緊急警告033号 韓国の元徴用工判決で政府は歴史をゆがめるな!

韓国大法院(最高裁)が、韓国の元徴用工の強制労働をめぐる訴訟で新日鉄住金(旧日本製鉄)への賠償を命じた10月30日、日本政府に激震が走った。この判決に新日鉄住金が応じなければ、裁判所はその資産差し押さえを実行できる。日本政府は、「1965年の日韓請求権・経済協力協定によって完全かつ最終的に解決している」「極めて遺憾」「国際法に反する」「毅然として対応」などと主張し、国際裁判所に持ち込む姿勢を隠さず、在韓日本企業を集めて日本政府の方針に従って対応するよう働きかけている。

しかし一方で、「日本政府は国会答弁で、個人が賠償を求める『請求権』自体は残っているとも説明してきた」(東京新聞社説 10月31日)。現に11月14日の衆議院外務委員会において河野外相は、日本共産党・穀田恵二議員の質問に対して、「個人請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」(ハンギョレ新聞 日本語版 11月16日)と答えているのである。

こうした矛盾にほおかぶりして、安倍首相は「判決は国際法に照らして、あり得ない判断だ」(朝日新聞 10月30日)などと言うのは筋が通るまい。そしてさらに、判決の2日後、11月1日の衆議院予算委員会で安倍首相は「日本政府としてはこの『徴用工』という表現ではなくて、旧朝鮮半島出身者、出身労働者というふうに申し上げているわけでございますが、これはあの、当時の国家総動員法の国民徴用令に於いては募集と官斡旋と徴用がございましたが、実際、今般の裁判の原告4名は募集に応じたものであることから、朝鮮半島の出身労働者問題と言わさせて頂いているところでございます」と述べた。
つまり強制ではなく、自らの意思で働いたと言いたいのだが、それは事実に反している。
1939年に日中戦争が始まると日本政府は、総力戦をめざして、労務動員計画を立てた。
当時、植民地であった朝鮮では皇民化政策がとられており、当然、日本の戦時動員に応じるよう朝鮮民族の内面を操って強制した。そこから考えると、当時の「募集」も「官斡旋」も「徴用」も、いずれも戦争遂行のための「強制動員」と呼ぶべきもので、安倍首相の説明は、これまでの歴史研究で明らかになった事実を無視し、歴史をゆがめるものだ。
日本政府は、1965年の日韓請求権協定で、元徴用工への補償問題は「解決済み」と主張しつつ、他方で日本人の「個人による米国への請求権は放棄されていない」と主張し、朝鮮半島に資産を残してきた日本人にも、韓国への請求権は放棄されていないと、同じ姿勢を示してきた。これではダブルスタンダードだ。
韓国大法院の判決を受け、日本の弁護士グループは11月5日、「全ての請求権が消滅したかのように説明するのは誤導的だ」と政府を批判する声明を発表した。
韓国大法院で損害賠償の「請求権」が確定したことを踏まえ、日本政府は不法な植民地支配によって労働を強制したことを認め、真相を明らかにし、被害者の尊厳を回復し、次世代に真実を伝えるべきだ。そして日本企業をうながし、韓国側と協力して基金を作るなど、包括的な解決に踏み出さなければならない。ドイツ政府が、その基金を2000年に設立した例がある。
日本国憲法の前文は、「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務である」と教えている。
(2018年12月13日)

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