本紙前号記載のとおり、さる3月20日14時から日本プレスセンタービル(都内千代田区内幸町)9階大会議室で、パンフレット発表記者会見を行った。マスコミ関係の出席者は「東京新聞」「社会新報」「IWJ」の3社で、参加者は総計16人だった。
パンフ発表記者会見
翌21日付け「東京新聞」31面は横1段「戦争体験 だから護憲」縦4段抜き「『次世代のために』会結成」の大見出しで要旨次のように伝えた。
集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制の大枠に自民、公明両党が合意した二十日、八十代以上の戦争体験者らが東京都内で記者会見し、反対の声を上げた。自ら作成した護憲の小冊子を手に、憲法が掲げる理想と懸け離れた政治を批判し、戦争を知る人間として「そのとき何をしていたの、と言われたくない」と危機感を募らせた。
第二次安倍政権が発足し、集団的自衛権の行使容認などの動きが出てきた昨年一月、首都圏に住む戦争体験者や、憲法を守りたいと願う人たちが、護憲の会を立ち上げた。社会の変化に合せて憲法を変えるのではなく、憲法の理想に沿った社会の実現を目指す、その名も「完全護憲の会」だ。
「今、組織を作って動かなければ、後悔することになる。次世代のために種をまいておきたい」と月一回の勉強会を続け、小冊子「日本国憲法が求める国の形」にまとめた。その発表が与党合意の日と重なった。
A5判七十五ページの冊子には、憲法と今の政治、社会状況との隔たりを列挙した。例えば、憲法前文には「国政は国民の厳粛な信託による」とあり、政府が得た情報はすべて国民の財産で、特定秘密保護法は国民への反逆だと指摘。また、「諸国民との協和」を求める憲法に反し、現政権は平和への外交努力が見られないとし、憲法の理念を厳格に守る政治を、と訴える。法的根拠のない行政手続きで流通が滞る問題では「法治主義なんだから、好き嫌いなく完全に(憲法通りに)やれと主張したい」と。(後略)
東京新聞の記事全文はネット版で:
戦争体験 だから護憲 「次世代のために」会結成 安保法制合意
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015032102000168.html
会見では「集団的自衛権の最近の動きをどう思うか」「日本を元に戻すとあいさつで言われたが、敗戦直後か、憲法発布時か、どこに戻そうとするのか」「今後運動をどう進めるのか」などの質問があった。
また参加者の中から「第1章天皇条項は民主主義に反する」「第9条関係で集団的自衛権を拒否した伊達判決支持を貫きたい」などの意見があった。
3月例会の討議
その2日後、3月22に開かれた3月例会には、「東京新聞」による記者会見報道のお陰で、新参加者5人を含め、これまで最高の19人が出席し、まず記者会見の感想など語りあった。そのなかで墨田区の元教師の方から「高校1年のときに習った教科書」で忘れられない頁として、次の箇所が朗読された。
現にそういうふうにして日本も無謀きわまる戦争を始め、その戦争は最も悲惨な敗北に終り、国民のすべてが独裁政治によってもたらされた塗炭の苦しみを骨身にしみて味わった。これからの日本では、そういうことは二度と再び起こらないと思うかもしれない。しかし、そう言って安心していることはできない。独裁主義は、民主化されたはずの今後の日本にも、いつ、どこから忍びこんで来るかわからないのである。独裁政治を利用しようとする者は、今後はまたやり方を変えて、もっとじょうずになるだろう。
今度は、だれも反対できない民主主義という一番美しい名まえを借りて、こうするのがみんなのためだと言って、人々を操ろうとするだろう。弁舌でおだてたり、金力で誘惑したり、世の中をわざと混乱におとしいれ、その混乱に乗じてじょうずに宣伝したり、手を変え、品を変えて、自分たちの野望をなんとか物にしようとする者が出て来ないとは限らない。そういう野望を打ち破るにはどうしたらいいであろうか。
それを打ち破る方法は、ただ一つある。それは、国民のみんなが政治的に賢明になることである。人に言われて、その通りに動くのではなく、自分の判断で、正しいものと、正しくないものとをかみ分けることができるようになることである。民主主義は「国民のための政治」であるが、何が、「国民のための政治」であるかを自分で判断できないようでは民主国家の国民とはいわれない。
国民のひとりひとりが自分で考え、自分たちの意志で物事を決めて行く。もちろん、みんなの意見が一致することは、なかなか望めないから、その場合には多数の意見に従う。国民はみんな忙しい仕事を持っているから、自分たちがこれはと思う人を代表者に選んで、その代表者に政治をやらせる。しかし、あくまで他人任せではなく、自分たちの信念が政治のうえに反映するように努める。そうすれば、ボスも、独裁者もはいりこむすきはない。
これは1948年、つまり新憲法が施行された翌年に文部省が作成した『民主主義』という中3と高1あて教科書の部分であると聞いて、その素晴らしさに参加者一同は驚嘆した。
そのほとぼりのなかで、このパンフを広める方法を討議したあと、岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)が次の報告を行った。
政治現況報告
日本にとって3月は8月と共に問題のある重要な年だ。古い方からいうと、3月10日は70年前の敗戦の年に、米軍東京大空襲で20万人が焼け死んだ。20年前はオウム真理教のサリン事件で東京地下鉄での無差別殺人があり、いまだに苦しむ人がいる。そして4年前の東北大地震と大津波、フクシマの原発事故で、まだ故郷へ帰れない人がたくさんいる。また今月の20日には70年前の平和憲法から離れ、安倍政権と自民党は、米軍支援の名のもとに、自衛隊の海外派遣を可能にする安保法制を閣議決定するために、自公両党だけで憲法解釈変更に同意した。初めは派兵歯止めを強く要望していた公明党も、最終的には自民案を了承した。
しかし一番問題になっていた海外派遣のための①国連決議②国会の事前承認③自衛隊の安全――については両党で結論を先送りしたので、中途半端なものになった。この問題は国会論戦などを通じて再終結論が出てから改めて検証したい。
またこの3月9日は7年ぶりにドイツのメルケル首相が来日した。ドイツは日本と第二次大戦中、日独伊同盟で共に戦い、同じように廃墟の中で敗戦を迎えるなど、似たところが多い。そして戦後復興と経済繁栄では似たような道を歩いたが、現状ではかなりの違いも出てきている。
その一番の違いは、第二次大戦の侵略に対する総括・反省にあるように思う。ドイツは戦後にワイツゼツカー大統領が、欧州各国を回り、反省だけでなく、謝罪をして回った。特に長年の戦争の相手、隣国のフランスとは、歴代の大統領・首相がひんぱんに訪問、共同歩調をとることを約束、この両国を中心に欧州の経済はもちろん、外交・防衛・政治も統一するEC(欧州共同体)にまで発展させた。
これに対し、日本は戦後の自民党は言を左右にして公式の謝罪はせず、形のうえでもかつての植民地支配と侵略を初めて遺憾としたのは、戦後50年の村山談話(社会党)である。その後60年には小泉首相が、これを踏襲して形だけでも謝った。
しかし今の安倍首相は靖国神社を参拝し、後ろ向きの発言や行動を繰り返し、中国や韓国と摩擦を起こし、東アジアの平和を不安定にしている。メルケル首相は保守党首だが安倍首相に過去の総括と正しい歴史認識が地域の和平に不可欠だと訴えた。しかし安倍首相は、この問題で何も答えなかった。いやなことには答えない首相には、国民や野党の疑問に答えて説得する民主政治家としての素質が全くないようだ。この差は原発問題でも一緒だった。
この報告を受けた討議では、自民党が来夏の参院選後に憲法改悪国民投票を予定しており、これに的を絞った活動を行うこと、とくに1年後の参院選で改憲勢力3分の2を阻止する取り組みが焦眉の急であることなどの意見がつづき、緊張のうちに討議を終えた。
ついで事務局から以下の日程が紹介された。
次の例会・勉強会のご案内
日時 4月26日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 北海道大学連絡室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について …………岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
日本国憲法の現状について ……野村光司(「パンフレット」起草者)
報告への質疑、意見、パンフ普及について
今後の日程について 事務局
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
3月例会から3日後の3月25日14時から、虎ノ門大阪大学東京オフイス会議室で編集委員会が開かれた。
編集委員会の討議
編集委員会には5人の各委員が出席、パンフ発表記者会見以後殺到したパンフ注文と入会希望についての報告がされた後、今後の活動方針として野村委員から要旨次の提案があった。
今後の活動方針
現「パンフレット」についての解釈の統一
しばらくは今回のパンフレットが会の基本文書となる。今後、読者から多くの疑問点が出て来るものと考えられるので、「想定問答」を用意しなければならない。
部外者からの当初処理例
丁重ながら画一的に処理できる案文を用意する。
改訂版の編集方針
(文体)
文章が難し過ぎると言う意見がある。今回は政党、マスコミ等知識層を対象にして憲法についての法律論を展開したものであるが、今後、並行して優しい言葉で書かれた「解説版」を用意することを考える。
(増補)
今回のパンフレットに時々刻々に発生する政治問題に関連して、更に改訂増補を行って、日本の憲法政治の全貌を示す決定版を世間に提供する。それに備えてこれから発生する種々の政治問題に関連した憲法問題を順次、蓄積する。
(例)
前文第2項関係
「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」
架空・虚偽の建国記念日
「人間関係を支配する崇高な理想」とは世界文明諸国で共通している倫理は、「人を愛する。言葉の神聖を自覚してウソをつかない」ことである。現在の我が国の「建国記念日」は、諸外国のそれと異なり架空の(虚偽)の「神武天皇即位の年月日」を用い、「(偽装国家日本の)建国記念日」となっている。現行の建国記念日を廃止し、「憲法記念日」に吸収するか、日本歴史学会などの答申を得て新しい建国記念日を制定すべきである。
前文第3項関係
「いずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」
首相は「侵略については定義が無い」と発言しているが1974年12月の国連総会決議「侵略の定義」が出ており、戦前の日本のアジア侵攻の事実はすべてこの侵略の定義に当てはまる。
第22条関係
「何人も、外国に移住する (to move to a foreign country) 自由を侵されない」
政府はシリア渡航のジャーナリストの出国を禁止したが、これは憲法22条の規定に違反する。政府が単に「危険である」と判断するだけで国民の自由権利を侵し得るなら今後、「この人間は危険だ」と政府が判断すれば容易に国民の権利を侵害されることになる。
第66条関係
「国務大臣は文民でなければならない」
沖縄県辺野古に米軍基地を建設するにあたり元自衛隊幹部であった防衛大臣が、沖縄県民を罵倒し軍事基地建設に邁進しているが、これはまさに本条が憂慮したことである。
第90条関係
「国の収入支出の決算はすべて毎年、会計検査院がこれを検査し」
最近、地方議会の政務活動費の不当経理が問題になっているが、政府の官房機密費は毎年、数十億が支出されながら「領収書不要、会計検査は行わない」こととしている。
国の経費は国民の血税で支出されており、また会計検査院法では、「検査院は内閣から独立の機関」と規定されており、内閣であろうと総理大臣であろうと「上官」の経理に容喙するとの遠慮があってはならない。真に国民全体の利益のために運用されているかどうかを検査して内閣を指導しなければならない。
今後の会の活動方針
政治活動との関連
会員は所属または関係を持つ諸団体とともに自由に活動できると言う会則に従って、「完全護憲の会」としては政治活動を行わないが、会員はそれぞれの縁を活用してパンフレットを宣伝し、各団体にパンフレットを参照して活動して貰うのが、当面の「政治活動」である。
各種団体等に働きかけてパンフレットの勉強会を開催して貰い(既に「労働運動研究所」で行われることになっている)、会から編集委員を中心に講師を派遣することとしたい。
これに対して福田委員から口頭で、来る6月末までに、①会員を100名に拡大、②パンフを500冊増刷し、その配付を完了する、などの提案があった。
討議の結果、「完全護憲の会」は当面、政治活動は行わず、会員・パンフの拡大目標は設けず、会員・支持者の自発的協力によってパンフの普及に努めることを決めた。また事務局多忙のため、例会の司会は福田委員に草野編集長が代わることなどを了承した。
パンフ研究会のご案内
労働運動研究所主催のパンフレット『日本国憲法が求める国の形』研究会が、4月18日(土)14:00~16:30、大阪経済法科大学東京セミナーハウス(港区麻布台1-11-5、地下鉄神谷町)6階B会議室で行われますので、ご都合のつく方はご参加下さい。
朗読とピアノで語る ベアテ、若き日のエポック
日本に男女平等の夜明けをもたらした女性 主催 NPO日本朗読文化協会
4月18日(土)13:00,17:30/4月19日(日)11:00,14:30/千代田区立 内幸町ホール/チケット 2500円(全席自由)
パンフ『日本国憲法が求める国の形』お求めの方はご連絡ください。振替用紙を付けて郵送します。
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。