厚顔無恥の安倍内閣が居座っている。森友・加計問題で行政を私物化し、数々のウソをつきまくり、あげくの果てに官僚たちに公文書を改竄させたり隠蔽させたりと腐敗の極みに達しており、安倍政権の正統性は完全に失われている。にもかかわらず、国会で多数を占める物言わぬ与党議員たちが腐臭漂う安倍政権を支えているのである。
一時は自民党総裁選での三選が危ぶまれるほどに動揺していた安倍政権であったが、ここにきて自民党内での安倍総裁三選の可能性が有力視されるという嘆かわしさである。
そんな安倍首相が、8月12日、地元山口県下で講演し、今秋召集予定の臨時国会に「党としての憲法改正案を提出できるよう取りまとめを加速する」と明言したのである。
憲法の「尊重・擁護」義務のある行政府の長としての首相が、自ら先導して憲法改正案を次期国会に提出するなどということは憲法違反そのものであり、許されることではない。
さらに安倍首相と自民党総裁は不離一体なのであるから、自民党総裁としての改憲発言も慎むのが行政府の長としての節度と言わなければならない。憲法99条(憲法尊重擁護の義務)が行政府の長に求めるものである。
マスコミは、こうした重大な憲法違反となる首相の発言を無批判に報道すべきではない。
行政府の長たる首相の改憲発言が何の問題もない、当たり前のことであるかのような認識を多くの国民に浸透させるからである。
安倍首相の改憲発言に関しては、首相としての発言なのか、自民党総裁としての発言なのかを質しつつ、せめて安倍自民党総裁の発言として報道すべきである。
さて、肝心の自民党としての「改正案」であるが、先に自民党憲法改正推進本部がまとめた「改憲4項目」案は正式に自民党全体の案とはなっていないようであるが、3月に開かれた自民党大会での二階幹事長の発言を見る限り、党内に異論を残したまま、これが自民党としての「改正案」となるということなのであろう。
「改憲4項目」とは①9条に「自衛隊明記」、②内閣に絶大な権限を付与する「緊急事態条項」の新設、③国会議員の選出方法を改める「合区解消」、④教育における「国の役割」、の4項目であるが、このうち③の「合区解消」と④の「国の役割」は多くの法律家・憲法学者が指摘する通り、憲法改正のテーマとして取り上げるべきことではなく、法律にかかわる次元の問題として対応すべきことがらなのである。それをあえて取り上げているのは、国民が憲法改正を抵抗なく受け入れやすくするためと、「教育の無償化」をかかげて憲法改正に積極的な日本維新の会を取り込むためのものと言える。
重大な問題は、①の9条に「自衛隊明記」と②の内閣に絶大な権限を付与する「緊急事態条項」の新設である。この二つについてはすでに当会の緊急警告022号(「自衛隊明記は口実、9条全面改悪の突破口とするもの」2017/8/9)と緊急警告003号(「『ナチスの手口』、緊急事態条項の危険性」2016/2/7)で言及しているので、ここでは再論しないが、自民党の「改正案」が正式に提出された段階で再度の検討を行うこととする。