第一次世界大戦の終結から百年を迎えた11月11日、フランスの首都パリに60ヵ国以上の首脳が参集し開かれた式典で、マクロン仏大統領が演説し、「第1次大戦は1千万人の死者を生んだ。自国の利益が第一で、他国は構わないというナショナリズムに陥るのは背信行為だ。いま一度、平和を最優先にすると誓おう」と呼びかけた。この忠告に、トランプ米大統領はむっとした表情を見せ、同日開かれた平和フォーラムを欠席した。
このようなトランプ米大統領と組んで「自由で開かれたインド太平洋構想」を掲げて中国に敵対しつつ、北朝鮮のミサイル発射を国難と煽り、安倍政権は陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージスアショア」を購入したあと、新防衛大綱の策定をこの冬に見込んでいる。
この大綱は「これまでの延長線上ではない、数十年先の未来の礎となる防衛力のあるべき姿を追及していく」(10月29日、衆院代表質問への首相答弁)もので、その真意は「敵にやられっぱなしで、日本が守るしかないでは良くない。攻撃的な技術をやった方がいい」(『東京新聞』11月13日「税を追う」)と、防衛省の幹部の間では受け止められている。
防衛予算は、第3次安倍政権下の2016年度当初予算で5兆円を突破し、さらに、高額の最新鋭戦闘機F35や輸送機オスプレイなどの米国製兵器、国産の新型護衛艦なども毎年のように導入し、複数年で支払う兵器ローン残高は累積している。
そこでその抜け道に補正予算が使われ、防衛省は14年度からは北朝鮮情勢など「安全保障環境への対応」を理由に兵器調達費を次々に計上し、17年度の補正予算は2273億円に上った。補正予算を加えると、第2次安倍政権下の14年度から、防衛予算は5兆円を超えている。
防衛装備品の補正予算への計上は、2年目以降の支払いの一部を前倒しすることが多い。防衛省の元幹部は「その分、本予算で新しい装備品を買う枠ができる」(『東京新聞』11月1日、「税を追う」)と本音を語っている。
国産と輸入兵器のローン支払いは、19年度予算の概算要求で2兆708億円に上り、さらにそれを上回る2兆5141億円もの新たな後年度負担が見込まれている。
借金は今後も膨らみ、その先にあるのが、新防衛大綱の策定に伴う防衛費の対国内総生産比「1%枠」の撤廃だ。近隣諸国の脅威を意識的に煽り、防衛費をそれによって増額し、民生を圧迫し、限られた財源を増税によって補う。来年10月に予定される消費税率10%への引き上げは、その一環だ。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」と記した憲法を無視する、そのような悪循環は決して許されない。
近く臨時国会に提出される第2次補正予算案と年末に政府が改定する防衛大綱の内容を注目したい。(2018年11月16日)