緊急警告第043号       安倍政権の国会軽視・憲法蹂躙を放置してはならない

「意味のない質問だよ」
2020年2月12日の衆議院予算委員会において、立憲民主党の辻本清美議員が「桜を見る会前夜祭」疑惑について鋭く追及した直後にあった、閣僚席からのヤジ。

ヤジを発したのは内閣総理大臣の安倍晋三である。このヤジをめぐって委員会は当然にも紛糾した。野党は首相のヤジを、「国会を冒とくし、国会の行政監視機能を否定するもの」と厳しく抗議し、謝罪・撤回を要求。

2月17日、安倍首相は「今後閣僚席からの不規則発言は厳に慎む」と「反省」の姿勢を示したが、首相の閣僚席からのヤジはこれに限ったことではなく、何度も繰り返されてきた。与党が絶対安定多数を占めるなか、安倍首相には、そもそも国会審議は煩わしいもの、価値のないものという、国会軽視の姿勢が見え見えなのである。一国の政府のリーダーとして、全く恥ずべきことである。

そして今、戦後初めて経験する新型コロナウイルスのパンデミックで国民の生命と生活が脅かされている最中、野党は敏速な審議や対応を可能とする年末までの会期延長を要求した。しかし、安倍政権は会期延長を拒否し、当面週1回の関係委員会で閉会中審査をおこなうことで、国会は6月17日に閉会された。

 

自民党の改憲草案では、自然災害等を想定した緊急事態条項の中で「議員任期の延長」を盛り込んでいるが、これは国会が緊急事態時にその機能を発揮することを想定しているからではないのか。そうであるならば、今が正に新型コロナの第二波の感染や経済危機の拡大が予想される非常事態時であり、国権の最高機関たる国会は開いていなければならない。にもかかわらず、政府は補正予算で10兆円の予備費を積んで、後は政府・与党がやりたい放題にやるという態度が見え透いている。これでは緊急事態時の「議員任期の延長」などと、改憲を語る資格もない姿勢である。

さらには、首相自身の疑惑に絡む「桜を見る会」、「検事長定年延長」、「河井夫妻選挙違反」等への諸疑惑に対する質疑をどうしても避けたい思惑も、大きく影響していることは確かだ。

 

会期延長議論さなかの6月10日、沖縄地裁で注目すべき判決があった。

これは、沖縄県選出国会議員4人が国を相手に、「2017年6月に森友、加計学園問題の疑惑解明を求め、野党が要求した臨時国会の召集を安倍内閣が3カ月以上放置したのは憲法53条違反だ」として、損害賠償計4万円を求めた訴訟である。

憲法第53条では、臨時国会の召集について、次のように定めている。

「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」

この規定の趣旨は、議院内閣制のもとで、国会内の少数派が内閣に対して臨時国会の召集を義務付けることにより、少数派の提起する案件について国会で議論する機会を保障し、民主主義を徹底しようとする点にある。

沖縄地裁の山口和宏裁判長は、損害賠償請求訴訟そのものは棄却したものの、

内閣には召集するべき憲法上の義務がある。単なる政治的義務にとどまるものではなく、法的義務であると解され、(召集しなければ)違憲と評価される余地はあるといえる
と言及した。

憲法53条の解釈について司法が憲法判断を下すのは初めてであり、損害賠償請求が棄却されたとはいえ画期的な判決となっている。

 

第201回通常国会で解明されていない首相自身の疑惑や補正予算における10兆円の予備費、持続化給付金等にかかわる不透明な事務委託問題など、重要案件は山積みとなったままである。野党は閉会中審査に長々と政治的に妥協することなく、早急に臨時国会召集を強く要求するとともに、安倍政権は沖縄地裁の判決にもあるように憲法53条に則って国会を召集しなければならない政治的法的義務がある。

この臨時国会召集において、「コロナ禍」に対応するとともに、先の通常国会で解決されなかった諸問題をひき続き審議し、さらに広島選挙区の河井夫妻に提供された1.5億円の公選法違反事件の背景と本質の徹底的な解明と安倍自民党総裁の関与を明らかにすべきだ。

 

第二次安倍政権の5月~6月の支持率は30パーセント前後、不支持率は50%~60%を推移し、不支持率が支持率を大きく上回る状態が続いている。その不支持理由で最も多いのが、「人柄が信頼できない」となっている。人柄が信頼できない人間を政権のリーダーに置き続けている国民は、はなはだ不幸と言わざるを得ない。

国民はこれ以上、安倍政権の国会軽視・憲法蹂躙を放置してはならない。

2020年7月1日

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