完全護憲の会ニュース No.31 2016年7月10日

<例会参加の方は本ニュ―スご持参のこと>

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話・FAX 03-3772-5095
Eメール:kanzengoken@gmail.com
ホームページ:https://kanzengoken.com/

目次  ① 第30回例会の報告 1p
② 付記      1p
③ 当面の日程について            2p
別紙 1 政治現況報告 2p
別紙 2 事務局報告 3p
別紙 3 緊急警告 015号、016号 4p

第30回 例会の報告

6月26日(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で第30回例会を開催、参加者11名。入会者 計55名。
司会を草野編集委員長が担当し、まず、政治現況報告(別紙1)を岡部共同代表が行い、ついで事務局報告(別紙2)を福田共同代表が行った。
これらに対する質疑としては、事務局報告4)「全国の会員・有志に緊急警告文案を起草していただくよう訴える」について、「起草者の意図と違う表現を編集委員会が求めて、起草者にとって受け入れがたい場合」との質問があり、その際は、起草の趣旨を尊重して意見の一致を図る、こととされた。また「小さな意見の違いで、一番大事な護憲を忘れて会を去る人の出るのは悲しい」との発言もあった。
その後、緊急警告発信文書(014号、015号)の検討が行なわれ、014号では首相の「失言」と「錯覚」との間の表現の整合性が求められ、また国会の委員会議事録から首相の失言が勝手に削除されていることも指摘された。これらに関しては、発信された緊急警告に、ブログ上で「コメントをつけてほしい」「コメントが出れば、それが一つのテーマにもなり得る」などの提起があった。
さらに「9条論」の再検討も行なわれ、新参加者から「完全護憲」の提起を歓迎するとしつつ、「自衛の戦争は認める。その範囲なら解釈でよい」との発言があり、これに関連して「国連改革をふくめて未来の理想を描くべきだ。そのさい武力を幕府が独占し、200年間国内平和の続いた日本の江戸時代を参考にすべきだ」「世界連邦の構想を勉強をしよう」などの意見があり、さらに次回以降も検討を続けることとした。

付 記

① リーフレット第1集を無料扱いで置かせていただける全国の書店あるいは喫茶室などが見つけていただいた方はお知らせ下さい。ご依頼により当面、30~50部を無料で送らせていただきます。
② 違憲に対する緊急警告案の起草をお願いできる全国の有志の方はご連絡下さい。当会の能力不足を補っていただくものです。それぞれご関心のある問題について。
③ 7月例会における「安保法制について」の勉強会は結城祐弁護士のご講演を予定しています。是非ご参加下さい。
④ 「7・1閣議決定」違憲訴訟 第9回勉強・相談会 7月28日(木)13:30~16:30 港区神明いきいきプラザ。
⑤ 「戦争法の廃止を求める統一署名」6枚(30筆)を実行委員会あて投函。
⑥ 今回同封のリーフレット『ちょっとおかしくないですか? いまの日本!!』(改定版・第6刷)は当会の仲間が関わる市民団体「リサーチファクツ」より発刊されたものです。紙のリーフレットをご希望の方は「research_facts@yahoo.co.jp」にご連絡下さい。

当面の日程について

① 第31回例会 7月24日(日)13:30~16:30
場所 港区・三田いきいきプラザ・「憲法研究会」(田町)
〒108-0014 港区芝4-1-17 電話03-3452-9421
JR 山手線・京浜東北線、田町駅西口から徒歩8分
地下鉄 三田線・浅草線 三田駅 A9 出口から徒歩1分
報告 1) 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
2) 事務局報告 福田玲三 (事務局担当)
勉強会 「安保法制」について 結城 祐 弁護士
会場費ほか 300円

② 第28回編集委員会 7月26日(火)14:00~ 大阪大学東京オフィス
③ 第32回例会 8月28日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ(田町)
④ 第29回編集委員会 8月31日(水)14:00~ 大阪大学東京オフィス
⑤ 第33回例会 9月25日(日) 13:30~
⑥ 第30回編集委員会 9月28日(水) 14:00~ 大阪大学東京オフィス

<別紙 1>
政治現況報告     2016年6月26日

岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)

この一週間というか数日は日本にとっていろいろ大変な時だった。21日(火)には桝添東京都知事が任期の途中、2年4ヵ月で辞任した。公用車を私用に使ったとか、神奈川の別荘へ毎週出掛けたとか、正月の家族旅行費を政治資金で落としたとか、まことにせこい話で、本来なら辞任にはならない事項を、追及を軽く見て説明責任を果たさず、嘘を積み重ねて深みへはまっていったという、まことに御粗末な辞任劇だった。都知事選は7月31日に行なわれるが、参院選のため、各党の候補者選びは、かなり遅れそうだ。
22日(水)は参院選の公示日、7月10日の投票日へ向かって舌戦の火ぶたを切った。自公の与党に対して民進、共産を中心とする野党連合が、全国32の一人区始め73人改選の選挙区、48人改選の比例区で激突する。23日(木)は沖縄戦終結の71回目の慰霊の日で、糸満市では、米軍属の女性殺しもあって、熱気に満ち、初めて裁判権を日本に取り戻すよう「地位協定」を改定するよう決議。日米両政府に要望した。
そして24日(金)は英国のEU離脱を決める国民投票。大方の予想に反して、大接戦の末、離脱派51・8%、残留派48・2%、およそ100万票の差で離脱派が勝利、保守党のキャメロン党首は首相辞任を発表した。EU離脱による国際経済の激変が危惧されていた通り、各国で株が大暴落。日本では1480円の値下がり、さらに日本円を買う円高が進み、1$100円を切って、2年7ヵ月ぶりに98円の高値をつけた。アベノミックスを売りに景気高揚を参院選で訴えていた安倍首相にとっては思わぬ痛手になりそうだ。
EUは、どちらかというと大陸派のドイツとフランスにイニシアティブを握られ、昔の大英帝国の夢を追う誇り高きジョンブルにとって、我慢ならなかったようだ。それに英国には旧英領を中心とする50ヵ国近い姉妹国が存在。EUとの貿易に頼らなくても、やっていけるという自負がある。大陸と英国との関係は、日本と中国との関係にも似て、過去の偉大さはあってもコンプレックスもある。海洋国家だが南北に強大な大国・大陸があり、常に野望もあった。来春選挙のある、右翼が力を持ちオランダ、ギリシャ、デンマークなどEUへの距離を置こうとする勢力への影響が心配だ。
日本の参院選は、自民党が安保体制、憲法改正を封印。アベノミックス・経済一本にしぼって選挙を続けている。これに対し、民共の野党は安保体制反対、憲法改悪反対を正面に据えて論戦している。
今回の参院選では、20歳の選挙年齢が18歳に初めて引下げられ、240万人の若者が参選する。その結果がどうなるか、マスコミが投票行動の分析をするだろうが、その結論が注目される。また今回の選挙で、これも初めて徳島・高知と島根・鳥取の2ヵ所で合区選挙が実現する。今後合区が増えると思われるので、その行方も注目される。
今回の参院選は、前にも云ったとおり、32の地方区一人区の勝負、与野党対決が勝敗を左右する。そしてその勝敗の分岐点は、自民党が非改選の65議席プラス57議席を獲得して、単独過半数122議席(定数242)、をとるか、また自民・公明の与党が非改選76を合せて46議席以上で参院過半数を超えるか、そして云うまでもなく、最も注目されるのは、大阪維新や日本の心の改憲勢力を合せ、憲法発議に必要な2/3議席。プラス78議席を確保するかである。護憲勢力にとってもまさに正念場といえる。

<別紙 2>
第30回例会 事務局報告

福田玲三(事務局) 2016.6.26
1) 経過報告
① 6月 3日 新リーフレット第1集 納品 4000部
② 6月 5日 新リーフレット配付1000部 全国総がかり行動国会正門前集会
大西、草野、国鉄詩人連盟関係(酒井、里、矢野)、福田
③ 6月 8日 リーフレット発行記者会見、プレス・センター9階大会議室
④ 6月 9日 『東京新聞6面に「『完全護憲の会』が冊子」掲載。翌日からgmailでリーフレットの受注相次ぎ 23件 261部、他に3月パンフ 33部、新会員3名 に達する(6月20日現在)
⑤ 6月19日 新リーフレット配付1000部 沖縄県民大会に呼応する国会正面前集会
大西、草野、安富、大野、週刊金曜日読者会関係(船野、馬場、松島)、福田

2) 全国の善意の書店にリーフレットを無料で置かせてもらうことを検討中。

3) 首都圏の会員・支持者へのBCC一斉送信用のリスト作成を考慮中、リーフレット配付行動など、急な要件での協力を要請するため。

4) 全国の会員・有志に緊急警告文案を起草していただくよう訴えることを検討中。

5) 「国民主権、基本的人権、平和主義、この三つを無くさなければ本当の自由憲法にならないんですよ!」。自民党の本音、ビデオ流出。

6) 緊急警告 015号を発信。

緊急警告015号、016号

緊急警告015号 自白のみによる無期懲役有罪判決は憲法違反!

2005年の栃木県今市市(現日光市)小1女児殺害事件の犯人として殺人罪に問われた被告(33歳)の裁判員裁判で、さる4月8日、宇都宮地裁は、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。
この裁判では、直接証拠はなく、取り調べの録音・録画が7時間以上にわたって法廷で再生された。松原里美裁判長は判決文において「被告人が犯人でないとしたなら説明できない事実関係が含まれているとまではいえず、客観的な事実のみからは被告人の犯人性を認定することはできない」と述べつつ、商標法違反での逮捕後に行なった取り調べに違法性はなく、取り調べの録音・録画などからも、取調官により恫喝や暴行が加えられた事実はなかったと判断。
その上で、捜査段階での自白について「取調官の誘導に合う内容もある」としながらも、録音・録画を根拠にして「取調官による誘導を受けた形跡がない」「あらぬ疑いをかけられた者の態度としては極めて不自然」「被告は処罰について強い関心を示し、処罰の重さに対する恐れから自白するかどうか逡巡、葛藤している様子がうかがえる」とまで述べている。
裁判長の認定のほとんどは、別件の商標法違反での逮捕から約5カ月間拘束、その「代用監獄」でとった自白調書を前提にしている。有罪にした根拠は、法廷で再生した録音・録画での心証だ。裁判官と裁判員が物証のないことを認めた上で、想像、推測で判示したのは自白について規定した憲法38条に違反していると言わねばならない。何故なら、同条は次のように定めているからである。
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

まさにこの無期懲役判決は、第38条の3項目すべてに絵に描いたように違反しているのである。また、取り調べの一部可視化の危険性も示している。
弁護人の一木明弁護士らは閉廷後、記者団に対し「自白で判決を書くのは危険だと言われているのに、自白を重視した判決を書かれたことが一番納得できない」と批判した。また、「録画のないところで圧倒的な権力関係を利用して被告人を自白に追い込んだ。取り調べが全面的に録画されていればこのような判決にはならなかった」と語った。
弁護団(国選)によると、被告は控訴する意向を示している、ということだが、控訴審においては憲法第38条に違反しない裁判を行わなければならない。

緊急警告016号 防災を名乗って小学生に配布、国防冊子の危険性!

「我が国と郷土を愛する」という、何やら物々しい文言の盛り込まれた2006年の教育基本法の改正(第一次安倍内閣)から10年が経とうとしている。このところ、安保法の違憲問題だけでなく、戦後私たちの平和を支え、抑圧された人権の回復を誓った日本国憲法に改憲の危機が迫りつつある。そんななか最近、あたかも教育勅語の復活を思わせるような「『防災まちづくり・くにづくり』を考える」(内閣官房国土強靭化推進室)という冊子(「学習ワークブック」)が小学校を通して配布された。

この冊子は、初めの数ページこそ大雨や地震などの災害について絵や写真付きで解説しているものの、途中から「災害の本当の恐怖は、その『後遺症』にあります。」とした上で、「地域の消滅の危機」や「日本全体の凋落(ちょうらく)」(※注:衰えること,落ちぶれること)を語り、ついには「国防」にまで話が及ぶという驚きの資料である。
防災のための「学習ワークブック」というこの冊子には、「災害に強いまち」という言葉とともに、何度も「強いくに」という言葉が用いられており、そのためにはどうするべきか、「このことを常に忘れずに考えて」いくことを提起しているのだ。「一億総~」という戦時中に国民を総動員した忌まわしい言葉をよみがえらせた安倍政権の「総活躍」の数字には子供も含まれるという事実を改めて認識し、その是非を問い直す必要がありそうだ。何より、災害に結びつけて外交や国防といった問題を持ち出すという方法は、個人の命よりも国家を優先するものであって受け入れ難い。

冊子の最後には物語「稲むらの火」が紹介されている。これは1854(安政元)年、安政南海地震の際に濱口梧陵なる人物が私財を投じて大津波から村を守ったというお話で、「自分の財産を投げ打った犠牲的精神により、多くの命が救われた」と解説し、そこには「※この物語は1937(昭和12)年から10年間にわたり小学校国語読本(5年生)に掲載されました。」という注書きまで付けられている。1937年と言えば戦争の本格化した年であり、翌1938年には国家総動員体制で戦争に突入していくことになる。
ここで注意すべきは「犠牲的精神」という言葉で、この言葉は「日本軍人が常々大言壮語して言った」(木村久夫『きけ わだつみのこえ』岩波文庫)ものであり、戦争を推し進めるためには個人を押しつぶす、まさにそういう使われ方をした用語だったのだ。なぜいま、こうした背景のある言葉が復権させられようとしているのだろうか。

そもそも明治憲法には教育に関する規定はなく、運営に関しては教育令や学校令などがあったが、当時の教育理念の指針となったのは1890(明治23)年に発布された教育勅語であった。この教育勅語は、その中段で、一旦緩急あれば(差し迫った事態のあった時は)義勇公に奉し(自ら進んで国や社会のために自分を犠牲にしてお仕えし)以て天壌無窮の皇運(天地存在の限り長く繁栄し続ける皇室)を扶翼すべし(お助けしなければならない)と示していた。
このように一見あいまいな表現は、組織において上意下達が成される過程では、命をも捧げる覚悟として捉えられた。子供たちは学校で教育勅語を暗唱し、皇国のために自らを犠牲とする精神を身につけ、学徒動員として軍需工場での労働などに従事させられていった。
上記防災冊子は、この教育勅語の精神と非常に似通ったものと言える。防災冊子が2006年改正の教育基本法に基づき作成されたことを考えると、2006年教育基本法が既に日本国憲法の理念を逸脱する危険性を十分に持ったものであると見るべきである。憲法26条で教育を受ける権利を保障し、23条で学問の自由を、19条で思想及び良心の自由を定め、13条で個人が尊重され、11条で基本的人権が保障された、この日本国憲法にことごとく反するものと言わなければならない。

それだけではない。こうした話は災害に絡めて憲法に緊急事態条項を作ろうとする論調と符合している。自民党改憲草案は、その98条、99条で武力攻撃や内乱、地震などの大規模災害時に内閣総理大臣が緊急事態宣言をできるとし、この場合、何人も国その他公の機関の指示に従う義務が生じるとしている。国民の権利は最大限尊重するとしつつも、つまりは国民の権利を制限するための条項に他ならない。
1882(明治15)年に制定された戒厳令は、軍人勅諭および徴発令と並び、日本の軍事体制を支える不動の支柱として機能した。実際、1923(大正12)年の関東大震災発生翌日の9月2日、政府は緊急勅令による戒厳宣告を行ったが、その時起こったのは、戒厳司令官に隷属する軍隊、警察や自警団などの末端組織による「不逞団体」への軍事的制圧であり、「殺しても差支えなきもの」とされ、「昼夜の別なく家屋立入検察」や「時勢に妨害となる集会、新聞紙雑誌広告の停止」など、政府にとって不都合な思想の弾圧、逮捕や虐殺が「さながら戦争気分!」で遂行されたのだ。戒厳立法、非常事態立法の真の意図は、国内民衆に対する軍事的制圧に向けられており、すぐにでも振り下ろすことのできる刀を常時、権力者の手中にあずけることを意味し、こうした立法は極度に有害、危険(大江志乃夫『戒厳令』岩波新書)と考えられる。これらの事実を考えれば地震などの災害が緊急事態条項で解決するものではないことは明白だ。

日本全体の「凋落」につながるような大災害があるとすれば、考えられるのは原発事故を含む大規模複合災害であろう。だが、この冊子には原発事故についての記載は一切ない。土石流や洪水などの項目について「流れ落ちる」「崩れ落ちる」「命が失われる」「水没する」「使えなくなる」「不足する」などの危機的な言葉を並べるだけで、そのための対応策も記されていない。このような冊子は、とても防災のための資料とは言えないであろう。
防災を考えるならば、個別の災害において、どのような避難や対応ができるのか、これまでに集積した災害情報から、手がかりになることを少しでも提示することができたはずである。防災冊子を名乗ったこのような国防冊子は、決して現在の教育にふさわしいものとは言えず、有害、かつ、危険なものと言わなければならない。
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