さる11月2日(日)、神保町・学士会館地下1階京都大学連絡室で会合、参加者12名。入会者 計 20名。
まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏 から政治の現況について次のような報告があった。
政治現況報告(要旨)
臨時国会が開かれて、まだ1ヵ月しか経っていないのに、9月2日に改造したばかりの安倍内閣で目玉の閣僚2人が同日辞任した。その1人は小渕優子経済産業相で、自民党が日本のサッチャーとして、初の女性総理を期待していたホープだった。小渕はまず第1に毛並みがいい。元総理の娘で、若いし、美人で清潔感がある。それは自民党長老たちの暗黙の了解で、優遇していた。まだ40歳になったばかりで、二度目の入閣。しかも経産相という重要ポストで、それが後援会の観劇会で説明できない収支。公選法違反を視野に検察が地元後援会や事務局を家宅捜索した。
小渕の選挙区は群馬5区で山間の過疎地、中之条。中曽根、福田、の大物2人に挟まれて、親父の小渕自身、いつも最下位スレスレ当選だった。
その中之条町長が昔からの選挙参謀で、小渕も金庫番を含めて、全て任せていたのが、仇となった。後援会の観劇会も会費12,000円といっても、参加費は2000円。あとはバス代、おみやげ代まで、全て事務所の負担だ。自民党の後援会は、みな大なり小なり、このような形で地元と結びついている。捜査の進展では辞任もありうる。
もう一人の松島みどり法相の方は全くとばっちりでの辞任だった。夏祭に似顔絵入りのうちわを配り、そこに堂々と松島法相と書いたのが命取りになった。菅官房長官に呼ばれ同時辞任を説得されても、最後まで抵抗したようだ。
しかし安倍は第一次内閣の時の5人辞任のドミノを警戒、同時を強要したようだ。決め手は法相という法律の番人であることだった。引き続き、宮沢経産相(後任)、江渡防衛相、西川農相、有村女性相にも疑惑があり、野党はなお追及の手をゆるめていない。その影響で会期は20日残る程度なのに法案は何も成立していない。年内に決めるべき来年10月での消費税10%の最重要課題もそのあおりで決定延期やむなしとの見方も強まっている。
このように国会は何も動かなかったが、10月14日に特定秘密保護法の12月10日施行を閣議決定、外交・防衛・スパイ・テロを秘密扱いとすることになった。さらに10月9日には米国と日米防衛指針(ガイドライン)改訂の中間報告を採用。これまで極東・東アジアを中心とした専主防衛という地域を全世界に拡大、世界のどこでも米軍と共同歩調を取れる体制を固めた。先に閣議決定した集団的自衛権発動の下準備とも言える。
パンフレット第2次案の討議
ついで野村光司(日本国憲法が求める国の形―「パンフレット第2次案」起草者)氏から国政の現況と憲法のかかわりについて次のような報告があった。
1.政権は「集団的自衛権」の閣議決定を行い、その立法化をめざしている。だが国外
にある日本人の救援など外国での紛争に対する自衛隊戦力の行使や、それによる威嚇は、憲法第9条第1項で永久に禁止されており、また第2項第2文の「国の交戦権は認めない」とする以上、自衛隊の行動は違憲、無効のものであり、その交戦費用は責任者自らが負担しなければならず、敵を殺傷した場合は刑法の殺人、傷害の罪を負わねばならず、これで戦死することがあっても何らの栄誉も与えられず、その補償も違憲・違法の行為を命じた者で負担しなければならない。
2.首相は「女性の輝く社会づくり」を提案しているが、日本における女性の社会的位
置は142ヵ国中104位と世界的に見て最下位に属している。この歪みの是正はアファマーテイブ アクション(差別修正措置)によるよりも、現実に起きている性差別の根源を追及し、責任者を厳しく罰することで両性の平等を実現するのが、第24条(両性の平等)の趣旨である。
皇位の継承を男系の男子に限っている現皇室典範は違憲である。現女性閣僚に夫婦別姓に反対の論者がいるが、問題だ。従軍慰安婦として女性を軍需品扱いにしたことについては、その反省を世界に示さなければならない。
3)地方自治(第8章)の本旨に基づき、地方公共団体の機能に国は介入してはならないし、地理的に離れ、特別な歴史・経済・文化を持つ沖縄には、大幅な自治を認めた特別法を考えるべきだ。
大略以上のよう報告の後、要旨、以下のような討議がおこなわれた。
「憲法9条の前を違憲の自衛隊が闊歩しているのは見ていられない。憲法を現実に活かすべきだ。わが国は大統領制なのか君主制なのか、1項目を入れて明らかにしたらどうか」
「そのことについては、憲法前文で『主権が国民にあることを宣言』すると、明確に規定されている」
「第20条(信教の自由)の関連で、宗教団体を含めた様々な意向が政治に反映される必要がある。ガンジーはヒンドゥー教徒としてインド独立のために闘った。宗教団体の政治活動を否定すべきではない」
「この第20条によって『宗教団体の政治活動一般が否定されているわけではない』ことはパンフ原案でも認めている。ただ、宗教が政治と一体化することの弊害と危険性は日本歴史の教訓として受け止めなければならない」
「たとえば仏教団体が過去の反省に立って平和活動をしているのは当然と思う。政治活動とは何を指すのか」
「人事院規則に政治的行為についてくわしい定義があり、これにより公務員の政治活動は厳しく制約されている。もっとも現行の人事院規則は、憲法と法律の定めを著しく超えて公務員の政治活動を禁止する不当なものであり、違憲と言わざるを得ない」
「公明党の活動は何度も議論されており、そのうえですでに公認されている」
「だが自民党はときどき創価学会池田会長の国会喚問をちらつかせて公明党を脅しているのは、公明党が創価学会とつながっていると踏んでいるからではないか」
「宗教団体が人心を和ましているのは認める。ただ、それが国政にかかわる場合には慎重さが求められる。欧米諸国の憲法で宗教団体の政治活動については日本の憲法のように詳しく取り上げられてはいない。日本の場合、戦前の国家神道の弊害が身に染みているからだ」
「第5章(内閣)の第66条『国務大臣は文民でなければならない』の関連で、パンフ案文に『高級軍人は戦争を好む』とあるが、現自衛隊幹部は田母神元航空幕僚長など一部を除き護憲の傾向にあるといわれており、表現を和らげるか、説明を加える必要があろう」
「ご指摘にしたがい表現を和らげよう」
「同じ章の第65条『行政権は、内閣に属する』の関連で、パンフには『行政権は合議体である内閣にあり……その内閣の下に首相がある』とあるが、『内閣の下に』は言い過ぎではないか」
「憲法は首相に大臣の任免権を認めているが、組閣後は合議体である閣議の決定に首相も従わねばならない。『私が国政の最高責任者』のような現首相の発言はもっての外の越権である」
「学校では立法、司法、行政の3権分立と教わっている。3権は平等ではないのか」
「日本国憲法は第4章(国会)で『国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である』と定めている。国権の中で最上位にあるのは立法機関である国会であり、行政機関である内閣、司法機関である裁判所はその下位にある」
「大日本帝国憲法では第38条で『両議院は政府の提出する法律案を議決し及各々法律案を提出することを得』とあり、法案提出の主体を政府に置いているが、現憲法では、条約の締結について国会の承認を経ること、および予算案を国会に提出することのみが、内閣の議案提出職務として記載されているに過ぎず、内閣に立法権限はない」
以上のような討議の後、これら発言の趣旨を11月12日(水)の第6回編集委員会でパンフレット案文に取り入れることとされた。
次の例会・勉強会のご案内
日時 11月23日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 京都大学連絡室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
「日本国憲法が求める国の形(パンフレット第3次案)」の討議経過
野村光司(「パンフレット」起草者)
今後の日程 事務局
討議 報告および提案への質疑、意見
次の例会について その他
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三
電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。