完全護憲の会ニュース No.15 2015年03月10日

さる2月22日(日)、神保町・学士会館地下1階北海道大学連絡室で2月例会を開催、参加者10名。入会者 計 21名。

岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)はご家族のお祝い事があって欠席、届けられた次の報告をMY会員が代読した。

政治現況報告(安倍外交と70年談話)

安倍首相は自らの外交姿勢を「積極的平和外交」と名付け、就任以来、任期の半分ぐらいは、世界の多くの国々を歴訪。友好親善に務めると共に、各国へ積極的に経済支援やODA援助、借款を進めて来た。その努力は多とするが、反面、外遊が多く、国会論議がお座なりになると野党などには不満があった。しかし一方、もっとも日本外交が力を入れるべき東アジア外交、近隣外交は、中国・韓国両国と2年以上も対立が続き、アジア情勢、太平洋地域に不安定さをもたらせている。親米へ傾斜する安倍首相にオバマ大統領も、この点は心配し、強く改善を直言している。

この一種二元外交が、安倍外交の特色であるが、はからずも、今年はアラブ連合・ヨルダン・イスラエルなど親米のアラブ諸国を歴訪し「イスラム国と戦う周辺国に対策費として2億ドルを贈与する」と発言したため、イスラム国の怒りを買い、湯川・後藤両日本人の拘束を明らかにした。最初は同額の2億ドル、途中で人質交換要求となったが、政府は適切な手を打てず、結果的に二人を殺されてしまった。安倍積極的平和外交の明らかな失敗である。

湯水のようにバラまいている訪問国援助資金も、反イスラム2億ドル援助も、みな国民の税金である。政府の外交、金の誤った使い方のために、殺されるのでは、国民はたまったものではない。

中国外交の冷戦は、安倍首相の靖国参拝に、前大戦の反省や、歴史認識を変更するものだと、中国側が怒り、日中首脳は一度握手しただけで、まだ一度も実のある会談をしていない。アジアの二つの経済大国の反目は、アジア全体の安定を著しく損ねている。中国側は安倍首相に、もう二度と靖国に行かぬよう要請しているが、首相は頑として、それを約束せず、膠着状態が続いている。

一方、お隣の韓国とは、やはり戦時中の韓国女性の強制売春問題で、韓国側の賠償要求を無視、この問題を謝罪した河野洋平衆院議長の談話まで否定しかねない発言を続け、これも歴史認識を理由に、内閣発足以来、両首脳は顔を一度も合せていない。

これに対し、安倍首相はプーチン・ロシア連邦大統領とはたびたび会談、北朝鮮の拉致問題では接近と、その外交姿勢に一貫性がない。そのロシアともウクライナ問題で米ソ間の対立が強まり、日本の立場が微妙になっている。

この外交姿勢に関連して、今後国内でも問題になりそうなのが、安倍首相が戦後70年を機会に意欲を燃やしている“70年談話”である。このような談話は社会党の村山首相が1995年、戦後50年に、日支事変から太平洋戦争にかけて日本が行った侵略行為と植民地支配を反省し、謝罪した“村山談話”が初めてだ。談話は閣議決定された。この時、自民党は選挙で惨敗し、時の河野総裁は第一党の社会党との連立で村山政権を成立させ、同時に社会党は初めて自衛隊を正式に認めた。

このあと戦後60年の2005年、時の小泉内閣が“小泉談話”を発表したが、過去の反省と謝罪は村山談話を踏襲した。今回の安倍談話も、この二つを意識したもので、できれば、これまでと違う画期的なものにしたいと希望を語っている。しかし村山・小泉談話の先の大戦への反省や謝罪はできれば触れず、「日本の将来へ向けたものにしたい」との意向も伝わってくる。これにはさすがに公明党山口委員長が「安倍談話は事前に与党で充分に検討」と引き戻しをはかり、自民党内でも二階総務会長が、野党も含め国会の意見を充分聞くようにけん制した。この問題は8月15日の戦後70年記念の日まで大きな政治問題になりそうだ。

例会における討議

ついで、野村光司氏(「日本国憲法が求める国の形」起草者)が、さる1月28日に行われた編集委員会における討議(本紙前号既報)を紹介し、とくに1月例会で反対論の強かった第9条関係での国連軍への言及について、これまでの非武装平和論で国民の多くを納得させえなかった経験を踏まえ、違憲の自衛隊に代わる合憲の国連軍を選択することを説得的に加筆するに至った経緯を報告した。

この報告に対しては「日本が平和外交に徹していれば、いずれの国も攻めてこないとの意見は、残念ながら、国民の共通認識にはなっていない」「自衛隊の存在を容認している大半の人々に、論議の場に加わってもらうために、この提起は必要だ」などの意見が続いた。

野村氏はまた、政府が防衛省設置法の改正案を閣議決定し、武器輸出に向けた取り組みを強化したり、「文官統制」を見直して、武官が文官と対等に防衛大臣を補佐するよう図っていることに懸念を表明した。

昨年末、総選挙と同時に行われた最高裁裁判官の国民審査結果で、罷免要求率は前回の7%台から8%台へと約1%増加したことが話題になった。「米国では大統領の指名した最高裁裁判官候補者の約4分の1が上院の審議などで否決されているが、日本では内閣に任命されれば国民審査で罷免されることは絶対にない仕組みになっている」と野村氏は日本の現状を批判した。

その後、事務局から「昨年7月に集団的自衛権行使を認めた安倍内閣の閣議決定を違憲とした珍道世直氏による控訴審の最初の公判が、3月3日、東京高裁で行われることが紹介された。

編集委員会における討議

さる2月27日、学士会館北大連絡室で編集委員会が行われた。参加者は5名。
討議は ①パンフレット『日本国憲法が求める国の形』の装丁、内容の詰め ②パンフレット送付先表の作成 ③パンフレット発表記者会見の段取り ④記者会見案内状の作成 ⑤パンフレット発送事務の日取り設定(2月28日14:00、3月3日15:00)について行われ、必要な決定をした。

なお記者会見を控え、岡部氏の示唆にもとづき、編集委員の全員一致でパンフレットの編集長に草野好文氏を選出した。

記者会見案内状の送付先

自由民主党/民主党/公明党/維新の党/次世代の党/社会民主党/生活の党と山本太郎となかまたち/日本を元気にする会/新党改革/長崎新聞社東京支社/民主党プレス民主/九条の会/市民の意見広告運動/週刊新社会/連合通信/連合/安倍靖国参拝違憲訴訟の会/大塚茂樹(岩波書店)/日本共産党/朝日新聞社/毎日新聞社/読売新聞社/日本経済新聞社/産経新聞社/ジャパンタイムズ/共同通信社/時事通信社/中日・東京新聞社/北海道新聞東京支社/河北新報東京支社/神戸新聞東京支社/山陽新聞東京支社/中国新聞東京支社/西日本新聞東京支社/沖縄タイムス東京支社/琉球新報東京支社/AP通信社/AFP通信社/しんぶん赤旗/社会新報/週刊金曜日/思想運動/地域と労働運動/人民の力/聖教新聞社/先駆社/憲法改悪反対共同センター/日本放送協会/TBSテレビ/日本テレビ放送網/テレビ朝日/フジテレビジョン/テレビ東京/㈱IWJ岩上安身/「週刊朝日」/「アエラ」/「サンデー毎日」/「週刊読売」/「週刊現代」/「日刊ゲンダイ」 /「フライデー」/「週刊文春」/「週刊新潮」/「週刊ポスト」/「SAPIO」/「週刊プレイボーイ」/「別冊 宝島」(以上68社・団体)

パンフ発表記者会見

パンフレット発表の記者会見は3月20日(金)14:00から日本プレスセンタービル(都内千代田区内幸町2-2-1)9階大会議室 です

会員はご出席下さい。

                       次の例会・勉強会のご案内

日時 3月22日(日) 14:00~16:30

場所   東京・神田  学士会館地下1階  北海道大学連絡室

(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)

報告   政治の現況について   岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット)」の発表記者会見報告

野村光司(「パンフレット」起草者)

今後の日程について   事務局

討議  報告および提案への質疑、意見

参加費  無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会

電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com

なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。

完全護憲の会ニュース No.14 2015年02月10日

さる1月25日(日)、神保町・学士会館地下1階北海道大学連絡室で1月例会を開催、参加者13名。入会者 計 21名。
岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)が風邪で欠席し、後日、書面で以下を報告された。

政治現況報告

新年早々、1月18日に野党第一党の民主党の委員長選挙が行われた。年末の総選挙で民主党は再び惨敗(と言ってもよいと思う)東京1区の海江田万里委員長は比例区にも残れず落選した。全国の党員・地方議員も巻き込んだ後任委員長争いは、若手の支持を集めた細野剛志が6票差で岡田克也代行を破り1位となったが、過半数に達せず、国会議員による決戦投票では、本命の岡田氏が逆転、委員長の座を射止めた。

はからずも、自民党総裁選での党員も含む本選で1位になった石破氏を国会議員選による決戦投票で安倍首相が破り、首相の座を射止めたのと同じ形にになった。岡田氏は細野氏を政調会長にするなど、挙党一致体制をとったが、雄弁で生まじめな新委員長が、バラバラな党内をどう一本にまとめ、再び政権を争える党に再建するか、今後の課題となろう。

そこへ飛びこんだのがイスラム国が湯川遥菜さんと後藤健二さんの二人の日本人を拘束したというニュースだった。人質の交換要求などがあったが、結果的に二人の人質は殺された。戦後70年の平和を守ってきた日本にとって、歴史的な転換点ともなる大事件に発展してしまった。

安倍首相は就任以来、秘密保護法の制定や集団的自衛権の閣議決定など戦前回帰路線ともいえる後ろ向き政策を進めて来たが、外交についても「積極的平和外交路線をとる」と強調していた。これまでは全く意味不明だったが、はからずも今回のイスラム国人質事件で、その正体と意図することが明白になった。

日本はこれまで外国に自衛隊を派遣することは自重。自ら紛争に積極的に介入することは避けて平和を守ってきた。しかし今回、安倍首相は紛争地ヨルダン、エジプト、イスラエルと、いずれも米国との友好国だけを訪問、しかも1月17日にはエジプトのカイロで「イラク、シリア難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのはISIL(イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発・インフラ整備を含め“ISILと戦う周辺各国”に総額2億ドルの支援を約束します」と公言してしまった。つまり米国と共同歩調をとって日本が友好国を積極的に支援するのが”積極的平和外交“だったわけだ。表立ってアメリカを積極的サポートする外交である。わざわざISILを名指しして、それと対抗することを明言したのだから、イスラム国が日本人二人を人質として確保したのは、むしろ当然だろう。

しかも政府は昨年10月には二人が拘束されたとの情報を知り、内密で交渉していたのだという。いかにもタイミングの悪い歴訪であり、しかも2億ドルをイスラム国対応で拠出すると明言するのは危険極まりない。まさに挑発ではないか。安倍首相は二人殺害の政治責任について、“私に最終責任がある”と開き直ったが、誰がこの文章を書き、発言時期を決めたのかと云う野党の質問に「文章も発言自体も私が決めた」と予算委で答弁した。「それが間違ったとは思っていない」とも強調したが、さすがに鋭く追及されて「その発言の可否についても、今回の人質事件の検証の中で明らかにしたい」と述べた。

いずれにしても、戦後初めて日本人が人質にとられ、政府の折衝にもかかわらず殺された。国民が“積極的平和外交”の犠牲になった。しかも、もっと問題は、日本が米国のお先棒を担ぐ図式が世界に知れ渡ったことだ。今後、国民が危険な立場に立つことの安倍首相の責任を、野党はもっと追及していい。国民もまた安倍が首相になったのは運が悪かったでは済ませず、一日も早く退陣させるべきだ。

例会における討議

ついで、野村光司(「日本国憲法が求める国の形」起草者)氏が、予め例会出席予定者に配付し、検討を要請していたパンフレット第4次案について、次のように報告した。

まず第1点は、憲法9条(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)関係で、先に「戦力保持の禁止」として記述していたものを、「違憲の自衛隊を合憲の国連軍に」の見出しに代え以下の記述に差し換えた。

(第9条関係)

違憲の自衛隊を合憲の国連軍に

法治主義とは真実に基づいて法を適格に適用することであって真実を偽装してそれで済むならば法治とは言えない。自衛隊は発足時から用語でも政府説明でも種々の偽装を施して来た。第9条は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあり、自衛隊の組織・装備は、外国と戦争するために整備された陸海空軍であり、決して国内犯罪を鎮圧する警察ではない。自衛隊が日本の軍隊ならば違憲と言わざるを得ない。

また、正当防衛の権利は、国内法でも国際法でも普遍的に認められている自然権であるがわが刑法36条は、「急迫、不正の侵害に対して自己又は他人の権利を防衛するため止むを得ない」行為についていうのであって、例えば強盗に押し入られたとき、合法的に所持している物を用いて抵抗するのは許されるが、所持を禁止された物を予め準備することは許されない。日本では銃砲刀剣の所持が禁止されており、有り得べき侵入者に備えてピストルや機関銃を準備することは許されない。公の警察力に頼るべきものである。

日本は憲法上許されない「自衛隊と言う名の軍隊」が持てない。そこで憲法は前文で「平和を愛する諸国民 (peace-loving peoples) の公正と信義 (justice and faith) に信頼して、われらの安全と生存を保持」するとする。憲法制定時、既に国連が世界各国の平和を守る国際機関として存在しており、国連憲章第47条では「国連軍事参謀委員会」が国連軍を運用する規定を設けている。この規定は主として多国籍軍の運用にかかるものであるが、国連自体の直轄軍を創設することを排除するものではないと考える(参考:PKOは国連規定には存在しないが国連総会の決議で創設された)。いずれにしても、わが国は他国の侵略を受ける恐れがあるならば、クウェートがイラク軍の侵略を受けたとき多国籍軍によってイラク軍が排除されたような体制を国際的に整備することが必要である。ここに主として日本を防衛する日本駐留の日本防衛の国連軍部隊が創設されれば憲法上の問題はなくなる。現在、アメリカも一国で世界の警察官たる負担に堪え兼ねており、EUも国際軍の性格を帯びて来ており、すべて一国のみでの防衛はできなくなっているので、国連軍の創設には欧米諸国の協力も期待できる。また中国、韓国、ロシアも日本軍に苦しめられた経験から、自衛隊が日本の軍隊ではなく国連軍部隊であるならこれを歓迎できる。政治的外交的には困難であるが、日本国憲法の理想に向かって努力すべきである。

もとよりこうした軍備に努力するよりは、憲法随所に規定される「恒久の平和を念願し」「自国のことのみに専念して他国を無視してはなら」ず、普遍的な「政治道徳の法則」に従って「自国の主権を維持し」(前文)、「大臣は、文民でなければなら」ず(66条)、ポツダム宣言、対日平和条約など敗戦で結んだ「条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守」して(98条)、先ずは近隣諸国で日本を攻めようとする敵対国を無くし、近隣諸国との平和を確立することが、わが国の安全を守る第一義であることを認識すべきである。

自衛隊が違憲であるとするならば軍隊としての自衛隊は解散せざるを得ない。しかし自衛隊にはこれまで軍隊としての訓練の他、災害救助、南極探検支援など国民の必要に応じ、危険な業務を負担して来た。日航機墜落事件、阪神大震災、東日本大地震・大津波の災害に対して被災者救済に多大な活動をし、国民の自衛隊への親近感は著しく増大したと言われる。今後は順次、軍隊の要素を減じ、災害救助隊としての活動範囲を拡大することが望まれる。これまで、中国、韓国初めアジア諸国に侵略の軍を進めたのに代わって、今後は国内ばかりではなくアジア全域、或いは全世界に対し、災害救助に、難民救助に、と危険な業務に迅速に対応し、全世界に感謝される組織になることが期待される。

第2点は36条(拷問及び残虐刑の禁止)関係で、これまで「死刑の廃止」として、主として人間の生命権を奪う殺人、さらに残虐な刑罰としての死刑の廃止を要求したが、編集委員会からの注文で冤罪による死刑の危険について加筆することになり、いま文案の作成中である。

以上、主として2点の報告をめぐって討議が交わされ、次のような意見が提出され、意見はほとんど第9条関係に集中した。

「国連軍部隊による日本の防衛は現憲法の趣旨に反する。国土の防衛はあくまで近隣諸国と友好を保つ外交努力によるべきであり、国民意識をそこに先導するよう努めるべきだ」

「中程に『自衛隊が違憲であるとするならば軍隊としての自衛隊は解散するしかない』という記述があるが、『将来、自衛隊は解散するしかない』、などとして、時間的な余裕を持たせた方がよい」

「9条関係では、別に『集団的交戦国にはなれない』という見出しで、集団的自衛権の行使容認を決定した閣議決定を批判しているが、この決定が『違憲』であることを明記した方がよい」

「第99条(憲法尊重擁護の義務)関係で、『公然、憲法を侮辱する公務員は、公職から排除されなければならない』と記述しているが、この記述の冒頭に『首相以下、』と明記した法がよい」

これらの意見に対して「憲法の規定には、ある程度の理想が含まれても許容されるので、国連軍部隊の日本駐留については、国連創設当時の、世界の平和を守る国際機関としての役割の復権に努力することと合せて、国連軍部隊にへの言及についてご理解願いたい」旨、起草者側から答弁があり、提起された様々な意見をあわせて編集委員会で文案を作成することとなった。

さらに、「昨年7月1日の集団的自衛権行使容認の閣議決定以降、安倍首相が進めている露骨な改憲活動批判をパンフレットにどう取り込むのか?」「この度の湯川、後藤さんの拘束事件で、折から中東訪問中の安倍首相が『ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します』公表し、しかも、アラブの宿敵であるイスラエルを訪れネタニアフ首相とともに『テロとの戦い』を宣言し、『イスラム国』に報復の口実を与えていることを、どう受け取るのか?」などの切迫した意見も提出され、いずれも編集委員会が検討することとなった。

ついで、パンフレット発表に当たっての下記「あいさつ文」の案が事務局から配付され討議された。

「日本国憲法が求める国の形」(パンフレット)

発表について完全護憲の会からのごあいさつ(案)

私たちは、皆、無位無官の庶民であり、学者でもありません。どの政党政派にも属せず、誰にも隷属せず、誰をも憎む者でもありません。ただ私たち庶民の目で見ると、日本が日本国憲法を最高法規として戴く法治国家であるとすれば、今の国政が憲法の理念、条文と余りにもかけ離れていることに驚いています。

いわゆる左翼、護憲を標榜する方々も現行憲法を非難する方々もおられます。例えば第1章天皇規定の存在が許せない、と言う方が少なからずおられます。しかし護憲と称しながら現行憲法を否定したのでは、改憲派が憲法の権力抑制や人権尊重の規定を否定するのを非難することはできません。この場合は、現憲法否定の政治勢力の方が遙かに現実を動かす力が強いことを知らねばなりません。

私どもは憲法と現実の国政との乖離の幾つかを列挙させて頂きました。その殆どが憲法制定の根本目的である権力の抑制を外し、国民の人権を否定することにあります。私たちは右にも左にも、現行憲法の理想と条文とに完全に合致する政治を求めなければならないのです。

私たちは政治活動をしませんが、戦前の事情をいささか経験し学んだ者として、現日本国憲法が国民全体のため、また周辺諸国との友好、諸民族との和解のため非常に優れたものであり、現憲法の完全な適用が日本と世界との利益であることを信じていることを告白させて頂きます。

しかし憲法の理想と条文から曲りに曲がった政治の現実のすべてをいきなり是正することができないことも承知しています。できるものから順次、憲法に沿って正されるよう心から望んでいます。現に違憲の国政で利益を得られている方々には申し訳なく思いますが、できるだけ痛みが少ない方法で転向できる方策が取られることを願っています。

今、私どもが提示する現行政治違憲論が間違っているならば、それを教えて頂けるようお願いします。ただ憲法の理想と条文に即したものであることをお願いします。

2015年(平成27年)3月

完全護憲の会 共同代表、編集委員名 列記

意見としては「第1章天皇規定への言及はとくに必要ではないのではないか」「安倍政権の最近の改憲策動に触れるべきではないか」などが表明され、成文は編集委員会に委託された。
その後、事務局から次の文書が配付され、承認された。

 パンフレット発表の手順(案)

  1. 日程

統一地方選挙前に発表するために逆算して

統一地方選挙第1次 投票日                          4月12日(日)

パンフレット発表の記者会見

3月20日前(岡部、野村さんの都合で3月16<月>か20日<金>)

パンフレット発行・配付                              2月25日(水)

パンフレット入稿                                    2月10日(火)

編集委員会(パンフレット成稿)                      1月28日(水)

例会(パンフレット最終案決定)                      1月25日(日)

パンフレット第4次案を例会出席予定者に郵送、配信    1月19日(月)

2. パンフレットの大要

A5版    横書き

内容  「日本国憲法が求める国の形」と「日本国憲法原文」、目次を詳しく。

500部     単価300円

発行所  東京都品川区西大井 4-21-10-312 完全護憲の会

3人の共同代表、岡部、野村、福田の名を入れる。

編集委員名は?

  1. 者会見の場所
  2. 事前のパンフレット配付先

マスコミ、政党、学会など

つぎに事務局の方から2014年の「会計報告書」が配付され、宮崎会計監査員からの「適正にして妥当である」との「監査報告書」とあわせて承認された。

ついで、郵便局で振替口座を開設するための便宜として、事務局担当の福田玲三を共同代表の一員にすることが求められ、「完全護憲の会」会則施行の2014年4月27日にさかのぼって、選出したとすることが承認された。

また、昨年7月に集団的自衛権行使を認めた安倍内閣の閣議決定を違憲とした珍道世直氏による訴訟が、東京地裁で一二月一二日に棄却され、控訴されたことが報告された。配付された1審判決文のコピーに見られる原告の主張の誠実さが参加者に感銘を与えた。

               編集委員会の報告

例会から3日後の1月28日、第9回編集委員会が虎の門の大阪大学東京オフィスで開かれた。参加者は5名。

まず、例会で反対論の強かった第9条関係での国連軍への言及については、これまで非武装平和論では大半の国民大衆を納得させることのできなかった経験を踏まえ、違憲の自衛隊を廃止した後の実力組織として、合憲の国連軍を選択することが最良であることを説得的に加筆するとともに、自衛隊の廃止に時間的猶予をもたせよという反対論のなかの助言を取り入れることとし、その成文を草野委員に委任した。

また99条関係で「公然、憲法を侮辱する公務員は、公職から排除されねばならない」の前に、例会の意見を踏まえ、「首相を始め」を挿入することとした。

次に、「ごあいさつ」の案文中、批判的意見のあった「第1章天皇」規定への言及については、天皇条項が14条(法の下の平等)に原則的に反しており、この章への批判は当然であると認めた上で、日本国憲法全体をまもるために、この第1章をやむをえず容認する理由を丁寧に加筆することとした。また集団的自衛権行使容認以降における現政権の強権的な違憲行動に対して例会で示された強い批判を「あいさつ」の文中に反映させることとし、加藤委員の案文を基礎に、榊山委員に成文を委任した。

ついで、例会で承認された「今後の日程」「パンフレットの仕様」「パンフレット発表記者会見の準備」等を確認したが、パンフレットには頒価は入れず、カンパの呼びかけにするとし、閉会した。

2月6日、会場を確保し、パンフレット発表の記者会見は3月20日(金)14:00から日本プレスセンタービル(都内千代田区内幸町2-2-1)9階大会議室 と決定した。

               次の例会・勉強会のご案内

日時 2月22日(日) 14:00~16:30

場所   東京・神田  学士会館地下1階  北海道大学連絡室

(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)

報告   政治の現況について   岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット)」の発表について

野村光司(「パンフレット」起草者)

今後の日程について   事務局

討議  報告および提案への質疑、意見

参加費  無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三

電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp

なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。

完全護憲の会ニュース No.13 2015年01月10日

さる12月21日(日)、神保町・学士会館地下1階北海道大学連絡室で会合、参加者15名。入会者 計 20名。

まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏 から政治の現況について次のような報告があった。

政治現況報告(要旨)

12月14日、前回選挙からわずか2年で解散・総選挙があった。全く安倍自民党の党利党略選挙だったが、与党の自民党は290(-4)公明党は35(+4)で、合計325議席は前回と全く同じで、何のための選挙だったか。この数字は世論調査の結果とほぼ同じ。ただ争点もない党利解散だったため、投票率は52.66%で最低。二人に一人棄権だったのは、無言の世論の意志表示か。欧米なら無理な解散として、政権が攻撃されるが、日本では安倍の責任が追及されることもなく、民主政治の基盤の弱さが、改めて浮き彫りになった。

しかし、細かく見ると、これまでの選挙とかなり違う特色もある。その特長を見る。

①自民・公明は現状維持だったが、その大きな理由は、突然の解散で、野党の準備が整はなかった。争点を全く見通し困難なアベノミクス・経済一本に絞った。前回から、僅か2年の選挙で、有権者にまだ前回の記憶があったなど。これまでの選挙では一年生議員は約2/3が落選していた。しかし今回は100人以上の一年生議員がほぼ全員当選して、自公で2/3の議席を守ることに成功した。つまり安倍の思惑通りの選挙結果となった。

この勝利により、安倍は来年9月の自民党総裁選での再選を確実にし、与党は来年4月の統一地方選、再来年夏の参院選での勝利にも大きく近付いた。

②民主党は73人と10人程度増えたが、むしろ惨敗といえる。前回の衆院選では、民主党は200人近く落選しており、従来なら同情票もあって、半数ぐらいがカムバックするのが通例だった。しかし今回の元職の当選は10人ぐらい。一つは準備不足で、全小選挙区に候補を立てられず、各党が比例区で議席を伸ばしたのに、伸びなかった。また海江田党首がこの二年間、復活のため何の手も打たなかったのが大きい。そして海江田自身も落選した。

③分裂した維新の党は-1の41人当選でむしろ善戦した。一年生議員が頑張ったこと、大阪・関西で前回の余熱があったこと、石原慎太郎が出て江田が入ったことで、党内がすっきりしたこと――などが理由だ。
④共産党は8議席から21議席となり3倍増に躍進した。反自民の受け皿となったこと、全小選挙区に候補を立て、比例区での集票に成功したのが理由。小選挙区での当選が一人なのに、比例区20人当選が目立つ。

⑤維新から分裂した次世代の党は17人の現職が平沼党首、園田前幹事長2人の当選だけで惨敗した。比例区では一人も当選せず、石原慎太郎や都知事選で60万票とった田母神も東京13区で4位の惨敗だった。また分裂・消滅したみんなの党、渡辺喜美も落選した。

⑥もう一つ従来の選挙と違うのは、これまで6対4で野党に入れていた無党派層が、今回は6対4で自民党に投票したことが、出口調査で解っている。争点が経済だけであったこと、棄権票が多かったためとみられる。

――以上、自・公与党で325議席と、憲法改正に必要な2/3議席(316議席)を上回ったものの、自民補完勢力の次世代の党が潰滅したため、公明党の態度次第では改憲勢力が2/3に達しないことになった。

ただ棄権票が多く、結局、自公に圧倒的多数を取らせたことなど、日本の民主政治のぜい弱さが出ており、長いものに巻かれろの島国根性が目立つ。ヨーロッパやアメリカの戦い取った民主主義に比べ、まだマッカーサーの“13歳の日本人”にとどまっているようだ。

ただ安倍政権も、沖縄での4敗、原発・円安・石油安の経済不安定など、不確定要素も強く、あと4年間安体かどうかは、まだ解らない。

例会における討議

ついで、さる12月3日(水)、大阪大学東京オフィスで行われた第7回編集委員会における討議が、野村光司(「日本国憲法が求める国の形」起草者)氏から次のように報告された。

第7回編集委員会では第22条(居住・移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由)に関連して北朝鮮より帰国した拉致被害者の扱いが問題にされた。パンフレットにこの問題はこう書かれている。

「国家は外国人の入国を認めるかどうかの自由を有するが、出国したり、国籍を棄てたりする自由は本条の基本的人権として保障される。拉致被害者が日本に一時帰国した後『本人の意思に拘わらず、かの地に赴くことが認められない』のは憲法違反である。また世界人権宣言は『何人も自国に帰る権利を有する』としており、拉致被害者は特殊の境遇にあったことに鑑み、日本と拉致国との間を自由に往来する権利は確保されねばならない。拉致被害者及びかの地に居るその家族が、拉致の事実を申し出れば日本にほぼ強制的に連行されるとなると、拉致を申し出ることが出来なくなることも考慮すべきである。」

この記述に対して、帰国者がすでに日本で落ち着いているのだから、いまさら書く必要はないとの意見が会議では強く、会議終了後の日々にも議論は続けられ、拉致問題では「まず原状回復し、自由な往来はそれ以後の話だ」「両国政府間の約束を破ったのは悪いが、本人たちの真意をいま確認できないので、あえて取り上げなくてもよい」「原発事故による一律の強制避難・移住問題の方が重大で、拉致問題にパンフの紙面を割かなくてよい」などの意見があった。

しかし、拉致問題で小泉首相の引連れた使節団が北政府と約束したことは、5人の拉致被害者を日本に一時的に帰国させる、こちらの家族と話し合いをさせ、北にいる家族と話しして、どちらに住むかを決めるということだった。その約束を日本政府が破った。また憲法22条など知ったことかという安倍官房副長官の意志が働いた。現実の生身の人間の意思はどうでもよい、国家権力が決めたらその通りに動くべきだ、というのだ。憲法・人権・政府間の約束を無視し、圧力と制裁にむかったのが当時の安倍官房副長官で、これによって彼は小泉首相の後継者に引立てられ、その後、日本の政治が急速に右傾化するのだが、この記述の扱いは例会の意見に任せたい。

野村氏のこの報告に対しては、「本人たちがすでに落ち着いているのだから、この記述は必要ない」「国家犯罪だから原状回復が先決だ。今から、わざわざもちだす必要はない」との批判的な意見が出された。

ついで12月14日に投票された総選挙をめぐる論議があり、選挙制度については、パンフレットに第43条(両議院の組織)の関連で次のように書かれている。

小選挙区制も比例代表制も違憲

憲法は政党について規定していない。政党の結成自体は憲法21条(結社の自由)によって自由であるが、政党内部の規定によって憲法の規定なり精神を否定することはできない。本条43条では、国会は『①全国民を代表する、②選挙された議員でこれを組織する』と規定する。

小選挙区制は、全国民を代表する議員を選ぶのではなく、国会議員の殆どすべてを多数党員で占め、少数党を排除するため導入されたものと理解され、違憲と言わざるを得ない。投票者が、全国区千人以上の候補者相互の中から適任者を判定して直接選ぶのが困難であるとすれば、選挙区から数人の議員を直接選ぶ中選挙区制とすべきであろう。

現在の政党名簿にもとづく比例代表制とは、憲法に規定がない政党の選任に対する信任投票であり、憲法の求める『全国民を代表する、(国民に)選挙された議員』とは言い得ないので違憲である。主権者国民が直接指名した候補者のみが国会議員となるべきである。」

この立場からも、戦後最低の投票率であったことからも、選挙結果が批判された。また、「選挙権は公権であるから義務も伴う。これを行使しなかったものに罰則を設けるべきだ」との意見が出された。他方で、選挙制度改革には時間がかかるので、今回「選挙区毎に自民党に対する野党候補の統一を呼びかけた」団体の例が当面の取り組みとして紹介された。また上位2候補の決選投票に持ち込むヨーロッパの2回投票制という合理的な仕組みも披露された。今回の衆議院解散が第69条(衆議院の内閣不信任と解散又は総辞職)違反との指摘も当然出された。

ついで編集委員会が成文化した、パンフレット冒頭につける「ごあいさつ」の文案が配られた。この文案については対象が護憲派になっているが、それで良いのかという意見が出された。

事務局からは、「日本国憲法が求める国の形」(パンフレット第2次案)の扱いについて、統一地方選挙以前に発表できるよう第8回編集委員会で作業をすすめ、パンフレット発表の具体的な段取りを1月の例会で提案したい、とされた。

なお、パンフについては「『QとA』(問答)形式にするのが適切」との意見、「若者には文章が難解だ、対象をどこに置いているのか」との質問もあった。これに対して、事務局からは「パンフ配付の対象はまずマスコミ、政党、学会などに置き、運動のすすむ過程で、中高校生や労働組合あての記述を分かりやすくした版を用意したい」との答弁があった。
パンフの内容を箇条書きにした次の試案も事務局から示された。

違憲国政の例示(案)

(「パンフレット」記載の一部)

2014年12月5日(MN)

第1章 天皇

皇室典範「男系男子」は違憲にして男尊女卑の根本規定(14条)

首相の7条解散権、二重、三重の違憲(4条、41条、65条、69条)

第2章 戦争の放棄

外国に対する武力行使(集団的自衛権論)は明白な違憲(前文1項、9条)

自衛隊は戦力であって違憲(前文2項、9条)

第3章 国民の権利及び義務

国籍によって人権は否定されない(10条、97条)

ヘイトスピーチの放任は違憲(前文2項、14条、98条2項)

庶民にも政治家及び官僚の罷免(弾劾)の権利(15条1項)

すべての行政指導は違憲(15条2項)

宗教団体の権力獲得を目指した政治活動は違憲(20条1項)

首相らの靖国参拝は明白な違憲、首相の伊勢神宮参拝も(前文3項、20条3項)

公務員の身分を隠した政治活動は合憲(21条)

夫婦別姓は認める(24条2項、13条)

教育現場の「君が代」強制は違憲、違法(26条、前文1項)

勤労の権利は労働者とその家族の生活を継続的に維持する権利(25条、27条)

死刑の廃止(36条)

第4章 国会

小選挙区制違憲、比例代表選挙制、ともに違憲(43条)

政党助成金は憲法で認めず、個々の議員に豊かな立法事務費を(49条)

党議拘束は違憲(51条)

第5章 内閣

内閣から法案を提出できない(41条、65条、73条1号)

行政権は合議体、内閣にあり、首相ではない(65条)

自衛官等「武官」は大臣になれない(66条)

第6章 司法

「違憲状態」判決は許されない(76条3項)

最高裁裁判官国民審査で、審査する意志がない者は参加しない(80条)

裁判員は憲法に根拠なく認められない(80条)

「統治行為論」は許されない(81条)

第8章 地方自治

「自治の本旨」で政府の指導、干渉を許さない(92条)

外国人居住者にも地方参政権はある(93条2項、97条)

特定地方に関する法律で住民投票を経ないのは無効(95条)

沖縄自治特別法こそ地方特別法が必要

第9章 改正

国会議員の憲法改正論議を阻止できない(96条)

その他の公務員はすべて現行憲法を尊重し擁護し、改正を論議できない(99条)

第10章 最高法規

領土問題は国際法に従う政治意思を持てばすべて解決できる(98条2項)

               次の例会・勉強会のご案内

日時 1月25日(日) 14:00~16:30

場所   東京・神田  学士会館地下1階  北海道大学連絡室

(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)

報告   政治の現況について   岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット)」の発表について

野村光司(「パンフレット」起草者)

会計報告および今後の日程について   事務局

討議  報告および提案への質疑、意見

参加費  無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三

電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp

なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。

完全護憲の会」入会申込書            No.

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完全護憲の会ニュース No.12 2014年12月10日

さる11月23日(日)、神保町・学士会館地下1階京都大学連絡室で会合、参加者12名。入会者 計 20名。

まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏 から政治の現況について次のような報告があった。

政治現況報告(要旨)

3週間前、11月2日の会議の時には解散・総選挙の話は全くなかった。しかし20日もたたないのに解散、12月2日公示、14日投票で選挙戦に入っている。昔、川島正次郎自民党副総裁が、政界というものは「ピーカン照りと思っていると、一天にわかにかき曇り、ドシャ降りの大雨になる。何があってもおかしくない」と言っていたが、その通りの展開になった。

安倍首相は、北京でのASEAN首脳会議に9日出発したが、その前に自民党幹部と公明党山口委員長に、帰国までに選挙準備を進めるよう、言い残した。夏すぎに行った党の全国調査の結果が、自民党にとって非常に良かったからだ。

即解散の理由は①野党の準備がない今なら、自民が圧勝する②4月の8%消費税の影響が予想より大きく、半年のGDPはマイナスで、放置すればアベノミクスが危機を迎える③小渕、松島と目玉の女性閣僚が選挙違反で辞任、さらに他閣僚にも飛び火して、防戦一方、先細りになる④10%への消費税増税を2017年4月まで延期、これを争点にできる⑤例え、現有議席(自民295、公明31)326議席を30~40議席減でも多数を維持でき、今後4年間政権を担える、来年の総裁選にも勝てる――などだ。

安倍首相は外遊から帰国後、21日に臨時国会の会期を10日も残して予定通り解散、自ら“アベノミクス解散”と称し、争点も「アベノミクス経済政策に国民の信任を得るため」と強論した。経済を争点にすれば勝敗がわかりにくく、株高など環境も悪くない。ただ経済は生きもの、先行きは誰にもわからない。隠れ簑(みの)には、こんな便利なものはない。

ただ国民にとって選挙はこの2年の安倍政治の総括だ。争点は①反平和・反護憲・反自由の逆コース政策、特に集団的自衛権と特定秘密保護法の可否②脱原発、再稼働を認めるか③沖縄選挙と基地問題④中国・韓国との東アジア政策⑤アベノミクスによる格差の拡大――にある。

安倍首相・自民党による党利党略解散への国民の反応は?A紙によると解散理由に納得せずが65%あり、内閣支持率も39%、不支持率40%と互角である。

ただ政党支持率は自民が37%、民主が13%と圧倒的。しかし、選挙では1年生議員の2/3が落選とのジンクスがあり、保革伯仲を望む人が40%もあって、結果はフタを開けてみるまで解らない。それに民主・維新を中心とする野党の選挙協力も進んでいるので、安倍の思惑通りになるか、混迷の時代の方向を決める重大な選挙となりそうだ。

 

パンフレット第2次案の討議経過

 

ついで支持者から会に寄せられたブログ「現時点で衆議院解散は憲法上重大な問題」(郷原信郎弁護士)のコピーが参考資料として配られた後、さる11月12日(水)に行われた第6回編集委員会における討議の模様が事務局から次のように報告された。

1)例会で出された(第1章天皇関係)で、皇族の高円宮典子さんに今回の結婚による皇籍離脱に際して1億675万円が支払われたのは黙視できない特権である、という意見については、天皇関係で出される批判の一つとして、同感を禁じえないが、現憲法全体の擁護によって反動攻勢に対峙するという大きな目的から、適法であるかぎり容認することとした。

2)第20条(信教の自由)関係で、宗教団体による平和擁護その他の政治活動をめぐって出された例会での意見については、パンフ原案に、憲法によって「宗教団体の政治活動一般が否定されているわけではない」と記載しており、ただ「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」という憲法条文は厳格に守られなければならない、とした。

3)第66条(内閣の組織)の第2号「国務大臣は文民でなければならない」関連で、パンフ案の「高級軍人は戦争を好む」という記述をめぐり、現自衛隊幹部の間に憲法擁護の動きがあること、アメリカのパウエル参謀総長がイラク戦争に慎重であったことなどから例会で出された異論については、「傾向にある」と付け加えて表現を和らげることとした。

4)第65条(行政権)の「行政権は、内閣に属する」の関連で、パンフ案の「行政権は合議体である内閣にあり……その内閣の下に首相がある」の記述に対する批判に対しては、「国会は国権の最高機関であり、首相はその指名によって始めてその地位を得る下級の『使用人』である。使用人が主人であり国権の最高機関の全員を、ほしいままに罷免できるなど条理の上からあり得ない」(パンフ<第7条>関係の記述)の立場から、「内閣の下に首相がある」との記述は再確認された。

おおむね以上のような報告の後、野村光司(日本国憲法が求める国の形―「パンフレット第2次案」起草者)氏から国政の現況と憲法のかかわりについて次のような解説があった。

1)女性閣僚の中でも稲田朋美、高市早苗両氏などは夫婦別姓に反対している。これは24条(両性の平等)に反して違憲であり、夫婦別姓についての記述をパンフ原案に加えた。こうしたことでパンフレットの発表が遅れることになるが、違憲の言動が目立っているので遅延もやむをえないと思う。

2)現内閣が提唱している地方創生は、地方独自の政策提案に資金を優先的に配分するという地方陳情を促すものになっており、第8章で定められた「地方自治の本旨」に反している。

3)最近、英国のスコットランド地方やスペインのカタロニア自治州で独立の動きがあった。沖縄でも第95条(特別法の住民投票)に基づき、住民投票によって特別法を制定すべきであろう。

以上の提起をめぐって次のような意見が出された。

「パンフレットは安倍が政権にあるうちに出したい。発表後に必要な追加すればよい」

「パンフ発行後に出される批判については、引き続き例会で討議する必要がある」

「早くまとめ、早く出すのがいい」

「来年の4月の統一地方選挙以前に出すべきだ」

「となると来年1月の例会には原案を例会に提出しなければならない」

「12月3日の編集委員会でパンフ発行の構想を、体裁や頁数、部数を含めて検討すべきだ」

「資料として、現憲法条文を入れるか、旧大日本帝国憲法、五日市憲法、鈴木安蔵氏らによる『憲法草案要綱』などを入れるかどうか」

「パンフ発行に際してのあいさつ文も必要だろう」

以上の討議でパンフレット発行の手順案を12月3日の編集委員会で取りまとめることとされた。

ついでパンフ第2次案の記述に対する意見として

「第10条(国民の要件)で記述されている韓国・朝鮮人の参政権については、93条(地方公共団体における直接選挙)に移すべきではないか」

「第20条(信教の自由)関係で、地方公務員の宗教行事参加を容認しているのには問題がある」

「第22条(職業選択の自由)関連でパンフ原案に『(営業目的で)組合、会社を組織し』とあるのは、労働組合と間違われやすいので、協同組合とせよ」

「第36条(残虐刑の廃止)関連で、パンフ原案は死刑を、残虐な刑であることを理由に、廃止するよう求めているが、死刑の廃止は誤審の虞も大きな理由だ」

「この頃、条約の順守が憲法に勝るとの意見をよく聞かされるが、どうなのか」

「第98条の2号で『条約及び……国際法規は……誠実に順守することを必要とする』とあるものの、憲法が最高法規であることに変わりはない。」

以上のような討議の後、これら発言の趣旨を12月3日(水)の第7回編集委員会で討議し、パンフ原案に生かすことになった。

また来年1月の例会では会計報告が予定されており、そのための会計監査員に宮崎国雄氏が拍手によって承認された。

               次の例会・勉強会のご案内

日時 12月21日(日) 14:00~16:30

場所   東京・神田  学士会館地下1階  北海道大学連絡室

(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)

報告   政治の現況について   岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット第2次案)」の討議経過

野村光司(「パンフレット」起草者)

今後の日程   事務局

討議  報告および提案への質疑、意見

次の例会について  その他

参加費  無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三

電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp

 なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。

完全護憲の会ニュース No.11 2014年11月15日

さる11月2日(日)、神保町・学士会館地下1階京都大学連絡室で会合、参加者12名。入会者 計 20名。

まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏 から政治の現況について次のような報告があった。

政治現況報告(要旨)

臨時国会が開かれて、まだ1ヵ月しか経っていないのに、9月2日に改造したばかりの安倍内閣で目玉の閣僚2人が同日辞任した。その1人は小渕優子経済産業相で、自民党が日本のサッチャーとして、初の女性総理を期待していたホープだった。小渕はまず第1に毛並みがいい。元総理の娘で、若いし、美人で清潔感がある。それは自民党長老たちの暗黙の了解で、優遇していた。まだ40歳になったばかりで、二度目の入閣。しかも経産相という重要ポストで、それが後援会の観劇会で説明できない収支。公選法違反を視野に検察が地元後援会や事務局を家宅捜索した。

小渕の選挙区は群馬5区で山間の過疎地、中之条。中曽根、福田、の大物2人に挟まれて、親父の小渕自身、いつも最下位スレスレ当選だった。

その中之条町長が昔からの選挙参謀で、小渕も金庫番を含めて、全て任せていたのが、仇となった。後援会の観劇会も会費12,000円といっても、参加費は2000円。あとはバス代、おみやげ代まで、全て事務所の負担だ。自民党の後援会は、みな大なり小なり、このような形で地元と結びついている。捜査の進展では辞任もありうる。

もう一人の松島みどり法相の方は全くとばっちりでの辞任だった。夏祭に似顔絵入りのうちわを配り、そこに堂々と松島法相と書いたのが命取りになった。菅官房長官に呼ばれ同時辞任を説得されても、最後まで抵抗したようだ。

しかし安倍は第一次内閣の時の5人辞任のドミノを警戒、同時を強要したようだ。決め手は法相という法律の番人であることだった。引き続き、宮沢経産相(後任)、江渡防衛相、西川農相、有村女性相にも疑惑があり、野党はなお追及の手をゆるめていない。その影響で会期は20日残る程度なのに法案は何も成立していない。年内に決めるべき来年10月での消費税10%の最重要課題もそのあおりで決定延期やむなしとの見方も強まっている。

このように国会は何も動かなかったが、10月14日に特定秘密保護法の12月10日施行を閣議決定、外交・防衛・スパイ・テロを秘密扱いとすることになった。さらに10月9日には米国と日米防衛指針(ガイドライン)改訂の中間報告を採用。これまで極東・東アジアを中心とした専主防衛という地域を全世界に拡大、世界のどこでも米軍と共同歩調を取れる体制を固めた。先に閣議決定した集団的自衛権発動の下準備とも言える。

パンフレット第2次案の討議

ついで野村光司(日本国憲法が求める国の形―「パンフレット第2次案」起草者)氏から国政の現況と憲法のかかわりについて次のような報告があった。

1.政権は「集団的自衛権」の閣議決定を行い、その立法化をめざしている。だが国外

にある日本人の救援など外国での紛争に対する自衛隊戦力の行使や、それによる威嚇は、憲法第9条第1項で永久に禁止されており、また第2項第2文の「国の交戦権は認めない」とする以上、自衛隊の行動は違憲、無効のものであり、その交戦費用は責任者自らが負担しなければならず、敵を殺傷した場合は刑法の殺人、傷害の罪を負わねばならず、これで戦死することがあっても何らの栄誉も与えられず、その補償も違憲・違法の行為を命じた者で負担しなければならない。

2.首相は「女性の輝く社会づくり」を提案しているが、日本における女性の社会的位

置は142ヵ国中104位と世界的に見て最下位に属している。この歪みの是正はアファマーテイブ アクション(差別修正措置)によるよりも、現実に起きている性差別の根源を追及し、責任者を厳しく罰することで両性の平等を実現するのが、第24条(両性の平等)の趣旨である。

皇位の継承を男系の男子に限っている現皇室典範は違憲である。現女性閣僚に夫婦別姓に反対の論者がいるが、問題だ。従軍慰安婦として女性を軍需品扱いにしたことについては、その反省を世界に示さなければならない。

3)地方自治(第8章)の本旨に基づき、地方公共団体の機能に国は介入してはならないし、地理的に離れ、特別な歴史・経済・文化を持つ沖縄には、大幅な自治を認めた特別法を考えるべきだ。

大略以上のよう報告の後、要旨、以下のような討議がおこなわれた。

「憲法9条の前を違憲の自衛隊が闊歩しているのは見ていられない。憲法を現実に活かすべきだ。わが国は大統領制なのか君主制なのか、1項目を入れて明らかにしたらどうか」

「そのことについては、憲法前文で『主権が国民にあることを宣言』すると、明確に規定されている」

「第20条(信教の自由)の関連で、宗教団体を含めた様々な意向が政治に反映される必要がある。ガンジーはヒンドゥー教徒としてインド独立のために闘った。宗教団体の政治活動を否定すべきではない」

「この第20条によって『宗教団体の政治活動一般が否定されているわけではない』ことはパンフ原案でも認めている。ただ、宗教が政治と一体化することの弊害と危険性は日本歴史の教訓として受け止めなければならない」

「たとえば仏教団体が過去の反省に立って平和活動をしているのは当然と思う。政治活動とは何を指すのか」

「人事院規則に政治的行為についてくわしい定義があり、これにより公務員の政治活動は厳しく制約されている。もっとも現行の人事院規則は、憲法と法律の定めを著しく超えて公務員の政治活動を禁止する不当なものであり、違憲と言わざるを得ない」

「公明党の活動は何度も議論されており、そのうえですでに公認されている」

「だが自民党はときどき創価学会池田会長の国会喚問をちらつかせて公明党を脅しているのは、公明党が創価学会とつながっていると踏んでいるからではないか」

「宗教団体が人心を和ましているのは認める。ただ、それが国政にかかわる場合には慎重さが求められる。欧米諸国の憲法で宗教団体の政治活動については日本の憲法のように詳しく取り上げられてはいない。日本の場合、戦前の国家神道の弊害が身に染みているからだ」

「第5章(内閣)の第66条『国務大臣は文民でなければならない』の関連で、パンフ案文に『高級軍人は戦争を好む』とあるが、現自衛隊幹部は田母神元航空幕僚長など一部を除き護憲の傾向にあるといわれており、表現を和らげるか、説明を加える必要があろう」

「ご指摘にしたがい表現を和らげよう」

「同じ章の第65条『行政権は、内閣に属する』の関連で、パンフには『行政権は合議体である内閣にあり……その内閣の下に首相がある』とあるが、『内閣の下に』は言い過ぎではないか」

「憲法は首相に大臣の任免権を認めているが、組閣後は合議体である閣議の決定に首相も従わねばならない。『私が国政の最高責任者』のような現首相の発言はもっての外の越権である」

「学校では立法、司法、行政の3権分立と教わっている。3権は平等ではないのか」

「日本国憲法は第4章(国会)で『国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である』と定めている。国権の中で最上位にあるのは立法機関である国会であり、行政機関である内閣、司法機関である裁判所はその下位にある」

「大日本帝国憲法では第38条で『両議院は政府の提出する法律案を議決し及各々法律案を提出することを得』とあり、法案提出の主体を政府に置いているが、現憲法では、条約の締結について国会の承認を経ること、および予算案を国会に提出することのみが、内閣の議案提出職務として記載されているに過ぎず、内閣に立法権限はない」

以上のような討議の後、これら発言の趣旨を11月12日(水)の第6回編集委員会でパンフレット案文に取り入れることとされた。

次の例会・勉強会のご案内

日時 11月23日(日) 14:00~16:30

場所 東京・神田 学士会館地下1階 京都大学連絡室

(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)

報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット第3次案)」の討議経過

野村光司(「パンフレット」起草者)

今後の日程 事務局

討議 報告および提案への質疑、意見

次の例会について その他

参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三

電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。

完全護憲の会ニュース No.10 2014年10月15日

さる9月28日(日)、神保町・学士会館地下1階京都大学連絡室で会合、参加者13名。入会者 計 19名。

まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏から政治の現況について次のような報告があった。

政治現況報告(要旨)

安倍内閣は9月3日(水)内閣発足後、1年10ヵ月で初の内閣改造を行った。通常は1年で改造だが、民主党から政権を奪取したあと、外交問題や消費税8%増税などで経済も落ち着かず、一次内閣で2年近く過ごしてしまった。この改造は、地方創生と女性活用を目玉ということで、地方創生担当相には石破幹事長、女性大臣には小泉第一次内閣と同じ最多の五人を登用した。しかし真の狙いは来年4月の統一地方選に勝ち、来年9月の自民党総裁選で安倍再選を果たすことにある。

そのため最大のライバルとなるとみられる石破氏を閣内に取り込み、集団的自衛権法制の担当大臣にしようと画策したが、石破氏が安保への姿勢が異なるとして、断られたため、急拠、地方担当相を提示、石破氏も一年間無職では、党内の求心力がなくなるのを恐れ、入閣を最終的に了承した。また同じように、ハト派代表として、総裁選に出る可能性のある谷垣法務大臣も、党幹事長に就任を要請し、内閣・党の共同責任体制の形で取り込んだ。

しかし、内閣の中核、麻生財務、岸田外務、下村文部、菅官房、甘利経済、公明の太田国交の主要閣僚はそのまま留任させたので、基本姿勢は変わらない。

一方、女性は党総務会長の高市早苗を総務相、松島みどりを法務、山谷えり子を国家公安、有村治子を女性活躍相と、いずれも党内の右派“タカ女”を登用した。また党側でも行政改革相だった稲田朋美を政調会長に起用した。秘密保護法案、集団的自衛権関連法案など、安倍の戦前復活路線の先頭に立つことになる。そのほか二度目入閣の小淵優子は経済産業相で、原子力発電の再稼働を担当する。

ただ表面は9月29日召集した臨時国会を、地方創生と女性登用の二つにしぼって対応、そのまま地方選になだれ込むという作戦だ。従って本来の目標である秘密保護法や集団的自衛権の法案審議は地方選後の来年の通常国会後半に持ち越すハラだ。その他、年内の最大の焦点である消費税10%の再値上げでは、慎重に判断するとしており、現在のような円安や停滞が続けば、これは先へ延期する可能性が強い。

また福島や沖縄知事選、中国、韓国、北朝鮮など東アジアの外交も年内一つのヤマ場を迎える。とりあえずは11月北京でのAPEC会議で、日中、日韓首脳会議が行われるか注目される。

国内的には来春の地方選まで、野党も含め大きな動きはないとみられる。

9月28日例会の討議

本例会には野村光司(日本国憲法が求める国の形―「パンフレット案」起草者)が会議が重なって欠席したため、「パンフレット案」の条項に代案を提出した草野、加藤両氏から、さる9月3日、虎の門・阪大東京オフィス会議室で行われた第4回編集委員会の報告が、それぞれ関係条項について行われた。

草野氏は別途配付済みの「8・6編集会議時間不足で討議できなかった条項についての疑問・意見」(2014/8/9/)について、加藤氏は「第25条関係 生活環境の改善」(2014/9/3)について、編集委員会での討議の模様を説明し、報告した。

これらの各条項は討議の結果、いずれの代案も大筋で取り入れられることになり、その成果は、「パンフレット案」に収められることになった。

この報告の後、要旨、以下のような討議がおこなわれた。

「第1章天皇の第1条から8条までは不用だ。天皇は伊勢神宮の神主にでもなればよい」「現憲法そのものが保守の側から改廃されようとしている。この貴重な条項に満ちている民主憲法全体を維持するためには、実害のない天皇条項は容認してもよいのではないか。『この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく』と、現憲法を擁護しながら、本条項を廃止する道も開かれている」「今の天皇は人気がある。天皇も皇后も平和主義者のようだ」

「ヒトラーも選挙で選ばれながら独裁者になった。今の日本も独裁に向うのではないか」

「戦後の民主教育がある程度普及しており、選挙のルールもまだ残っている。これが最後の保障になろう」「憲法前文の理想は現実に追い抜かれたと言う人もいるが、憲法は現実に追随するだけでなく、崇高な理想を掲げてよいと思う」

「内需は国民総生産の80%を占めている。円安による輸出の一方的な重視は誤りだ。消費税値上げによる5兆円の増収分のうち社会保障に回されているのは1割だけで、あとは企業向けだ。円安と消費税による物価の値上げには買い控えで対抗したい」「私たち中小企業は買い控えされ売れ行きが落ちると首を締められる。労働法制改悪による非正規労働や低賃金労働者の拡大こそ問題だ」

「私は公務員として仕事に追われ憲法について考えないで過ごして来た。今後、人権について幸福について考えてみたい」

「完全護憲の会という名称は戦略的に入口で排除している感じがある。『護憲の会』だけでよいのではないか。マルクス主義の現状は何ともだらしない。動態経済を追及すべきだろう」

7月例会の際に配付された「日本国憲法が求める国の形―パンフレット案」とその後提起された代案については特に疑問、意見はなく、7月以降の討議を織り込んだ「パンフレット第2次案」を次の例会までに配付し、さらに検討してもらうことになった。

第5回 編集委員会の論議

第5回編集委員会が10月8日、虎の門・阪大東京オフィスの会議室で、午後2時30分から6時30分まで行われた。出席者は野村、草野、大西、加藤、福田。

討議は「日本国憲法が求める国の形(パンフレット案)」7月27日付とその後提起された代案を巡って行われ、まず第9条(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)については、代案のなかで在日米軍が「明白な違憲ではない」根拠に最高裁判決(昭34.12.16)が挙げられているが、この砂川判決については最高裁田中耕太郎長官が裁判情報を事前に米側に伝えていたことが判明している以上、この疑義のある判決に依拠できないとして、関係する3段落の削除を決めた。

ついで第24条(家庭生活における個人の尊厳と両性の合意)関係では、話題の「夫婦別姓を認める」を挿入することとした。

第25条(生存権、国の社会的使命)関係では、地震や噴火などの自然災害や自動車や放射能などの人為災害の脅威を科学的に計量し、被害量の大きいものから順次、制御、廃棄に努めるべきであろうとの意見などがだされた後、「文化的な最低限度の生活」への草野代案の併記と「生活環境の改善」につての加藤代案の追加が行われた。

第96条(改正の手続、その公布)関連では、「国民投票法」における公務員や最低投票率の扱いをめぐって、安倍首相の「河野談話」継承の言明に見られるように、現政権の超反動政策は国際世論の前にじょじょに後退しており、憲法改正まで進むことは不可能と思われるので、この項目で論議を深める必要はないとする意見と、迫りくる憲法改正の危険を直視する必要があるとの意見の間で論議が交わされ、意見は一致しなかったが、とりあえず「国民投票法」をめぐる草野代案は取り下げることとした。

主として以上のような論議をへて、「パンフレット第2次案」を決定し、ニュース10号とともに、これを読者に配信、配送し、会員、読者からの意見を求めることとなった。

次の例会・勉強会のご案内

日時 11月 2日(日) 14:00~16:30

場所 東京・神田 学士会館地下1階 京都大学連絡室

(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)

報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット第2次案)」の討議経過

野村光司(「パンフレット」起草者)

今後の日程 事務局

討議 報告および提案への質疑、意見

次の例会について その他

参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三

電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp

なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。

本ニュースには「日本国憲法が求める国の形―パンフレット第2次案」を添付します。同案に対する意見を次の例会、その他でお聞かせ下さい。

2014年10月10日

完全護憲の会ニュース No.9 2014年09月10日

さる8月20日(日)、虎の門・大阪大学東京オフィス会議室で会合、参加者13名。入会者 計 19名。

まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏から政治の現況について次のような報告があった。

政治現況報告(要旨)

防衛庁幹部が安倍首相の解釈改憲による集団的自衛権よりも、国連平和維持軍への参加を重視しているという背景について説明する。

現実の国連平和維持軍というのは、イラク戦争の折のように、国連における米国の要請に対して、各国が個別に参加し、多国籍軍を形成するということだった。日本もブッシュ大統領の小泉首相への要請、またアーミテージ国務次官補の「旗を立てろ」「戦地に靴で立て」などのアジに外務省が参加を強く希望、最終的に小泉首相が決断して、自衛隊のイラク派兵が決りまった。その第一の理由は米国の「イラクは核をもっている」という挑発によるものだったが、後にこれが虚偽の情報とわかり、英国でも大問題となって、今でも真相究明が行われている。日本は小泉の責任は一切追及されていない。

防衛庁は、基本的に自衛隊の多国籍軍参加に消極的だったが、小泉の要請に最大限の安全策をとった。専主防衛を基本とし、外国へ自衛隊が出ることに戦後教育を受けた幹部が慎重だったからだ。

そこで①自衛隊は後方支援とし、一切戦闘地域に出ない②役割はイラクの民生支援、現地の土木建設に限る。重火器は持たず、最小限の自衛、大規模攻撃には外国軍の援助を求める③多国籍軍の仕事は連合軍の輸送、空・陸・海の補給活動のみとする――などとし、交戦は禁ずるとした。全く苦しい妥協の産物で、陣地の回りに塹壕を掘り、鉄条網を張って、穴熊・もぐら戦術をとった。自衛隊が外国で戦うことには反対が強く、その結果、隊員に一人の戦死者も出さなかった。

戦後の民主(平和)教育を受けた幹部には、専主防衛は絶対的なものであり、安倍の今回の内閣による解釈改憲、集団的自衛権の行使には、小手先の手段、ドサクサまぎれの卑怯な手法との批判が強い。これでは、いつまでたっても自衛隊は表に出られぬ、影の軍隊に留まってしまう。自衛隊はあくまで正面・表玄関から日本の防衛を考えるべきだとし、国会および国民の支持を得て、安全保障基本法、日本防衛基本法を策定し、法に基づく自衛隊にする。これは防衛庁長官を歴任した石波自民党幹事長の考えでもある。安倍首相は来秋の総裁選のライバルとなる石波氏を内閣改造で、新設の集団的自衛権担当大臣に取り込もうとしたが、石波氏は集団的自衛権での安倍首相との考え方がちがうと正式に要請を断った。この問題は来年の通常国会で本格的な論戦が始まる。

8月20日例会の討議

「完全護憲の会」設立趣意書を決定

ついで「完全護憲の会」設立趣意書(別紙添付)について野村光司氏(起草者)から、ながらく案のままに止まっていた同案を決定したいと提案され、討議に移り、「完全護憲」の名称について、最初から間口を狭くしている感じがするので「護憲の会」でよいのではないか、との意見があり、これに対して後発のわれわれの会の特色を出すためには「完全」をつける必要がある、また規約案には略称「護憲の会」とあるので、「完全」で差し障りのある場合は略称を使うことができるなどの意見があり、とりあえず試行ということで原案どうり採択された。

「第2章 戦争の放棄」――自衛隊の転換で論議

そのあと第3回編集委員会(8月6日)で行われた27条(勤労の権利その他)と96条(憲法改正の手続き、その他)をめぐる――草野編集委員が提言していた(ニュース8号に添付)――討議と、逐条審議の模様が野村氏から報告された。

逐条審議では9条(戦争の放棄、その他)まで進み、その2項(戦力)に関連して現自衛隊の違憲を編集委員会の全員で確認、その転換の具体策の討議が行われた。

例会ではその報告を受けて、引き続き9条2項をめぐる論議が行われ――

「憲法は守りたい、しかし自衛隊は残したいというのが今の一般的な世論だ。将来自衛隊を廃止するとしても、当面は自衛隊による国内外の貢献を維持しながら、次第に縮小すべきだ。そうでなければ護憲運動はつぶれる」「戦争放棄の憲法と自衛隊の存在には矛盾を感じるが、自衛隊の災害救助活動は感謝されており、雇用面でも逐次、国家警察に含めて行くべきではないか」「自衛隊員自身が平和部隊としての役割を希望している。災害救助に次第にシフト行くなど、自衛隊の転換に夢を描くことが必要だ」などの意見が出され、討議はさらに編集委員会で煮詰めることとされた。

なお岡部氏から、参加者の質問に答え、自衛隊の一部幹部に、国連軍を創設して日本の防衛を任せ、これに自衛隊は参加できないが、自衛隊員の自発的な参加を認めるという構想がある、との説明があった。

この討議に関係する資料として、「パンフレット案(9条関係)」「9条2項関係」(いずれも別紙添付)が席上配付された。

第4回 編集委員会の論議

第4回編集委員会が9月3日、虎の門・阪大東京オフィスの会議室で、編集委員の全員が出席し、午後2時から7時まで開かれた。

討議は「日本国憲法が求める国の形(パンフレット案)」7月27日付――原案は「日本国憲法が求める政治(全)」4月10日発信および「日本国憲法が求める国政(中間案・追加案)」5月19日発信―― に基づいて要旨、次のように行われた。

(第20条関係)

宗教団体の政治活動、選挙活動についての草野提言(「未討議部分の疑問・意見(草野)」別紙添付)をめぐって論議し、宗教団体の政治活動をめぐる違憲と合憲をどこで線引きするかを明確にして「パンフレット案」に記述する。

(第21条関係)

特定秘密保護法は憲法違反と明記する。

勤務時間外に自己の信念によって行う政治活動などには大幅な自由が与えられねばならず、現人事院規則は憲法の定めを著しく超えて公務員の政治的行為を禁止するもので違憲と明記する。

(25条関係)

地球環境、生活困窮者問題などの具体的な事例を指摘する。

大飯原発運転差し止めを命じた福井地裁判決の論理をパンフレット案に展開する。

福島第一原発の巨大事故後における国の対応は怠慢の域をはるかに越えた25条違反を指摘する。(別紙添付参照)

(26条関係)

教育環境に対する国の支配・介入の現実を指摘する。

(第30条関係)

納税者の訴訟が当事者適格に欠けるとして却下されているのは第81条最高裁の法令審査権放棄として違憲を強調する。

(43条関係)

「パンフレット案」の記述は小選挙区制の批判にとどめる。

(92条関係)

「パンフレット案」の記述は地方自治の本旨を明確にするにとどめる。(以上)

9月の例会・勉強会のご案内

日時 9月 28日(日) 14:00~16:30

場所 東京・神田 学士会館地下1階 京都大学連絡用室

(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)

報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット案)」の討議経過 編集委員会

経過報告と今後の日程 事務局

討議 報告および提案への質疑、意見

10月例会について その他

参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三

電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp

なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。

本ニュースには次の資料5点を添付します。① 「完全護憲の会」設立趣意書(決定)

② 野村(パンフレット案―9条関係)③草野(9条2項と完全護憲)④草野 未討議条項についての疑問・意見 ⑤加藤(第25条関係)生活環境の改善

「日本国憲法が求める政治(全)」を中心に既発表文書に対する意見をお聞かせ下さい。

2014年9月10日

完全護憲の会ニュース No.8 2014年08月10日

さる7月27日(日)、神田・学士会館で会合、参加者16名。入会者 計 19名。

まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏から政治の現況について次のような報告があった。

政治現況報告(要旨)

6月の例会の直後、集団的自衛権の最終案を公明党が呑んで、7月1日、安倍内閣は同案を閣議決定した。自衛権を発動するのは「わが國の存立が脅かされ、国民の生命、幸福の追及が根底からくつがえされる場合」と“おそれ”を削除したが、それを判断するのが首相か内閣であるのは変わらず、国民や国会は無視されたままだ。日本に帰化したドナルド・キーンさんは、この問題を「戦後日本人は一人も戦死していない。素晴らしいことだ。不戦を誓う憲法9条のおかげであり、世界が見習うべき精神である。日本は解釈改憲で“理想の國”から“普通の國”になろうとしている。戦後、憲法によって守られて来た日本を、少しでも戦前に戻そうとする動きに、私は抵抗を感じている」(7月6日朝刊、東京新聞)と心配している。

公明党はこれまで平和と弱者救済を立党の精神として掲げ、自民党との選挙協力でも優位にあるにもかかわらず、平和の旗をおろし、自民党との連立維持を選んだ。政権のうまみには替えられぬということだろう。今回の決定は自民党に屈服しても政府・与党の立場を重視するということであり、来年4月の統一地方選も含め、自公のワク組みは変わらぬということだ。

みんなの党や維新の会のすり寄りもあり、当面は自民党の優位が続くことになる。

今回の閣議決定は、日本がアメリカを守る戦争ができると云うことだが、これは日本の外務省の考え方だ。外務省は戦後ずっとアメリカ中心の外交を進めてきたが、安倍首相も安保法制懇の座長や内閣法制局長官に外務省のタカ派官僚を抜てきしてきた。安倍首相の戦前回帰、右派路線も外務省のアメリカ中心路線と軌を一にしている。

首相が説明で述べたアメリカの軍艦に日本人のお母さんや子供が乗っている、という説明も外務省の入れ知恵だ。集団的自衛権の発動は、朝鮮有事を想定したものだが、米軍はその場合、米国人救済に全力をあげ、日本の要請には応じないだろう。事実、過去にも米国は日本の援助を断っている。また朝鮮(韓国)も日本の自衛隊の援助要請はしないと思う。防衛省の考え方は全くちがう。朝鮮有事の場合も、米軍ではなく、自衛隊が直接、日本人を助けにゆく想定である。

また集団的自衛権よりも、国連軍の創設に日本が参加することを優先している。防衛省の考え方を支持しているのは石破幹事長であり、安倍首相は公明党の折衝に石破を外し、外務省よりの高村を起用した。安倍は9月の内閣改造でも石破をはずし、腹心を幹事長に起用することを狙っていると思われる。

ついで野村光司(原案起草者)氏から、7月10日開催の第2回編集委員会について、次のような報告があった。

第2回編集委員会の報告

7月10日、京都大学東京事務所(品川)で行われた編集委員会では、「日本国憲法が求める国家像(7月8日、野村案)」の記述について午後3時から閉室時間の8時まで逐条審議したが終了せず、第27条(勤労の権利……)と第96条(改正の手続……)については草野氏が後でメールで提言することになった。

なおこの日の議論を取り入れて原案を修正した「最高法規である日本国憲法が求める國の形(パンフレット案)」は本例会でお配りする。このパンフ案は本例会後、メール便のネットで会員と支持者に配信し、8月例会で意見を求める予定である。

編集委員会の参加者7人

7月27日例会の討議

引き続いて野村氏が、編集委員会で論議した問題点を例会に報告した。

これに対し、出席者から第1章(天皇)の1条から8条までについては、14条(法の下の平等)に照らしても違和感があるむね発言があり、これに対して、1条「(天皇の)地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」により、国民の総意によってこの条項を廃止する可能性があるとの答弁があった。さらに護憲派が現憲法の個々の条項に異議を唱えれば、改憲派の異議申立てをも認めねばならなくなるので、この際、現憲法を一括して完全護憲の立場をとることの重要性が野村氏から訴えられた。

出席者から特に、「パンフレット案」にある

「(第1章関係)天皇の地位への一定の尊重

護憲派の中には憲法第1章天皇規定の存在が、被差別部落や在日韓国朝鮮人への差別を生んでいるのでこれを違憲として廃止したいと言う意見が根強くあるが、第1章天皇の規定が厳然としてあるので、憲法14条の一般規定に対する特別規定として象徴の限りで尊重されねばならない」

の記述について、「尊重」とか「厳然としてある」とかは言い過ぎではないか、また「被差別部落や在日韓国朝鮮人」への言及は不必要ではないか検討されたいとの意見があった。

その後、福田玲三氏(事務局)から、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を違憲として訴訟を検討していると報道された松阪市の山中光茂市長、提訴に踏み切った三重の珍道世直氏に連絡をとり当会ニュース7号を送り、珍道氏から感謝の返信があったむねの報告があった。

ついで編集委員会を8月6日に、例会を8月20日(水)に開くことを決めた。

8月の例会・勉強会ご案内

日時:8月20日(水)14:00~16:30

場所:虎の門・大阪大学東京オフィス多目的室 TEL 03―6205―7743

報告:政治の現況について

岡部太郎(F語・1955年卒、元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット案)」について

野村光司(原案起草者)

参加費:無料

申込み:メール:rohken@netlaputa.ne.jp

でお申込みください。

(注)神田・学士会館が補修で使用できないため今回に限り場所を変更しました。ご注意下さい。

場所:東京都千代田区霞ケ関1-4-1 日土地ビル10階

アクセス:「虎の門」駅7番出口から北へ徒歩1分

「霞ケ関」駅A12号出口から南へ徒歩3分

地図:大阪大学ホームページ

http://www.osaka-u.ac.jp/ja/academics/facilities/tokyo/off

例会終了後、8月6日(水)15時から京大東京事務所(品川)で第3回編集委員会が行なわれた。出席者6人。

第3回 編集委員会の報告

第3回編集委員会は8月6日(水)15時から京大東京事務所で行われ、編集委員全員が出席した。

まず、委員から7月13日にメールで送信した27条と96条関係の提言(別紙添付)について討議し、27条関係では、労働法制の緩和によって、過酷な労働と低賃金にあえぐ非正規労働者と女性が爆発的にふえている現実を反映した切実な提言としてパンフ案に採り入れることとした。また96条関係の提言では、憲法改正の「国民投票法」と公務員の憲法尊重義務との関係について議論を深めるとともに、同投票法における最低投票率については、同法付帯決議の趣旨をパンフ案に盛りこむこととした。

ついで『週刊金曜日』(7月18日号)に掲載された案内広告で、締切時間が切迫して同誌編集部に一任したため文案の一部が削除され誤解を生じた件で福田氏から説明があり、次の会合から新しい参加者に「『完全護憲の会』設立趣意書(案)」を配り会の理念を把握してもらうこととした。

そのあと再びパンフ案の逐条審議に移り、前文からはじめて9条2項関係では自衛隊の違憲を確認した。そのうえで、自衛隊をどのような合憲の組織に転換するかについて論議中に退室の時間となり、後日に審議を継続することになった。
なお、「パンフレット案」にこれまでの議論を取り入れ、8月例会の参加者に配付できるよう野村氏に起草を委任した。まだ論議継続中のため配信ネットには、7月例会の予定を変更して、今回はまだ載せないこととした。▲

2014年8月10日

完全護憲の会ニュース No.5 2014年05月15日

さる4月27日(日)、神田・学士会館で会合、参加者11名。入会者 計 13名。

まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏から政治の現況について次のような報告があった。

政治現況報告(岡部太郎氏)の要旨

4月23、24日に今年前半の最大の行事とも云えるオバマ米大統領の国賓としての公式訪問があり、安倍首相と会談があった。今回の最大の議題は日米のTPP交渉の行方だった。日本側の強い要望であった尖閣列島への米側のコミットと集団的自衛権への作業の了承は案外すんなりと認められた。尖閣列島の領有は日米安全保障の範囲内である、という大統領のお墨付きと集団的自衛権の検討を認めるというものだ。

実は日本側は事前に、この二つを米側に要望。オバマ大統領の出発前にOKサインを出していたから、当然の結果だ。その代り、代償として米側の要求するTPP妥結への圧力は大変なものだった。

23日の非公式な寿司屋の会食でも、オバマ大統領はほとんどTPP妥結の要望だった。甘利経産相は、このあと呼び出され、深夜3時すぎまで、詰めの閣僚折衝を続けた。

24日の正式首脳会談後に出されるのが慣例の共同コミュニケも出されず、折衝が続けられた結果、翌24日、オバマの離日直前に、やっと「TPP妥結への筋道が特定された」との表現でコミュニケが発表された。

政府は二つのお墨付きを得たことを、鬼の首でもとったように大成果と発表したが、実際は米側に大きな借りを作ったことになる。11月に下院議員選挙を控えるオバマは、6、7月をメドにTPP妥結を急ぐことは確実で、安倍政権は米国に大きな負債を背負ったことになる。中心は牛、豚肉の関税の引き下げで、日本は米、麦、砂糖を聖域としているので、どこまで下げられるか。牛肉は10年かかって9%まで1%ずつ毎年引き下げ、豚肉もヒトケタの下の数字が言われている。もちろん日本の畜産農家は全滅との声もある。

自民党がなぜ一割にまで下がった農家を必死に保護するのか。それは日本の農村偏重の選挙制度が理由だ。都市部より農村部の票は、衆院で2倍、参院地方区で4倍の価値がある。一票の格差がなくなれば、自民党は永久に過半数は取れず、死活問題だけに、農産物の自由化に必死に反対するのだ。

日本政府の発表にはないが、オバマは安倍に①尖閣問題は慎重に、中国との改善を急げ②集団的自衛権は、よく国民に説明し、慎重に③TPPは日本の利益になるのだから、急げ――と強く訴えたという。そして「他の國の希望を受け入れない者は自国の希望も通ることはない」と寿司を食べながらピシャリと言ったそうだ。実際、米が譲歩した尖閣など二つは、米側にとってはプラスになることはあってもマイナスになるものではない。

これから先、安倍がどういう段取りで、米国への借りを返して行くかが、外交、国内政治問題のカギになる。

ついで野村光司(原案起草者)氏から、岡部氏の政治報告の中で、とくに現憲法に関する事項について次のような説明があった。

現政権の集団的安全保障論の憲法問題

現政権の「集団的安全保障論」は、自衛隊が随伴する米軍が第三国軍と戦闘状態になったら自衛隊も米軍と共にこの第三国軍と戦闘をさせようとするものである。自衛隊は決して国内暴力団などと対決する警察ではなく、他国との戦争を行い得る戦力を持つ軍隊である。これが日本が保持する戦力であれば憲法9条2項が明確に禁ずる違憲の存在である。しかしその創設の事情や米軍との関係の実質を考えると、発足当初から米国の強い要求ににより米軍の装備と米軍の教官と米軍の教程によって活動を始めたもので、「米軍日本人部隊」であったと言える。創設当初はその目的や兵器の名称など種々偽装して「警察予備隊」と称した。しかしこれが軍隊であることを隠し切れず、やがて憲法9条の解釈を変更して、侵略の軍隊は持てないが他国から侵略を受けた場合の自衛の軍隊の保持は禁じないという新たな詭弁を設けて陸海空の「自衛隊」となった。

国内でも各人の正当防衛権はあるが、それは現在所持を許され、また行使を許される範囲で行われるべきもので、自宅に盗賊が侵入した場合、これを追い払ったり、自力での逮捕は許されるが、直ちに殺害するのは過剰防衛となるし、自衛のためと称すれば日本の法律で所持を許されていないピストルを各人が備えられるわけではない。アイスランドは日本と同じく軍隊を持たないことを国是としているが、1958年から20年近く、イギリスの間で沿岸漁業権を巡りいわゆる「タラ戦争 (Cold WarならぬCod War)と称せられる紛争が起きた。イギリスは軍艦を差し向けたが、アイスランドは沿岸警備隊がこれに対決して、結局アイスランドの主張を、英国も国際社会も承認した。

また国家を組織することは、個人が自ら用心棒や警備会社を雇うのではなく国が警察を創設し、人民はその費用を負担し、或いは自ら警察官に応募して共同の武力によって安全を保障することである。日本国憲法は第9条で日本国が保持する軍隊を廃絶し、前文「平和を愛好する諸国民の公正と信義 (justice and faith:法と執行力と価値観) に信頼して我らの安全と生存を保持する決意」をしたのである。これは当時既に国連が加盟国の安全保障を担当するものとして設立されており、日本は国連に資金、職員、隊員の協力をして安全保障を確保するのが日本国憲法の立場である。

なお日本軍としての自衛隊のまま、現地軍だけの判断で第三国と戦闘を開始することは、戦前の陸軍刑法も「司令官、外国に対し故なく戦闘を開始したるときは死刑に処す」(35条)としていたように、現地軍の判断で外国と戦争を開始する行為は、現地軍の一存で日本国全体を新たな戦争に投入することで、最も許されざる行為である。満州事変は関東軍の謀略で開始され、朝鮮軍司令官の判断で日本国(朝鮮)から満州国に越境した。司令官は死刑に処せらるべきものを黙認されてその後の軍部の独走を許し、内外2千万人を犠牲にする人類の大悲劇となった。現政権の考える「日本の軍隊としての自衛隊」を残したままでの「集団的自衛権」は絶対に認められてはならない。

次の例会で、会員の皆さんの提案、疑問は、出尽くしたものとしたいので、「国政

案」を良く精査された上、問題点を持ってご出席になることをお願いしたい。例えば

既に最近、タイで憲法裁判所の決定で首相が違憲の行為があったことを理由に失職さ

せたことがあり、会員から、我々もこれに対応する必要があるのではないかとのご指

摘を頂いた。これについては、既に我々の「国政案」15条関係「行政指導の根絶」末

尾で「公務員を罷免する国民固有の権利」に言及しているが、これを「公務員を罷免

させる国民の権利」として次のように新たな項目に独立させたい。

公務員を罷免する国民の権利

違憲、違法、党利党略を恣にして来た政権党、官僚を頂点とする保守勢力は、一人

民によって罷免されるとするこの規定を実施する意思が全くなく、永くこの手続きを

法制化して来なかった。同時に憲法改正についても実現の可能性がなかったこれまで

は、その手続法を法制化することも無かった。しかし現政権の国権優先の強い改憲の

意思で「憲法改正国民投票法」が制定されることとなった。しからば対極にある、人

民の基本的人権としての公務員罷免権についても法制化されるべきである。

人民も恣に公務員罷免権を行使できるわけでもないが、少なくとも公然と憲法を否

定する公務員は、相手が例え首相であっても一人民の訴えで、これを罷免する手続法

が制定されねばならない。罷免のような厳しい制裁を科し得るのとすれば、それより

は軽く、個別の行為を違憲、違法、無効として、罰金、懲戒、弁償、謝罪で処置する

ことも当然できる。

また、すべて裁判所で処理するか、行政不服審査制度によるかの問題もある。

なお、必ずしも法律を制定するのではなく、内閣が政令で実施する余地もあるが

(憲法73条6号)、これは罰則を設けることはできないし、現政権にかかる政令を制

定させることは全く期待できないだろう。

野村光司氏の説明の後、先に送信済みの「護憲国政追加(案)」と「憲法改正国民投票法について」の討議に移り、一部修正されたが、その成文は今回添付の「日本国憲法が求める国政(中間案)」に織り込まれているので承知されたい。

最後に福田玲三(事務局)氏より、規約案のうち会の名称は(仮称)を外して「完全護憲の会」にすること、共同代表として、岡部太郎、野村光司両氏の外に、数名の候補者名を挙げて、ご本人の了解をえるよう交渉をすすめること、会の財政は会発足時に匿名者から寄附があった外に、会員3氏より計21、000円の寄附をうけている現状を報告したのち、会議終了後に学士会館喫茶室で懇談する際の飲み物は半額を会で負担したいと提案があり、いずれも了承された。

なお振替口座を設定するに必要な会の規約は当面、現規約案を流用すること、また共同代表候補に元衆院議長土井たか子氏が会員から推薦され、このいずれも了承された。

次回の集会は、都合により月末を越え6月1日(日)とされた。

なお、本ニュース第5号にあわせて、「ごあいさつ(案)」と「日本国憲法が求める国政案(中間案)」を添付した。これを6月1日の例会で討議する。それまでにまでに疑問点、追加点のある方は事務局 (03-3772-5095. rohken@netlaputa.ne.jp) または起草者 (03-3309-4310、mitsunomura@ybb.ne.jp ) にお知らせください。

この「ごあいさつ案」と「中間案」は6月の例会(6月22日に予定)で討議、決定したのち、これをパンフレットに編集し、関係方面へ配付する予定。そのための編集委員数名の人選を6月1日の例会でしていただきたい。

5月の例会(研究会)ご案内

日時 6月 1日(日) 14:00~16:30

場所 東京・神田 学士会館地下1階 京都大学連絡用室

(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)

報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)

「ごあいさつ案」及び「日本国憲法が求める国政(中間案)」 野村光司(原案起草者)

経過報告と今後の日程 福田玲三(事務局)

討議 報告および提案への質疑、意見

6月例会について その他

参加費 無料(ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)

連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三

電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp

なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。

<良書紹介> 東京新聞政治部編『読むための日本国憲法』

新憲法草案の発表など改憲論議が高まった2005年の人気新聞連載をまとめた原著を大幅に加筆修正。現役の政治部記者が、全103条をエピソードとともに逐次解説。難しい語句には注を付け、条文のポイントも示す。(文春文庫・680円)

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2014年5月15日