第193通常国会が1月20日開かれた。安倍首相は衆参両院で施政方針演説行ったが、この中で、「憲法施行70周年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる70年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか」と述べたのである。
「行政府の長」が、国権の最高機関たる国会において、国会議員に向かって現憲法の「改正」を促す演説を行ったのである。
「行政府の長」がなすべきことは、ひたすら憲法に則り、国政を執行するべきものである。憲法第99条が「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と定めるように、「国務大臣」の長たる首相には、憲法の尊重・擁護義務があるからである。
安倍首相の施政方針演説における「改憲」促進発言は、明白な憲法違反と言わなければならない。
しかしながら、この安倍首相の施政方針演説を、憲法違反と指摘する国会議員も野党もいないのである。マスコミの報道もこれを当然のごとく報じている。これは何んとしたことであろうか。
ここには明治帝国憲法下に培われた、元首である天皇の下での、行政府が国権の最高機関であるとの認識が払しょくされていない現実がある。
憲法第41条が「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」としているように、三権分立の頂点にあるのが国会であって、その下に内閣と司法があるのである。
それゆえ、安倍首相の施政方針演説における「改憲」促進発言は、「行政府」としての立場をわきまえない国会に対する越権行為であり、憲法第99条の憲法「尊重・擁護」義務違反であると言わなければならない。