さる12月21日(日)、神保町・学士会館地下1階北海道大学連絡室で会合、参加者15名。入会者 計 20名。
まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏 から政治の現況について次のような報告があった。
政治現況報告(要旨)
12月14日、前回選挙からわずか2年で解散・総選挙があった。全く安倍自民党の党利党略選挙だったが、与党の自民党は290(-4)公明党は35(+4)で、合計325議席は前回と全く同じで、何のための選挙だったか。この数字は世論調査の結果とほぼ同じ。ただ争点もない党利解散だったため、投票率は52.66%で最低。二人に一人棄権だったのは、無言の世論の意志表示か。欧米なら無理な解散として、政権が攻撃されるが、日本では安倍の責任が追及されることもなく、民主政治の基盤の弱さが、改めて浮き彫りになった。
しかし、細かく見ると、これまでの選挙とかなり違う特色もある。その特長を見る。
①自民・公明は現状維持だったが、その大きな理由は、突然の解散で、野党の準備が整はなかった。争点を全く見通し困難なアベノミクス・経済一本に絞った。前回から、僅か2年の選挙で、有権者にまだ前回の記憶があったなど。これまでの選挙では一年生議員は約2/3が落選していた。しかし今回は100人以上の一年生議員がほぼ全員当選して、自公で2/3の議席を守ることに成功した。つまり安倍の思惑通りの選挙結果となった。
この勝利により、安倍は来年9月の自民党総裁選での再選を確実にし、与党は来年4月の統一地方選、再来年夏の参院選での勝利にも大きく近付いた。
②民主党は73人と10人程度増えたが、むしろ惨敗といえる。前回の衆院選では、民主党は200人近く落選しており、従来なら同情票もあって、半数ぐらいがカムバックするのが通例だった。しかし今回の元職の当選は10人ぐらい。一つは準備不足で、全小選挙区に候補を立てられず、各党が比例区で議席を伸ばしたのに、伸びなかった。また海江田党首がこの二年間、復活のため何の手も打たなかったのが大きい。そして海江田自身も落選した。
③分裂した維新の党は-1の41人当選でむしろ善戦した。一年生議員が頑張ったこと、大阪・関西で前回の余熱があったこと、石原慎太郎が出て江田が入ったことで、党内がすっきりしたこと――などが理由だ。
④共産党は8議席から21議席となり3倍増に躍進した。反自民の受け皿となったこと、全小選挙区に候補を立て、比例区での集票に成功したのが理由。小選挙区での当選が一人なのに、比例区20人当選が目立つ。
⑤維新から分裂した次世代の党は17人の現職が平沼党首、園田前幹事長2人の当選だけで惨敗した。比例区では一人も当選せず、石原慎太郎や都知事選で60万票とった田母神も東京13区で4位の惨敗だった。また分裂・消滅したみんなの党、渡辺喜美も落選した。
⑥もう一つ従来の選挙と違うのは、これまで6対4で野党に入れていた無党派層が、今回は6対4で自民党に投票したことが、出口調査で解っている。争点が経済だけであったこと、棄権票が多かったためとみられる。
――以上、自・公与党で325議席と、憲法改正に必要な2/3議席(316議席)を上回ったものの、自民補完勢力の次世代の党が潰滅したため、公明党の態度次第では改憲勢力が2/3に達しないことになった。
ただ棄権票が多く、結局、自公に圧倒的多数を取らせたことなど、日本の民主政治のぜい弱さが出ており、長いものに巻かれろの島国根性が目立つ。ヨーロッパやアメリカの戦い取った民主主義に比べ、まだマッカーサーの“13歳の日本人”にとどまっているようだ。
ただ安倍政権も、沖縄での4敗、原発・円安・石油安の経済不安定など、不確定要素も強く、あと4年間安体かどうかは、まだ解らない。
例会における討議
ついで、さる12月3日(水)、大阪大学東京オフィスで行われた第7回編集委員会における討議が、野村光司(「日本国憲法が求める国の形」起草者)氏から次のように報告された。
第7回編集委員会では第22条(居住・移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由)に関連して北朝鮮より帰国した拉致被害者の扱いが問題にされた。パンフレットにこの問題はこう書かれている。
「国家は外国人の入国を認めるかどうかの自由を有するが、出国したり、国籍を棄てたりする自由は本条の基本的人権として保障される。拉致被害者が日本に一時帰国した後『本人の意思に拘わらず、かの地に赴くことが認められない』のは憲法違反である。また世界人権宣言は『何人も自国に帰る権利を有する』としており、拉致被害者は特殊の境遇にあったことに鑑み、日本と拉致国との間を自由に往来する権利は確保されねばならない。拉致被害者及びかの地に居るその家族が、拉致の事実を申し出れば日本にほぼ強制的に連行されるとなると、拉致を申し出ることが出来なくなることも考慮すべきである。」
この記述に対して、帰国者がすでに日本で落ち着いているのだから、いまさら書く必要はないとの意見が会議では強く、会議終了後の日々にも議論は続けられ、拉致問題では「まず原状回復し、自由な往来はそれ以後の話だ」「両国政府間の約束を破ったのは悪いが、本人たちの真意をいま確認できないので、あえて取り上げなくてもよい」「原発事故による一律の強制避難・移住問題の方が重大で、拉致問題にパンフの紙面を割かなくてよい」などの意見があった。
しかし、拉致問題で小泉首相の引連れた使節団が北政府と約束したことは、5人の拉致被害者を日本に一時的に帰国させる、こちらの家族と話し合いをさせ、北にいる家族と話しして、どちらに住むかを決めるということだった。その約束を日本政府が破った。また憲法22条など知ったことかという安倍官房副長官の意志が働いた。現実の生身の人間の意思はどうでもよい、国家権力が決めたらその通りに動くべきだ、というのだ。憲法・人権・政府間の約束を無視し、圧力と制裁にむかったのが当時の安倍官房副長官で、これによって彼は小泉首相の後継者に引立てられ、その後、日本の政治が急速に右傾化するのだが、この記述の扱いは例会の意見に任せたい。
野村氏のこの報告に対しては、「本人たちがすでに落ち着いているのだから、この記述は必要ない」「国家犯罪だから原状回復が先決だ。今から、わざわざもちだす必要はない」との批判的な意見が出された。
ついで12月14日に投票された総選挙をめぐる論議があり、選挙制度については、パンフレットに第43条(両議院の組織)の関連で次のように書かれている。
「小選挙区制も比例代表制も違憲
憲法は政党について規定していない。政党の結成自体は憲法21条(結社の自由)によって自由であるが、政党内部の規定によって憲法の規定なり精神を否定することはできない。本条43条では、国会は『①全国民を代表する、②選挙された議員でこれを組織する』と規定する。
小選挙区制は、全国民を代表する議員を選ぶのではなく、国会議員の殆どすべてを多数党員で占め、少数党を排除するため導入されたものと理解され、違憲と言わざるを得ない。投票者が、全国区千人以上の候補者相互の中から適任者を判定して直接選ぶのが困難であるとすれば、選挙区から数人の議員を直接選ぶ中選挙区制とすべきであろう。
現在の政党名簿にもとづく比例代表制とは、憲法に規定がない政党の選任に対する信任投票であり、憲法の求める『全国民を代表する、(国民に)選挙された議員』とは言い得ないので違憲である。主権者国民が直接指名した候補者のみが国会議員となるべきである。」
この立場からも、戦後最低の投票率であったことからも、選挙結果が批判された。また、「選挙権は公権であるから義務も伴う。これを行使しなかったものに罰則を設けるべきだ」との意見が出された。他方で、選挙制度改革には時間がかかるので、今回「選挙区毎に自民党に対する野党候補の統一を呼びかけた」団体の例が当面の取り組みとして紹介された。また上位2候補の決選投票に持ち込むヨーロッパの2回投票制という合理的な仕組みも披露された。今回の衆議院解散が第69条(衆議院の内閣不信任と解散又は総辞職)違反との指摘も当然出された。
ついで編集委員会が成文化した、パンフレット冒頭につける「ごあいさつ」の文案が配られた。この文案については対象が護憲派になっているが、それで良いのかという意見が出された。
事務局からは、「日本国憲法が求める国の形」(パンフレット第2次案)の扱いについて、統一地方選挙以前に発表できるよう第8回編集委員会で作業をすすめ、パンフレット発表の具体的な段取りを1月の例会で提案したい、とされた。
なお、パンフについては「『QとA』(問答)形式にするのが適切」との意見、「若者には文章が難解だ、対象をどこに置いているのか」との質問もあった。これに対して、事務局からは「パンフ配付の対象はまずマスコミ、政党、学会などに置き、運動のすすむ過程で、中高校生や労働組合あての記述を分かりやすくした版を用意したい」との答弁があった。
パンフの内容を箇条書きにした次の試案も事務局から示された。
違憲国政の例示(案)
(「パンフレット」記載の一部)
2014年12月5日(MN)
第1章 天皇
皇室典範「男系男子」は違憲にして男尊女卑の根本規定(14条)
首相の7条解散権、二重、三重の違憲(4条、41条、65条、69条)
第2章 戦争の放棄
外国に対する武力行使(集団的自衛権論)は明白な違憲(前文1項、9条)
自衛隊は戦力であって違憲(前文2項、9条)
第3章 国民の権利及び義務
国籍によって人権は否定されない(10条、97条)
ヘイトスピーチの放任は違憲(前文2項、14条、98条2項)
庶民にも政治家及び官僚の罷免(弾劾)の権利(15条1項)
すべての行政指導は違憲(15条2項)
宗教団体の権力獲得を目指した政治活動は違憲(20条1項)
首相らの靖国参拝は明白な違憲、首相の伊勢神宮参拝も(前文3項、20条3項)
公務員の身分を隠した政治活動は合憲(21条)
夫婦別姓は認める(24条2項、13条)
教育現場の「君が代」強制は違憲、違法(26条、前文1項)
勤労の権利は労働者とその家族の生活を継続的に維持する権利(25条、27条)
死刑の廃止(36条)
第4章 国会
小選挙区制違憲、比例代表選挙制、ともに違憲(43条)
政党助成金は憲法で認めず、個々の議員に豊かな立法事務費を(49条)
党議拘束は違憲(51条)
第5章 内閣
内閣から法案を提出できない(41条、65条、73条1号)
行政権は合議体、内閣にあり、首相ではない(65条)
自衛官等「武官」は大臣になれない(66条)
第6章 司法
「違憲状態」判決は許されない(76条3項)
最高裁裁判官国民審査で、審査する意志がない者は参加しない(80条)
裁判員は憲法に根拠なく認められない(80条)
「統治行為論」は許されない(81条)
第8章 地方自治
「自治の本旨」で政府の指導、干渉を許さない(92条)
外国人居住者にも地方参政権はある(93条2項、97条)
特定地方に関する法律で住民投票を経ないのは無効(95条)
沖縄自治特別法こそ地方特別法が必要
第9章 改正
国会議員の憲法改正論議を阻止できない(96条)
その他の公務員はすべて現行憲法を尊重し擁護し、改正を論議できない(99条)
第10章 最高法規
領土問題は国際法に従う政治意思を持てばすべて解決できる(98条2項)
次の例会・勉強会のご案内
日時 1月25日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 北海道大学連絡室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
「日本国憲法が求める国の形(パンフレット)」の発表について
野村光司(「パンフレット」起草者)
会計報告および今後の日程について 事務局
討議 報告および提案への質疑、意見
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三
電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。
「完全護憲の会」入会申込書 No.
氏名 | |
ふりがな | |
入会年月日 | 20 年 月 日 |
住所 | 〒 |
電話番号 | |
入会金 | 支払 未払 |