緊急警告031号 首相による憲法の独善解釈は歴史的汚点!

さる10月24日開会の臨時国会における所信表明演説で、安倍晋三首相は、「国の理想を語るものは憲法です。憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆様の理解を深める努力を重ねていく。そうした中から、与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信しています。そのあるべき姿を最終的に決めるのは、国民の皆様です。制定から70年以上を経た今、国民の皆様と共に議論を深め、私たち国会議員の責任を、共に、果たしていこうではありませんか」と述べ、9条に自衛隊を明記する改憲案を、この臨時国会で提示することに意欲を示した。

この所信表明に対する各党代表質問の冒頭に立った枝野幸男立憲民主党代表は、「国の理想を語るものは憲法だ」との首相の言葉をはね返し、「憲法の本質は国家権力を縛ることにある。縛られる側の中心にいる首相が先頭に立って旗を振るのは論外だ」と批判した。
首相はこの批判には答えず、続く稲田朋美自民党副幹事長の質問に「首相として答えることは控える」としながら「お尋ねですので、自民党総裁として一石を投じた考えの一端を申上げる」と自衛隊の存在を明文化する必要を挙げた。
首相の所信表明を、自民党総裁の発言にすりかえる厚顔無恥が、世論調査に現れる「首相の人柄が信用できない」に反映している。
参院の代表質問では立憲民主党の吉川沙織氏が「憲法順守義務を負う首相は、改憲に係る発言は自制的、抑制的であるべきだ」と指摘、衆院二日目の代表質問で共産党の志位和夫委員長も「行政府の長が立法府の審議のあり方に事実上の号令をかけており、三権分立を蹂躙(じゅうりん)している」と批判した。
これに対して首相は憲法63条(閣僚の議員出席の権利と義務)や67条(内閣総理大臣の指名、衆議院の優越)に言及して反論し、99条(憲法尊重擁護の義務)は公務員が改憲を主張するのを禁じてはいないとの見解を示した。
一行政府の長が、勝手に憲法条文解釈をする独善は決して許されない。憲法史上歴史的な汚点を見過ごすことはできない。
与党、自民党内部にさえ首相の改憲発言についてはわだかまりがある。例えば二階派の伊吹文明元衆院議長は「首相が国会にああいうことを言うことはいいのかなという感じはした」と疑問を呈している。
それでも首相は「国民の皆さんと共に」と言い続けるつもりなのか。(2018年11月14日)

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