』は大見出しで当会の結成をつたえ、その影響と会員の直接配付によって冊子売上げ(カンパを含む)は3月、4月ともに10万円をこえた。
3月3日に発行したパンフ500冊は売切れ、5月3日に2000冊を増刷した。
 その後、『週刊金曜日』5月29日号による当会の紹介で、6月のパンフ売上げは7万円を越え、引き続き全国各地の『週刊金曜日』読者会からも受注することができ、年間の売上げ総額は、カンパを含め、90万円に達した。会員もまた50名に増えた。
 ちなみに、郵便振替払込代金の内訳をみると、カンパ金額が平均して冊子代金の3倍を越えており、当会の発足が、どれほど人々の期待に応えているか、実感される。接触した範囲はまだ限定されており、さらに一段と範囲を広げることが切実に求められている。
 パンフの内容についても「これだけ広範に体系的に書かれたのは、憲法関連の文献として最高」(T衆議院議員)と高く評価される一方、次版に当たって改訂の要望、たとえば「設立趣意書」における「日本国憲法の理念」についてなど、も出されている。
 秋になり、冊子普及の動きが一段落すると、会の進路をめぐって熱心な討議が始まった。全条項の完全護憲を提唱する運動は、これまでになく、まだ道のついていない荒野の途上で、進路の模索が始まるのは当然のことであり、それだけに慎重な選択が必要とされる。
 討議と並行して、当会のホームページで違憲の対する緊急警告を発信し、それを集めてリーフレットにし、さらにこれをパンフレットに集成し普及する案が固まってきている。

資料
参考  2014年
第  1回 例会    1月26日   学士会館     参加者   7名
第  2回 例会    2月23日   学士会館     参加者   9名   会員 計  8名
第  3回 例会    3月30日   学士会館     参加者 13名   会員 計10名
第  4回 例会    4月27日   学士会館     参加者 11名   会員 計13名
第  5回 例会    6月  1日   学士会館     参加者 13名   会員 計14名
第  6回 例会    6月22日   学士会館     参加者 14名   会員 計15名
第  7回 例会    7月27日   学士会館     参加者 16名   会員 計19名
第  8回 例会    8月20日   阪大東京オフイス    参加者 13名  会員 計19名
第  9回 例会    9月28日   学士会館     参加者 13名   会員 計19名
第10回 例会  11月  2日   学士会館     参加者 12名  会員 計20名
第11回 例会  11月23日   学士会館     参加者 12名  会員 計20名
第12回 例会  12月21日   学士会館     参加者 15名  会員 計20名

第1回 編集委員会   6月12日  京大東京連絡事務所(品川)
第2回 編集委員会   7月10日  京大東京連絡事務所
第3回 編集委員会   8月  6日  京大東京連絡事務所
第4回 編集委員会   9月  3日  阪大東京オフイス
第5回 編集委員会 10月  8日  阪大東京オフイス
第6回 編集委員会 11月12日  阪大東京オフイス
第7回 編集委員会 12月  3日  阪大東京オフイス

2015年
第  1回総会兼第13回 例会  1月25日 学士会館   参加者 13名  会員 計21名
第14回 例会    2月22日  学士会館             参加者  10名  会員 計21名
第15回 例会    3月22日  学士会館             参加者  19名  会員 計22名
第16回 例会    4月26日  学士会館             参加者  17名  会員 計31名
第17回 例会    5月31日  学士会館             参加者  20名  会員 計37名
第18回 例会    6月28日  学士会館             参加者  23名  会員 計42名
第19回 例会    7月26日  学士会館             参加者  22名  会員 計47名
第20回 例会    8月23日  三田いきいきプラザ   参加者  18名  会員 計48名
第21回 例会    9月22日  神明いきいきプラザ   参加者  16名  会員 計49名
第22回 例会 11月 1日  三田いきいきプラザ     参加者  18名  会員 計48名
第23回 例会 11月22日  三田いきいきプラザ    参加者  19名  会員 計50名
第24回 例会 12月20日  神明いきいきプラザ    参加者  16名  会員 計50名

第  9回 編集委員会    1月28日   阪大東京オフイス
第10回 編集委員会    2月27日   学士会館
第11回 編集委員会    3月25日   阪大東京オフイス
第12回 編集委員会    4月30日   阪大東京オフイス
第13回 編集委員会    6月  3日   阪大東京オフイス
第14回 編集委員会    7月  1日   阪大東京オフイス
第15回 編集委員会    7月30日   阪大東京オフイス
第16回 編集委員会    8月26日   阪大東京オフイス
第17回 編集委員会  10月  1日   阪大東京オフイス
第18回 編集委員会  11月  2日   阪大東京オフイス
第19回 編集委員会  11月25日   阪大東京オフイス
第20回 編集委員会  12月21日   阪大東京オフイス

(お願い 緊急警告発信中の「完全護憲の会」ホームページにアクセスして下さい)

第2号議案      2015年度決算報告

第3号議案      会計監査報告

第4号議案     2016年度活動計画について
1.例会・勉強会について
1)毎月1回、例会・勉強会を開催する。(基本として第4日曜日)
2)例会・勉強会の充実をはかる。
・憲法問題の議論の活発化(パンフ、リーフ、webでの発信に向けて)
・講演・学習会の開催(講演料なしでの)
3)会場費・資料代として参加費300円をいただく。

2.編集委員会について
1)毎月1回開催する。会員は誰でも参加して意見を述べることができる。
2)編集委員会は事務局と協力して会の運営全般に責任を持つ。
3)憲法問題の議論の活発化のために努力する。

3.他の護憲運動とのかかわりについて
1)「戦争法の廃止を求める統一署名」(2000万人署名)に協力する。
2)その他、会としてかかわるにふさわしい運動が提起された時は、その都度、例会で検討し決定する。

4.WEB上での違憲状況に対する緊急警告発信について
1)日々生起する憲法の違憲状況について、会のホームページ上で違憲告発の発信を行う。
2)上記の内容は編集委員会で検討し発信するが、例会に報告し、さらに検討を加えて、パンフ追補版(リーフレット形式)やパンフレット第2版につなげる。

5.パンフレット追補版(リーフレット形式)の発行について
1)会員が提起した国政の違憲状況及びホームページの違憲性に対する緊急警告として発表したものについて、緊急性の高い項目を編集委員会が選択し検討を急ぎ、『日本国憲法が求める国の形』追補版(リーフレット形式)を編集・発行する。
2))パンフレット追補版第1号を4月末を目標に発行する。(5月の諸憲法集会に間に合うように)」

6.3月パンフレットの普及・販売活動について
1)パンフレット追補版(リーフレット形式)の配布活動を通じて、3月パンフレットの普及・販売活動に取り組む

第5号議案    新役員選出
共同代表  岡部太郎、野村光司、福田玲三  (五十音順)
事務局員  福田玲三、川本久美恵(HP担当)
編集委員  稲田恭明、大西喜代志、草野好文、榊山今日児、野村光司、福田玲三
会計監査  宮崎國雄

<別紙 2>
          政治現況報告                2016年1月24日

岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)

 今年の国際政局では、1月16日の台湾総統選挙で野党改進党の蔡英文候補(女性)が圧勝、8年ぶりの政権交代が行われた。親中派の朱立倫主席は台湾独立後、初めて中国の習近平氏と会談、テコ入れを図ったが、惨敗だった。蔡政権は中国と一線を画す政策に方向転換するものと見られ、今後中台関係が少しギクシャクすると思われる。
また昨年から引き続き中国経済が減速し、日本の正月株式相場も8日連続、3000円以上続落した。また世界の石油相場も下落が止まらず、景況の悪化につながっている。
 こんな中で日本は1月4日と、正月早々、通常国会が召集され、会期150日で7月1日まで。参院選挙を7月早々に行う構えだ。さっそく3兆3千億円の補正予算が成立。低所得の老人に1人3万円の補助をするという、参院選対策ミエミエの政策を実現した。政府は引き続き96兆円余の本予算の早期成立を図る。
 安倍首相は本会議での答弁で今夏の参院選について「自公で過半数を確保したい」と初めはおとなしかったが、10日の報道番組では「大阪維新など、その他の改憲勢力を合せ、改憲に必要な2/3を確保したい」と改憲に踏み切ることを明らかにした。公明は「改憲は時期尚早、単なる数合せではすまぬ」と慎重姿勢、自民党の二階堂総務会長も「改憲は国民と合意できるところに至っていない、これ以上慌てて国民をせき立てる調子で事に当たるのは、少し違うのではないか」と参院選の争点にすることに慎重な対応を求めた。野党の民主党岡田委員長も野党勢力を結集して参院2/3を絶対阻止する考えだ。
一月最初の世論調査では、この2/3の目標について「2/3占めない方がよい」46%、「2/3占めた方がよい」33%で、与野党伯仲の方が優勢だが、比例区でどの党に投票するかとの問いには自民39%、民主14%、公明4%、共産8%、維新2%、おおさか維新6%だった。
 14日には、衆院定数の違憲状態を是正する「選挙制度改革の有識者調査会」(座長・佐々木毅元東大学長)が小選挙区7増(東京3、埼玉、千葉、神奈川、愛知の各1)13減(青森、宮城、三重、広島、熊本など各-1)、比例ブロック1増(東京)5減(東北、北関東、東海、近畿、九州)の答申を大島衆院議長宛に提出した。この国会で各党が話し合う。
また主要閣僚の甘利明に飲食をふくめ2千万円相当の授受疑惑が急浮上、TPPや経済見通しの甘利演説に民主・維新など野党が退席、疑惑の説明ができていないので、辞任説も強い。安倍第一次内閣はスキャンダルと辞任で倒れたので、二の舞になる可能性もある。

<別紙 3>
         違憲に対して発信した緊急警告

緊急警告001号 高村自民党副総裁が暴言/護憲の法律家を「法匪」!

 高村自民党副総裁はさる11月24日(火)、都内で講演し「国民の命を犠牲にしてまで、憲法9条2項を守れというような考えをしてはならない。そのような解釈をする人は法律家ではなく、憲法本来の目的を忘れた法律屋、法匪だ」と発言した。
 これは見過ごすことのできない許されざる発言である。これは特別な条件(と政権や高村氏が考える)のもとでは、憲法は守らなくてもよいとする、あからさまな立憲主義の否定発言であり、「法匪」などという人権侵害の差別・蔑視発言だからである。
 「国民の命を犠牲にしてまで」などと、憲法違反を指摘する法律家の誰一人として言っていないことを、あたかも言っているかのような言辞を弄して国民を欺こうとするものである。
 「匪」とは悪者の意味で、戦前の日本は、日本の侵略戦争に抵抗する中国(満州)の民衆を「匪賊」と呼んで、侵略の本質をごまかした。
 1938年、第一次近衛文磨内閣ブレーンの知識人グループ「昭和研究会」は日中戦争の性格づけについて、「戦闘の性質――領土侵略、政治・経済的権益を目的とするものに非ず、日支国交回復を阻害しつつある残存勢力の排除を目的とする一種の討匪戦なり」とした。
 近衛文磨首相は「抗日の気勢」をあげる中国(支那)に対して「其の反省を求むる」ため「徹底的打撃を加」えると演説し(1937年9月5日、72議会)「満州国政府」声明は、「断固、実力で膺懲せん」と呼号した。
戦前の日本が、日本の侵略戦争に抵抗する中国(満州)の民衆を「匪賊」と蔑んだのは、その「討伐」「膺懲」「徹底的打撃」を正当化するためであった。侵略の本質の隠蔽である。
 高村自民党副総裁は、「7・1閣議決定」および戦争法(安保法)という、きわめて明白な違憲行為をごまかすために、憲法違反を指摘する法律家を「法匪」と呼んで、問題の本質をすりかえようとしている。与党の要職を占める国会議員のこのよう発言は、憲法前文「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」および第99条国会議員の憲法「尊重擁護義務」に対する重大な違反である。

緊急警告002号 またしても憲法無視! 臨時国会召集義務違反

 現内閣は、憲法違反の「安保法制」強行可決に続いて、またしても憲法無視の暴挙を行った。憲法第53条は、衆参いずれか4分の1以上の議員が要求すれば、内閣は臨時国会の召集を決めなければならないとしている。
 昨年10月、時あたかも内閣改造の直後、野党5党はこの規定に基づき、「安保法制」強行可決、環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意や新閣僚の不祥事追及を目指し、臨時国会の開催を求めたが、現内閣は首相の外交日程や年末の予算編成を理由に応じなかった。
 これは憲法違反の「安保法制」強行可決に対して盛り上がった国民の怒りを回避しようとするもので、憲法第53条が定めた内閣の臨時国会召集義務違反であり、国権の最高機関としての国会をも無視する、重大な憲法違反である。
政権側は11月に国会閉会中審査を2日間開いたが、これが臨時国会の代わりになるわけでは決してない。現内閣の立憲主義否定、違憲政治をこれ以上続けさせてはならない。
 安倍内閣は今年の通常国会を過去最も早い1月4日に召集し、あたかも臨時国会不開催の穴埋めであるかのように装っているが、これは、選挙日程を睨んだ党略である。1月5日~12日に召集した場合、18歳以上に選挙権を与える改正公選法が適用されず、投票日も1日に決まってしまうのに対し、1月4日であれば、改正公選法が適用されるほか、投票日も6月26日、7月3日、10日、17日、24日の中から選択可能となり、さらには衆参同日選も可能になるという計算に基づいている。安倍内閣は、昨年の通常国会でも、違憲の安保法制が参院で否決された場合に備え、衆院の3分の2の賛成で再可決・成立させられる「60日ルール」を使えるようにするため(実際には参院で「可決」したため、適用されなかったが)、会期を95日という前例のない長期延長を行った。このように、党利党略のためなら、前例も慣習も常識を無視するばかりか、公然と憲法を無視する政治をこれ以上続けさせてはならない。

緊急警告003号 「ナチスの手口」、緊急事態条項の危険性

 安倍首相は今年の年頭から憲法改定を目指す意向を繰り返し語り、その具体的項目の一つとして「緊急事態条項」を挙げている。自民党の古屋圭司改憲推進本部長代理も昨年9月30日、「本音は9条(改憲)だが、リスクも考えないといけない」ので、「大災害や他国からの武力攻撃の際、首相の権限を強化する緊急事態条項新設から着手したい」との本音を漏らしている。参院選で仮に改憲勢力が3分の2以上を占める事態となれば、真っ先に発議される改憲案は緊急事態条項の新設になることが予想される。ところが、自民党が2012年4月に公表した改憲草案の98・99条に規定された「緊急事態条項」(下記参照)を見ると、ヒトラーがワイマール憲法を骨抜きにして独裁権力を掌握するために成立させた「民衆および帝国の苦難を除去するための法律」(通称、「授権法」または「全権委任法」)とそっくりなのだ。安倍首相の盟友である麻生太郎副総理兼財務相は2013年7月29日、憲法改定に関して「ナチスの手口を学んだらどうか」と発言したが、安倍政権はまさにそれを地で行こうとしているのである。

 福島みずほ議員は2016年1月19日、参議院予算委員会で、自民党改憲草案中の「緊急事態条項」について、「内閣限りで法律と同じ効力を持つことができるのであれば、これはナチス・ドイツの『国家授権法』と全く一緒です」と、その危険性を警告した。
 具体的には以下のような危険性が指摘されている。
1.内閣総理大臣が、国会の審議・承認なくして「緊急事態」を宣言することができる。しかも「緊急事態」の要件は法律でいくらでも自由に決めることができる。
2.「緊急事態」が宣言されれば、国会の審議・承認がなくとも、立法権・予算編成権を内閣が掌握することができる。
3.国民のあらゆる基本的人権を内閣が制限することができる。
4.国民の選挙権も内閣が停止することができる。
5.これらの内閣に与えられた独裁的権限を阻止する手段を国民は持てない。

 これは、現憲法に照らしてみれば、国民主権と基本的人権という民主主義の二大原理を圧殺するものであり、憲法前文(「これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」)と憲法97条、98条1項に抵触する、憲法違反そのものである。

 このように、大災害や非常事態への対処を口実とした「緊急事態条項」の新設は、権力を内閣に集中させて、人権保障を骨抜きにし、立憲主義と憲法そのものを破壊するものである。ナチスの国家授権法がワイマール憲法を破壊し抹殺した二の舞を避けるためには、「緊急事態条項」新設という改憲を絶対に阻止しなければならない。

【参考】(ゴチック化は編集委員会)
■自民党憲法改正草案(2012年4月27日決定)
第98条(緊急事態の宣言)
1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2~4 略
第99条(緊急事態の宣言の効果)
1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
2 略
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
4 略

■ドイツ国家授権法(=全権委任法、1933年3月23日成立)(括弧内の条文は要旨)
第1条 帝国の法律は、帝国憲法によってあらかじめ規定されている手続による以外に、帝国政府によっても決定されることができる。これは、帝国憲法第85条第2項(*1)および第87条(*2)に示されている法律についても妥当する。
第2条 帝国政府によって決定される法律は、それらが帝国議会および州代表協議会の構成それ自体を対象とするのでないかぎり、帝国憲法に違反することができる。帝国大統領の諸権限は従来と変わらない。
第3条 帝国政府によって決定された帝国の法律は、帝国首相によって認証され、官報で公示される。それらは、別段の規定がないかぎり、公示の翌日から効力を持つ。
(法律は、国会で定めるという憲法第68条の規定は、政府によって決定された法律には適用しない。)
第4条 (国内法との関連が生じる外国との条約の締結に当たっては、それに関する立法の権限を持つ諸機関の承認を得なくてもよい。)
第5条 この法律は、公示の日から効力を持つ。それは1937年4月1日をもって効力を失う。さらに、現在の政府が別の政府と交代するときは効力を失う。(*3)

(*1) 「国家予算は会計年度の初めまでに法律によって確定される」。
(*2) 「国債の発行および債権の引き受けは法律に基づいてなされなければならない」。
(*3) このように、形式上は4年間の時限立法の形をとっていたが、実際には4年後、さらに1941年までの4年間延長され、41年には再び43年まで延長されたが、43年には総統布告により無期限に延期され、第三帝国が崩壊するまで効力を持ち続けた。このことは、悪法はいったん制定されると、権力者に都合のいいようにいくらでも改悪されうるということを実例を持って示している。つまり、悪法に形式上盛り込まれた「制限条項」などほぼ無意味であることを教えてくれる。

緊急警告004号 日本政府、「表現の自由」特別報告者の訪日延期要請

 昨年12月に予定されていた「表現の自由」に関する国連特別報告者による訪日調査が、日本政府の要請により、直前になって延期された。デービッド・ケイ氏は国連人権理事会で「表現の自由」問題を担当する特別報告者で、2013年12月6日に成立した特定秘密保護法の現状などについて調査するため、昨年12月1日から8日まで日本を公式訪問することが決まっていた。ところが、訪日予定日直前の11月13日になって日本政府が突然ケイ氏に訪問延期を申し入れたのである。政府は表向き、「ケイ氏の受け入れ準備が整っていない」ことを延期の理由に挙げているが、藤田早苗・英エセックス大学人権センターフェローによると、国連の公式訪問を政府が承諾した後でドタキャンするというのは極めてまれであり、「まるで途上国の独裁国家。民主国家ではありえない」と批判した。しかも政府は今秋以降の日程を提案したとされ、参院選前に批判的な勧告を受けたくないという意図が見え見えである。しかし、ケイ氏の訪日調査をドタキャンしたことで、「表現の自由」に問題性があることを日本政府が自ら告白したのも同然である。
 そもそも、特定秘密保護法の成立前後には、情報公開に関する国際原則を定めた米オープン・ソサエティー財団が、同法を「21世紀の民主主義国家で最悪レベル」と批判声明を出すなど、国内外の人権団体や法律家団体・学者・作家・地方議会・国際機関等から「報道の自由を制約し、国民の『知る権利』を阻害する」といった無数の抗議声明が出されていた。ケイ氏の前任者であるフランク・ラ・ルー氏も同法案成立前の13年11月、「情報を秘密と特定する根拠が極めて広範囲で曖昧。内部告発者やジャーナリストに対して重大な懸念をはらんでいる」との声明を発表している。国連人権高等弁務官ナビ・ピレイ氏も翌12月2日、記者会見で「政府がどんな不都合な情報でも秘密として認定できてしまう」との懸念を表明、日本政府との対話を要望したが、結局、ピレイ氏と日本政府との対話は実現していない。
 また、国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」が毎年発表する「報道の自由度ランキング」では、日本の順位は安倍政権になってから急降下を続けており、(民主党政権下の2010年の11位から)2013年には53位、2014年に59位、さらに2015年には過去最低の61位にまで低落した。同記者団は特定秘密保護法によって報道の自由が奪われたと指摘している。あらためて「特定秘密保護法」の違憲性を指摘しなければならない。
 安倍政権下では、数々の報道圧力問題が明るみに出ているほか、言論・集会など「表現の自由」に関わる自主規制などの委縮現象が起きている。こうした中で明るみに出た今回の日本政府による「表現の自由」特別報告者の訪日延期要請は、安倍政権が、「表現の自由」(憲法21条)の「尊重擁護義務」(同99条)を果たしていないことを自己暴露したのみならず、国連憲章に定められた協力義務という「締結した条約」の「誠実遵守義務」(同98条2項)に違反していることも意味している。

緊急警告005号 日本政府、「ヘイトスピーチ」特別報告者の訪日延期も要請

 国連人権理事会の「ヘイトスピーチ(差別憎悪扇動表現)」問題特別報告者であるリタ・イザック氏は昨年(2015年)秋、日本政府に公式の訪日調査を求めたが、政府から「16年秋以降でないと調整が間に合わない」と断られたことが明らかになった。これは、緊急警告004号で指摘した、「表現の自由」特別報告者に対する訪日延期要請と同様、都合の悪い調査結果が参院選前に公表され、選挙に不利になるのを防ぐためには、国連機関の訪日調査受け入れ義務をも平然と無視するという、日本政府の独善的な体質を改めて示したものである。前号で指摘したのと同様、「国際法規の誠実遵守義務」(憲法98条2項)の精神に反するのみならず、ヘイトスピーチの蔓延によって、在日コリアンらマイノリティの人格権(13条)や平等権(14条)などが侵害されている状況を暗に認めたものである。
 イザック氏は2011年から国連理事会で「ヘイトスピーチ」問題特別報告者を務めており、昨年(2015年)3月には同理事会に「メディアにおける少数者に対するヘイトスピーチと憎悪扇動」と題する年次報告書を提出した。日本政府の訪日延期要請を受け、日本弁護士連合会の招きで今年1月23~26日の日程で来日したイザック氏は、同25日にシンポジウム「ヘイトスピーチと表現の自由」で講演した。イザック氏は日本政府に対し、引き続き訪日調査を受け入れるよう求めている。
日本については、2014年、国際人権B規約に基づく人権委員会と人種差別撤廃条約に基づく人種差別撤廃委員会がそれぞれ日本に対する総括所見を公表し、いずれも日本におけるヘイトスピーチの広がりに懸念を表明するとともに、法規制を含む対応強化を勧告している。
 国際人権B規約は第19条で「表現の自由」を定めるとともに、第20条では民族的・人種的・宗教的憎悪の唱道を法律で禁止するよう求めており、マイノリティの尊厳を傷つけ、彼らの人格権や平等権を毀損するヘイトスピーチが「表現の自由」の埒外であることを明確に規定している。一方、人種差別撤廃条約は第4条で、締約国が、あらゆる形態の人種的憎悪及び人種差別を正当化もしくは助長する宣伝や行為を非難し、このような扇動または行為を根絶するため「迅速かつ積極的な措置をとる」ことを求めている。日本は1979年に国際人権B規約、95年に人種差別撤廃条約を批准しているが、未だに差別禁止の基本法もヘイトスピーチ規制法も制定しておらず、これらの条約上の義務に違反する状況が続いている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください