完全護憲の会のニュース
ニュース一覧
完全護憲の会ニュース No.25 2016年 1月10日
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話・FAX 03-3772-5095
Eメール:kanzengoken@gmail.com
ホームページ:https://kanzengoken.com/
目次
① 第24回 例会の議事録 1p
③ 次の例会・勉強会のご案内 4p
別紙 1 政治現況報告 5p
別紙 2 事務局報告 7p
さる12月20日(日)、港区・神明いきいきプラザ集会室で第24回例会を開催、参加者13名。入会者 計46名。
第24回 例会の議事録(要旨) 2015年12月20日
大西編集委員が司会した。
1) まず岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)からの政治現況報告(別紙1)があった。
この報告に対して、次の意見と質問があった。
田中)岡部報告に今年の主な出来事として、経団連の政治献金を加えたい。また自民党が先の総選挙では経済を優先して唱え、選挙後は戦争法の採 決を優先させたことを強調したい。
真田)安倍首相は憲法9条だけの廃止ではなく、憲法全体の改定を意図しているのではないか?
岡部)いまのところ刺戟の少ない民政部門から手をつけ、そのあと9条を含めた全体に広げる積もりだ。
2) ついで、違憲をめぐる現状について野村光司共同代表(パンフ『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が、以下のように報告した。
○
安倍首相個人は日本の体制をトータルに戦前に戻したいと願っている。先頃、照屋寛徳議員から私宅に電話があり、「これだけ広範に体系的に書かれたのは、憲法関連の文献として最高に思う」と3月パンフを賞めていただいた。「広範に」とはわれわれがシングルイッシュー(単発)ではなくトータルに改憲勢力と対決していることであり、「体系的」というのは選択的ではないという意味に理解している。われわれは第9条だけでなく、全面的に現憲法を擁護している。今のところ右翼からの攻撃はない。自信をもって護憲活動を進めたい。
安倍政権の官邸機密費(特定秘密軍事費を含む)は「すべて毎年会計検査院がこれを検査し」(第90条)に反して秘密裡に使われ、使おうとしている。夫婦別姓訴訟に対する判決で最高裁長官は「夫婦同姓は定着している」と述べ、権力による違憲状況の定着を擁護している。安倍内閣の言う地方創生は、中央の判断に地方を従わせるものであり、憲法の「地方自治の本旨」に反している。こうした新たな違憲と慣行になっている違憲に対する批判を次々に発表してゆきたい。
3)そのあと福田玲三共同代表(事務局担当)から事務局報告(別紙2)があった。
上記テーマ1、2、3について次のような質問、意見があった。
S)安保法案(成立前)について、自民党と一部学者は、合憲であると主張していた。それなら彼らはもう今の憲法を改正する必要はないのではないか?
田中)来年参院選で多数を取ったら、自民党は「安保法案違憲と主張するうるさいやつらがいるから、主張の余地が無いよう改正しよう」と言うのではないか。その意味では彼らの主張は一貫している。
K)自民党の狙いは基本的人権条項の廃止であり、その本丸は「緊急事態の宣言」(自民党憲法改正案第98条)だ。これはナチスの全権委任法に似ている。残念だが、民主党も独自の緊急事態基本法案を公表している。来年夏の参院選直後の動きを注視し、警告を発すべきだ。
長坂)3点お訊きしたい。①安保法案成立で、「憲法(または立憲主義)が破壊された」と一部で主張されているが、どう考えるか?②憲法53条の規定による1/4以上の議員の要求にもかかわらず、安倍内閣は国会の召集を決定しないままでいる。③高村・自民党副総裁が、安保法案違憲を主張した学者を「法匪」と言う言葉を使って批判した。匪賊とは満州侵略のため、現地の愛国者を蔑んで使われた言葉だ。この高村発言は、新聞が1面トップで報じるくらいの大問題ではないか。
大西)自衛隊はいまだに専守防衛で相手より先に発砲できない。9条が生きている証だ。
野村)憲法は一字一句変えられないで残っている。聖書に、神が、散らばっている白骨に息を吹き込んで、生きた人間にした、という喩えがある。憲法の骨は一つも欠けていない。今のうちに息を吹き込むのがわれわれの仕事だ。
田中) 長坂さんの発言主旨は、「このような憲法違反に対して、会として抗議声明を出すなどの行動をすべきではないか」との提起ではないか?
K)本件についての意見を「緊急警告発信」として公表する際、福田原案の「3人ほどの委員会」で検討するのは、当事者の負担が重いのでは?
野村)3人委員会を作ることは認められない。
K)法匪発言は重大だ、これと53条関係の国会召集義務違反の2件をホームページのトップで発信すればいい。だが、共同代表者の一人から提起された「沖縄県民に独立の気概(云々)」のような意見を会の名前で公表するのは、極めて危険だ。沖縄でごく少数に過ぎない沖縄独立論を、憲法の観点から正当化しようとするのは、地方自治の主旨を誤解している。
野村)照屋議員も沖縄人は半日本人並みだと言っている、沖縄独立論は現地で3%から8%に増えており、独立論議はスコットランド、カタロニアなど世界の趨勢だ。
福田)小委員会の提案は取り下げる。編集委員間のメーリングリストで合意をはかる。
司会者)沖縄論議はここでは止めよう。ともあれ、編集委員会で検討したいので、長坂さんには、今の法匪提起を文章化してメールで送っていただきたい。
長坂)憲法は生きており、立憲主義破壊の安倍反革命は失敗している。
野村)実は裁判所が立憲主義を壊している。田中耕太郎最高裁長官の統治行為論が憲法を壊している。しかも、その田中・元長官が国の最高の勲章をもらっている。
大西)憲法は政府を縛るものなのに、統治行為論はすべての行為を政府に許している。
S)沖縄問題は歴史的に調べる必要がある。権力は差別を支配に使い、沖縄を本土と分けて差別している。沖縄が日本の平和を守ってきたと言われるが、敵は誰なのか?
野村)平和になると困る層があり、つねに新たな火種を探している。
4.当面の日程について
① 第21回編集委員会 1月13日(水)13:30~ 大阪大学東京オフィス
② 第2回総会兼第25回例会 1月24日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
③ 第22回編集委員会 1月27日(水)14:00~ 大阪大学東京オフィス
④ 第26回例会 2月28日(日)13:30~神明いきいきプラザ
⑤ 第23回編集委員会 3月2日(水)14:00~ 大阪大学東京オフィス
⑥ 第27回例会 3月27日(日)13:30~ 神明いきいきプラザ
次の例会・総会・勉強会のご案内
日時 1月24日(日) 13:30~16:30
場所 港区・三田いきいきプラザ・「憲法研究会」
〒108-0014 港区芝4-1-17 電話03-3452-9421
JR 山手線・京浜東北線、田町駅西口から徒歩8分
地下鉄 三田線・浅草線 三田駅 A9 出口から徒歩1分
報告 1)政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
2)違憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
3)経過報告・決算報告・会計監査報告・予算案の提案・共同代表と事務局員・会計監査委員の改選 福田玲三(事務局担当)
議事 1)2)への質疑・意見 3)諸報告の承認、予算の決定、担当者の選出
会場費 100円(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
お願い
「戦争法の廃止を求める統一署名」主催の実行委員会は署名者 2000万人の達成を4月25日締切で、目指しています。5人の署名欄が埋まりましたら、第1次として1月末までに当会あてお送り下さるようお願いします。(事務局)
「完全護憲の会」公式ホームページにアクセスして下さい。
トップに違憲性に対する緊急警告を発信予定。
ご案内
「7.1閣議決定」違憲訴訟のための第3回相談会。
1月22日(金)13:30~、神明いきいきプラザ「憲法研究会」。
主催・長坂伝八氏ほか 講師・野村光司
「21世紀懇リポート」研究会
1月30日(土) 14:00~ 、大阪経済法科大学6階B会議室 労働運動研究所研究会
(港区麻布台1-11-5 電話03-3582-2922 地下鉄神谷町、E1出口から、東京タワー方向へ徒歩3分左側)
<図書紹介>
内田博文著『刑法と戦争』(みすず書房刊)定価4,600円(本体)
「完全護憲の会」に相応しい名著です(推薦者 田中 伸)
松岡 肇著『日中歴史和解への道』(高文研刊)定価1,500円(本体)
著者は、いま話題の中国人強制連行・強制労働事件全国弁護団幹事長(推薦者 福田玲三)
<別紙 1>
政治現況報告 2015年12月20日
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
今年1年を振り返って、やはり集団的自衛権を可能にした安保法制(戦争法案)の強行可決・成立が一番大きかった。それ以外にも、原発の再稼働、沖縄辺野古の強制埋め立て、残業ゼロで非正規労働者を増やす労働者派遣法改正案の成立など、安倍政権の自由抑制・保守回帰そして立憲主義・民主主義の拒否、平和憲法違反などの時代逆行性が著しくなった一年だった。戦後70年の国民の平和への努力が危険な方向へねじ曲げられ、日本の将来の進路が間違わぬよう、来年は今年以上に安倍首相と対峙してゆく必要がある。
新年は1月4日から早くも通常国会が召集され、150日間の攻防が始まる。野党各党の臨時国会召集要求を全く無視するという憲法違反をやりながら、早期の召集を図ったのは、6月早期に国会を切り上げ、7月3日か10日に参院選を設定しているためだ。5月には日本の伊勢志摩で世界サミットがあり、予算を国民の歓迎する人気取り政策に集中、その効果のあるうちに参院選という狙いだ。
ただ一部にいわれる衆院選とのダブル選挙は(佐藤内閣、中曽根内閣で自民党が圧勝した)さすがに衆院選を2012年、2014年の12月と2年で解散しただけに、また2年もたたないうちに衆院を解散するのは難しいだろう。公明党もダブルには反対。
来年の参院選で自公連合が勝って、自民党が2/3以上の議席を確保すれば、憲法改正も現実のものとなるだけに野党としても、まさに正念場の選挙となる。
参院選は半数ずつ三年ごとの選挙なので、来年は2010年(平成22年)の参院選で当選した人の改選になる。この年は民主党の菅政権だが、菅首相が選挙直前に消費税を上げると明言、争点となって政権党であるにもかかわらず、54人が10人減って44人になった。逆に自民党は38人が敵失で51人と、13人も増えた。(定数242人、過半数122人)。その3年前2007年選挙では、民主が圧勝しただけに痛い敗北。
2013年参院選は、前年12年12月総選挙で自民が圧勝したあとだけに、自民が改選前22人を65人とほぼ3倍増して圧勝した。民主党は44人が17人と歴史的な惨敗、実にマイナス27人だった。特に地方区では自民が22人から47人(新人が8人)、民主は28人が10人(新人2)に減った。参院は地方区1人が多い。
野党としては統一候補以外に勝ち目はない。民主党岡田、維新の会松野の間で11日、来年通常国会での統一会派が決まった。(衆院)民主71、維新21、大阪17、(参院)民主59、維新5、大阪6。参議院の維新5は年内は統一せず、来年3月ごろの見込み。参院選はこの民主・維新グループに共産党が加わって選挙協力することになろう。
そのほか一月早々には沖縄・宜野湾市長選、北海道の自民町村前議長死去後の衆院補欠選挙がある。
ちなみに現在の衆議院の勢力分布は、自民291、民主71、公明35、維新21、共産21、おおさか維新13、改革結集4、生活の党2、社民2、無所属14、欠員1。
また年内に国民生活に大きな影響のある消費税の軽減税率が自公の税調で決まった。自民党は生鮮食品だけ4000億と主張していたが、公明が加工品も含むと強く主張、結局安倍首相が党税調会長を野田から宮沢にさしかえ、外食を除く、酒以外の食品加工品を含め、8%に据え置くことで妥結した。ただし1兆円オーバーとなる財源については2017年4月の10%増税までに結論を出すと、得意の結論先延ばし。また“もめそうだ”。
自民党がここまで公明に譲歩したのは、来年参院選で公明の選挙協力が絶対にほしいからだ。もし公明の協力がない場合、自民当選者は衆参両院で半数まで落ち込むといわれている。公明が政局のイニシアチブを握っている。
<別紙 2>
第24回例会 事務局報告 2015年12月20日
福田玲三(事務局)
1) ニュース24号への意見など(いずれも要旨)
珍道世直氏
完全護憲の会ニュースNo24はじめ貴重な資料をお送りいただき有難うございました。
また、事務局報告中で私の「閣議決定・安保法制違憲訴訟」提起のことをお取上げいただき心から感謝いたしております。2016年1月28日に、第1回口頭弁論が開かれることになりました。どうか引き続きご注視下さいますようお願いいたします。また、長坂伝八様らの違憲訴訟について、大きな関心を持っております。
Sさん(都下)
ニュースの送信ありがとうございました。先の例会の様子をありありと思い起こすような発言の記載は大変だったと思います。同じ方向を向いて集まったであろう人たちからあれ程様々な意見がぶつかり合うというのは痛々しくもありますが、世間に出ればもっと沢山の異論に打ちのめされる、その練習にもなっているかもしれないと思い、日々思考を続けようと思います。
辻元清美議員事務所
この度は御本を賜り誠にありがとうございます。ご芳情のほど厚く御礼申し上げます。拝読し、今後の活動に生かしてまいりたいと存じます。
2) 違憲性に対する緊急警告発信について
立憲主義の崩壊か再構築かの岐路に立つ来年夏の参院選を控えた情勢のなかで、微力ながら当会の発信力を加速して、これに対応するため、次の方式を事務局として提案します。
現政権がつぎつぎに発表する違憲の政策に即時に対案を示し、また最近の政治問題に対するわれわれの見解を逐次発表するため、当会のホームページのトップで、これらの対案、見解を緊急発信する。そのためには3人程度の小委員会をもうけ、ここで発信文案を起草し、文案に対する全編集委員の合意をメーリングィストによって求め、合意の得られたものから逐次発信する。この発信文は事後に例会の討議を経て公式文書となり、これを集成してリーフレットあるいはパンフを作成し普及する。
緊急警告発信の1例
違憲性に対する緊急警告(仮称) 01号
(一億総活躍)
「(戦前)日本を取り戻そう」の政策のうちで、「一億」と言えば「国民一人残らず」の含意があり、「一億一心」、「一億玉砕」、「一億総動員」、「承詔必謹」、「官民一致」が政府から求められていると解せられる。すなわち、「一億一致して、戦争法案反対に立ち上がってくれ」ではなく、「政府、首相が指導、要求するところには、一人の抵抗も許さず、一致して従い、行動せよ」に他ならない。「(大政翼賛)」日本の取り戻し」が企図されているものと解する。
現政権は、思い付きで種々の干渉を国民に加えてきている。政府が法律に根拠なく、「行政指導」の圧力を加えてくることは、刑法の「職権乱用罪」に相当するものであって、憲法第12条の要請もあって、抵抗してゆかねばならない。国民はそれぞれ個人の創意工夫において活動すれば足りるのである(第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求の権利は、国政の上で最大限の尊重を要する」関連)。
(自衛隊員の海外出兵)
兵士として戦場で敵兵と殺戮し合う業務は、人間世界最悪の「苦役」であり、本人の意に反する徴兵制度を導入することは、本条がある限り不可能である。
現自衛隊員は、日本国土防衛のためのみに軍務に服することに同意したもので、憲法に規定に違反した海外派兵の軍務には同意していない。したがって自衛隊員は、新たに海外での戦闘にも従事するには、その同意をしなければ派遣されることはない。命令があれば当然、派兵で実害を被ったとして、違憲、違法の訴訟の対象となる(第18条「その意に反する苦役に服さない」関連)。
(公の施設利用に思想上の制限はしない)
自治体の公民館の利用について、政権批判の集会に対して「政治的」を理由にこれを拒否する例が散見されるが、地方自治法10条2項の定める通り、住民は自治体の「役務の提供をひとしく受ける権利を有する」のであって、思想の内容によって制約を課するのは違憲である(第21条「一切の表現の自由は、これを保障する。検閲はしてはならない」関連)。
この発信を継続することにより、状況に対応しつつ、当会の発信力を徐々に強めることを目指します。
3) 2000万人 「戦争法の廃止を求める統一署名」について
この署名用紙はすでに御配りしてあります。署名は4月25日締切、5月1日の発表をめざして取り組まれています。戦争法廃止を決する来年夏の参院選をめぐる情勢は楽観を許さず、2000万人署名の達成がその成否に大きく貢献します。立憲主義の命運もこの選挙にかかっています。時期を失せず活動を始めましょう。5名の署名欄を埋めた用紙は当会あて送って下さるよう御願いします。
4)ニュース
① 明治大学のシールズの一員、S・F氏にパンフへの注文をシールズ内でとり、発注していただくよう依頼した。
② 注視すべきは、戦後70年に当たっての安倍談話ではなく、その下書きになっている「21世紀懇リポート」(8月6日公表)である。この立場に立ったシンポジュームが労働運動研究所などによって計画されている。(1月開催予定)
5)当面の日程について(略)
完全護憲の会ニュース No.24 2015年12月10日
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話・FAX 03-3772-5095
Eメール:kanzengoken@gmail.com
ホームページ:https://kanzengoken.com/
目次
① 第23回 例会の議事録 1p
③ 次の例会・勉強会のご案内 6p
別紙 1 政治現況報告 8p
別紙 2 事務局報告 10p
さる11月22日(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で第23回例会を開催、参加者19名。入会者 計46名。
第23回 例会の議事録(要旨) 2015年11月22日
草野編集委員長が司会した。
1)まず岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)からの政治現況報告(別紙1)があった。
2)ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が『日本国憲法が求める国の形』追加項目(試案)<ニュース前号に掲載>について、以下のように討議を求めた。
○
政府・自民党は安保法制を可決させた。彼らの意図は戦前の日本を取り戻すことであり、現憲法の縛りを無効にすることだ。彼らの提出する法案の8、9割が国会で通っている状態だ。
これまで当パンフを政党やマスコミに送り、友人、知人にも渡したが、これにたいする反論は今のところ出ていない。政府・自民党の新しい違憲の政策にたいする反対の見解を次々に自信をもって発表したい。
焦眉の問題が次々に発生している。沖縄・辺野古の事態、国会議員4分の1以上による国会開催要求、中国を仮装敵国にした首相の外遊と資金のばらまき、これにたいする会計監査院の無能、言論統制をめざして総務省がNHKに厳重注意するという権力乱用、地方創生を名目にした補助金による中央統制、猛烈な勢いで広がっているこれらの政策の違憲性を緊急に指摘したい。
当会の最終決定は例会で行われるが、その準備をする編集委員会にもぜひ参加してほしい。私たちの追加の見解はまずマスコミ、政党、外国大使館を対象に伝達したい。
3)そのあと福田玲三共同代表(事務局担当)から事務局報告(別紙3)があった。
上記テーマ1、2、3について次のような質問・意見があった。
●Sさん)拉致問題に関して。小泉政権が日朝平壌宣言を交わし、拉致された蓮池さんたちが帰国できたのだが、約束通り帰さなかった。それまでの生活で積み上げた何もかもを置いてきた。横田めぐみさんが帰ってこられないでいるが、横田さんは子どももいると言われている。蓮池さんたちのように一度帰国したら戻れないようでは、生きていたとしても帰れないのではないか。
● 野村)現安倍首相が官房長官のとき日朝両政府間の約束を破って、日本に帰国した被害
者を朝鮮に帰さなかった。憲法には出国の自由がある。阿倍はこれで出世した。日本には戦争中朝鮮人を強制動員した過去がある。核開発問題で国連が北朝鮮に貿易制限をかけたが、日本は万景峰号の寄港、マツタケなど全部止めてしまった。蓮池さんたちの問題では、私は政府間の約束通り彼らを一旦北朝鮮に戻すべきだと主張し、パンフレットへの掲載を求めたが、この部分は編集委員会で止めら削られた。
●岡部)北朝鮮は拉致問題を再調査すると言ったが、進まなかった。外交問題は相手を説得できなければうまくいかない。その努力が足りない。
●野村)拉致被害者には両国通行認めるべき。日朝共同宣言は守るべきだ。
●S氏)横田めぐみさん問題は人権の問題なのに国の面子の問題にされている。拉致されたことは国の防衛問題でもある。
●Kさん)拉致問題は人権の問題でありながら政治的なカードとして使われている。ISにとらわれて殺された後藤さん、湯川さんの問題も安倍政権が政治利用した。いま行われているISに対するアメリカの空爆も公式報道を鵜呑みにできない。
●S氏)野村さんの追加項目、よくわからない。パンフレット「日本国憲法の国の形」の追加項目というのは必要ない。
●川本)伊藤真弁護士はじめ多数の弁護士が安保法制問題で差し止め請求の裁判準備中。これを完全護憲の会ホームページブログに載せた。
●N氏)何を差し止めるものなのか。
●川本)集団的自衛権行使の差し止めと武力行使と一体となる駆けつけ警護の差し止めだ。
●野村)追加項目は私の意見としてだしている。皆さんも出してほしい。
●S氏)追加項目というかたちで出すということがおかしいと思う。
4)パンフ「追補版」(リーフレット形式)に取り入れるテーマ・憲法条項について
① 野村「追加項目(試案)」からの編集委選択条項提案(別紙)
② 第22回例会で出された優先的検討テーマと憲法条項提案(別紙)
この2件についての質疑・討論
●S氏)われわれは差し迫った問題で緊急提言をすべきであり、パンフの追加項目作成に終わってはならない。パンフレットの9条、国連軍の提起はおかしい。
●草野)私たちは憲法専門家ではないのだから、素人意見でよいのではないか。
●野村)政府から手当を受けている諮問委員会の委員や政府の指名をうける最高裁裁判官は、政府へのゴマすり見解をだすが、われわれは憲法に基づき政策を批判する。
●Knさん)憲法の解釈論と政策論は分けるべき。違憲の指摘は条文順ではなく、テーマ別がよい。
●後藤)素人集団がこのような憲法解釈のパンフを出すこと、意味ない。私もそんなことに時間費やすことしたくない。このパンフの3ページにも書いているように、現状が憲法から「曲がりに曲がっ」ているということは、憲法が実現されていないのだから、完全護憲の会というなら、憲法に書いてある通りにやらせるような活動をすべき。沖縄問題も基地問題だけではない。地方自治の問題でもある。
●野村)われわれは憲法に基づく原理主義運動をしている。現憲法がいかに素晴らしいかをお示しする。マルチン・ルターが「聖書にかえれ」と言って宗教改革をなしたように、トーマス・ペインがコモンセンスを書いてアメリカの独立の機運を作り上げたように。
●Knさん)その原理主義、それが間違っているのではないか。野村さんの解釈は正しいのか。
●川本)野村さんの原理主義に基づいてパンフレットを作った。これが世の中に大きな影響を与えることはない。これとは別に新しく集まった人たちがやりたいと思うことやるべきだ。 新しく集まった人には追補版に抵抗があるのではないか。
●後藤)追加のパンフレットを作ることに何でそんなに時間をかけるのですか。送ってもらった追加文書は長く、とても読む気がしない。こんなことで私たちの時間とエネルギーを浪費させないで欲しい。むしろ、完全護憲の会として集まってきた意義があるのだから、そこに焦点を当てて、世の中にアピールできることを追求すべきだ。
●Knさん)追加文書の沖縄問題、私が沖縄県民だったら血の涙を流します。なんで独立なんですか。護憲の会を名乗って沖縄の人たちを否定するようなこと許されない。独立論は地方自治と逆ベクトルだ。
●後藤)地方自治の問題は沖縄の問題だけではない。大阪もそうだし。国民と住民は違う。自治とは直接民主主義だ。
●野村)私の憲法上の地方自治は明確。地方自治はぜんぜん実現されていない。
●T氏)いまの議論に関連して朝日新聞11月18日の天声人語が触れているので紹介したい。
●稲田)沖縄の独立を決めるのは沖縄の人々。ヤマトンチュウが言うことではない。ヤマトンチュウにやることがあるとすれば、沖縄に集中している米軍基地を本土が引き取ることだ。
●Kさん)沖縄の民意は選挙で示されているのに訴訟合戦になっている。今は何を指摘すべきか検討する必要がある。
●後藤)ここは沖縄の現実をどうすべきか論じるところではない。いかに日本国憲法からはずれているかである。名護市に払わなければならない金を三つの区に払うなんて。憲法の踏みにじられ方が異常。
●Kさん)地方自治は札束でたたかれている。国策的なものは、沖縄だけでなく原発問題も含め全部同じパターン。
●岡部)沖縄問題は、ある意味で護憲の問題と根本は一緒だと思う。沖縄は始めから日本国憲法から除外されている。悪いのは内地のわれわれが沖縄は別だと思っていることだ。
●S氏)パンフの内容がいいから集まってきたのではなくて、現状に危機感があってのことだ。
●川本)そうなんですよ、実際は。野村さんは自分の意見を変えてもいいとおっしゃるが、あれだけの大量の文章をホームページにあげますと、それが護憲の会の見解と受け取られる。みなさんが誤解すると思う。
●野村)まだ決定でないものをホームページに載せることがおかしい。村個人の試案なのだから。皆さんも出してください。たたかれるのを覚悟で。
●Kさん)そもそも編集委員会できちんと読む暇もなく出されてしまう。後藤先生に言わせると無駄なことなのかも知らないが、いま時局に適した、これほど憲法が踏みにじられている現実を特別号にまとめて出したらいいのではないかと思う。
●後藤)いまKさんが言われたようなことをこの場で議論しようと思ったら、永久に出ないと思う。私はここが自由に意見を言える場なんですよ、ということが大切。何かを決めたり何かを決議したりする場でない方がいい。Kさんが考えていることと私が考えていることが違ってもいい。
●Kさん)この場は憲法の問題について自由な議論、意見交換ができればいいと。出版なんかしなくていい、時間の無駄と?
●後藤)出版を目的として中身をあとから考えるなんて本末転倒と思う。活発な討論ができれば本なんかできると思う。
●福田)緊急の問題についてその仕方ですが、特別号を出すのか、ホームページに出していくのがいいのか。具体的にはどうすればいいのか。
●川本)ここで話し合ったことから何かまとめることができれば、あとでホームページ載せることができるし、パンフレットにすることもできる。多分、ここに集まった皆さんが今日は勉強になった、自分にとってプラスになったと思えることが大事で、その結果が何かにまとめられればいいのかな、と思う。
●野村)さっきのホームページの件、私の意見を護憲の会として出したのか。
●川本)そうではなく野村案として出るんですけれど、あれだけ大量の物が上がっていると共同代表の出したものですのでこの会の見解ととられる。
●司会)ホームページに試案が載るっているのは削りましょう。
●大西)前回なぜ配付しないんだ、と言われたので、あわてて配布した。ニュースに試案が載るので、それがそのままホームページに載ってしまった。
●稲田)会員に対して配るのは問題ないと思う。ホームページへの掲載はやめるべきだ。
●大西)後藤さんの意見にもあったように、ここの会議で出版物をまとめるのは無理がある。とりあえずここで出た意見を編集委員会でまとめ、本にするかどうかの判断を編集委員会にまかせてもらったらどうか。ここは自由な議論の場に集中して。
●Sさん)沖縄の問題、私は野村さんの意見に近いのかな、と思う。野村さんは沖縄が独立した方がいいとは言っていないと思う。沖縄の歴史を考えると特に。戦後の天皇の沖縄に対する対応も含めて。翁長さんは日米安保体制は否定しないというが、私は安保体制というものを考え直さないと解決しないと思う。
●S氏)戦後日本が平和だったというところがボケていると思う。憲法は実現されず、むしろ否定されてきたと言える。朝日訴訟のように人権が否定されてきた。ある程度恵まれた人が平和だったと思っているのだ。
●後藤)沖縄の問題にしても朝日訴訟にしても、全く事実をふまえて議論がされていない。朝日訴訟は食っていけないということではなく、彼は結核の療養において一日に使うチリ紙なんかを制限されることに対して訴訟を起こした。それから沖縄は日米安保体制の問題をからめたら、今のままでいろ、ということになってしまう。それに対して基地を本土がひきとるべき、そうすべきでない、との議論が出ているが、そういうどうすべきかということは政治の議論なんです。皆さん事実を知らないところで議論していることに危機感を覚える。
●N氏)7.1閣議決定違憲訴訟をやりたいということで取り組んでいる。一昨日、第1回相談会をやりました。例会に参加させていただいて大変勉強になっている。会の運営はこの会の創始者である野村さんの意見に従ってすすめるのが一番いいと思います。次回相談会は12月18日(金)です。よろしかったらご参加ください。
●稲田)会のメーリングリストを提案させていただきました。いくつか問題点があるようですが、議論の不足を補うために是非これを使ってみては、と思います。
(まとめ)
●司会)会の方向をめぐって様々な意見が出され、この場でそれをまとめるのは難しいので、編集委員会でさらに討議させてほしい。パンフの追加項目(試案)にさまざまな批判が出されたが、できれば対案を用意してほしい。なおパンフ『日本国憲法が求める国の形』に予備があるので、この普及を会員に要請したい。
次の例会・勉強会のご案内
日時 12月20日(日) 13:30~16:30
場所 港区・神明いきいきプラザ・「憲法研究会」
〒105-0013 港区浜松町1-6-7 電話03-3436-2500
JR 山手線・京浜東北線、浜松町駅北口から徒歩4分
都営地下鉄、大門駅A2 出口から徒歩4分、B1出口から徒歩3分
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
違憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
事務局報告 福田玲三(事務局担当)
討議 報告および提案への質疑、意見
会場費 100円(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
お願い
「戦争法の廃止を求める統一署名」用紙を同封します。
「統一署名」主催の実行委員会は署名者 2000万人の達成を4月25日締切で、目指しています。5人の署名欄が埋まりましたら、第1次として1月末までに当会あてお送り下さるようお願いします。(事務局)
ご案内
「7.1閣議決定」違憲訴訟のための第2回相談会。
12月18日(金)13:30~、神明いきいきプラザ「憲法研究会」。主催・長坂伝八氏ほか。
<別紙 1>
政治現況報告 2015年11月23日
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
本来なら10月から1月にかけては、例年、臨時国会の季節である。しかし安倍首相は外国訪問と予算編成があるという理由で衆参両院野党の国会召集要求を拒否、これは憲法53条の「4分の1以上の要求があれば内閣は召集しなければならない」に反する憲法違反だ。
予算編成は戦後70年、年末にどの内閣もやってきたことで理由にならず、外交日程も調整すればすむこと。安倍首相は何故か外遊好きで、この三年弱で63カ国を訪問、国民の税金を経済協力という名目でポンポン訪問国に大盤振舞いしている。増税分もほとんど食われている勘定。それなのに最も重要な東アジア外交では、中国、韓国、北朝鮮の三国を公式訪問しておらず、朴槿恵・韓国大統領とも、この11月に初めて会談した。これも従軍慰安婦問題で外務省間で検討することを決めただけで、何の進展もなく、米国から言われたから会ったという感じ。中国・習国家主席とは国際会議で握手しただけで、十分な会談も行われていない。安倍首相のいう危機管理や積極的平和外交はどこへいっているのか。日本にいるのが嫌で外国を回っている印象が強い。
臨時国会を開かなかったのは、小泉内閣で二度あるが、これは選挙のあとで特別国会を開いたという理由があり、安倍首相の安保法制やTPP、沖縄、原発、スキャンダルなど、野党に追及されるのが嫌だから、というのは理由にならない。
こんなわけで、中国・台湾両主席の66年振りの握手やパリでのISのテロ事件など、外国が騒がしいのに比べ国内政治は全く静かなものだった。
その中で自民党は11月15日、保守合同・結党から満60年を迎えた。昭和30年、吉田自由党と、日本独立で追放解除になった鳩山民主自由党が合併した。
敗戦の日本は、戦後、外交官だった吉田茂が自由党総裁になり、GHQのマッカーサー司令部と話し合いながら、戦後日本のカジを取って来た。英国大使だった吉田は、自由や民主主義をよく理解しており、保守というより中道路線で復興に当たった。そこへ日本が独立し、戦後、公職追放された政治家が政界復帰。昭和30年ごろは鳩山、岸、石橋など追放組の勢力が強い中で保守合同が行われた。
そのため新自民党の総理・総裁は、鳩山、石橋、岸(外相)と鳩自の右寄り系列の就任が続く。しかし日米安保条約の改正をめぐる混乱で岸が退陣すると、吉田派の池田勇人さらに佐藤栄作(足かけ10年・岸の弟)、田中角栄、三木武夫と中道右派系が続く。このあとを岸派の福田赳夫が継ぐが、大平正芳、鈴木善幸と池田派宏池会が続き、中立系のタカ派中曽根康弘。このあとは1、2年の乱立で竹下登、宇野宗佑、三木派の海部俊樹、宏池会の宮沢喜一、橋本竜太郎、小渕恵三と中道首相が続いた後は福田派の森喜郎、小泉純一郎(五年)、安倍普三(一次)、福田康夫、麻生太郎と右寄り首相が続いた。
この間、宮沢首相の時に野党七派連合の細川護煕連立内閣が成立したが、醜聞で一年で退陣、麻生の時に選挙で大敗して初めて民主党が政権を取り、鳩山、菅、野田首相で三年やったあと、安倍が自民党で返り咲き、現在に至っている。自民党はこのように吉田系のハト派と鳩山系のタカ派が同一党派(八大派閥)で右と中道で政権交代を果たし、この60年のほとんどを政権党として日本の政治を担って来た。時によって国民の不満や要求をうまく吸い上げ政権交代のキャッチボールに成功して来たといえるだろう。
ただ安倍首相のように、極端な復古主義、タカ派体質で内閣主導の安保法制、集団的自衛権を進めた首相は初めてであり、小選挙制や二、三世議員の当選の弊害が現われており、日本の政治や社会を暗くしているといえる。
国連の表現の自由担当ディビッド・ケイ氏が月末に来日、特定秘密保護法などの調査を予定していたが、日本は予算編成を口実に延期させ、来年の秋、参院選後を示唆した。日本の報道の自由度ランキングは1998年に11位、今年は61位に下がった。政府の報道に対する圧力が強まっている。
<別紙 2>
第23回例会 事務局報告
2015年11月22日
福田玲三(事務局)
1) ニュース23号への意見など(いずれも要旨)
*珍道世直氏 完全護憲の会ニュースNo23お送りいただき有難うございました。また、事務局報告の中で私のコメントをお取上げいただき、感謝いたしております。貴重な内容の資料、熟読させていただきます。
なお、「違憲立法」に関する訴訟の件でございますが、私は、「違憲な閣議決定」から「違憲な安保法制」が発出・公布されたと受け止めております。しかし、「違憲立法」に対する訴訟の動きが、全国的に鈍いように思われます。弁護士など専門家は、「法施行後」の2016年3月以降の提訴を検討していると思慮いたしておりますが、私はそれまでの間、動きを止めるのではなく、司法に対しても「違憲」であると言い続けていくことが必要だと考えております。
過去に社会党が、「裁判所法改正案と違憲裁判手続法案」を上程し廃案となりましたが、
この法案に、「訴えの期間としては、法律の公布日から」と規定されていたこともあり、
「施行」を待たずに「公布」の段階の今、この時に、「九条の会・津」の訴訟支援を得て
「閣議決定・安保法制違憲訴訟」提起することといたしました。
明日 11月16日(月)に「津地方裁判所」に提訴し、同日午前11時30分から司法記者クラブで、「九条の会・津」代表と共に記者会見させていただくことになっております。
「記者クラブ提出用資料」をご参考までに添付でお届けいたします。
どうか、「閣議決定」の際と同様、ご注視くださいますようお願い申し上げます。完全護憲の会が、その使命を果されますよう願っております。
*W氏(鹿児島県) ニュースNO.22の中で二、三点違和感というか疑問のある箇所がありますので、記させていただきます。
① 9頁別紙2-2第2項に現行建国記念日の改定とありますが、正しくは建国記念の日ではないでしょうか。かつて紀元節派と反紀元節派の間で激論が交わされた折、「建国記念日」では神話を歴史的事実ととらえることになり、あくまで単に建国を記念する祝日である「建国記念の日」に落ち着いたと言われています。つまりは妥協の産物なのでしょう。
② 11頁第10条の中に「混血児」という表現があります。いかがなものでしょうか。血が混ざる、血が混ざらない、万世一系を念頭に置いているとは思いませんが、今日では適切な表現とは思われません。もちろん母と父の血が混ざって子どもが誕生するとはとても科学的にはあり得ないことです。
③ 天皇制について 先月川内博前衆議院議員の講演があり参加したところ、「天皇陛下」「天皇陛下のお言葉」「天皇陛下が戦争を終わらせた」「秋篠宮さま」等連発するので、余計なことと思いつつも講演後「実は私は改憲論者である。真の『共和制(国)憲法』を作りたいと考えており、そのためには現憲法の天皇条項第1条から第8条をばっさり削除したい。主権在民の観点から現憲法に置ける天皇制についてどのように考えるか」と質問した。ここでは川内氏の説明は省きます。また貴会が完全護憲の会ということなので、天皇制に関する私の個人的見解は留保させていただきます。
以上三点について貴会内部で検討或いは一考していただければ幸いです。
*T氏(神奈川県) 私が4月に初めて例会に出席いたしました時と今日とでは本会は若干方向がずれてきているようで気になっております。「無位無官の市民であり、学者でもない」ものにとって、あまりにも話の内容が細かすぎて、重箱の隅をお互いにつつきあっているようで息苦しく感じます。あくまでも素人の集まりなんですからもう少し素人らしい発想の意見交換にすべきではないかと思います。他にも、護憲派の皆さんの使う言葉の難解さも問題ありと思います。特にカタカナ語です。
たとえば、10/19に行われたどこかの大学教授の講演会ですが題が「野党はオルタナティブを提示できるか 路上から議会へ」というものです。私は憲法のことを学ぼうと思っている一人ですからこういう記事も目に入りますが普段からまるで他人事のようにしている人は、まず注目しません。万が一見ても「なんのこっちゃい」と無視して意識を次へ移してしまいます。
その一方で「日本を取り戻す!!」なんて書いてあれば「えっ、日本は誰かにとられてたの? そりゃあ取り返さなくちゃね」なていう風にしてそちらに注目することになるというわけです。「野党は代わりの案を示せるか」ではいけないんでしょうか。これならば続きを読んでくれるかもしれないじゃないですか。
パンフレットの解説や設立趣意書の文言も話題になっているようです。私はパンフレットも設立趣意書も一言一句直さないでほしいと思っています。特に趣意書は設立者が会を設立するにあたっての思い入れを書いたものですからこれをいじる意味が解りません。と同時にパンフレットの内容もそのままにして、書き加える必要がある場合のみ、追加すれば良いのではないかと思います。本文をいじるとどこかにつじつまが合わないところが出てくるものです。
今日、専門家あるいは当事者に来てもらってはどうかという提案がありましたが私は反対です。私は文字通り素人ですからそんなに掘り下げて憲法を勉強したくはありません。
世の中には色々な分野があります。私は私の専門分野に100%エネルギーをつぎ込みたいし、皆さんもそうすべきと思います。
素人中の素人ですが素人の中では私なんかまともな方です。この私よりも更に無関心な人が世の中の多数であることを意識してください。その「多数」は自分が戦争法に賛成している方に数えられていることも知らないでいるわけです。なんとかその人たちの目を開かせてあげられるような会にしてください。解りやすい言葉で。
*Sさん(都下) 先日の例会及び編集委員会に参加して感じ考えたことをお伝え致します。
まず私が確認したい2点とそれに関すると思われる会員の発言をいくつか挙げさせていただいた上で、私の感想を述べさせていただきたいと思います。
①野村さんが「急いでいる」と委員会の初めにおっしゃった意味 ―― 工程表の目的
②新聞の写真のこと(T氏) ―― 写真の宣伝効果
①について
・野村さん「完全護憲の会はシンクタンク、素材の提供をする所であり政治活動はしない」
「安保法を裁判で争うのは無理」「まったく正しい」
T氏「パンフレットも設立趣意書も一言一句直さないでほしい、いじるとどこかにつじつまが合わないところが出てくる、素人なので憲法を掘り下げて勉強したくはない、話の内容が細かすぎる、無関心な大多数の人にもわかりやすい言葉で」
i氏「月1回の例会では、補遺集に何を盛り込むのか、その内容をどうするかまで話し合う には時間が足りない(メーリングリストの提案)」
川本さん「あの冊子を作る時の一つ一つのやりとりはすごく大変だった(考えの相違)」
Kさん「(野村さんの補遺について)喫緊の問題として安保法に関係する条文を取り上げるが内容は検討が必要」「自分が提出した発言もボツになる」
以上のご発言から改めて考えますと、個々の条文や問題について改めて統一見解を出すことはないのではないかと思いました。冊子(国の形)は専門家でなく市民の出したものという所に意義があるのであって、だからこそ考えの違いもぶつかり合うし憲法に対する意識も高められるわけですから、それこそがこの会の存在価値なのでしょう。つまり、最初に出された冊子は大体の賛成による見解?であって、その他の見解??…があってもよい、それをメーリングリストで挙げていく試みを行うということですね。I氏の11/1付けの疑問は納得出来る部分が多く勉強になりますし、とは言っても野村さんのご意見であれ、I氏のご意見であれ、私とは異なる所はありますので。(以前私も冊子についての意見ということで、わかりやすいのは条文順か項目ごとかということを軽々しく言ってしまいましたが、皆さんの話を聞くにつれて頭が整理された結果、話の内容が先にきて条文は後にくるというのは無理があると思いました。そうすると見解がまとまらない限り形にできなくなるか異論が散らかってわかりにくいものになるからです。)その上で安保問題などの優先事項についてはわかりやすくまとめていこうということで一致したと理解いたしました。
②について
後藤さん「こっち側の人達はそんなことばかり言ってるから嫌がられる、人が喜んでることは素直に喜べばいい」
野村さん「どんな写真を掲載するのも表現の自由の問題」
T氏の発言は、2014年末に衆院選に際し自民党がマスコミに対して異例の中立要請をしたことにも関わる大事な問題提起だと思います。自民党の宣伝は良く、他は中立を損ねるからダメだというのは全く論理が成り立たず、これは、憲法21条の検閲の問題に関わるのではないでしょうか。中立の名において政権に有利な情報に多く接することは国民が常に知る権利を奪われた状態にあると言えます。自民議員のマスコミを懲らしめる発言についても、”表現の自由をなくすべきだ”などという表現の自由は認められません。
以上、気になった点を述べさせていただきました。
あと一点気になることがあったので付け加えさせていただきます。
③コンピューターの使用について
S氏「メールを使わなければやれないと最初からわかっていれば入会しなかった」 ・福田さん「メールをやってない会員が半数くらいいる」というようなご発言があったように思いますが、これについては、コンピューター環境の有無だけでなく使用不使用も個人の自由ですし、コンピューター使用が前提のような会の運営になってしまうと、せっかく心あって集まられた方のお気持ちが離れるようで残念ですので、メーリングリストでのやりとりが会の中心になってしまう事にはならない方がいいと思いました。
*I氏(都内) 私は「完全護憲の会」について、ようやく少しわかりかけてきた程度の者ですので、わたしごときの発言で貴重な例会の時間をつぶしては申し訳ありませんので、あまり発言しませんでしたが、やはり月1回の例会では、補遺集に何を盛り込むのか、また、その内容をどうするかまで話し合うには、時間が足りないようにも思いました。そこで、時間の不足を補うため、また、東京の例会に出てこられない方のご意見を直接伺うための場として、メーリングリストを作成するというのはいかがでしょうか? メーリングリストを使えば、会員同士の意見交換がスムーズに行うことができるのではないかと思います。
例えば、野村さんの補遺集案もメーリングリストに投稿して頂ければ、それに対して、他の会員の方が意見を述べたり、これは重要な問題なので、次回の補遺集で是非取り上げようとか、これはもう少し後でもいいのではないかといった意見を出すこともできますし、もちろん他の方も自由にご自身の補遺案を出すことができると思います。
また、外部の方からの意見に対して、編集委員の間で見解が分かれるような場合(例えば四国のSさんのご質問など)も、メーリングリストで広く一般の会員から意見を募ることもできるのではないでしょうか。
*大西編集委員 この度、会員のIさんの提案より、メーリングリストを開設しました。メーリングリストは、他のジャンルで以前より利用させて戴いていますので、私が担当することになりました。
メーリングリストは、会員相互の意見交換を主目的にしていますので、参加は完全護憲の会会員に限定されます。こちらから参加をお願いする場合は、参加の確認をお願い致します。登録された方以外からの参加要請や投稿は管理者の承認が必要です。
第一弾として、編集委員とI氏に参加をお願いしています。
また、サブの管理者としてI氏と編集長の草野さんにお願いしたいと思っています。
*I氏(都内)
完全護憲の会ホームページ「憲法関連資料2」に以下の資料またはリンクを追加致しました。安保関連法など追加すべきものはまだまだあるかと思いますが、徐々に増やしていければよいかと思っております。
1.サンフランシスコ講和条約(日本国との平和条約)2.日韓基本条約 3.日中共同声明 4.日中平和友好条約 5.日華平和条約 6.日ソ共同宣言 7.大西洋憲章 8.カイロ宣言 9.ヤルタ協定 10.降伏文書 11.旧・日米安全保障条約 12.日米安全保障条約 13.人種差別撤廃条約 14.女性差別撤廃条約 15.子どもの権利条約 16.難民条約 17.難民議定書 18.障害者権利条約 19.日本国憲法の誕生(国立国会図書館)20.ミネソタ大学人権図書館 21.裁判所
2) ニュース
文芸評論家、加藤典洋氏がさる10月、新著『戦後入門』で新9条案を提起している。その内容は、陸海空の戦力の一部を国土防衛隊、残りを国連の待機軍とし、交戦権を国連に委譲する、というもの。氏の立場は9条の改正であり、われわれと全く異なるが、発想は似ている。
1
完全護憲の会ニュース No.23 2015年11月10日
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話・FAX 03-3772-5095
Eメール:kanzengoken@gmail.com
ホームページ:https://kanzengoken.com/
目次
① 第22回 例会の議事録
③『日本国憲法が求める国の形』追加項目(試案)
④次の例会・勉強会のご案内
別紙 1 政治現況報告
別紙 2 『補遺(一試案)』への疑問 I氏
別紙 3 事務局報告
さる11月1日(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で第22回(10月)例会を開催、参加者18名。入会者 計44名。
第22回 例会の議事録(要旨)
草野編集委員長が司会し、まず岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)からの政治現況報告(別紙1)があった。
ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が「『完全護憲の会』の基本は何か、憲法に照らして国政の全貌を明らかにし発表することであり、政治活動はしない。パンフの『補遺(一試案)と補遺№2』を提案している、検討いただきたい」と発言。※補遺№2は事務局の手違いで準備できず、配布できなかった。
なお、この『補遺(一試案)』に対してI氏から意見(別紙2)が寄せられた。
そのあと福田玲三共同代表(事務局担当)から事務局報告(別紙3)があった。
これらの報告・発言にたいする質疑・討論は次のとおり。
●田中)憲法に即して考えるという意味で、憲法31~40条にかかわって刑事訴訟法の原則にもとる事態が現出している。東京新聞によれば、9月18日近辺でしたか、シールズのメンバーが国会前行動において現行犯逮捕され、10日間も拘留されたとのこと。憲法21条(表現の自由)が侵されている。注目すべき記事だが他のマスコミが報じていない。臨時国会開催要求に応じない政権与党は憲法53条違反である。来年の参院選で注意すべきは来年の夏にサミットが開催され、オリンピックもある。国民の関心がそちらに誘導される危険性がある。
●T)NHKは会長がああいう風だから、私はNHKニュースで政治の話になったらチャンネルを変えるようにしている。私が解せないのは、ラグビー日本代表の首相表敬訪問などの写真を、新聞が大きく取り上げることだ。
●後藤)写真掲載に目くじらを立てるのではなく、一緒に喜べばいいではないか。目くじらを立てるから、われわれはが変な風に見られる。
『完全護憲の会』の皆さんには、日本国憲法の普遍性だけではなく歴史性にも着目してほしい。立憲主義という土台が脅かされている今こそ、次のパンフレットでも取り上げてほしい。例えば31条以下の刑事訴訟法の総則的部分は、アメリカにもない。GHQのローヤー(法律専門家)たちが、自分たちの理想を追求して作った結果だ。旧憲法下では、裁判によらずに投獄された人たちがたくさん獄死を強いられた。三木清も戦争が終わってから獄死した。
24条のような条文についても、スイスで女性に参政権が認められたのは1970年代だ。25条のような条文は、アメリカには無い。とくに、大日本帝国憲法から大きく変わったのは司法だ。旧憲法下では裁判所は法務省に付置され、裁判官は天皇の名で裁判を行っており、司法権の独立は無かった。ただ、日本国憲法の下でも、人材が足りなかったので旧憲法下の裁判官たちをそのまま使わざるを得なかった。戦後も「判検交流」の慣行が続いた。
ちなみに、現憲法の17条は何か皆さんご存じだろうか。公務員の不法行為による損害を賠償する権利を定めているものだ。これが基になって国家賠償法が作られている。 この17条は、「公務員」は裁判官を除外していない。最高裁は、昭和50年代(1975年前後)に、裁判官に「下駄を履かせて」、「17条にいう不法行為とは、裁判官が悪意を持って、一方を勝たせてやろうとしたときに限る」としたが、そもそも今の裁判官は、裁判が出来ないくらい劣化している。児童福祉法も然り。法律があっても省令や通達でがんじがらめになっていて、児童相談所が絶対権力になっている。
私は、今の状況では、「憲法を守れ」以前に、「法律の文言通りにやれ」と言いたい。
●野村)憲法では「何人も…賠償を求めることができる」と書いているのに、国家賠償法では在日外国人を除外する文言になっている。
●S)この間、大間に行ってきた。マグロの産地で自然豊かなところなのに原発を進めていることに疑問を感じた。原発、TPP、戦争法、すべてたくさんのお金が絡んでいるという意味で、経済の問題を取り上げて議論してみたい。
司会者からI意見(別紙2)の説明を求める。
●I)補遺(一試案)について疑問と思われる点について書かせていただいた。内容は読んでいただければわかると思うので。
● 野村)補遺(試案)を提起しているが、皆さんからも提起して欲しい。田中さんご指摘のように、私たちのパンフは刑事訴訟問題、そして労働問題、経済問題に弱いと思う。
● 高橋)そもそもで恐縮だが、この会(特にパンフレット)の目的は、何なのか?
● 野村)われわれは、特定の政治勢力を支持していこうなどとは考えていない。そんな力も無い。ただ、「今の現実は、憲法からこんなにずれていますよ」と、世間に知らせる役割を目指している。例えて言えば、アンデルセンの童話『裸の王様』で、「ああ、王様、きれいなお召し物で」と褒める大臣に対して、「王様は裸だ!」と告発する子どもの役割だ。
● O)これまでの護憲はほとんど部分護憲で、天皇条項は反対というような。こうした選択護憲ではなく現憲法を全部守ろう、ということで発足したのが完全護憲の会の趣旨だと思う。
●後藤)日本国憲法は実現されていない。私が完全護憲の会に共鳴したのは、日本国憲法を完全に実現したいとの思いからだ。だから、「日本国憲法完全実現の会」にしたい。
●川本)補遺集に関してメールで3つのテーマ(安保法制、原発、TPP)にしぼるべきとの意見を出している。パンフ第一集をつくる過程は大変だった。あらためて全条項を見直すのは現状では無理。稲田さんの安保法制強行可決問題に焦点をあてて議論してはとの意見に賛成。みんなが集中できるテーマにしぼりたい。
●K)今は崖っぷち、緊急事態と言っていい。今は逐条的に検討している余裕はない。川本さんの提起された安保法制、原発、TPPの3課題に集中すべき。
●榊山)野村さんに聞きたい。政治活動しないというが…。
●野村)われわれの活動は宗教的伝道に似たところがある。補遺の全部を並列的に議論して欲しいとは言っていない。緊急性のあるテーマを優先することはかまわない。
●K)先にあげた優先すべき3課題とともに、恒常的テーマとして特別会計、司法、マスコミ問題を重視したい。
●後藤)新しいパンフレットで重点的に扱って欲しいと思うのは、憲法23条(学問の自由)と26条(教育の権利)だ。また、野村さんだけではなく、他の人がどんどん、パンフレットの内容を提案すればいい。今は、文章としてまとまっているのが野村さんのものだけだから、それに対してみんなが文句を言うだけ、という構図になっている。
官僚は情報を握っているなどの強みがあるが、決定的な弱点がある。それは、彼らは組織の一員でしかなく、自分の頭で考えていないということだ。これに対してわれわれは、一人一人の個人として考え行動している。これが強みだ。
● 田中)パンフレットという印刷物に拘らなくてよいのではないか。印刷物だと、一旦作ってしまうと、次の版を出すまでに多大な時間と労力を要する。これに対して、年間10万円かかっても外部委託してホームページを充実させたら、柔軟に対応できるだろう。若い人たちにスマホで見てもらうこともできる。
● 川本)既にホームページは出来ている。皆さんからどんどん原稿を寄せてほしい。外部委託はその先の話だ。
※ 以上の議論の結果、それぞれが重視して取り上げるべきと思うテーマ出し合うこと、できれば原案を提起もらうことを、確認した。
4.「戦前世代として語る」(報告:福田玲三氏)
戦前の軍国主義時代の体験を報告(省略)
最後に、会員それぞれが重要で取り上げたいと思うテーマを提起し、できれば文章化して提案して欲しい、と司会者がまとめた。また、事務局から来年1月総会に向けて会費や会則について検討していることが報告された。
次の例会・勉強会のご案内
日時 11月22日(日) 13:30~16:30
場所 港区・三田いきいきプラザ・「憲法研究会」
〒108-0014 港区芝4-1-17 電話03-3452-9421
JR 山手線・京浜東北線、田町駅西口から徒歩8分
地下鉄 三田線・浅草線 三田駅 A9 出口から徒歩1分
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
違憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
事務局報告 福田玲三(事務局担当)
討議 報告および提案への質疑、意見
会場費 100円(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話 03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
<別紙 1>
政治現況報告 2015年11月 1日
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
安保法制を強引に成立させ、予定通り長期国会を乗り切った安倍首相は10月7日、内閣改造に着手。その日のうちに第三次安倍改造内閣を発足させた。これも予定通り、谷垣幹事長以下、自民党四役を留任させ、内閣も麻生副総裁財務相、高市法相、岸田外相、塩崎厚生、甘利経済再生、中谷防衛、石破地方創生、遠藤五輪、菅官房長官と主要閣僚9人を留任させ、新任大臣9人、河野太郎行革相を除いては新鮮味のない、全く守りの人事だった。女性重視と云いながら新任は丸川珠代環境相と島尻沖縄・北方、高市氏の3人だけ、第二次の五人から三人に減った。
安倍首相は組閣に先立っての記者会見で、政権スタートのアベノミクス三本柱(規制緩和、財政投資、経済の総合活性化)がほぼ実現したとして、新しい三本柱として①GDP600兆円(14年度は名目で490兆)の達成、②出生率1.8%(現在1.42%)の実現、③介護離職ゼロ、をあげた。
しかし、この新三本の矢は、あくまでも目標であって、実現は到底困難、参院選対策と国民への目くらましである、との厳しい見方が強い。特に第一次三本の矢の目標、「完全な日本経済の活性化」が実現しておらず、その検証さえ終っていない、との指摘もある。しかし安倍首相は、その十分な説明もなく「一億総活躍社会」を大目標に掲げ、腹心の官房副長官加藤勝信氏を新設の一億総活担当大臣に任命した。一億というのは、戦時中の「一億総動員」とか「一億玉砕」など嫌なイメージがあり、うさんくささが先立つ。その総会を開いたが、まだ何をするかも明白でない。地方創生とも重なる。
野党は安保法制の問題点や先日合意に達したTPPの内容、新内閣の方針を確認したいと、政府に臨時国会を開くよう要求した。憲法53条には「いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とあるのに、外交で首相がいないとか、予算編成があるとか言を左右にして開会に応じようとしない。これは憲法違反である。
早くも新閣僚(馳文部、森山水産、島尻沖縄ら)にスキャンダルが出ており、TPPや沖縄問題、安保法制など、政府としては国会を開きたくない事情がある。これに対し野党は安保法案廃棄のため、来年八月の参院選に向け、野党協力を模索し始めている。特に共産は志位委員長が暫定政権を提案、しかし党内が割れている民主党は選挙協力までで、政権構想には反対だ。しかし、それなしには参院選には勝てない。維新の党も真っ二つに割れ、野党の一本化は難しい状況だ。
<別紙 2>
「補遺(一試案)」への疑問 2015年11月1日 I
「完全護憲の会ニュースNo.22 別紙2-1 パンフレット「補遺(一試案)」について」によれば、野村光司共同代表による「「日本国憲法が求める国の形」補遺(一試案)」(以下、「野村試案」を略す)について、「これを誘い水として会員諸氏から遠慮なく問題の提起をして頂き、全員の討議を経て」云々とあるので、大変僭越ながら、前半部分(20条まで)に関して、いくつかの疑問を(恐懼しつつ)提起させていただきたい。
前文第2項「人間関係を支配する崇高な理想」について
日本国憲法前文第2項第1文は、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と述べている。この中の「人間相互の関係を支配する崇高な理想」について、野村試案は「「心の中に人間愛、口に出す言葉にウソがない」ことに集約されよう」と述べている。しかし、憲法制定史の知見によれば、この文言は、GHQ草案(1946年2月13日)の前文第2項第1文「われらは恒久の平和を念願し、今や人類を揺り動かしつつある人間相互の関係を支配する崇高な理想を完全に自覚しつつ、平和を愛する世界の諸人民の正義と信義に基づいて、われらの安全と生存を確保しようと決意した」に由来するものであり、さらにこの中の「今や人類を揺り動かしつつある崇高な理想」という表現は、マッカーサー3原則(「マッカーサー・ノート」、1946年2月3日)の中の、戦争廃止を謳った第2原則中の、「日本は自国の防衛と保護を、今や世界を揺り動かしつつある崇高な理想に委ねる」に由来するものであることは明らかである。このような歴史的経緯を踏まえたうえで、前文2項と9条との密接な関係に鑑みて考察すれば、ここで言う「人間相互の関係を支配する崇高な理想」とは、「人間愛」や「ウソの排除」といったことではなく、「人間相互の関係における暴力の廃絶と平和的共存の追求」という理想を意味していると解するのが妥当であると考える。
同項「平和を愛する諸国民の公正と真偽に信頼して、われらの生存と安全を保持しようと決意した」について
野村試案のうち、「国連軍の存在に希望を掛けた」という部分についても疑問はあるが、その点は(パンフレットの記述そのものに関わる問題なので)今は脇に置き、「このためには先ず周辺諸国との間で国境問題と歴史問題とをクリアして、これらの国を我が国との関係で「平和を愛する国」としなければならない」との提案について――。
野村試案によれば、中国、韓国、ロシアといったわが国との間で「国境問題と歴史問題」を抱える国を、日本が「国境問題と歴史問題とをクリア」することで、日本に対して「平和を愛する国」に変えることが必要だとされる。
しかしながら、憲法前文2項の「平和を愛する諸国民」の英訳は「the peace-loving peoples of the world」である。一方で、前文第1項に「日本国民は(……)政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」とあり、他方で第2項後段に、「全世界の国(all peoples of the world)が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有する」とあることと照らし合わせて考えれば、これらの文言の背後には、「戦争を起こすのは政府であって、人民(peoples)は本来、平和を愛する(peace-loving)存在であり、それゆえ、平和的生存権を有している」という思想があるように思われる。もちろんここにはいささか人民を理想化しすぎている嫌いがある面は否めないとはいえ、例えば、国連憲章前文が「われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度までも言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い」という文章で書き出されているように、当時の世界を覆っていた戦争の忌避と平和への希求の強さを思えば、このような解釈はむしろ自然なものだと思われる。そうだとすると、この文言を、砂川事件最高裁判決の言うように、世界の中に「平和愛好国」とそうでない「平和非愛好国(≒戦争愛好国)」とがあって、日本は前者のみの「公正と信義」に信頼しようとしたというように解釈すべきではないだけでなく、野村試案のように、近隣諸国を日本との関係においてのみ「平和愛好国」であるようにすればよい、といった解釈も採りえないと考える。
第14条「法の下に平等」(賭博場経営における平等)について
公営賭博をどうすべきか、というのは政策問題ではあっても、なぜそれが憲法14条の問題になるのか、理解できない。憲法問題として論ずるとしても、せいぜい「営業の自由」(22条)の正当化根拠の問題として論じうる程度ではないだろうか。
第14条「性別により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」(女子クォーター制は違憲)について
野村試案は、「「女子」であることだけで、これを男子より優遇するのは違憲である」と述べており、これだけ読めば当たり前のようであるが、カッコ内の見出しに「女子クォーター制は違憲」とあることから類推すると、女性を対象としたあらゆる割当制度(quota system)を違憲とされておられるように思われる。しかしながら、14条の平等原則は、事実上の差異を一切無視して人を一律均等に取り扱うこと(絶対的・形式的平等)のみを要請するものではなく、事実上の差異や社会的差異に比例して人を別異に取り扱う相対的・実質的平等をも要請していると解釈するのが通説である。それゆえ、社会的・構造的差別のために様々な不利益を被っている人々(障害者や各種マイノリティや女性)に対して、積極的に一定の優遇措置を提供することにより、実質的平等を確保しようとする措置(積極的差別是正措置、積極的改善措置、アファーマティブ・アクション、ポジティブ・アクション)は、一概に14条違反とは言えず、それが行き過ぎて「逆差別」に当たる場合に初めて14条の平等原則違反となると解される。割当制度をその一形態として含む積極的差別是正措置の合憲・違憲論争はそうした制度がすでに導入された欧米諸国において激しく論じられているが、ある制度が実質的平等を促進するものとして合憲となるか、それとも「逆差別」になり違憲とされるかは、具体的な制度に即して論じられるべきものであり、あらゆる「割当制度」をアプリオリに違憲であるとは断定できないと思う。
第15条3項「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」(選挙権は公権であり、義務を含む)について
野村試案は選挙権を権利であるとともに義務であると主張しているが、これは、選挙権の本質をめぐる学説上の争いにおいて二元説(権利と義務)もしくは公務説と呼ばれる立場、とりわけ義務・公務性を強調する立場であると思われる。これに対して、「人民(プープル)主権」論の立場から、権利(一元)説が唱えられており、私も、権利説に与したい。選挙権は国民主権を実質化するうえで不可欠の重要な権利であるが、憲法は国民に対して憲法尊重擁護義務(99条)を課しておらず、また、幸福追求権(13条)や思想・良心の自由(19条)を保障しているところから、国民が政治や世俗社会に背を向けて隠遁生活を送る自由も、アナキズムを信奉する自由も当然に保障しており、棄権の自由も当然に認められている。したがって、選挙での投票は「義務」とまでは言えず、棄権常習者を公務員から排除することは、平等原則や思想・良心の自由や職業選択の自由に照らして違憲の疑いが強いといわざるを得ないと思われる。
第20条第1項第1文「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」(A級戦犯の分祀を求めることはできない)について
野村試案によると、「宗教団体である靖国神社がA級戦犯も神と崇めるのは自由であり」、「近隣諸国との関係では、首相その他の公務員が本条第3項により、参拝しさえしなければ済むことである」とのことである。仮に靖国神社が純粋な一宗教法人にすぎず、政教分離の原則が厳格に守られている状況にあるなら、その通りであろう。ところが、第3次安倍改造内閣においては、安倍首相を含む20人の閣僚のうち、17名が「神道政治連盟国会議員懇談会」に、13名が「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」に所属(重複所属は11名)しており、過去の侵略戦争を「アジア解放」のための聖戦として美化する“靖国史観”内閣とも言うべき惨状を呈している。もちろんそれ以前から、安倍内閣の一部の閣僚は毎年、春・秋の例大祭などに合わせて靖国神社公式参拝を繰り返し、安倍晋三自身も真榊奉納など、明白な政教分離違反行為を繰り返している。靖国神社の本質が近代日本の行った戦争を正義の戦争として正当化し、「祖国のために死んだ兵士」を英雄として讃え、国民を新たな戦争に駆り立てる装置であるところにあり、A級戦犯は日本の戦争責任を矮小化するためのスケープゴートにすぎない以上、A級戦犯を分祀するか否かは副次的な問題にすぎない。とはいえ、旧厚生省が遺族援護法などを適用できる「公務死」として認定した人々の名簿を靖国神社に提供し、それを基に靖国神社が合祀を行ってきたという、それ自体、政教分離原則違反の国家機関と靖国神社の提携という歴史的事実を棚上げにして、(「合祀」はできたが)「分祀」だけは政教分離原則違反だというのはご都合主義の謗りは免れないだろう。
野村試案が問題視する「建国記念日」の問題点は、単に「ウソ」や「偽装」であるというだけでなく、それが「紀元節」という国家神道に基づく天皇神話を復活させようとする反民主主義的で復古主義的な試みであるところにある。それを中心的に担ってきたのが神社本庁であり、1966年にそのたくらみが成功すると、神社本庁を主体として「神道の精神を(……)日本国国政の基礎」とすることを目的とする神道政治連盟が発足し(1969年)、翌年には同連盟と提携する神道政治連盟国会議員懇談会が結成され、現在、安倍首相がその会長を務めている。神社本庁と神道政治連盟はその後、靖国神社国家護持法案の制定運動、元号法制定運動、国旗国歌法制定運動などに取り組み、1979年に元号法、1999年に国旗国歌法の制定に成功している。
現在、日本の政治状況がここまで極右化し、歴史修正主義に侵されてしまった原因のひとつに、政治家と神道=靖国勢力との結託があることは間違いないだろう。そうであるなら、憲法20条1項を取り巻く現状は、「首相その他の公務員が(……)参拝しさえしなければ済むことである」といって済むような状況ではない。公式・「非公式」を問わず、公務員の公務在職中の参拝はもちろん、公務員による真榊奉納のような宗教行為も厳禁し、神道政治連盟国会議員懇談会は直ちに解散すべきである。
同条同項(植民地兵の分祀も求められない)について
野村試案はまた、「植民地兵の分祀も認められない」と主張する。その理由は、「宗教団体などが何を神として尊崇するかはその宗教団体の自由である」から、とされる。確かに、宗教団体にも信仰の自由は認められているが、だからといって、他者の人権を侵害することまで許されているわけではない。旧植民地兵の遺族が(分祀ではなく)合祀取り下げを求めているのは、日本による植民地支配下で半強制的に徴兵され、恨みをもって死んだ親族が、日本の植民地支配のための戦争を栄光の戦争として顕彰している神社に、侵略国の「英霊」として祀られることが耐え難い侮辱であると感じているからであり、まさに人格権の侵害の除去を訴えているのである。公然たる「悪魔祓い」が名誉毀損罪を構成するとするならば、靖国神社のこうした独善的で傲慢な「信仰の自由」は、心ならずも「護国の英霊」として祀られてしまった旧植民地兵の遺族の人格権を侵害するものと言えるだろう。
<別紙 3>
第22回例会 事務局報告
福田玲三(事務局)
1) ニュース22号への意見など(いずれも要旨)
*珍道世直氏
完全護憲の会ニュース22号 拝受いたしました。誠に貴重な内容の資料、毎回毎回短時間でここまで纏められるご情熱とご苦労に心から敬意と感謝を表します。落ち着いて噛みしめて参りたいと存じます。また、この度も事務局報告に私のコメントをお取上げいただき有難うございました。
「違憲立法」に対する訴訟の動きが、全国的に鈍いように思われます。もう一度、訴訟を起こさなければならないのかと思いめぐらし、訴状作成の準備を致しております。どうか今後ともご指導くださいますようお願いいたします。
*龍平四郎氏
今回の22号は読み応えがありました。また パンフレット「補遺(一試案)」と「『日本国憲法が求める国の形』補遺(-試案)」たいへんよかった。
龍平四郎へのSさんの回答 ありがとうございました。説得力ある言葉で、この言葉がすぐ出るぐらい記憶にとどめたいと思います。
<別紙1>
政治現況報告 岡部太郎共同代表
「諸状況を政府がそう判断する」「白紙委任状せよといわんばかり」の表現は、まったく同感であります。また、後半のフランス人は権利は自分達で勝ち取ったという意識が庶民一人、ひとりに染み込んでいる。いい勉強させていただきました。
ユネスコ登録で「拠出金削減を検討」が政府から出ておりますが、私の感じることですが、どこかの国の声明なら、「みっともない」と笑うところだが、私が愛する国の声明と聞いて「はずかしい」です。
安保法制反対の民衆の叫び、国民世論の動きを一過性にしてはならない、と思います。 動けば変るということを実感するためにも、原発、沖縄、安保など何か一つでも成功することが大切と思います。
別紙 2-1(「補遺(一試案)」について)
野党も国民も政権の暴走を攻めあぐねている。原点は、田中耕太郎最高裁長官の「統治行為論」であるが、首相になった「権力者」は憲法に何ら考慮を払うことなく安心して暴走できる体制になっている。 政権の画策で違憲の国政が着実に進行し、護憲勢力が衰退の一途をたどらされている。
是非、パンフに添付してほしい文章です。
別紙 2-2(『日本国憲法が求める国の形』補遺(一試案))
大半において、大賛成です。 表現がいい部分とチョット頭を傾げる部分を列記させていただきます。
(前文)第2項
前660年2月11日「(偽装国家日本の)建国記念日」は間違いとすれば、正しいのはいつなのかを答える必要があると思います。不明なのでしょうか。
第7条第7号
上から4行目 これに最高級の叙勲をしたのは・・・ 政権の恣意ではなく国民的見地からいかに必要かを示している。 理解しにくい文章です。 政権の恣意ではないのでしょうか。
第14条
一旦、すべての賭博を自由化して・・・は極論ではないでしょうか。国論の統一には、時間と混乱がでる。 これ以上増やさないためにも現状をしっかり取り締まる。
第4項(出口調査)
禁止不要と思います。 なぜなら、会場内から情報発信可能である。出口調査禁止ならば、ケイタイ、スマホ持込禁止にする必要がある。
第20条第1項
国や第三者が「分祀」を求めることができない。 国家英霊として祭られているが、家族が「分祀」を望んでも叶えられない現状がある。
第21条
政権批判や政権容認、どちらも内容によって制約判断は必要と思う。
第22条第2項(移住の自由を侵さない)
現法では、「自己責任の原則を維持する他はない」 確かにそうではあるが、「何か手立てはないか」と思います。
第26条(いじめ) 15ページ中段
「村八分」 これは使用しないほうが良いと思います。また、公私いずれか自由にとありますが、偏ってしまうと思う。 現在の私立校選択でバランスが取れていると思います。
第29条
領有を認めて、損害ありとするものには補償。 これでは、ごね得、強いものが勝、の感がします。お互い国が、ある年数(50年など)お金の借款ではなく、土地の借款など、多種の意見交換で現状打破の必要があります。
別紙 4 後藤富士子弁護士
いい内容ですが、書面からはよくわかりません。 たぶん 会場内でのお話を聞けば、理解でき勉強にもなるのでしょうか。一度、会場に行きたいと思っておりますが、妻介護の立場ですので時間とれなく、とても残念に思っております。 今回は長文となりました。 8ページに野村さんの「これを誘い水として会員諸氏から」とお言葉がありましたので、お言葉に甘えました。
*Sさん(都内西部)
いつも月報をお送りくださいましてありがとうございます。私ごとですが、腰部脊柱管狭窄症の手術を受けまして、一か月になりますが、まだ思うように、外出が出来ません。もう少し快復致しましたら、また頑張れると希望を持っております。
先生方の提言や資料本当にありがたくおもいます。御健康で御活躍下さいますようにお祈り申し上げます。
*T氏(神奈川県)
本日、神奈川新聞の「時代の正体」を添付いたします。歯切れが良いです。
10月16日付 神奈川新聞・論説委員 石橋学
「本紙の記事が偏っているという批判が寄せられる。それには『偏っている』と答えるほかない。安倍政権の悪口ばかり書くなということかもしれない。これにも『仕事ですから』としか答えようがない。……」
*清林保(関西)
ニュース22号ご送付ありがとうございます。今号は特に読みごたえがありました。
2)「天皇は特権的存在ではない」というS氏への回答(続)
①福田回答(略)
① S氏の意見(要旨)
ご返事拝読しましたが、かんじんのところがさっぱりわかりません。
私が7月22日付の手紙でまずお尋ねし、さらに8月21日付の手紙で重ねてお尋ねしたのは、次の点でした。
それは貴会が『日本国憲法が求める国の形』の15ページにおいて、「天皇」をして、「憲法14条の一般規定に対する特別規定」としての存在、すなわち特権的存在だとみなしていることに対する疑問についてでした。
今度の回答から解ることは、4条1項に言う「国政に関する権能」なるものは、前文に言う「国政」に関する「権力」の「行使」と同意だとする貴会のご見解です。
そして「象徴は公務である」ゆえに、一般の公務員と同様、非選挙権は無い、ということ。しかし投票権は認められるとのご見解であることもわかりました。
以上のご説明から導き得るものは、「天皇」は「国政」上、一般の公務員なみの「権能」しか有していない、ということです。私にはそれ以上のことを導くことは出来ません。
従って、それらのことが、なぜ、どのような論理によって、14条2項の例外規定たる特権的存在としての「天皇」に結びつくのか、まったく理解できません。
この、もっともかんじんの点、一点に絞って一つ一つ論理を追って解り易くご説明いただけないでしょうか。
② 草野回答
前略 この度はS様のご意見に対する当会の回答にご納得いただけず、再々度のご意見を賜りましたこと、恐縮いたしております。今回、S様への三度目の回答を担当することになりました編集委員長の草野好文と申します。
この度のS様の当会の見解に対するご意見は、憲法の法理論上の難問で、法律の専門家でもなく、憲法学者でもない私たちにとっては、S様が納得できるような明快な回答ができる力量を持ち合わせていないことも率直に申し上げておきたいと思います。
実はS様への二回目の回答は、当初、私草野が担当することになり文章を書き上げたのですが、その内容が「天皇は基本的人権が奪われた存在である」との認識を基調としていて、S様が主張されている天皇は主権を持たず国民以下の「法的存在」との認識に通じるものでした。これに対して編集委員会の多数見解は、日本国憲法は天皇の基本的人権を認めていないはずがない、参政権も禁じてはいない、とするもので、私の回答案は退けられた次第でした。
それゆえ、この再々回答では、S様のご意見に一部同意する私の個人的な見解は割愛し、S様が「一点に絞って」説明して欲しいという点にのみお答えしたいと思います。
振り返ってみますと、この間のS様と当会のやり取りは、S様の主張する論理にきちんと噛み合ったものではなかったのだと思います。同時に、S様の当会パンフレットの天皇条項の読み込みにも何らかの先入観があったのではないか、と思われます。
まず、S様が一番の問題点として指摘されている「貴会が『天皇』をして特権的存在だとみなしていたから、異を唱えた」とされる点です。
確かに私たちは、現実の存在としての天皇(そして皇族も)は特権を有する存在であると認識しています。皇居と言われる広大な邸宅に住み、那須や葉山にこれまた立派な別荘を所有し、国庫から支給される莫大な金額の内廷費・宮廷費によって一般国民とは隔絶した生活が保障され、その生活を支える使用人やその警護にあたる公務員は相当数にのぼります。そしてそれゆえに、天皇と皇族は貴き存在として遇され、国民の多くから尊崇の対象とされているからです。これはまぎれもなき特権的存在と言えると思います。
しかしながら、私たちが現実の存在としての天皇を特権的存在と認識していたとしても、当会パンフレットが第1条関係「象徴天皇制の容認」の項で、「第1章天皇の規定が現憲法にあるので、憲法14条の一般規定に対する特別規定として象徴の限りで受け入れねばならない」としたことが、何故に「法的存在」としての天皇を特権的存在とみなした、と言い得るのでしょうか。
その根拠としてS様は、最初の意見書において、「第14条第2項に言う『華族及びその他の貴族の制度』というのは、特権を有する存在に関する制度のことだと思います。」「貴会は『天皇』をして、この一般規定に対する特別規定として受け入れるとのことですね。しかし、そうしますと、それは『天皇』も又、特権的存在だとみなしていることになってしまいます。」と述べられています。
確かにパンフレットは、「憲法14条の一般規定」とのみ表現し、その各項について言及していませんから、S様が述べられているように、それは14条2項を根拠にしているのであろうと推論されるのも無理はありません。しかし、私たちが一般規定としてとらえ重視したのは14条1項の「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」ということなのです。(この第14条1項は、パンフレットの「発行にあたってのごあいさつ」にも引用し、これに焦点を当てています。)
第1章天皇条項は明白にこの第14条1項が規定する「法の下の平等」に反し、「差別されない」としながら差別を天皇に限って肯定するものだからです。
パンフレットが「象徴の限りで受け入れねばならない」としたのは、第1章天皇条項が第14条1項と対立しているという事実を認めた上で、しかし、第1条の特別規定が第14条1項の一般規定に優先する、ということを根拠にしたものなのです。
以上の経過に見られるように、パンフレットが「象徴の限りで受け入れねばならない」としたことの中には、「法的存在」としての天皇を「特権的存在とみなした」事実はなく、「象徴」をも「特権」とみなした事実はありません。特権があるともないとも言っていません。第14条2項を根拠にしたものではないからです。
このように申し上げると、またしてもS様の疑問に正面から答えない不誠実な態度と受け取られかねませんが、これが私たちの正直な気持ちです。
今回、S様が提起された論点は、私たちが「天皇をして特権的存在」とみなしたか、言ったか、の問題とは別に、象徴天皇(制)に関する憲法の法理論上の問題提起なのだと思います。
それゆえ、前述しましたように、法律の専門家でもなく、憲法学者でもない私たちには明快な回答をする力量がない、答えられない、ということを率直に申し上げたいと思います。
この間のS様とのやり取りで、これ以外の論点も出ましたが、おかげさまで多くを勉強することができました。感謝申し上げます。(後略)
3)パンフ『日本国憲法が求める国の形』補遺の行程表
*野村共同代表提案(要旨)
現政権は物凄く精力的に「日本を取り戻す」、すなわち戦前の日本を取り戻すべくトータルの政策を打ち出しています。
アメリカは南沙諸島で中国軍と対決を辞さぬ艦船の乗り入れをしようとしています。集団的自衛権で自衛隊がこの戦場に投入される法的根拠ができてしまいました。
「地方創生」は、地方自治権を否定して中央権力の指導と承認で地方が動かされるものです。「一億総活躍」、これは言うまでもなく憲法13条の個人が尊重され、その自由で活動してくれというのではなく、中央政権が指導するように一億一心で動かそうとしているのです。そしてこの内閣の支持率は50%に及ぼうとして、片や革新政党は数%以下です。安倍大元帥陛下の下、全政治家、全国民が動員されようとしています。安倍さんは誠に敬服するに値する大政治家ですが、彼はこれまでの憲法否定の保守政治の完結点で政権をとったことが彼に幸いし、国民には禍になろうとしています。
われわれは坂本龍馬ではないが、「日本国を洗濯申し候」、保守政権が過去数十年間、粛々として実現してきた「憲法否定」、すなわち「権力優先、人権否定」の国政の成果を、トータルに日本国憲法の洗剤で洗濯したいものとして発足しています。
法治主義の原則からも全国民の平和のためにも世界平和のためにも方向としては絶対に正しいと思います。日本国憲法の求める国の姿をトータルに示すことが最も正しい政策だと信じます。
だとするならば、わが会の、これからの作業の手順を表す「工程表」を早急に会員全体に示さねばなりません。すでに前回の例会で「補遺」案を提示して、会員各人がこれを呼び水として、問題と感じているものを提示して欲しいと言ってあります。私もさらに2,30のテーマを用意しています。編集委員の皆さんも各々の活動で感じておられる憲法問題を提示していただき、一般会員にも(投書者からは既に貰っている)提示して貰い、この1~2ヶ月の間で項目を集約して、順次、組織の討論によって固め、順次発表できるようにしてはどうでしょう。
その順序は、憲法の条文の構成順でも良いし、提案者の熱意の強さに従っても良いですが、次の編集委員会にはこの「工程表」の問題を議論して頂けないでしょうか。
国情から、ことは急がれていると思います。われわれの良きものを、国家社会に対して腐らせてはならないと思います。
*川本委員提案(要旨)
次回例会に、どれだけの方が補遺集案を読み、自分の意見を出してくださるか。
東京新聞の記事がパンフレットや記者会見の内容ではなく、「戦争体験世代の護憲活動」に焦点に当てたように、集まったみなさんもパンフレットの内容への共感ではなく、「戦争体験世代の護憲活動」への興味とリスぺクトと、「完全護憲」という新しい名称のグループでの学習と情報交換の期待でしょう。
野村さんが事態は急務だとおっしゃるように、安倍の横暴をストップさせるには、参議院選挙で反自民勢力を勝利させることです。反自民を勝利させるには野党共闘ができるか否かです。
補遺集が野党共闘のための憲法論になるなら面白いですが、クオーター制のように、現在も選挙時も争点にならないことまで取り上げるのは、現状での憲法論として、害あって益なしでしょう。
野党共闘を目指す政策合意として
反安保法案(含む沖縄問題)
反原発
反TPP
に関する憲法論に絞った補遺集なら、会員の皆さんも歓迎でしょうし、完成したらマスコミも取り上げてくれるでしょう。
野村案では「選挙の出口調査を違憲」とされていますが、出口調査に答える、答えないは個人の自由です。マスコミによる出口調査で開票と同時に当選確実が出る状況はともかく、市民活動としての出口調査は、違法な選挙、違法な開票集計をチェックするため方法として期待されています。
*O委員提案(要旨)
川本さんの意見に賛成です。参議院選前に行うとしたら、野党共闘・選挙協力に資する必要があるのでは。時間もないし、全面展開する余裕もありませんから、川本さん指摘の3点に絞って補遺集を出すなどを考えたらと思います。また、補遺集を出すことにより、新たなカンパもお願いできるのでは。
*M氏
川本さんの意見に賛成です。
4)今後の日程(略)
5) 集会案内
11月 3日 12:45~ かながわ憲法フォーラム主催「わたしたちは憲法違反の戦争法をみとめない」於・かながわ県民センター。資料代500円
11月 5日(木)15:30~17:30 出版記念シンポジウム(『検証「安倍談話」戦後70年・村山談話の歴史的意義』)於・憲政記念館・講堂(東京都千代田区永田町)。会費2000円(本代を含む)
11月 5日(木)18:00~ 立川市教育委員会主催「砂川闘争60周年の集い」於・立川市市民会館
11月20日(金)13:30~20:00 長坂伝八氏他主催「『7・1閣議決定』違憲訴訟のための相談会」於・港区・神明いきいきプラザ。
完全護憲の会ニュース No.22 2015年10月15日
さる9月22日(日)、港区・神明いきいきプラザ集会室で9月例会を開催、参加者16名。入会者 計44名。
第21回 例会の報告
草野編集委員長が司会し、まず岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)からの政治現況報告(別紙1)があった。
ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)からパンフレット「補遺(一試案)」(別紙2-2)についての報告(別紙2―1)があった。
そのあと福田玲三共同代表(事務局担当)から事務局報告(別紙3)があった。
これらの報告にたいする質疑応答は要旨次のとおり。
●後藤弁護士「S氏と回答側の双方に深刻な間違った見解がある。『憲法読本』(杉原泰雄)P225「象徴天皇制について」学んで欲しい。天皇の行為は「国事行為」に限定されているが、国会での「おことば」などはどうなのか? 私人としての行為、拡大される危険性。 天皇(皇族)には戸籍がない。氏(ウヂ)がない。選挙権がない。天皇はお飾りで、象徴天皇制を理解すべきだ」●野村共同代表「天皇の身分と職務、つまり私人と公務は分けて考えるべきだ。選挙もできる(参政権はある)。それは手続きの問題だ」● N「違憲の安保法案が強行採決で成立した。公布にあたっては天皇の署名がなされると思うが(4条、7条)、99条の憲法尊重・擁護義務に従って、署名を拒否できるのではないか?」●後藤弁護士「できない」●K「天皇は内閣の助言と承認に基づかなければならず、これを拒否できない?」●野村共同代表「署名を拒否したことある。日本政府が東京大空襲や広島・長崎への原爆投下を指揮したルメイ米軍指揮官に勲章を授けようとしたとき、これを拒否し、代理人がこれを行った」
●S「共産党が来年の参議院選に向けて選挙協力を打ち出した。評価できるか?」●野村共同代表「これまで共産党が全選挙区に候補者を立てるため、与党候補を利してきた。小選挙区制の場合、過半数獲得できないときは本来決選投票をすべき。外国にその例がある」●岡部共同代表「過去の社共共闘など、選挙協力の例はある。岡田民主党は選挙協力はやりたいはず。しかし、連合政権はあり得ない」●K「共産党の連合政府提起に括目した。民主党が政権交代した選挙では、共産党は300候補を半数にした。その結果の政権交代だった。共産党はこれまで、沖縄以外の選挙協力はやらないと言ってきた。今回、やっとめざめてくれたという感じ」●川本「共産党の今回の提起が実現すれば、現在連立与党の公明党のような役割を共産党がはたせるのではないか」●N「強行成立させた安保法制を廃止し、安倍政権打倒の国民戦線を作るべきだ。参院特別委員会の『採決』は存在せず無効。クーデターだ」
ついで例会初参加者二人が自己紹介。
その後、後藤弁護士から「立憲主義の保障―憲法の番人はだれか?」について要旨(別紙4)に基づいて報告があり、最後にこれからの国民運動として①小選挙区制の変更(すぐには難しが)②衆参両院とも立候補に必要とされる供託金、小選挙区300万円、比例代表600万円の引下げ③特定候補の落選運動と押し出す運動、などが紹介された。
この報告に要旨次の意見が出された。
●野村共同代表「供託金には立候補を制限する悪意がある」●K「供託金にはもともと人材を出させない意図がある。小選挙区制のもとでは選挙協力が必要だ」後藤弁護士「違憲審査では、具体的な案件がなければ判断を下さないとしている今の裁判所に頼るのは疑問だ」●T「初めてこの会に参加したが、集会やデモに参加したいと思っていても、電車賃もなくて参加できない下層の民衆がいること知って欲しい」●K「『フライデー』9月25日号に福島原発事故後の甲状腺ガン多発が報じられている。『週刊金曜日』9月11日号に沖縄基地を本土に引き取る運動が紹介されている」●N「9・19参院特別委採決はクーデタであり、無効だ」●T「8・30は国会に行けず地元藤沢の集会に参加した。最初10人くらい。最後は40人ぐらい集まって道行く人々に訴えたが、圧倒的に無関心の人々が多かった。この現状をどうしたら変えていけるのか教えて欲しい。」
時間の制約で討議は以上で終了した。
第17回編集委員会の報告 2015年10月1日
<出席>野村、O、K、S、草野、福田の6人
1.オブザーバーとして初参加のSさんからの3点の問題提起を受けて議論
A 補遺(一試案)第99条について
B ニュース21号(事務局報告)への意見、龍さんの問いに関して思うこと
C S氏意見書への回答について
Aについて
・補遺(一試案)第99条に「憲法が国の最高存在」とあるが「最高法規」とすべき。
※「最高法規」とすることに賛成多。起草者の野村共同代表もほぼ同意。
Bについて
・龍平四郎氏の安保法案賛成を唱える人に「即答できる言葉がありますでしょうか」「教えて欲しい」との問いに対する、Sさんとしての回答。
・戦争は一度始まると簡単には終えられない。戦争は必ず、防衛、平和の名目で始まる事を知るべきだ。防衛力を高めるというが、その防衛戦には負ける可能性もある訳で、負けないためには抑止力どころか際限ない軍事装備が必要になり、かえって緊張は高まる。最後は核武装、核戦争、世界の破滅だ。
・憲法前文の平和の誓いを世界に広める事こそが世界平和を維持するのであり、過去の戦争惨禍の事実を真摯に受け止められないのであれば再び同じ惨禍を繰り返す事になるだろう、と憲法前文は言っているように思える。
Cについて
・4条1項の国政に関する権能とは、旧憲法1章に定められるような立法権や陸海軍の統帥など政治を執り行う権能を有しないということである。
・国政に関する権能をもたないことは旧憲法との違いであって、人権の問題とは別であり、国民より地位が下だと言うことはできないのではないか。
・皇室には内廷費、皇族費などの私的活動に関わる予算もかなりの額であることも考えると、差別があるとしても、国民より下とは言えない。
※上記につき、この問題でのこの間の編集委員会内部の意見も交え、かなりの時間を費やして議論。「天皇は基本的人権が奪われた存在」であるとしてS氏見解に同意する草野編集委員長以外の全編集委員がほぼ上記Sさん見解に賛意。
この結果、先に提案した「草野回答案」は棚上げし、改めてK編集委員が回答書を執筆することとなった。(K委員多忙のため、後に福田委員に交代)
2.パンフレット配布活動について
① 各国大使館への配布活動について
・先に在京大使館をリストアップし、そのすべてとするか、一部選別とするかの作業にとりかかるとしたが、遅れているので早急に結論を出 し、選別は野村共同代表に一任する。発送は事務局が担う。
http://www.plazahomes.co.jp/info/embassy/
・在京大使館への配布に伴って、パンフレットの「発表にあたってのごあいさつ」を英文化し、その翻訳をT氏に依頼した。(編集委員会後 の10月2日、T氏から出来上がったとのメールあり。)
② 先に大学各部局関係への送付はしばらく見合わせる、としたが、パンフの残部がかなりあるので、これを有効に活用するため、あらためて大 学各部局送付先を選択する。(担当決めるに至らず)
3.「パンフ補遺(一試案)」(野村試案)とパンフ追補版について
① 「パンフ補遺(一試案)」を第21回例会・勉強会に提示したので、今後は編集委員会のみの議論とせず、広く会員を含めた検討を加えるものとする。会員の皆様の積極的な参加を期待したい。
② 「パンフ補遺(一試案)」は全般にわたっているので、先に提案した「追補版」(時宜に適したテーマにしぼった、単価100円以内の集会でも無料配布できるような薄い冊子形式)にはおさまらない。
③ パンフ追補版に取り入れるテーマは、「パンフ補遺(一試案)」の検討を通じて抽出することと、併せて、会員からの新たな提起も含めて検討し、取り入れることとする。
4.次回例会における福田共同代表の戦争体験報告について
・福田共同代表から、次回例会報告に関しての考えが提起された。
・自分の戦争体験はあまりドラマチックではないので、治安維持法の犠牲になった若者の事例を紹介したいとのこと。
・これに対して、その紹介もあっていいが、やはり福田さん本人の実体験を語っていただくべきとの意見が出された。
5.その他
・財政問題に関連して、来年の1月総会で決めることだが、年会費を集めるようにしてはどうかとの意見出された。(たとえば年会費1~2千円程度の)
・例会・勉強会の参加会場費を100円程度いただいているが、会場によっては不足する。カンパ形式にしてはどうか、などの意見も。
・ボスニヤ・ヘルツェコビナ大使館からパンフ代300円が届いた。(野村共同代表が関係者にパンフ届けた結果)
6.当面の日程について
① 第22回例会 11月1日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
② 第18回編集委員会 11月2日(月)14:00~ 大阪大学東京オフィス
③ 第23回例会 11月22日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
④ 第19回編集委員会 11月25日(水)14:00~ 大阪大学東京オフィス
⑤ 第24回例会 12月20日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
⑥ 第20回編集委員会 12月21日(月)14:00~ 大阪大学東京オフィス
次の例会・勉強会のご案内
日時 11月 1日(日) 13:30~16:30
場所 港区・三田いきいきプラザ・「憲法研究会」
〒108-0014 港区芝4-1-17 電話03-3452-9421
JR 山手線・京浜東北線、田町駅西口から徒歩8分
地下鉄 三田線・浅草線 三田駅 A9 出口から徒歩1分
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
違憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
事務局報告 福田玲三(事務局担当)
戦前・戦時の回想 同上
討議 報告および提案への質疑、意見
会場費 100円(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
<別紙 1>
政治現況報告 2015年9月27日
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
2015年9月19日は、日本現代史の中で特筆される日になろう。戦後70年続いた専守防衛、外国に軍隊を送らない、と云う平和の誓いが破られ、世界中のどこででも米軍や友好国のために、集団的自衛権を行使できる普通の国になったのだから。安倍首相の強引で独善的な安保法制の改定は、憲法調査会で三人の参考人全員が違憲の判断をしたところから、様相がかわった。それまでは国会に提出された安保十二法案の条文解釈など矮小化されていたものが、集団的自衛権は憲法違反と参考人の三人の学者全員が発言、根本の本質論になったのだから。
それでも安倍首相は憲法の範囲内と終始強弁。法曹界ほとんどの反対や、世論調査で国民の6割が反対、8割が理解できないと云う状況の中で、衆参両院で強行採決、90日と云う最長の会期延長の中で成立させてしまった。
国会の回りに自然発生的に集まった市民のデモや全国に広がる反対の中で、「専守防衛はいささかも変更ない」「戦争に巻き込まれることは絶対にない」と断言、安保法制が国民に十分理解されていないことを自ら認めながら、「国民には今後も説明し、解ってもらえる」と全くの無責任発言。法案審議の初めに、「国民にはよく説明する」といいながら、結局、最後まで納得のゆく説明はできなかった。
集団的自衛権発動の具体例として、「米軍艦に日本人の老人や婦人、子供が乗っている時の援助」と「ホルムズ海峡の機雷除去」をあげていたが、野党の追及で、どちらも現実にはあり得ないことと自ら認め、根拠にならないことをさらけだした。 最後には具体例を説明できず、「諸状況を政府が総合判断する」白紙委任せよと言わんばかり。根拠のない安保法制が必要なわけがない。全くの欠陥商品であることを暴露した。
採決直後の世論調査(共同通信)で①安保法制、反対53%、賛成34% ②審議が尽されたと思うか、思わない79%、思う14% ③安倍首相は国民に十分説明したと思うか、思わない81・6%、思う13% ④憲法違反と思うか、思う50・02%、思わない31・8% ⑤自衛隊のリスクが高くなると思うか、思う68%、思わない27%――この結果安倍内閣の支持率は、支持38・9%、不支持50.2%と、どちらも最低、最高になった。
この間、安倍首相は9月8日、無投票で自民党総裁に再選された。野田聖子さんが立候補を表明したが、造反者を締め付け20人が集まらずに断念した。特に宏池会(旧池田派)自民党の良心、絶滅危惧種は、前代表古賀氏が若手を応援に出そうとしたが、現代表の岸田氏が前夜若手をカン詰めにして造反を食い止めた。無投票にこだわった安倍が岸田に次期総裁を約束して、説得したとの情報がある。男はだらしない。
さて二期目の安倍政権だが、月末には国連演説(当然オバマ米大統領に会って慰労されるだろう)がある。米国は国防省と国務省右派、アーミティジ元次官補などが今回の日米安保法制を推進し、それに安倍が乗った。帰国すれば党役員、内閣改造で基本は変えないと云っているので谷垣幹事長、二階総務会長、麻生副総理、岸田外相、菅官房長官らは残留だろう。当面は経済問題に全力をあげるだろう。しかし沖縄問題、TPP、消費税減額要求の公明党、原発問題などの難問があり、安保反対勢力のデモは、今後機会あるごとに表面化しそうだ。
今国会は初めは護憲、議会制立憲主義が問題にされ、終りの方では民主主義の危機という基本・根幹に戻った。後藤弁護士は憲法の運用で日本人は落第と言われているが、たしかに政治部45年をふくめて外から60年近く見て、日本の民主主義はまだまだの感がある。50年前パリ特派員として、その国の政治は国民の民度の上でも下でもないことを知った。権利は自分たちで勝ち取ったものという意識がフランスの庶民一人一人に染み込んでいる。フランスで国民議会選挙は2回投票制で、単独過半数がない場合、上位2候補で決戦投票が行われる。フランス人は最初から本命には投票しない。権力がおごり腐敗することを知っているからだ。
国会閉会後の会見で、「安保法制は『戦争法』だとのデマや悪意のレッテルが張られた。しかしアジアでも欧米でも評価されている」と安倍首相は強調した。しかし、かんじんの日本で8割が理解していない。日本国民の民度をそんなに低いと思っているのか。一体どこの国の総理大臣か、一日も早く退陣させたい。
<別紙 2―1>
パンフレット「補遺(一試案)」について 2015年10月7日
野村光司(パンフ『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)
多くの国民の反対と憲法学者の違憲批判の中で、現政権は戦争法案を強行採決によって可決成立させたことは「完全護憲の会」の立場からは遺憾の極みである。しかしこれは決定的な最後ではない。日本国憲法は厳然として一字も改悪されることなく、そのまま存在し、闇の世界に煌々と光を投げかけて、現国政の非を照らし出している。
この間で思い起こす首相の言葉がある。「多くの学者の批判があることは承知している。しかし、かって(祖父岸首相の時代に)日米安保が猛烈な批判を浴びたけれども今や、これは日本国内の殆どが支持しています。」、「私は最高責任者(権力者)だ。総理大臣の私は、合憲だと確信しています」と。憲法学者や元最高裁判事、法制局長官が何と言おうと彼らは野にある人、総理大臣の私の意見がそれに優先するのだ」と云うのである。
事実、野党も国民も政権の暴走を攻めあぐねている。安倍首相は天才的政治家ではない。かって小泉首相も、参議院で郵政法案が否決されて衆議院を解散する暴挙を行った。複数件の訴訟が起こされたものの、いずれも上告棄却となり、首相になった「権力者」は、憲法に何ら考慮を払うことなく安心して暴走できる体制になっている。ヒトラーの「条約も憲法も一片の紙切れ。民族が優先する」や、東条首相(?)の「黒であっても白と言って断行すれば、国民は付いてくる」を思い起こす。
その原点は、われわれもパンフレットで指摘したように、1960年田中耕太郎最高裁長官の「統治行為論」である。田中最高裁は砂川判決で、米国政府や外務大臣と事前に協議して、東京地裁の違憲判決を超越上告させて、全裁判官一致で「首相の統治行為については、国民の誰が違憲、違法として裁判所に訴えても、裁判所は受理しない」との趣旨の判決をし、これが確定した判例として維持されていることにある。
何の地位もない国民も、権力の違法、違憲にあったとき、これを裁判所に訴え、筋が通れば一市民で権力の行為を否定して救済されるのが、憲法が求める司法権の作用である。憲法32条の「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」の条文も、81条の「最高裁判所は、一切の法律・・処分が、憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」の条文を最高裁自らが無視して、行政権にべったりと追随した判例を作ったのであった。
更に本件では裁判前に、日米の政府と事前に協議しており憲法76条の、「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」との規定にも反する。つまり最高裁が、行政権を憲法、法律に優越する地位に置き、司法権自らの司法作用を放棄し、行政権にひれ伏した悪例を作ったのである。
先にわれわれは、憲法7条の「栄典授与」が「国民のために」とあるのに、戦争中、全国民生命、住宅を塵芥の如く焼き尽くす作戦を立案し、指揮したカーティス・ルメイに勲一等旭日大綬章を授けた政権の非を挙げたが、この憲法破壊、行政追随、国民無視の判例を作り、憲法擁護、人権尊重の最高使命を持つ最高裁が、その大使命に背き、憲法を無視して行政に奉仕した田中耕太郎長官には、裁判官では唯一、最高の勲章「大勲位菊花大綬章」が授けられていることに注意を払いたい。
この憲法破壊のA級戦犯ともいうべき田中法廷が遺した「統治行為論」に対し、すべての裁判官、弁護士の法曹は、是非、蹶起して司法の良心に戻ってこの悪判例を変更して呉れれば、既に成立した戦争・違憲の法律も、憲法98条で「違憲無効」として雲散霧消させられるべきものである。
その答えは、われわれが3月に発行した「パンフレット」に殆どすべて記載されている。われわれの会がこれからなすべきことは、全力を挙げてこれを世の人々に周知することである。顧みると、左翼、革新、護憲勢力と言われる多くの人々の献身的努力に関らず、政権の画策で違憲の国政が着実に進行し、護憲勢力は衰退の一途をたどらされている。われわれはその反省で、安倍政権の「(戦前)日本を取り戻す」のではなく、憲法制定時の「日本国憲法の求める国の形」を「一切の政治勢力とは独立して、ひたすら憲法の条文、否、前文にある理想のすべてを最高の権威」として、しかもシングルイッシュ―に偏らず全国政において、人々が権力に虐げられているすべての問題を提起して、その憲法的解答を示すことである。
パンフレット発行後も、政権は続々反憲法的政治を打ち出している。本日、当方でキャッチしている 「日本国憲法が求める国の形」補遺(一試案)を配布したがこれは当方で感じた仮の問題であり、これを誘い水として会員諸氏から遠慮なく問題の提起をして頂き、全員の討議を経て、取捨選択の上、会の意見を順次確定し、世間に発表し、国民の期待に応えて行きたいと考えている。
なおこの際、例えば二重国籍問題など、関係者が少数だから、これをマイナーな問題として排除するのではなく、個々の人権が侵されており、或いは、権力の越権があれば悉く取り上げて、人々の信頼に応えて行きたい。
政治による人民への侵害の問題が新たに起きている。これらにも対処して行きたい。例えば今、沖縄では、知事が非常な決意で沖縄のために政権と闘っている。沖縄は400年間ヤマトの植民地的な待遇を受けており、独立によってのみ国連憲章の「民族自決権」が獲得できるだろうことも、われわれの考察から排除しないことにしたいと考えている。
<別紙 2-2>
「日本国憲法が求める国の形」補遺(一試案)2015年9月6日
野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)
憲法前文
第1項「日本国民は、・・国会における代表者を通じて行動し、・・政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることの無いように決意する」
国政権力の源泉は、国民が選挙した代表者よりなる国会に発するものであり(第41条参照)、かっての悲惨な戦争が、すべて行政府のみによって引き起こされたことを銘記し、政府独自に国民を縛る権能を決して与えてはなるまい。行政権において法律の根拠なく、国民の権利を制約することがあれば、憲法第12条が「自由及び権利は、国民の不断の闘争によって維持する義務がある」とするよう、国民はこれに抵抗する義務がある。
第2項「人間関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」
(現行建国記念日の改定)
憲法は個人の「人間関係の崇高な理想」(high ideals controlling human relationship)と国家間の理想とを区別していないが、この理想は「心の中に人間愛、口に出す言葉にウソがない」ことに集約されよう。我が国の国家・社会の生活には偽装が充ち満ちており、その代表として建国記念日がある。全くの架空である紀元前660年2月11日を建国とすることは「(偽装国家日本の)建国記念日」としているので、これは改めねばならない。
同項「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの生存と安全を保持しようと決意した」
(永世中立宣言)
われわれが既に国連軍の存在に希望を掛けたところであるが、なお敗戦当時に国民の多くが考え、連合国からも示唆された「永世中立宣言」も考えるべきだと思う。スイスは 1815年に、オーストリアは1955年に、トルクメニスタンは1995年に、それぞれ周辺諸国との間で永世中立宣言をして、それぞれ200年間、60年間、20年間の全き平和を維持している。このためには先ず周辺諸国との間で国境問題と歴史問題とをクリアして、これらの国を我が国との関係で「平和を愛する国」としなければならないが、我が憲法はすでにその解決を用意している。なお、このためには米軍駐留の問題もクリアしなければならないだろう。
同項「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
(難民受け入れへの努力)
われら日本国民は先の大戦で、ほとんどすべての国民が殺戮の戦場に動員され、たとえ国内に残っても爆撃で肉親を失い、恐怖にさいなまされ、飢えに苦しみ、家を焼かれ、山野に逃れ、困苦のなかに生き延びた経験を持つ。現在、中東に、アフリカに、アジアに、為政者たちの権力闘争の故に、国内、国外に難民となって流浪する無数の人々を見ている。これらの為政者の戦いを止め、平和をもたらす努力をするとともに、不幸にして難民となった人々をその恐怖と欠乏から救う努力をせねばならない。日本はこれらの難民を受け入れることに極端に消極的であることを国際社会から非難されていることに鑑み、その政策を抜本的に改め、戦乱が収まるまで安息の地を提供しなければならない。 (参考)ドイツ憲法16条2項「政治的に迫害された者は、庇護権 (Azylrecht) を有する」
(武器の製造、輸出の廃絶)
警察は国民を救うため犯罪者を検挙し、裁判にかけるのを目的とするが、軍隊の兵器はひたすら人間を殺すために用いられる物である。これを製造し、販売し、輸出することは、いわゆる「死の商人」であって、どこの国民をも恐怖に追い込む武器は、製造し、販売し、輸出してはならない。
第3項「「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」
(敵味方慰霊)
日本が周辺諸国を侵略したことは間違いない歴史的事実であり、1974年の国連総会決議「侵略の定義」からもそれは言える。われわれは侵略された側に立ってその気持ちを察しなければならない。例えばわが国が韓国に行った数々の非行、皇后を殺害し、総督政治を布き、政治的権利を全面的に奪い、日本語を強制し、日本名に創始改名を強いたことを反転して、日本の皇后が殺害され、韓国軍人を日本総督と仰ぎ、朝鮮語を強制され、朝鮮風に創始改名させられ、日本女性を韓国軍人の慰安婦に動員された屈辱を思いやらねばならないだろう。ドイツがやったように首相が被害者の記念碑に跪いて謝罪し、被害者に十分な補償をすべきことである。また戦争被害者の慰霊については、我が国には日本軍人の慰霊のみならず、日本軍に殺された敵方についても慰霊する「敵味方慰霊」の風習の多くの例を持つ。最近は沖縄の「平和の礎」に見るのみである。日本の戦争によって死んだ敵方の犠牲に対しても、併せて慰霊する行事が無くてはならない。
憲法本文
第7条第7号「国民のために栄典の授与を行う」
佐藤内閣のとき、カーティス・ルメイ米空軍将軍に勲一等旭日大綬章を授与した。ルメイは、45年の東京大空襲等、それまで軍事施設を中心に爆撃していたのを全国諸都市に無差別焦土作戦を建言し実行、数十万の同朋を殺害し、家屋を消滅させた敵将軍である。これに最高級の叙勲をしたことは、栄典法の制定が政権の恣意ではなく国民的見地からいかに必要かを示している。
文化勲章、国民栄誉賞、いずれも政権の恣意で行われている。文化も国民的栄誉も、その優劣を国家権力が判断すべきものかどうかも疑問がある。すべからく民間に任せて政府としては内閣賞勲局の存廃を含めて抜本的に整理すべきものであろう。
第9条第1項「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
(集団的安全保障は明白に違憲)
外国軍と共に国外で行使される武力は、国内事件ではなくすべて国際紛争に対処するものであって当然に本項違反である。現政権が目論む米軍との集団的安全保障は、ほぼ米軍日本人部隊として参戦するものと言える。フランス外人部隊、インドネシア兵補、米軍二世部隊などは、外国主力部隊に「植民地兵」として参戦するのであって、自衛隊員の生命と日本国の血税を米軍に無償で提供する現政権の政策は、米議会ではスタンディングオベーションを得るのは当然で、一種の「売国的行為」と言える。
第10条「日本国民たる要件は法律で定める」
(国際結婚の子は当然二重国籍を認められる)
国籍取得の条件は法律で定められるが、その法律は第13条の規定によってすべての人に個人としての尊重が払われねばならない。国際結婚は益々増加しておりいわゆる混血児も多く存在するに至っている。これらの子供にとって、両親それぞれの国籍は本人のアイデンティティにとして尊重されねばならない。往時は国家間の戦争によってどちら側で戦うかで重要な意味を持ったが、戦争を廃絶した日本国憲法下のわが国ではこの配慮は殆ど必要が無い。双方の国を愛し、両国の平和を求める気持を尊重して二重国籍を認めても不都合なことは殆ど無いと思われる。
第14条「法の下に平等」
(賭博場経営における平等)
刑法では賭博場経営を犯罪として禁圧するが官僚立法によって経営される賭博は、競馬、競輪、競艇など当該官庁の利権として許されている。更にパチンコは当該犯罪取締り当局の協力によって、法的根拠もなく巨大賭博産業として成立している。「法の下の平等」は、法律さえ作れば回避できるのではなく法律自体も平等でなければならない。賭博関連の政治はカジノ法案を含め混乱を極めている。全体を見直して平等なものにしなければならないが、巨大すぎて改めて禁止するのは困難である。一旦、すべての賭博を自由化して、国論の統一を見てから新たに取締法を制定するのも一案であろう。
「性別により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」
(女子クォーター制は違憲)
女子を男子に比べて不利に差別する事案があれば国はこれに制裁を加えて是正さるべきであるし、月経、出産など現実の不利があるときもこれを救済することは必要である。しかし「女子」であることだけで、これを男子より優遇するのは違憲である。
第15条第1項
「公務員を罷免することは、国民固有の権利である」
(公務員弾劾法の制定)
裁判官の身分は、憲法78条により、その身分は一般行政公務員より遙かに厳重に保障されている。しかし最高裁判所裁判官は憲法79条第2項以下で国民の審査によって罷免されることが規定され、また一般裁判官も裁判官弾劾法第15条によって「何人も、裁判官について弾劾による罷免の理由があると思料する時は、訴追委員会に対し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる」として憲法15条に定める「国民固有の権利」に配慮されている。しかるに行政官僚については国家公務員法に基づき任命権者が懲戒処分として免職の処分もできるが、一般国民からの罷免の請求は国家公務員制定当初は「公務員の弾劾については別に法律で定める」としていたものを、やがて官僚起案の法律でこの条文は削除された。官僚は永く「お上」として人民に君臨し、人民からの批判は往々これに報復を加えて来た国情から削除されたものである。立法権は国会に専属し、国会は国民が有する官僚に対する固有の罷免権が適切に行使できるよう立法措置を講じなければならない。
同条3項「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」
(選挙権は公権であり、義務を含む)
例えば国会議員の選挙で投票する場合、個々の有権者は、自らの私益のために投票するのではなく、国民の代表者たるに適した国会議員の任命に参画する公権である。従って権利であるとともに、公益のために賢く選ぶ義務がある。若し常に自分の都合で常に棄権する者があるとすれば彼は「全体の奉仕者たるべき公務員」になる資格が無い。投票したかどうかは選挙管理員会において把握されているので、中央、地方の公務員の採用に当たっては、棄権常習者を受験資格から排除すべきである。公務員が棄権しなければ一般国民も棄権をしなくなる。
同条第4項「投票の秘密は、これを侵してはならない」
(出口調査)
マスコミが出口調査と称して、誰に投票したかを聞きただすことは本条に反する行為であるし、開票早々に候補者の当落を発表することは、公の選挙機関の多大な労力を侮辱するものであるから出口調査は禁止すべきである。
第20条第1項第1文「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」
(A級戦犯の分祀を求めることはできない)
宗教団体である靖国神社がA級戦犯も神と崇めるのは自由であり、国や第三者が「分祀」を求めることはできない。近隣諸国との関係では、首相その他の公務員が本条第3項により、参拝しさえしなければ済むことである。
(植民地兵の分祀も求められない)
宗教団体などが何を神として尊崇するかはその宗教団体の自由である。宗教はそれを信じない者にとっては何の効果もない。「丑の刻参り」が秘かに行われる限り何らの犯罪も構成しないと同じく、他人はこれを放任する他ない。悪魔扱いを公然とされれば名誉棄損罪などの犯罪を構成すると思われる。
第21条第1項「一切の表現の自由は、これを保障する」
(公の施設の利用に当たって思想上の制限を加えてはならない)
自治体の公民館の利用について政権批判の集会に対して「政治的」を理由にこれを拒否する例が散見されるが、地方自治法10条2項の定める通り、住民は自治体の「役務の提供をひとしく受ける権利を有する」のであって、思想の内容によって制約を受けることはない。
(参考)ドイツ基本法第8条「すべてのドイツ人は、届け出又は許可なしに平穏に、かつ、武器を携帯しないで集会をする権利を有する。屋外の集会については、・・法律の根拠に基づいてこれを制限することができる」
(政府は外国での民間人の言論に非難を加えるべきではない)
言論の自由は、日本国民に対してのみならず外国人に対しても尊重しなければならない。外国の民間人が慰安婦像を建てようが、領有権を主張しようが、彼らの言論に対して我が政府機関が居丈高に非難することは、却って日本の道徳的権威を落すだけである。
ロシアの高官が北方四島に、韓国高官が竹島に上陸しても、彼らがある程度の領土権を持ち、かつ、実効支配中である限り、領域侵犯と非難すべきではない。無益な非難よりは速やかに領域確定の外交交渉をなすべきである。国連事務総長の中国パレードへの出席に抗議を申し入れるのも事務総長に対する云われなき非難である。
(教科書検定は検閲に当たる)
検閲とは出版物を発行する前に当局に審査され発行の是非を決められるもので、教科書会社が当局の検定を受け、結果によって販売が差し止められることは本条が禁止する検閲に当たる。この検閲制度により若者が日本の正しい近代史が教えられず、近隣諸国との平和が破壊されている現実がある。最高裁の判例では、検定が通らなくとも第三者にで売れるから合憲とするようであるが、正に情報の受け手である学校への販売を許されないのであれば、本条が禁止する検閲に当然該当する。
第22条第1項「何人も職業選択(営業)の自由を有する」
(経済制裁はしない)
北朝鮮との間で交通、貿易の制限が厳しいが、善意の中小事業者の営業権を阻害することが大きく、政治的効果も見ていない。自由に貿易させて、日本海側の経済の沈滞を止めねばならない。
第2項「何人も外国に移住する (move to a foreign country) 自由を侵されない」
(出国の制限をしてはならない)
本項は、住居を永久的に移転する移住のみならず、外国への旅行を含めてその自由を保証したものである。ジャーナリストが取材のためシリアに出国しようとしたところ、政府はその旅券を返納する命令を出して阻止したが、外国人の入国は一定の制限があっても、出国は完全に自由とすべきである。政府は本人の危険を慮り、かつ、外国で人質になった場合、その救出に多大の困難が伴うことを配慮するものであろうが、外国で犯罪に遭った場合、自衛隊を派遣するなど直接的な救出はできず、自己責任の原則を維持する他は無い。「政府が危険と考えれば、いつでも国民の自由を制限できる」とすることは、政府が政治上危険と判断する人物もまた自由に拘束できることになる。
北朝鮮拉致被害者が日本に来て再び北に帰って向こうの家族と落ち着き先を相談するときに、政府間の約束に反して「本人の意思に関らず出国させない」措置を取ったことは当時の官房副長官の権力取得の契機とはなったが、政府間の約束をこちらが破ったことになり、その後の交渉を困難ならしめている。すべからず被害者には両国往来の自由が確保されるべきものであった。
第23条「学問の自由はこれを保障する」
大學の自治は不可侵?
現政権は、大学に対し、行事ごとに日の丸を掲げ、君が代を斉唱することを求めた。学問の自由が大学の自治に直結するかどうかは検討の余地はあるが、大学における研究活動と教育活動ともに無条件に干渉を控えるべきである。
(文系予算の削減)
文科省から大学に文系学部の縮小、予算削減の通達があった。太平洋戦争が終盤近くなって、文系学徒の徴兵猶予が取り消されて学徒出陣となり、理系学生は兵器の開発に向ったのと同じ時代を招来しようとしているように見える。政治、哲学、社会の真実を究める学問は政治を批判するものとして削減を図っているようであるが、国民の文科的基礎を破壊する政治と思われ、これは阻止すべきである。
第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面において社会福祉、社会保障、及び公衆衛生の向上及び増進に努めねばならない。」
(地球温暖化対策)
夏の猛暑は年々激しさを増して、異常気象による災害が多発し、多くの人が熱中症に苦しんでいる。その原因は二酸化炭素を主とする地球温暖化ガスの排出であることは明らかになっている。火力発電所の抑制、過度の自動車優遇措置の排除、そして充分抑止するに足る炭素税を課するなど、抜本的な措置を必要としている。
第26条「すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。すべて国民は、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う」
(政治教育)
選挙年齢が18才に引き下げられ、学校教育において良き有権者を養成する必要性は高まった。政権筋からはこの教育に当たり偏向教育をする教員を処罰すべき旨の意向が示されている。教育は権力が望むところを国民に教え込むのではなく、生徒本人の幸福の為の権利として規定されている。従って政治教育も憲法第12条で定めるよう、その権利を不断の努力で保持させ、また97条で人類が獲得した基本的人権を日本国民に永久の権利として信託されたとし、また国の公務に服する場合もこの憲法99条で憲法を尊重し擁護する義務を学ぶものでなければならない。従って憲法を正しく教えることは学校の政治教育でも必須のことであり偏向教育として罰せられるものではない。憲法を曲げて人権を否定するような教育こそ、偏向教育として罰せられねばならないのである。日本でもアメリカでもその国民となる帰化の許可にあたっての宣誓は、「日本国憲法及びその他の法律を遵守する」となっている通りである。
(いじめの撲滅)
いじめは学校現場で広く存在し、被害者個人の人格の尊厳を根底から破壊し、しばしば死に至らしめる重大な犯罪行為であり、教育現場にとっても、国民に必要な教育を授ける施設たり得なくなる。学校はしばしば被害者に対して転校を勧めたり強くなれと教訓を与えるが、国家権力は先ず強制力を用いて加害者の加害行為を鎮圧して被害者を救済し教育の場を回復する責任がある。すなわち学校当局に懲戒権を認め、懲戒を担当する教員を指定し、或いは専担の警備員を置いて、苛めの探索と加害者の矯正に当たらせねばならない。
またいじめは、「村八分」と同じく、加害者・被害者の関係を解消させ難い閉鎖社会で起るものであり、この閉鎖性を打破することも重要である。すなわち憲法が求める「普通教育を受けさせる義務」とは、必ずしも一定地域の生徒をすべて同じ学校に行かせることではなく、一定の学習基準を充たす学習指導要領を遵守すれば、公私立を通じて複数の学校のいずれかに就学する自由を与えるべきである。
第29条「私有財産は正当な補償の下にこれを公共の為に用いることができる」
(領土を譲歩して平和が回復させる場合の補償)
択捉・国後や竹島は、ロシアや韓国の領有と認めて平和を回復した方が、公共の利益は遙かに大きいが、これに損害ありとする者は、本条を準用して補償すれば、僅かな譲歩で大きな平和を獲得する国益に適うことを知るべきである。石橋湛山は大正デモクラシーの頃、朝鮮・満州の植民地は放棄した方が遙かに国益に適うと論じたものであるが、これに倣うべきである。
第31条「何人も、法律の定める手続きによらなければ刑罰を科されない」
(被疑者呼ばわりの禁止)
対日平和条約で我が国が遵守を約した世界人権宣言では「公開の裁判で有罪の立証があるまでは無罪と推定される権利」を定めている。捜査段階で検挙されても無罪になる事件も多々あり、警察の捜査で直ちに「容疑者呼ばわり」をされるのは、法定外の制裁を受けていることになる。肩書がある人に対しては有罪が確定するまではその肩書を用いるべきである。また軽微な行政規則違反で名前をマスコミに公表するのも、法定されざる刑罰となり違憲であろう。
第66条第2項「国務大臣は、文民でなければならない」
「自衛官を大臣にしてはならない」
現政権には自衛官出身の防衛大臣が戦争法案成立に努力しており、本条の合理性を示ししているところである。
第73条「内閣は、左の事務を行う」
(官房長官の記者会見)
内閣官房長官が記者会見で、国会における審議状況、政治状況について語ることは越権である。
第80条「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれ任命する」
(裁判員は裁判に関与できない)
アメリカ憲法第3章第3条で「すべての犯罪の審理は陪審員をもってする」との規定があるが、日本の裁判員は憲法に規定が無く、法廷を構成することができない。
第81条関係
「最高裁判所は、一切の法律・・・又は処分が、憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」
(「統治行為論」を許さない)
田中耕太郎を長官とする最高裁判所は、1960年「統治行為論」を持ち出し、政権が統治行為として判断する行為に対する訴訟は、裁判所がこれを受理しないという、国民の権利を確保する裁判所の司法権を全面的に抹殺する恐るべき判決を出し、以後、これが踏襲されている。よって現首相の集団的安全保障論を殆どの憲法学者、最高裁長官、法制局長官が違憲と断じても「私が国の最高責任者(最高権力者)、総理大臣の私が合憲と信ずる」と称しても何人もこれを司法の場で覆すことはないとの安心感によって暴走を重ねている。すべての裁判官、弁護士は、国民の権利を守るためこの判例を覆す最大限の努力を傾けるべきである。
第84条「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには法律によることを必要とする」
(租税特別措置法は全廃)
憲法14条は「すべて国民は法の下に平等」たるべきことを要求している。たとえ法律で規定した税法であっても、他の者と平等の条件で税が定められていないとなれば「法の下に平等」とは言えない。所得税法、法人税法など基本税法は、原則として課税要件、税率などが規定されているが、租税特別法にはこれを大きく離れて政治家や官僚の「お友達」の業界、企業には様々な免税を施し、日本一の儲け頭も殆ど課税されていない不公平が多々ある。すべからく租税特別措置法は全廃すべきものである。
第90条「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査・・しなければならない」
(官房機密費も検査すべし)
首相、官房長官が支出する「官房機密費」は、領収書も不要、検査もしない慣例が続いているようであるが、これは「内閣から独立の地位を有する」(会計検査院法第1条)立場からも会計検査院は厳正に検査し、国民の血税の使い方について国民全体の立場から不適正なものがあれば、すべてを外部に公表するかどうかは別として矯正の措置を講じなければならない。トップの税金に対する姿勢は全行政機構に影響するからである。
第95条「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、・・その地方公共団体の住民の投票に於いてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することはできない。」
(沖縄関連諸法には改めて住民投票に付する)
沖縄は1609年、薩摩の侵攻を受けて以来400年間、常に本土から植民地的な待遇に甘んじてきたところ、米軍基地を辺野古に新たに建設されるに至って県民も本土政府から独立して自己を主張するようになった。沖縄には沖縄振興開発特別措置法や米軍用地特別措置法など、沖縄にのみ適用される特別法が数個存在する。これらは憲法の本条に従って住民投票に掛け、全住民が納得できる特別法かどうかを確かめる必要がある。
条約についても内容が沖縄のみに過重な負担を掛けるものであれば、国会承認の前に沖縄県民の住民投票に付すべきものと思われる。
第98条2項「日本国が締結した条約は、これを誠実に遵守することを必要とする」
(政府間協定も尊重すべし)
国会で承認され批准された条約でなくとも首脳間で約束された協定は、政府間においては特段の事情がなければこれを遵守すべきものと準用されねばならない。日朝平壌宣言などは、棚ざらしなっているが復活して国交を回復すべきものと考える。
第99条「天皇、大臣、議員、裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う」
(「憲法不敬罪」)
かつての帝国憲法では「天皇は神聖にして侵すべからず」と規定され、最高存在たる天皇に対する不敬は、死刑をも含む「不敬罪」が規定されていた。日本国憲法下では、この憲法が国の最高存在であり、96条による国会議員の職務以外で、総理大臣その他のすべての公務員において憲法を公然と誹謗し改悪を主張する場合は当然、第15条で一般国民からも罷免の請求を受け、或いは懲戒処分を受けるべきものである。
<別紙 3>
第21回例会 事務局報告
福田玲三(事務局)
1)ニュース21号への意見など
龍平四郎氏
今回も、ニュースの配信ありがとうございました。
9月18日付け 東京新聞朝刊で法案賛成派の小さい記事を見つけました。
政治に関心がある人には、それなりの説明して議論にもなりますが、多くの人は、添付したような意識です。
添付した記事のような問いに、「即答できる言葉がありますでしょうか」
みなさんは、どのように応えておられるか教えていただければと思います。
<添付>
安保賛成派も官邸前で集会
参加者の声として「戦争をしないための必要な法案」と訴えていた。
「いくら「戦争はしません」と言っていても向うから攻められたらどうするのか。 国の抑止力を高めるためにも必要だと思う」と話している。
「防衛力を高めての日本を守る体制をつくらないと、子供や孫が心配で仕方がない」
「九条を守れと言うけれど平和を守れるならこんな楽なことはない」
珍道世直氏
「ニュースNo21」をお届けいただき有難うございました。事務局報告の中で、私の「最高裁決定」の報告について多くの紙面をお取りくださり、報告いただきましたこと、心から感謝をいたしております。
この戦いは、今後も継続しなければと、心いたしております。
どうか今後ともご指導をお願いいたします。誠にありがとうございました。
2)S氏(『週刊金曜日』徳島読者会)意見書への回答について
① S氏意見書(要旨)
「日本国憲法によれば『天皇』は第4条第1項で『国政に関する権能』を認められておりません。一方、国民は第1条において「主権の存する」存在だとされていて、参政権を初めとする数々の権利が認められています。
私の考えでは、主権を凌駕する法的存在を認めることは出来ません。ところで『天皇』は、国政に関する権能を認められていないのですから、主権の存する国民と同等の法的地位を有する存在ではあり得ません。上でもあり得ないのですから、残るところは下だけではありませんか?すると、『天皇』は国民の権利をしのぐ特権的存在では到底あり得ません。」
② 野村回答 「天皇の憲法上の地位」(要旨)
「天皇は人間であり、外国人では無い日本国民の一人であることに疑問の余地は無い。」
「天皇は憲法の特別規定から14条とは別に生まれによって特別の地位を与えられた公務員の一人と解される。」
「天皇は国民統合の象徴として、すべてを包摂した義務を負っているので、国会議員、国務大臣その他、特定の職務を持った公職に就くことはできないが、国民すべてが持っている選挙権についてはこれを奪われる憲法規定は存在しないので、皇族も選挙権は否定されないと考える。」
③ S氏再意見書(要旨)
「お送りいただいた『天皇の憲法上の地位』は、先の手紙で私が指摘した問題に対して、直接応じる内容にはなっておりません。」
「『天皇』をして『日本国民の一人』だとみなす貴会のご見解には同意できません。なぜなら日本国憲法に言う日本国民は主権の存する存在のことだからです。そして先の手紙で『天皇』は日本国民とは別の法的地位にあると言っているのですから。そして、その法的地位は『国民』の地位より低いということを、日本国憲法の規定を論拠にして明確に示しています。」
これに対する草野、K、O、野村、福田の回答案、見解(省略)
3)戦争法案廃案!安倍政権退陣!国会行動
8・30国会10万人行動、9.14~9.18国会前行動に会員および支持者はそれぞれ積極的に参加した。
4)今後の日程
11月 1日(日)13:30~16:30 例会。港区・三田いきいきプラザ集会室。
11月 2日(月)14:00~17:00 編集委員会。虎ノ門・大阪大学東京オフイス。
11月22日(日)13:30~16:30 例会。港区・三田いきいきプラザ。
5)『日本会議の実態、そのめざすもの』入手希望
『週刊金曜日』種子島読書会W氏から表記パンフ入手の希望が事務局に寄せられ、手持ちのものを郵送。
6)青年劇場公演「真珠の首飾り」観劇
1946年2月、皇居前の第1生命ビルの1室でGHQ民政局のメンバーが極秘裡に日本国憲法草案を準備した。「真珠の首飾り」とはこの作戦行動の暗号だ。そこで行われた議論、そしてベアテ・シロタの果たした役割……作者・ジェームス三木がこの難題に取り組み、見事にひとつのドラマを作っていた。(9月24日、大田区民プラザでの公演)
<別紙 4>
立憲主義の保障―憲法の番人は誰か?
(2015年9月27日 弁護士 後藤富士子)
1)立憲主義をどのようにして保障するか ★「憲法の番人」の問題
権力担当者は立憲主義のもとでも権力を濫用しがち
人権や民主主義が憲法で定められていても、その侵害に対する救済手段が用意されなければ画餅
A.ハミルトン:違憲立法審査は裁判所がその権限と義務をもつ(1788年「ザ・フェデラリスト」)
E.J.シェイエス:違憲立法審査権をもつ憲法陪審制度(1795年共和暦3年憲法制定時)
☆番人が番人としてうまく機能するか(番人が狼に変身しないか)
☆誰が番人に適しているか、誰が番人の番をするか
☆うまく機能するための条件は何か
2)近代市民憲法と違憲立法審査制度
A.アメリカにおける導入
連邦議会制定法が連邦憲法に適合するかどうかの審査
1803年マーベリーVSマディソン事件連邦最高裁判決
「なにが法であるかを明らかにするのは、司法部の権限に属し、且つその義務である。特定の事件に対して法規範を適用する者は、必然的にその法規範を解明し解釈しなければならない。」「憲法が立法府の制定するすべての通常法に優越するものであるならば、憲法と通常法がともにあてはまるような事件を規律するのは、通常法ではなく、憲法でなければならない」
☆ ゲルマン法思想に由来する「司法権の優越」の思想
cf. イギリス:名誉革命で議会主権が樹立、硬性憲法が樹立されなかった→司法権の優越及ばず
B.フランスにおける排除
議会のみに、国政の基準となる法律(一般意思)を形成表示する「国民代表」の地位を認めた
=裁判所に、「国民代表」府が法律として表示した一般意思に干渉することが禁止された
☆ 「司法権の優越」の観念が成立しない背景事情
・立法権の優越 → 司法権の劣位
・革命期における裁判官(専門技術的知識が不可欠)に対する不信
・裁判所の判例でも裁判所による違憲立法審査は認められないとしている
★ 差異:議会と裁判所のいずれが立憲主義の擁護に適合的であるかの問題
3)現代市民憲法と違憲立法審査制度
現代市民憲法の際立った現象の一つ 違憲立法審査制度の一般化
審査機関 裁判所と政治機関 cf.フランス・・・憲法評議会(憲法院)
A.通常裁判所型(アメリカ、日本)
司法作用の一環:具体的事件を解決するために、当事者の主張により、審査する
下級審裁判所も審査権をもつ。当該事件についての個別的効力。
B.憲法裁判所型(ドイツ、韓国)
具体的な事件を前提とすることなく抽象的な憲法適合性の判断を目的とする「1審にして終審」
違憲と判断された法律は一般的に無効 ☆司法作用ではない
4)違憲立法審査制度の限界
① 制度上の限界 憲法問題の大部分は違憲立法審査の対象とならない
② マイナス機能への期待 憲法についての最高の有権解釈(国家機関による解釈)を認める(最高裁)
独裁のための手段として悪用 cf.ナポレオン1世、3世
③ 「憲法の番人」の番をどのようにするか
イ.構成員(裁判官)の任免について公平な人事 cf.グリシャム『ペリカン文書』
ロ.国民による統制制度 cf.リコール権=国民審査(憲法79条2項)
ハ.提訴権者を広くする
ニ.複数度の公開審査の保障
ホ.〈国民―国会〉のルートが正常に機能
国民の多数意思・利益が法律に反映されていることを前提として、少数者が憲法や憲法上の人権の名において争う制度。〈国民―国会〉のルートを機能マヒの状況にしておきながら、社会的多数者が政治的少数者として違憲立法審査制度によって民意を反映しない法律を争っていくことは、民主主義の観点からみて病理的かつ非能率。
★日本の現実・・・マイナス機能が目立つ
イ、ロ、ホの条件を充足させることが必要 ☆法律の改廃によって可能
違憲立法審査制度の機能は、国民代表制のあり方によって規定される。
完全護憲の会ニュース No.21 2015年 9月10日
さる8月23日(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で8月例会を開催、参加者18名。入会者 計43名。
第20回 例会の報告
O編集委員が司会し、怪我のため欠席した岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)からの政治現況報告(別紙1)を、宮崎会計監査が代読した。
ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が都合により欠席のため、福田玲三共同代表(事務局担当)が事務局報告(別紙2)を行った。
その後、後藤富士子弁護士が「立憲主義と戦争放棄」の報告(別紙3)を行った。
これらの報告にたいする質疑応答は要旨次のとおり。
「岡部報告にある従軍慰安婦の強制連行については韓国に謝罪して解決すべきだ」
「従軍慰安婦は多くの場合仲介業者を経ている。ただ命にかかわる戦地に連れて行かれたのは問題だ」「騙されて慰安所に行かされた例が多い」「連行の契機・経緯だけを論ずることは妥当ではない。『慰安所』で、毎日、十数人を超える兵士の相手を次々にさせられたことを思うと身の毛がよだつ。これこそ性奴隷だ」(後藤弁護士)
「女性に対してだけではなく、男性に対する戦時の強制(徴兵)も考えるべきだ」「戦前は国民皆兵を疑うことができなかった。疑うとしたら非国民として一家一族が指弾された」「帝国軍隊は、兵站無しの片道切符で兵を海外に送った。また戦陣訓で『生きて虜囚の辱めを受けず』と、捕虜になることが許されなかった。捕虜の口から軍事機密の漏れるのを恐れたのだ」。
「当会の『設立趣意書』にある『日本国憲法の理念』の要約について、問題提起者のI氏と原案筆者のN氏との間で編集委員会の際に討議されたが、合意には至らなかった。本日はN氏欠席されているので、I氏から討議の感想を伺いたい」(福田共同代表)
「『理念』には立憲主義を明示的に掲げられていないので、立憲主義を加えたうえでの概念整理を提案したい。立憲主義を理念として掲げれば、『行政権の制限』『議会主義』などの他の理念は自ずから導出される。筆者本人のご体験は尊重されるべきとしても、万人が会の趣旨に賛同しやすくするためには、パンフの次期改版の際に見直しも必要ではないか」(I氏)
「第三者の立場で見て、I氏に分がある。憲法全文を暗記している私から見れば、『平和主義』『議会主義』『法治主義』というネーミングに、感心しない。またその列挙の仕方に、整合性・網羅性が見られない。憲法の骨格は、一言で言い尽くせる。『人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し擁護することは、全ての国家権力の義務である』ということだ。
これはドイツ連邦共和国基本法(憲法)第1条だ。第2条以下は、全て、この第1条から導出される。他国の憲法だからと言ってこれを無視してはいけない。日本国憲法も、この『①人権尊重→②国家権力はそのための手段』という『二段構え』である。第十章最高法規の97条→98条→99条と、憲法前文『そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来する』に、それは端的に示されている」
「『完全護憲の会』の名称通り、天皇条項も含めて全条項を守らせるようにしよう、でいいではないか。現状で政治参加は投票だけになっている。権利闘争によって国民は幸福を追求すべきだ」(後藤弁護士)
「今、多くの人はそこそこ裕福だから、権利闘争といっても実感が湧かない。政治に関心がなく、選挙しないでも生きて行ける。ブラック企業で働かざるを得ないと言っても、家賃を払えてスマホを持てるくらいには裕福だ」
「私には、今が豊かだという実感はない。寧ろ、私が学生だった1968年頃の方が豊かだったように思う。公営住宅の家賃1万5000円滞納を理由に立ち退きを迫られた母親が、思い余って娘を絞め殺し、係員が踏み込んだときに、娘の生前のビデオを茫然と見ていた、という先般の事件を想起してほしい。現時点では職にあり付けている人も、いつ職を失うかわからない状態にしているのが、現下の法律と経済環境だ」(後藤弁護士)
「消費増税分はすべて社会保障に使うと首相は断言したが、消費税創設以来の増収分は220兆円以上、その間の法人税減税は200兆以上。消費税の9割が大企業の減税と同額だ」
「私は『立憲フォーラム』に所属している。この『フォーラム』で、日本最大の右派組織『日本会議の実態、そのめざすもの』という冊子を作成した。希望者には配付したい。政治に関与するには地元の都議や区議に電話するのが非常に有効だ」
「フランス革命当時、サンジュストという議員が言っている。『我々はこの国で、貧しい人、苦しんでいる人を、一人でも放置してはいけない。そのような人が居なくなって初めて我々は、フランス革命を達成したと言えるのだ』この発言は、後藤弁護士が本日推薦された岩波ジュニア新書シリーズで紹介されている。(遅塚忠窮著『フランス革命』)。このサンジュストは、『ベルサイユのばら』にも出てくる。遅塚忠窮著『フランス革命』や『ベルサイユのばら』を読まれることを、強くお勧めしたい」
「後藤弁護士は、日本人がGHQから良い憲法を与えられても、それをキチンと運用できない要因として、『革命を経験していない』ことを挙げられた。しかしそれでは、『今後も日本では、革命などできっこない。だから日本人は今後も憲法を充分に使えない』という結論につながってしまう。だから私は、日本人が革命を経験していないことを論う(あげつらう)のは間違いだと思う。戦後日本には、水俣病裁判、八幡製鉄政治献金訴訟、自衛官合祀違憲訴訟で闘ってきた人たちがいる。今のフランス人だって、実際に革命の場に居合わせたわけではなく、言葉や文化的表象(祝祭など)を通じてフランス革命を繰り返し擬似体験してきたからこそ、フランス革命の精神を体現した人権宣言をわが身のこととして捉えることが出来るのだ。それなら、日本の人々だって、時間的にも空間的にも離れていていても、後藤弁護士の紹介された岩波ジュニア新書等を勉強し、本日のご報告で怒りを新たにして、日本国憲法をその精神通りに実現するよう行動することが出来るはずだ。イェーリングという法学者は、『権利のための闘争』という古典でこう述べている。『何の苦労も無しに獲得された権利などというものは、コウノトリが持ってきた赤ん坊のようなものだ。コウノトリが持ってきただけならば、それはいつ、ハゲタカに持って行かれるか分からない。しかし、生命の危険を冒してまでわが子を産んだ母親は、ハゲタカがこれを奪うことを、断じて許さない。権利とは正にこれと同じだ』。この観点から、後藤弁護士の本日のレジュメには、モンテスキューなどの先達に加えて是非、イェーリングも挙げていただきたい」
「『完全護憲の会』が貴重なことは、明治憲法下の現実を体験された方々が実感していらっしゃると思う。だからこそ私は、『完全護憲』という言葉が大切だと思っている。しかし、『完全護憲の会』を掲げているのに、憲法が理解されていない現状には、泣きたくなる。(後藤弁護士)
次の例会・勉強会のご案内
日時 9月27日(日) 13:30~16:30
場所 港区・神明いきいきプラザ・集会室「憲法研究会」
〒105-0013 港区浜松町1-6-7 電話03-3436-2500
JR 山手線・京浜東北線、浜松町駅北口から徒歩4分
都営地下鉄、大門駅A2 出口から徒歩4分、B1出口から徒歩3分
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
違憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
事務局報告 福田玲三(事務局担当)
未定 後藤富士子(弁護士)
討議 報告および提案への質疑、意見
会場費 100円(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話 03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
次の編集委員会のご案内
日時 10月1日(木)14時~17時半
場所 大阪大学東京オフイス多目的室
東京都千代田区霞ケ関1-4-1 日土地ビル10階
アクセス:「虎の門」駅7番出口から北へ徒歩1分
「霞ケ関」駅A12号出口から南へ徒歩3分
(編集委員会に、ご都合のつく会員もご参加ください)
編集委員会(8月)の報告
第20回例会後の編集委員会が8月26日、大阪大学東京オフイス会議室で開かれた。出席者は草野、福田ほかO委員とK委員の4名で、以下の議題について討議し、合意した。
1.パンフレット配布活動について
① 諸集会における配布活動について
・集会参加者への無差別配布は反応少なく、財政上の問題もあり在庫の確保も必要なので当分見合わせる。
・集会主催者・講演者などの特定者への配布は継続する。
・上記特定者へのパンフ費用は「完全護憲の会」の負担とする。
・日本弁護士連合会主催の安保法制反対8・26日比谷集会(18:00~)にはK委員が参加対応する。
② 大使館など配布先リスト
◆在京大使館のリスト(住所・電話・ホームページURL付き)
http://www.plazahomes.co.jp/info/embassy/
USA・英・仏・独・露・中・韓・台湾・インドネシア・マレーシア・フィリピン・タイ・ベトナム・トルコ
・上記リストのすべてを配布対象とするか、選択するか、野村共同代表に一任する。実際の送付は事務局が担当する。
・大学各部局関係への送付はしばらく見合わせる。
③ 在京大使館への配布に伴って、パンフレットの「発表にあたってのごあいさつ」を英文化する。翻訳依頼をTさんに依頼。了承いただいた。
2.今後のパンフ制作活動について
① パンフ普及版の制作は中断し、当面先送りとする。
・普及版の原案作成を一任されていたK委員から、内容を詰めることの難しさと、現下の憲法情勢にそぐわないとの提起を受け、議論の結 果、中断・先送りを確認。
② 上記に代わって、野村共同代表の「第2版への活動」の提起も踏まえ、時宜に適した憲法問題を取り上げ、パンフ原本の「追補版第1集」「第2集」などとして適時制作・発行する(集会などでも無料配布できるように原価100円未満のもの)。これらを集約した形で原本の「第2版」発行につなげる。
3.例会における後藤弁護士の報告(講演)について
① 法律の専門家からの意欲的・刺激的な提起をいただき、大いに勉強になった。
② 8月23日の例会では、今後の3回にわたる報告テーマも構想されているが、当初、2回の予定でお願いした経過もあり、他の企画(福田共同代表の戦争体験報告や田中伸氏の憲法講談、パンフ追補版の内容検討など)もあるので、それら三回のテーマについては機会をあらためてお願いするとして、次回例会では後藤弁護士が現時点で最も提起したいテーマに絞っていただき(三つのうちの一つでも可)、報告をお願いすることとする。(担当:草野)
4.S氏の再回答要請・再意見書について
① S氏の最初の意見書に対して、野村共同代表が回答した内容に対する再回答要請を受け再回答が必要である。
② 憲法の法理論上の問題提起であり、難しい内容を含んでいる。私たちがこれに回答をなしうるかどうか議論。難しいがなんらかの回答をすべきとの結論。
③ 回答は最初の回答者でもある野村共同代表にお願いすべきだが、同代表の現在の健康状態を考慮すると無理させてはならない。代わりに草野編集委員長が原案を作成し、Eメールにて各編集委員に配付し、議論・検討の上、回答書を作成することとする。
5.完全護憲の会のホームページについて
① 8月20日付で「工事中」の表示を削除し、正式公開とした。会員の皆さんも随時閲覧できるので、周知する。(例会日程、会場案内なども把握できる)
② ホームページ管理担当者をO委員とする。
6.当面の日程について
① 9月第21回例会 9月27日(日)港区・神明(しんめい)いきいきプラザ
② 9月第17回編集委員会 9月30日(水)を10月1日(木)に変更
③ 10月第22回例会 10月25日(日)を11月1日(日)に変更
④ 10月第18回編集委員会 10月27日(火)を11月2日(月)に変更
ご案内
青年劇場創立50周年記念公演。ジェームス三木=作「真珠の首飾り」(国民主権・戦争放棄・基本的人権の尊重)9月11日~20日(紀伊國屋ホール)、9月24日(大田区民プラザ)、9月25日(かめありリオホール)。前売り=一般5150円、30歳以下3100円、高校生2000円。青年劇場チケットサービス(03-3352-7200)
<別紙 1>
政治現況報告 2015年8月23日
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
敗戦後70年のこの夏は過去や今後を改めて考える夏だった。6月の沖縄玉砕、8月6日、9日の広島・長崎の原爆忌。そして8月15日の敗戦記念日。政府は戦後70年の安倍首相談話を14日に閣議決定した。終戦記念日の談話は戦後50年の村山首相談話、60年の小泉首相談話の2回あった。特に村山首相談話は日本の侵略と植民地支配の誤りを初めて公式に認め、「痛切な反省」と「心からのお詫び」を表明する画期的なもの。この点は小泉談話も完全に踏襲した。
ところで安倍首相は昨年から「70年談話」にこだわっていた。かねてから「戦後レジーム」(体制)の刷新を旗印にしていた安倍は、機会あるごとに、従来の談話とは違う未来型の談話にすると表明。村山談話には批判的で、内閣に自分の考えに近い有識者を集めた「21世紀懇談会」を設け、談話内容を検討させていた。
恐らく、この70年間で、日本は平和を守ったのだから、戦後に一区切りをつけ、将来の「積極的平和主義」転換を約束、米軍あるいは友好国の平和戦略を「日本が支援する」との安倍流、集団的自衛権構想を表明する計画だった。じかし、閣議決定された談話は、この思惑に反し、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫び」の4つのキーワードを従来通り使ったものになった。しかも「私は」の主語ではない「我々は」とか「国は」とか間接話法を使った抽象的表現で、本当の反省やお詫びにはほど遠い。これは意に反して懇談会の答申が、侵略や反省を入れろというものであったり、公明党の山口委員長から「村山談話を明確に踏襲を」と迫られたため、初めの意図とちがうものに。自民党の幹部や側近から「わざわざ談話を出す意味がなかった」とまで言われた。
これなら潔く侵略の歴史認識を明言し、はっきり謝罪をし、70年を機会に、これからは前向きに付き合おうと明言した方がよかった。また韓国の従軍慰安婦問題も「女性の人権侵害問題」とあいまいにした。「次の世代に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」というのなら、自ら日韓首脳会談で従軍慰安婦賠償にケリをつけ、日韓の懸案を無くすべきだろう。その事は中国との歴史問題の決着についても云える。
自ら解決の意欲なく、口先だけの談話なら、まさに必要なかった。談話の翌日、全国戦没者慰霊祭での天皇のお言葉「過去の大戦への深い反省」と「戦後70年、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、日本は今日の平和と繁栄を築いて来た」の方が、ずっと心に染みる平和への発言だった。
<別紙 2>
第20回例会 事務局報告
福田玲三(事務局)
1)ニュース20号への意見など
龍平四郎氏
今回も読んで勉強させていただきました。
岡部太郎氏の政治現況報告は、おさらいとして状況の再確認ができました。
野村代表よりの憲法問題(案)はすこし理解しにくかったです。
稲田氏意見(別紙5)は、会の理念などがすこし理解しやすい内容(文章)に近づいたかなと思います。今後検討されるようですので、方向性としてはいいのではないでしょうか。
弁護士 後藤富士子氏(別紙4)について。読ませていただくと、お話の内容はそのとおりだと思います。大筋の記事が、重箱の隅をほじくるように思えてなりません。
「法律主義」は合憲か?の最後の下り、「事実婚」擁護の場面で近親者や重婚でも、当事者の自治に任せればいい。「個人の尊厳」は国家が付与してくれるものではなく、人が実現するものである。 私は思う。個人の尊厳も秩序のうえに成立するのではないでしょうか。
今回もたいへん勉強になり、ありがとうございました。(後略)
『週刊金曜日』倉敷読書会(堀井進)
先日は『日本国憲法が求める国の形』10冊を確かに受け取りました。読書会で話し合ったところ、今後1年間、テキストとしてみんなで討論、学習してみようということになりました。昨日(7/29)、5000円を送金しましたので再度(前回と同じく)10冊送付して下されば幸いです。(後略)
『週刊金曜日』東濃読者会
ぎふ東濃読者会のTです。昨日(ニュース20号が)届きました。今週末の読者会にて紹介させて頂きます。
S・K氏(東京)
いつも(例会の)案内をいただきましてありがとうございます。申し遅れましたが、会のニュースはあらためて身のひきしまる思いで拝読させていただきました。(後略)
2)珍道世直氏からの最高裁決定についてのご報告
「完全護憲の会」におかれましては、本件訴訟についてご注視賜り、心から感謝いたしております。
ご承知のように私は、平成26年7月1日、安倍内閣が行った「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定(正式名称-国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について)」の「3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置」は、憲法第9条に違反する決定であり、無効であることの確認を求める請求を行って参りました。
このたび、最高裁判所第二小法廷(裁判長 山本庸幸)から、調書(決定)が送達(7月30日)されましたので、ご報告いたします。
決定の内容は、「本件上告を棄却する。」とし、理由として、「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、 本件上告の理由は、違憲をいうが、その実質は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。」とされております。
本件上告は、民訴法312条1項に基づき、「憲法の違反があることを理由として」行ったものでありますが、裁判所は、「違憲をいうが、その実質は単なる法令違反を主張するものであって、」として、「違憲の主張」を「法令違反の主張」ととらえて、「違憲」か「合憲」かの憲法判断を回避したものと推量されます。
「違憲な閣議決定」から「違憲な安全保障法制案」が発出され、国会で違憲、合憲が激しく対決し、多くの憲法学者や弁護士らが違憲と表明し、300を超える地方議会から、国会や政府に意見書が提出されている中、今この時にこそ、最高裁は国家・国民の為に、司法としての使命を果されるべきであります。
本件訴訟を通じて、このことを示されなかったことは、最高裁は「違憲審査権」を放棄したに等しく、「三権分立の原則」の崩壊につながる憂慮すべき事態であると考えます。最高裁が、速やかに「安全保障法制」について、憲法判断を下されるよう切望する処です。
本件訴訟が、このような形で終審しましたことは、誠に無念であります。
しかし、最高裁に対しては「抗告」手続きがないとのことですので、本件については終結せざるを得ないと考えております。
「完全護憲の会」におかれましては、本件訴訟を進めるに当って、大きなお支えとお励ましを賜りました。ご厚情に心から感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。謹んで、ご報告申し上げます。(太字は原文のまま)
3)パンフの普及
①野村光司氏が8月15日、プロテスタント教会主催「平和を祈る憲法研究会」で講演、質疑を受け、受講者に当会パンフを紹介。
②『週刊金曜日』奈良五条読者会より5冊受注。
③『週刊金曜日』札幌西読者会より2冊受注。
④『週刊金曜日』東三河読者会より13冊受注。
⑤『週刊金曜日』徳島読者会より10冊受注。
⑥『週刊金曜日』足利読者会より22冊受注。
⑦『週刊金曜日』京都読者会より5冊受注。
⑧『週刊金曜日』倉敷読者会より20冊受注。
⑨名古屋市S・S氏より10冊受注。
4)今後の日程
9月27日(日)13:30~16:30 例会。港区・神明いきいきプラザ集会室。
10月 1日(木)14:00~17:00 編集委員会。虎の門・大阪大学東京オフイス。
11月 1日(日)13:30~16:30 例会。港区・三田いきいきプラザ集会室。
11月 2日(月)14:00~17:00 編集委員会。虎ノ門・大阪大学東京オフイス。
11月22日(日)13:30~16:30 例会。港区・三田いきいきプラザ。
<別紙 3>
立憲主義と戦争放棄(要旨)2015年8月23日
弁護士 後藤富士子
1)近代立憲主義の特色
米仏で市民革命の結果導入された立憲主義
政治の基本的ルールを憲法で定め、それに反する権力の組織と行使を排除しようとする
①人権の目的性と権力の手段性
②国民主権と権力分立制 ☆権力は国民の所有物
1789年仏人権宣言16条
「権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されない社会は、すべて憲法をもたない」
☆「憲法による政治」・・権力担当者は、憲法で国民から明示的に授権されていることしかできない
憲法=授権規範 cf. 立憲主義・・「憲法は権力者を縛るもの」(憲法の拘束力)
2)「外見的立憲主義」・・「上からの近代化」=旧特権階級のイニシアチブによる資本主義化
①人権の観念の否認
②国民主権の排除
③権力分立の外見性
☆「憲法による政治」・・権力者は、憲法で明示的に禁止されていないことは全て行うことができる
憲法=禁止規範 cf. 立憲主義・・「憲法は権力者を縛るもの」(憲法の拘束力)
3)日本国憲法と立憲主義
明治憲法から日本国憲法への移行 法的には革命
①基本的人権の観念
②国民主権の原理
③権力分立制
④立憲主義の宣言 99条、98条1項、81条
⑤憲法の拘束力 国会・内閣・裁判所等は憲法上明示的に授権されていることしかできない
憲法を運用する現実の政治は、明治憲法的な運用の仕方を多面で継承し、立憲主義の実行に消極的
①憲法の拘束力 憲法上明示的に禁止されていないことはできる
②「解釈改憲」の手法 cf.「立法」概念、「戦力」概念
③違憲立法審査による正当化 cf.「砂川判決」、戸別訪問禁止
政治が憲法の規制から解放される状況をもたらしている要因
①市民革命の実体を欠いた日本国憲法の制定
②憲法から離脱する政治を求めてやまない日米安保体制
③憲法改正を党是とする自民党の長期政権独占 ☆政権交代・・・
立憲主義のために
①国民が憲法を自己のものとして、憲法によって政治を監視し、批判し、抵抗すること
②立憲主義の創始者たちの視点の再確認
モンテスキュー「権力を担当する者は、権力を濫用しがちである」
ヴァレル「人間は本来傲慢に創られており、高位につくと必然的に専制に向かっていく」
ジェファーソン「信頼はどこでも専制の親である」「憲法の鎖によって非行を行わないように拘束する必要がある」
4)戦争の放棄
(1)「戦争の放棄」を「国民の権利及び義務」に先行させたのは何故?
・市民憲法・・人権の保障が政治の目的であり、政治・統治機構はそのための手段
・伝統的な軍隊・戦争観・・外国の侵略から国家の独立と国民の権利・利益を守る手段
・その破綻・・国家の独立と人権を守るための戦争そのものがジェノサイド的性格をもつに至る
・戦争は基本的人権を破壊する手段であり、平和こそがその享受のための不可欠の前提条件
(2) 第9条の構造
①前文の平和主義、②第9条の解釈、③憲法制定時における政府の説明
(3) 第9条の運用
①警察予備隊の発足、②旧日米安保条約と米軍の駐留、③保安隊・海上警備隊の発足、④MSA協定の締結と自衛隊の発足、⑤現行日米安保条約の締結、
⑥「日米防衛協定のための指針(ガイドライン)」、⑦「指針」後におけるエスカレーション
(4) 現代における「戦争の放棄」の意義
①立憲主義の観点から 「解釈改憲」は専制政治の親
②軍事の観点から
・文明と戦争は両立しない 幣原の指摘
・日米安保体制による他律的な核戦争の危険
③経済・財政の観点から
・ディグラスの指摘 『軍拡と経済衰退』
・第9条の経済的効果 cf.軍拡と社会主義 ソ連崩壊
(5) 初心に戻る・・第9条の出番
(以上)
(注・事務局)聴者にとって印象深かった箇所をゴチックにさせていただいた。
なお後藤弁護士は、杉原泰雄著『憲法読本』第4版(岩波ジュニア新書)を、とくに推薦された。
完全護憲の会ニュース №20 2015年8月10日
さる7月26日(日)、神保町・学士会館地下1階大阪大学連絡室で7月例会を開催、参加者22名。入会者 計42名。
第19回 例会の報告
草野好文(編集委員会・委員長)が司会し、まず岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)が政治現況報告(別紙1)を行った。
ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が最近の事例にかかわる護憲上の問題点として「3月パンフ発行以後の憲法問題(案)」(別紙2)を提起し、これは今後の検討に委ねられることとなった。
ついで福田玲三共同代表(事務局担当)が事務局報告(別紙3)を行った。
次に後藤富士子弁護士が憲法24条(家庭生活における個人の尊厳と両性の平等)について報告(別紙4)を行った。
新参加者の自己紹介では、栃木県から参加した週刊金曜日の読者会として、当会パンフ23部の注文をいただいた。また参加者の田中伸氏からは、『東京新聞』7月25日(夕)に文京区の市民憲法学習会で安保法案をテーマに語った創作小話が写真入りで紹介されたことが報告された。
各種報告にたいする全般的な質問として、「『現在の日米条約は、日本がアメリカから守ってもらうだけの片務的なものだから、日本も自衛隊員をアメリカのために出動させることで双務的なものにすべきだ』との主張に対し、どう対抗すべきか?」の発言。これに対しては「この『日米安保=片務』論は、典型的な言いがかりだ。今でさえ日本は、年間7,000億円ものカネを米軍駐留に支出している。東京上空の広大な空域は米軍専用とされているために、西日本に向かう民間航空機は千葉まで遠回りを強いられる。また、強姦を始めとする悲惨な犯罪が米軍軍属によって犯されても、治外法権であり、容疑者はフリーパスで本国へ帰れる。このような事実は、矢部宏治著『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』が具体的に詳述している」と参加者相互が回答した。
「山梨県で中学生から30代の若い女性が白装束で、お経を唱えながら行列していた。観光バス5~6台くらいを連ねる大規模なものだった。前日には男性も同様の行列を行ったとのこと。こういう宗教団体による動員にくらべ、『完全護憲の会』も、若い人たちがたくさん参加してもらえるようにすべきではないか。」の貴重な意見もあった。
以上のような意見が交わされた後、事務局から8月の例会と編集委員会について次の案内があった。
次の例会・勉強会のご案内
日時 8月23日(日) 13:30~16:30
場所 三田いきいきプラザ・集会室A「憲法研究会」
〒108-0014 港区芝4-1-17 電話03-3452-9421
JR 山手線・京浜東北線、田町駅西口から徒歩8分
地下鉄 三田線・浅草線 三田駅 A9 出口から徒歩1分
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
護憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
事務局報告 福田玲三(事務局担当)
憲法と司法制度(案) 後藤富士子(弁護士)
討議 報告および提案への質疑、意見
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
次の編集委員会のご案内
日時 8月26日(水)14時~17時半
場所 大阪大学東京オフイス多目的室
東京都千代田区霞ケ関1-4-1 日土地ビル10階
アクセス:「虎の門」駅7番出口から北へ徒歩1分
「霞ケ関」駅A12号出口から南へ徒歩3分
(編集委員会に、ご都合のつく会員もご参加ください)
編集委員会(7月)の報告
第19回例会後の編集委員会が7月30日、大阪大学東京オフイス会議室で開かれた。出席者は野村、草野、福田のほか3名の編集委員と稲田氏の7人。以下の議題について討
議、決定した。
1.パンフレット配布活動
① 議員会館における国会議員全員への配布について。しばらく時期を検討する。
② 著名人、大使館など配布先リストの作成。(担当:K、福田)
・一定数作成しだい、順次送る。(担当:O)
2.会員・読者からの手紙(批判的意見含む)
① 山岡氏から当会に期待する手紙をを紹介。
② 白井氏からの手紙を検討。
・第1条、第2条の天皇条項に関して、天皇を特権的存在と認識する貴会パンフの見解と大きく異なる旨。―→返信担当:野村
③ 長坂氏よりの訴状を紹介
・「集団的自衛権行使容認」閣議決定に対して違憲訴訟準備。―→返信担当:福田
3.Sさんの意見と例会の持ち方
① 例会の時間配分不適切。出席者が一言も発言できないことあり。運営の見直しを。
・Sさんの意見にしたがい、討議の時間を確保するため、主催者側の報告を以下の時間配分としたい。
岡部報告:20分、野村報告10分とし、この後、質疑応答30分とる。
このあと、福田事務局報告10分とする。
・特別報告(講演)は提起30分、質疑15分とする。
・参加者ができるだけ多く発言できるよう、質疑の時間を多くとる。
② 新参加者(入会者に限らず)の紹介を行い、その発言の時間も確保する。
③ 戦争体験を聞きたい、という要望に応える企画を考える。
4.稲田氏意見(別紙)と稲田意見採用草野修正案(別紙)の検討
① パンフ設立趣意書の「日本国憲法の理念」の内容をめぐって議論。
・稲田意見、草野修正案を採用すべき、との意見多。(O、K、川本)
・現行パンフの「理念」のままで良い、変える必要なし(野村)。特に「行政権力の抑制」は不可欠、削ることに反対(野村、福田)
・現行野村理念は夢・詩がある。草野修正案は理屈っぽい。草野修正案を各項目1行で表現したい。(福田)
② 上記稲田意見、草野修正案、野村現行案、福田修正案を継続議論とし、例会にも提示して議論することで合意。
5.パンフ普及版について
① 普及版の内容についてそのイメージが定まらない、ということで議論。
・田中氏のアイデアを活かして、自民に対抗する漫画版にしてはどうか、との提案あり。田中氏と相談してみる。(福田)
・重要10項目をもとに検討している。(K)
② 当面、上記2案を併行してすすめる、との結論。
6.「完全護憲の会」ホームページについて
① これまで、「工事中」としてホームページの作成に携わってきた川本さんが、他のホームページ作成も抱えて多忙なため、正式にHP担当者を決定。全体の管理責任者として福田、直接の担当者をOとすること確認。
② 近日中にトップページの「工事中」を削除し、正式公開とする。
③ 多くの会員にも参加(会員ブログの活用)してもらい、充実したHPとしたい。
ご案内
戦争体験者による講演会。8月28日(金)18:00~20:30 於:大田区消費者生活センター第4集会室(JR蒲田東口徒歩4分)
講師:野村光司氏(完全護憲の会・共同代表)、信太正道氏(厭戦庶民の会・代表)。
会費 500円 。 問合せ 090-6711-9251(週刊金曜日東京南部読者会・杉本)
青年劇場創立50周年記念公演。ジェームス三木=作「真珠の首飾り」(国民主権・戦争放棄・基本的人権の尊重)
9月11日~20日(紀伊國屋ホール)、9月24日(大田区民プラザ)、9月25日(かめありリオホール)。
前売り=一般5150円、30歳以下3100円、高校生2000円。
青年劇場チケットサービス(03-3352-7200)
<別紙 1>
政治現況報告
岡部太郎共同代表
憲法の専門家や過半数を超える多くの国民が反対する中、安倍首相と自民・公明両党は、今国会に提出した安保関連12法案の審議を打ち切り、7月15日に衆院安保特別委で野党反対の中で強行採決。16日には衆院本会議で、民主・維新・共産・社民など野党五党が 採決を拒否、退席したあと強行採決し、参院へ送った。安倍首相自身が「国民の理解が進んでいない」ことを認めながらの暴挙だった。何が何でも解釈改憲で「違憲」の集団的自衛権を押し通すハラだ。参院の審議も来週から始まる。
ところで何故、自民党は憲法改正を結党以来主要政策として掲げ、こんなに急いで軍備拡張の安保法制へ突き進むのか。簡単に振り返ってみよう。
太平洋戦争に破れて無条件降伏、米軍など連合国に占領された日本は、外交官の吉田茂が首相になって、自由党が政権を握った。いわばアメリカ寄りの政権だ。また米国は戦犯裁判と同時に、戦争に協力した政治家を公職追放して、政治にかかわれなくした。その代表が岸信介や鳩山一郎だった。その間、昭和22年新憲法(平和憲法)が制定され、日本は戦争を放棄、交戦権も軍隊も持てなくして70年が過ぎた。
追放されたものは、日米講和条約の発効で独立を果たすと解除され、続々と政界へ復帰した。鳩山は岸や石橋湛山、三木武吉などと鳩山自民党を立ち上げ、昭和30年の保守合同で自由民主党の総裁・首相になると、親米の吉田路線を排し、日ソ友好条約を締結した。戦犯・追放の憎い米国や吉田と距離を置き、新憲法に対しても憎いアメリカから押し付けられた憲法として、党の政策に改憲を盛り込んだ。吉田は佐藤栄作などと共に最初の自民党に参加できなかった。
鳩山から石橋と体調が悪く引退した中で、戦犯だった岸が外相から首相となった。岸は日米安保が不平等条約だと改正に取り組み、訪米してアイゼンハワーに改正を約束。日本へ招待した。安保騒動は、成立に合せたアイク訪日、そのための安保条約強行採決とムリを重ねたため、一気に拡大、衝突で樺美智子が死んだため、デモが拡大、アイクは訪日を取り止め、条約が自然成立した日に岸は退陣した。そのあと、池田・佐藤と長く本流政権が続いたため、改憲気運は遠のき、今日に至った。安倍は全く岸と同じ路線を歩いている。しかし鳩山自民党や岸の憲法改正、非米路線につながる安倍が、超親米路線で、自衛隊を紛争米軍の先頭に立たせると云うのだから、こんな矛盾はない。支離滅裂と云うことになる。
今回の安保法案強行採決で、予想以上に国民の反対世論が持ち上がっている。その後、行われた各紙の安保法での世論調査で、大半が「反対」に回った。
読売(反対50 賛成36) 朝日(反対56 賛成26) 毎日(反対58 賛成29)
日経(反対57 賛成25) NHK(評価しない61 評価32)
共同通信(反対61 賛成27)
サンケイを除いて全ての調査で反対が過半数を超えた。
また内閣支持率では、朝日が支持37%、不支持46%と安倍第二次内閣で初めて不支持が上回り、安保法案の強行採決は「よくない69%」「今国会で成立させる必要あり20%」だった。また共同通信社による調査結果でも、内閣支持が6月の46%から37%に急落、支持しないは43%から51.6%と増え、これも初めて不支持が増えて逆転した。また「安保法案が憲法に違反していると思う」が56.6%、「政権が安保法案について十分に説明しているとは思わない」は82.9%にのぼり、与党の公明党支持層でも94%、自民党支持層でも64.4%、無党派層でも90.8%とほぼ潰滅状態。それでも安倍首相は「支持率で政治をやっていない」とうそぶく。
国民の声に従って国政を動かすのが民主主義の政治家。自分で俺は独裁者だと云っているのと同じだ。
参院では10増10減の選挙区改正が成立した。初めての2合区。自公の対応が初めて別れた。
<別紙 2>
3月パンフ以後の憲法問題(案)
野村光司共同代表
憲法前文
(1項第1文関係)
「日本国民は、国会における代表者を通じて行動」
国会で発議、制定された法律以外の、行政府要請には決して従わない決意。
陸軍刑法では捕虜になっても罰せられないのに、陸軍大臣の訓令に過ぎない戦陣訓で多くの青年が自決させられた。
現在も幾多の行政指導で数多の自由が制限されている。国歌・国旗法には強制規定がないのに教委が教員を処罰している。
(2項第1文関係)
「人間関係を支配する崇高な理想」の確認。
法学者にどう読まれているか?人間愛(人権)と言葉の神聖(法治主義)、
あらゆる虚偽を国政から排除。
建国記念日のウソ。紀元前660年の2月11日は、全くの虚偽。(偽装大国)日本の建国記念日。
「消費税」のウソ。現実は「付加価値税」消費者に租税行政に関係なし。納税義務者は事業者であって一般消費者ではない。「税込」の販売価格のみを表示すべし。
「全世界の国民 (all peoples of the world) が、等しく恐怖から免れ、平和のうちに生存する権利」の確認。
「死の商人」となって武器輸出をしない。
(3項関係)
「他国を無視してはならない」
「日本が韓国の植民地になる」民族感情を理解する。日本の皇后陛下が韓国外交官に惨殺される。日本人に選挙権その他の参政権無く、韓国軍人の日本総督の命令が法律となり、死刑にもなる。
卑しい日本語の使用を禁止、卑しい日本名を改め韓国姓を名乗らされる。韓国からの独立運動は徹底的に弾圧される。日本人は強制的に徴用され、韓国の鉱山、工場で重労働に服させられる。日本女性を韓国兵の慰安婦とし、戦場に連れまわされる。
天皇皇后の敵味方慰霊の旅、日本各地の敵味方慰霊の事例。
対照的な首相の靖国参拝、圧力重視のアジア外交、戦国秦の遠交近攻政策(戦争準備の外交)。
憲法本文
(第1条関係)
「天皇の地位は主権の存する日本国民の総意に基づく」
天皇制か特定天皇の地位か。国民投票で退位して貰う国民投票法もできず、現天皇家を否定する民意は今のところない。
(第7条関係)
栄典授与(国民のために)の悪例
東京大空襲等、無差別都市絨毯爆撃による焦土作戦を建言し、数十万の同胞を殺し数十万の家屋を焼く作戦を指揮したルメイ将軍に勲一等旭日大綬章を授与(佐藤政権)。
巨額の血税を消費し、違憲でもある航空自衛隊創設を賞すべきか。
(第9条関係)
「国際紛争を解決する手段」
日本国土で発生した紛争、侵略には武力を用いても、国外での武力行使は一切できない。
集団的安全保障:米軍補助部隊。インドネシアの日本軍「兵補」、英国軍のグルカ兵、関東軍の満州国軍。
戦時の統合指揮権:韓国軍は米軍に、と協定、日米秘密協定。
他国の傭兵で、戦費は日本負担:米議会のstanding ovation(全員起立拍手)は当然。
(第14条関係)
従軍慰安婦。特に朝鮮人女性を動員して日本兵士の慰安に供したのは民族差別。
ギャンブルと国政。統一した政策が無い。 カジノ、パチンコ、競輪・競馬、競艇、麻雀。
被害者無き犯罪。麻薬、マリファナ、売春。
(第15条関係)
18才以上に選挙権が与えられた。若者の棄権が多い中で更なる若者に公民教育の必要、自民党は教員の「偏向教育」に罰則。憲法教育は教員の義務。
投票権の本質。選挙権は選挙人に私益を与えるものでなく、全体の利益のため適正な代表者を選定する公の権限である。公権には義務が伴う。この公務を果たさない常習的棄権者は、その他の公職に任ぜられる資格なし。
(第18条関係)
自民憲法改正案「何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない」
国防的、軍事的、政治的関係において政権から求められれば、兵役も警察的拘留も忍ばねばならない。
(第20条関係)
何人も、靖国神社にA級戦犯の分祀を要求できない。何人を神と崇めても、止めさせることはできない。
公然と呪いの儀式をしない限り、秘かに「丑の時参り」をしても現世的害悪は何も無い。
(第21条関係)
「一切の表現の自由は(無条件に)保障する」
政権批判集会への公民館貸出拒否。
多数申し込みの整理、使用料以外に、言論内容での差別は職権乱用。「住民は、自治体提供の役務を均しく受ける権利あり」(自治法10条2項)。
参考:ドイツ基本法(8条)は、屋内集会と屋外集会を区別し屋内は完全自由。
「検閲をしてはならない」
教科書検定は「検閲」。「表現の自由」は無条件。予想される需要者(学校)への発信が権力に妨げられてはならない。
検定を廃止した場合の学校現場の教科書選択はどうするか?PTA、学識経験者の合同委員会?
自民党「文化、芸術、政策懇談会」
「国を過つメディアには広告を載せるな」「沖縄2紙はぶっつぶせ」
スターリン、ナチス、戦前日本の思想表現統制。政権に不利な文化を弾圧し、有利なものだけに整理する。
ヘイトスピーチと言論の自由
言論の自由は、思想の自由な交換のため。少数民族の生命、身体、名誉を害することを主目的とする言論は許されない。
(第22条関係)
「対話と圧力」で経済制裁。「敵」政府への打撃よりも、彼我の民間企業への打撃が大きい。
(第23条関係)
「国立大學に対する圧力」。
君が代、日の丸の実施要求。「国費を使う以上?」国民の血税で、政権の金ではない。
「全体の利益」(the whole community)(憲法15条)。「学問の自由を守る会」。
文系学科の予算削減。「学問の自由はこれを保障する」(憲法23条)。大学の自治。戦前の文系教授に対する弾圧。政権批判の学問は許さず。大戦時、文系の徴兵猶予を取り消し、前線に動員。理系には兵器開発研究を要求した時代を再現か。防衛省、大学への軍事研究費供与。
(第25条関係)
「猛暑対策」。
年々、猛暑が激しくなり熱中症で死亡する人が増えつつある。あらゆる熱源を統制す。る施策が求められる
自動車対策。自動車は極めて有用な物材であるが、並はずれた殺傷率、温暖化ガス排出量、公衆交通サービス破壊。有用性を大きく害さず、抜本的な抑制策を講じなければならない。
(第26条関係)
自民党、「政治偏向教育の教員には刑罰を」。
教育公務員の憲法を遵守し尊重する義務。憲法教育は、生徒のための当然の公民教育。憲法誹謗の教育こそが政治偏向教育。
学校での虐め。「すべて国民は教育を受ける権利を有する」故に、国は「生命、自由、幸福追求の権利は、国政の上で最大の尊重を必要とする」(13条)
苛めは、被害者に死の苦しみを与え、自殺に誘導する犯罪であり、かつは、教育の場を破壊する。国家権力は、不法の暴力が人民を傷めるとき、それに優る合法の実力で抑制することに存立の根本的第一義がある。被害者に我慢、転校を勧めるのではなく、加害行為を禁圧し、加害者を懲戒しなければならない。
(第31条関係)
「被疑者」呼ばわりの禁止。
わが国が締結した対日平和条約で世界人権宣言の順守を約す。11条1項「公開の裁判で有罪の立証あるまで無罪と推定される権利」。 杜撰な検挙も多い中、警察の逮捕で即、「被疑者呼ばわり」は許されない。肩書有る者は、その肩書で呼ばるべし。
(第66条関係)
「大臣の文民条項」
自衛官出身の防衛大臣は、盛んに戦争法案を推進している。本人の罪ではなく、文民条項に違反して任命した首相の責任。
(第76条関係)
「司法の独立の回復」
1960年、田中耕太郎氏を長官とする最高裁は、「良心の独立に背き、米国と協議し」、政権の統治行為は、憲法・法律にいかに違反しても訴訟を受け付けない、と云う「統治行為論」を導入、遂に現政権の憲法無視の暴走に到らせた。
司法権自ら「統治行為論」を否認することを強く求めたい。
(84条関係)
「租税特別措置法の廃止」。
法人税、所得税が、税率その他の課税条件を決定しながら、租税特別措置法は、各種「お友達」事業の所得について減免税をしている。憲法14条の「法の下に平等」は、法律で規定しても「法」に反すれば違憲、無効。
(第90条関係)
「地方議員の政務活動費と官房機密費」
地方議員の政務調査費の杜撰な処理より遙かに重い内閣官房機密費の処理。「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院が検査」に反し、「領収書不要、会計検査なし」の政治慣行が確立。検査結果のすべてを公表しないまでも検査は必要。浪費血税額と国民的効用との比較の指摘も必要。
(第99条関係)
「不敬罪」
かっては天皇が「至高の存在」であり、その侮辱は不敬罪を構成。現憲法下、「憲法」が「至高の存在」。現在、天皇・皇后・皇太子、いずれもこれを弁えているが、首相を筆頭に裁判官、議員、その他の高官の侮辱は甚だしい。「憲法侮辱」は15条1項で、第一の弾劾原因となる。 ▲
<別紙 3>
第19回例会 事務局報告
福田玲三(事務局)
1) ニュース19号への意見など
M氏
いつも護憲ニュースを送っていただきありがとうございます。添付の1番目はウイルス感染とかで、開けませんでした。2番目の岡部太郎氏の「政治現況報告」は読め、正確な情報をえることができ、感謝しております。NPO中帰連平和記念館(川越市、私が代表理事をつとめています)の総会6・13では安保関連法案を廃案にという決議をし、首相、マスコミ、平和民間団体などに送付しました。その日6・13日の午後はむのたけじ氏100歳をお招きし、公開講演会をもちました。安倍政権の悪政きわまれり、というところまできました。
O氏
護憲ニュース、緊迫する政治状況についてのお知らせ、踏み込んだ解説、拝受、熟読しました。お礼申し上げます。
W氏
ニュースありがとうございました。「戸隠9条の会」が発足しました。
珍道世直氏
ニュースNo19をお届けくださりありがとうございました。別紙3 事務局報告の中で、私の所感までお取り上げいただき恐縮に存じます。ありがとうございました。
野村代表様の「護憲の現状報告」の中で、「統治行為論の克服」として“砂川判決以降、半世紀、司法界がこれに屈従して現在に至っていることを、全法曹関係者は厳粛に反省してもらいたいものである”とされておりますが、私も、違憲訴訟提起以降、このことをしみじみと感じて参りました。
この度の上告に当っては、砂川判決で述べられている後段の「一見、極めて明白な違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものである」との判決を踏まえて、「閣議決定は、一見極めて明白な違憲無効であり、司法審査権の範囲内のものである」として最高裁に、憲法適合性の審査を求めております。
国会の中で、違憲、合憲が対決している今こそ、最高裁判所は、違憲審査権を行使して、司法の使命を果されることを強く願っております。いつも大切な資料を有難うございます。
Sさん
ニュース19号ほかお送りいただきました。有難うございました。お暑い中ご活動に深く感謝申し上げます。私も微力ながらやや若い仲間たちと、国会周辺や地元での行動に参加しています。今日明日にも、採決などと。この国に芽生えた悪の細胞は何時になったら退治できます事か、日々の動きに苦しみはますばかりです。
龍 平四郎氏
さて 今回も 東京新聞より理解しやすくたすかります。
18回 例会の報告中のSさん発言(1頁)後半「その主張の後ろ盾になってくれるのが憲法第何条だ」、同感です。別紙 1 政治現況報告、岡部太郎氏はやはり 読みやすく理解しやすいです。 助かります。護憲の現状報告ではa 後半の 我が天皇は常に「憲法に従い」から三行はその通りと感じております。
私事ですが、過日、旅行に行った夜の懇親会で政治の話題がありました。年代は70代多く7名です。向うから仕掛けたらどうするんだ!!やはりこちらも、やり返さなければと、これば多数でした。平和外交にもって力を注ぐべきとの返答には力がなかったです。 懇親会ですので深い議論不要ですのでほどほどに終わりましたが。感じますが首相が集団自衛権を仲間内に説明したように、「アソウ君、アベ君」と低いレベルの人たちが多いのが現状だと思います。いずれ、自衛隊募集には手配師が現れ、一人入隊すれば○○円報償となるような怖いことも実現するのではないかと思っております。(ターゲットは貧困若者)。いろいろ書きましたが今後もよろしく。
2) 稲田恭明氏よりの提案(別紙5)
3)パンフの普及など
①7・7公開シンポジウム「安倍政権と歴史修正主義を考える」、於・衆議院第一議員会館会議室、主催・村山談話の会、参加者に約170冊(振替用紙挿入)配付、当会から真田、川本、福田ほか2名参加。
②7月10日、東京フランス会(大阪外大同窓会)、35部配付、福田ほか参加。
③7月11日、東アジア近現代史研究会、於・神奈川県大和市、約20部配付、草野。
④『週刊金曜日』読書会36箇所と連絡、同、奈良五条5冊、東三河13冊、徳島10冊、倉敷10冊受注。
⑤岡部、野村氏より各10冊受注。
4)今後の日程
7月30日(木)14:00~17:00 編集委員会、於・大阪大学東京オフイス(虎ノ門)
8月23日(日)13:30~16:30 例会、於・三田いきいきプラザ。
8月26日(水)14:00~17:00 編集委員会、於・大阪大学東京オフイス
8月28日(金)18:00~20:30 憲法講演会 野村光司氏ほか、於・大田生活センター
9月以降、例会会場は神明いきいきプラザ(JR浜松町駅から徒歩5分)の予定
<別紙 4>
憲法と「法律婚主義」「夫婦同氏」「単独親権」
弁護士 後藤富士子
1 「法律婚主義」は合憲か?
日本国憲法24条1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定めている。すなわち、婚姻を成立させるには、「合意」の外に何もいらない。
ところが、民法では、戸籍法の定める「届出」をし、その届出が法令に違反していないとして「受理」されて初めて婚姻が成立する(民法739条、740条)。そして、婚姻適齢(男18歳、女16歳)、重婚禁止、女の再婚禁止期間、近親婚の禁止、直系姻族の婚姻禁止、養親子等の婚姻禁止、未成年者の婚姻に父母の同意・・と色々ある。これでは、「合意のみ」で婚姻が成立するという憲法の規定に反している。
一方、憲法は「同性婚」を排斥しているのだろうか?これについては、「性同一性障害者性別取扱特例法」により性転換した者は「異性」として法律婚が認められる。しかし、生物学的な性別が変わるわけではないから、「同性婚」とも見ることができ、憲法は排斥していないと解することになる。なお、最近の最高裁判決で、女から男に性別変更した夫と妻との間のAID(非配偶者間人工授精)で生まれた子について、生物学的にも異性の夫婦間のAIDで生まれた子と同様に、「嫡出子」と認められた。これは、民法772条「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」という規定に基づく。こうなると、父子関係を定めるために設けられた「嫡出推定」制度は陳腐化するのではないか。
惟うに、生きた人間の社会では、「法律婚制度」の枠から外れるケースが出てくることは避けられない。その場合の対処について、二つの方向性が異なる方法が考えられる。一つは、枠から外れたケースを枠内に取り込む方法であり、他は、枠自体を取り払う方法である。前者の場合、必ず枠内に取り込む要件が設けられて線引きされるから、枠内に入れる者と入れない者とで差別化される。性同一性障害者の性別変更が認められる要件は厳格で、性転換手術が必要である。つまり、「異性婚」が擬制されなければならないのであり、あるがままの「同性婚」を許容しない。
「同性愛」の性的嗜好をもったり、生物学的な性別と心理的な性別の不一致に苦しんだりする人が現にいる以上、「法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」とする憲法24条2項に照らせば、法律婚の枠を取り払う方法こそ採用されるべきである。すなわち、「法律婚主義」は法律婚優遇制度であり、差別を生み出す。これに対し、「事実婚主義」は、人が婚姻生活を営んでいる事実に対し婚姻の法的効果を付与する。近親婚や重婚でも、当事者の自治に任せればいい。「個人の尊厳」は、国家が付与してくれるものではなく、人が実現するものである。
2 「夫婦同氏」強制の違憲性
民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、夫婦のどちらか一方に改氏を強制している。
しかしながら、これでは「婚姻の自由」と「両性の平等」が両立しないのであり、憲法24条、14条に違反する。
このことを考えると、不平等の起源が「法律婚主義」にあることが分かる。「事実婚主義」なら、夫婦の同氏が強制されることはない。同氏を望む夫婦が選択的に同氏を称することができるようにすれば足りる。
ちなみに、民法改正として論じられている「選択制夫婦別姓」は、倒錯している。「優遇された法律婚に取り込め」と要求することは、事実婚差別を温存するものであり、破廉恥ではなかろうか?
3 「単独親権」の違憲性
民法は、「婚姻中は父母の共同親権」としている。換言すれば、未婚や離婚は単独親権である。なお、未婚や離婚自体が「親権喪失事由」とはされていない。
しかし、2人いる親のうち必ず「どちらか一方が親権を喪失する」制度は、「未婚・離婚の自由」と「両性の平等」が両立しないから、「夫婦同氏」の強制と同様、憲法24条、14条に違反する。
さらに問題なのは、父母間で協議が調わない場合に、裁判官が決めることである。戦前の「イエ制度」の下では「家の自治」があり、家族は国家の直轄ではなかった。それが、憲法24条により「イエ制度」が廃止された結果、皮肉なことに、国家が家族・家庭を支配することになったのである。
言うまでもなく、親は日本国憲法で「主権者」とされている。それに対し、日本の裁判官は、官僚にすぎない。そう考えると、どうして裁判官が片方の親から親権を剥奪できるのか、全く不思議である。
(2015.7.25)
<別紙 5>
稲田氏意見
2015年7月3日
(前略)入会以後、パンフレットの設立趣意書を眺めながら、申し上げてよいものかどうか迷いに迷っている問題がございます。
ことは、設立趣意書の「諸原則」に関わる問題ですので、これを承認しなければ会員となる資格が失われることにもなりますが、他方で、パンフレットの「発表にあたってのごあいさつ」(特に最後の一文)を拝見しますと、現在の文書を「不磨の大典」として一言一句修正できないと考えることも適切ではないようにも思います。
そこで、新入りの分際で大変生意気なようですが、一言私見を申し上げさせていただきたく存じます。
実は、設立趣意書の「われわれの使命」にある「日本国憲法の理念」の定式化の仕方に若干の疑問がございます。
まず、「絶対平和主義」「議会主義」「行政権力の抑制」「国民主権」「基本的人権」「法治主義」の6項目が掲げられていますが、私は、中学や高校の教科書で日本国憲法の3大原理として教えられている「国民主権」「基本的人権の保障」「絶対平和主義」に、近代憲法の指導理念である「立憲主義」を加えた4項目でよいのではないかと思います。
「議会主義」は国民主権の、「行政権力の抑制」と「法治主義」は立憲主義のコロラリーなので、あえて挙げるまでもないと思うからです。
また、それぞれの項目に付されている憲法条文からの引用にも若干の疑問がございます。
「行政権力の抑制」の項目に付されている「政府の行為により再び戦争の惨禍を起こさない」という決意は「平和主義」の項目に付すべきではないでしょうか。また、「国民主権」の項目に付されている「これに反する一切の憲法、法令、詔勅を排除」という文言は、むしろ「立憲主義」を示す条項と解すべきではないでしょうか。
さらに、「法治主義」の項目(前述の通り、これ自体不要だと私は思いますが)に付されている「憲法と法律とのみに拘束される」(この文言は司法の独立を定めた76条に、裁判官を主語とする述語として登場します)には主語が存在しないため、何を意味しているのかが不明です。
以上のことから、「日本国憲法の理念」としては、例えば、次のように修正してはいかがでしょうか?
・基本的人権の保障・・・「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であり、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託される」(97条)
・国民主権・・・「主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」。「国政の権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」(前文第1項)
・絶対平和主義・・・「戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認」(第9条)。「政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こさない決意」(前文第1項)。「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」(前文第2項)
・立憲主義・・・「これ(人類普遍の原理)に反する一切の憲法、法令、詔勅を排除」(前文第1項)
新入りの分際で誠に差し出がましいとは存じましたが、これもひとえに、「完全護憲の会」の理念を一層明晰でわかりやすいものにしたいとの一念によるものです。(後略)
<別紙 6>
稲田意見を採用した「日本国憲法の理念」草野修正案
2015年7月24日
日本国憲法の理念
国民主権 「主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」。「国政の権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」(前文第1項)
基本的人権 「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であり、過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託される」(第97条、第11条)
絶対平和主義 「政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こさない決意」(前文第1項)。
「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」(前文第2項)
「戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認」(第9条)。
立憲主義 「人類普遍の原理に反する一切の憲法、法令、詔勅を排除」(前文第1項)「この憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」(第98条)
「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」(第99条)
※ 「絶対平和主義」の「絶対」を入れず、「平和主義」と表現したいのですがいかがでしょう?
<理由>
① 自衛隊を「国連軍に」との整合性
② 絶対という言葉が一切の「武力」「強制力」の否定として用いられている。
完全護憲の会 ニュース№19 2015年7月10日
さる6月28日(日)、神保町・学士会館地下1階北海道大学連絡室で6月例会を開催、参加者23名。入会者 計39名。
第18回 例会の報告
草野好文(編集委員会・委員長)が司会し、まず岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)が政治現況報告(別紙1)を行った。
ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が岡部報告および最近の事例にかかわる護憲上の問題点を報告(別紙2)した。
ついで福田玲三共同代表(事務局担当)が事務局報告(別紙3)を行った。
これらの報告のあと、新しい例会参加者の自己紹介と討議があわせて次のように行われた。
G弁護士
『完全護憲』という主旨に共感して、入会させていただいた。現在の裁判制度は、憲法が本来求めているあり方とは異なる。戦前の大陸法系の憲法に対して、現憲法は英米法系だ。
アメリカは元々陪審制の国であり、法曹一元制だ。国民が裁判の場に出る際の「代弁者」として弁護士がいる。裁判官は、そのような弁護士の中から、選ばれる。司法修習所の二回試験に合格したらいきなり裁判官や検察官のキャリアシステムに乗る日本の現在のやり方は、戦前の系譜をひくものであり、憲法が本来求めている姿とは異質だ。
(なお、戦前は、「司法官」と言えば裁判官と検察官であり、弁護士は除外され、法廷では姓を名乗ることも許されなかった。)
S氏
今頃、「憲法が求める国の形」というテーマでパンフレットを作るのは妥当なのか?そもそも、憲法制定の1947年の直後から、憲法を蔑ろにする動きが続いてきた。なぜ、憲法違反の実態を、ここまで許してきたのか?
Sさん
私は法学部出身だが、それでも、このパンフレットは、読んで眠くなる。
そもそも、憲法の条文の順番に書いてあるので読みにくい。「これは違憲だ。あれは違憲だ」と、違憲の現実を列挙していくよりも、「今、若者はこういう現実で苦しんでいる。これは、憲法に違反する。その主張の後ろ盾になってくれるのが、憲法第何条だ」のようにする方が、多くの人に訴えるのではないか。
T氏
同感。「憲法が本来求めている姿はこのようなものであって、憲法違反の事実は、これこれだ」という議論は貴重。他方、権力者側は、百田氏も含め、「一般民衆は新聞で文字を追うよりテレビに左右される」など、「お客様」たる国民の深層心理やニーズをよく見据えたうえで策を練っている。我々は先ず、これに対抗しなくてはならない。だから、「憲法が本来求めている姿」関連は、資料の「パート3」「パート4」くらいの扱いにして、若者の切実な欲求や、俗流の集団的自衛権行使容認論に対抗するダイジェスト版をパート1として作ってはどうか。自民党は「ほのぼの一家」という漫画本を作って改憲を宣伝している。
以上のような意見が交わされた後、事務局から例会の議事要旨を記録する人を、という要請があり、T氏が積極的に応募され、会を閉じた。
編集委員会の報告
第18回例会後の編集委員会が7月1日、大阪大学東京オフイス会議室で開かれた。出席者は野村、草野、福田ほか5名が参加し、以下の議題について討議、決定した。
1.例会開催時間の変更について
7月例会に提起し、8月例会(8/23)から午後1時30分~4時30分とする。7月例会(7/26)は午後2時からで変わらず。
2.後藤弁護士への報告依頼
1)7月例会で、後藤弁護士に司法関係上の憲法問題について提起(約30分)をいただくよう要請する。連続2回くらいで。要請の担当は川本さん。
2)他にも会員で弁護士の方がおられるので、要請してみる。
3.パンフ普及版について
1)普及版のイメージについて意見交換。
2)担当のKさんに素案を出していただく。
3)福田氏が普及版に取り上げる条項を以下にピックアップ。1条、7条、9条、15条、28条、42条、43条、51条、68条、72条、81条、84条、99条。あわせて条項を主とせず、事例によって条項をみちびく発想転換の検討が要望された。
4.パンフレットの普及活動について
1)村山談話を継承し発展させる会主催7月7日シンポジウム参加、参加者にパンフを200部ほど配布する。行動参加:川本、真田、福田ほか2名。
2)週間金曜日読者への普及。読者会に連絡とる。(担当・福田)
東京南部読者会から8月28日の集まりに野村氏の参加要請。
.司法関係者、学者、研究者、大学関係学部など、引き続きリストアップする。司法関係ではG弁護士にも相談してみる。
5.完全護憲の会ホームページの開設について
1)担当の川本さんからホームページ制作の現状について説明をうけた。モニター画面上でホームページの検索の仕方や閲覧の方法、会員ブログの書き込み方法など。
2)まだ「工事中」として半公開状態だが、間もなく正式版を公開できる。
6.平正和さんから『集団的自衛権の行使に反対する――総理大臣を訴えた私の裁判記録――』(ウインかもがわ刊・定価1000円+税)の贈呈をうけた。
7.会報その他の文書を公表するにあたって会員名を匿名とすべきか否かについて
1)3共同代表以外、原則匿名とする。
2)本人が公表是とした場合は載せる。
次の例会・勉強会のご案内
日時 7月26日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 大阪大学連絡室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
護憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
事務局報告 福田玲三(事務局担当)
憲法24条をめぐる課題(案) 後藤富士子(弁護士)
討議 報告および提案への質疑、意見
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
次の編集委員会のご案内
日時 7月30日(木)14時~17時半
場所 大阪大学東京オフイス多目的室
東京都千代田区霞ケ関1-4-1 日土地ビル10階
アクセス:「虎の門」駅7番出口から北へ徒歩1分
「霞ケ関」駅A12号出口から南へ徒歩3分
(編集委員会に、ご都合のつく会員もご参加ください)
<別紙 1>
政治現況報告
(安保法制の審議・重要な時期に差しかかる)
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
政府与党は6月24日までの通常国会の会期を、これまでで最長の95日間、9月27日まで延長した。アメリカにも公約した今国会での成立に向けて、安倍首相の執念を示したもの。衆院を通過してから60日経過すれば、参院で可決されなくても、衆院で再可決(2/3で)すれば成立する。参院での可決は、それだけ難しいと判断しているためだ。ただ安保法制11法案の行方は、この1ヵ月の間に大きく潮目が変わった。政府は最初から集団的自衛権を認めることを前提に、各法案、各条項の具体例での論争に野党を引きづり込み、局地戦で説得、抑え込む作戦で、野党もそれに乗って作戦が成功しているかに見えた。
そこに晴天のへきれきのように、6月4日、衆院憲法調査会に参考人として出席した三人の憲法学者が、自民党推薦の長谷部恭男氏(早大教授)を含め、小林節慶大名誉教授、笹田栄司早大教授全員が、集団的自衛権を“違憲”と断定し、従ってそれを含む安保法制法案は立憲主義に反する解釈変更、国民を納得させられぬ違憲立法だと糾弾した。特に小林氏は「戦争に参加するなら戦争法案だ」と言い切った。「九条は一貫して集団的自衛権を容認していない」とも。
思わぬレッドカードは政府与党にとっても寝耳に水で、この法案の一番の根幹、集団的自衛権そのものが憲法違反になるとの最初の時点に引き戻されてしまった。安倍首相らは法案は「裁量の範囲」と必死に防戦につとめたが、この三人の憲法違反発言の影響は大きく、その後も山崎拓元自民党幹事長や武村正義氏の長老議員による仕切り直し要請、五人の元法制局長官も「集団的自衛権は国民を危険にさらす」と政府の解釈変更を「違憲」と批判した。
第1次安倍内閣の長官だった宮崎礼壹氏が「憲法をどう読んでも許されないのが論理的帰結」としたのを始め、四人が「違憲」、一人は「法案が抽象的すぎて解らぬ」とした。あと五人の経験者は老齢や病気を理由に解答なし。特に批判が厳しかったのは安倍首相がこだわっているホルムズ海峡の機雷除去で、現実にないものを危険とする満州事変と同じと断罪している。フジTVによる調査では120人余いる憲法学者にアンケートしたところ、110人が違憲、9人が違憲の疑いが濃い、合憲としたのは3人だけだったという。
この潮目の変わったのを政府はどう乗り切るのだろうか。世論調査でも安倍内閣の支持率は落ち、安保法制への反対は6割を越える。これからの暑い夏を乗り越えられるか。九月の自民総裁選への影響も注目される。
<別紙 2>
護憲の現状報告
野村光司(パンフ『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)
(今後の活動方針)
先ず、発行されたパンフレットを普及させ、われわれが正しいと考える憲法解釈を知って貰い、政界、言論界、労働界などの理解を得ることであろう。このパンフレット上の立論の誤り、不適切な表現などを訂正する作業もある。
第二に、発行されたパンフレットは、少数の会員による問題意識に基づいており、それ以来、世間では憲法問題にかかわる種々の政治現象が起きている。私も2~30のテーマは用意しているが、今後はこれまで参画していなかった人たちが提起する問題を優先的に取り上げて、組織で検討して、それを次の成果物に反映させて行く作業があろう。
例えば今日の政治報告の中からも一例を挙げるので今後の検討をお願いしたい。
a. 「統治行為論」の克服
現政権は、憲法が定める権力の制約を全く無視した傍若無人の政治を行っているが、これは総理一人の罪ではない。逆コース以来、各代政権の違憲の政治が長く積み重ねられた結果として今日があるのである。今、集団的自衛権の問題でも議員、学者、あるいは元法制局長官の出馬を煩わせているが、憲法問題に決着を付けるのは憲法76条3項で「その良心に従い、独立して職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」裁判所に訴え、裁判所が憲法9条各条項を適用すれば、明白な違憲行為として、まがまがしい政府の集団的自衛論は雲散霧消するはずである。しかし1960年、退官を控えた田中耕太郎長官の最高裁が、「政権が統治行為として断行したものは、いかほど違憲、違法であろうとも、人民がこれを裁判所に訴えても裁判所は取り上げないと」いう、驚くべき「統治行為論」判決を出し、またこの法廷は、砂川事件についてもアメリカ当局と協議の上、全員一致で米軍合憲の判決を出している。以後、半世紀、司法界がこれに屈従して現在に至っていることを全法曹関係者は厳粛に反省してもらいたいものである。
(現在の立憲王政下の国では古くからの「王は何人にも従わないが、神と法とには従う」の諺を受け入れている。わが天皇は常に「憲法に従い」と発言しているのに対
し、首相の方は「最高権力者の総理大臣である私は合憲と確信している『それで文句
があるか』」との態度である。天皇を超えて、統治行為論に安住した発言と言える。)
b. 国政から一切の虚偽を排除
法治主義、或いは法の支配とは、事実を確かめ、それに法を適格に適用することであるが、政権のウソがまかり通っている現状がある。憲法前文の「人間社会を支配する崇高な理想」は人権の尊重とウソの排除であろう。2月11日を建国記念の日とするが皇紀や2月11日の設定は、政権の大きな虚偽に基づいており、今年も多くの人のこれに反対する行動があったが、これが継続され、「うそつき大国日本」建国の日となっているので、真に日本国が統一された日を事実に基づいて再考すべきものである。
c. 選挙権の行使は権利のみでなく義務
今回、選挙権の行使を18才まで認めることになった政治的背景はつまびらかではないが、現在でも若者を中心に棄権が多く、候補者の選定にも公共の利益のため、熟慮されることもない実態がある。選挙権は、自己の私的な利益のためにあるのではなく、候補者の中から誰が最も「全体の奉仕者」に適した者であるかを選定する重大な公権であり、公権である以上、選挙民はこの公務を果たすべき一種の公務員として公務を果たす義務がある。高等学校以上ではこのための政治教育を施すことが必要であり、棄権者に刑罰を科すまでは控えるとしても棄権を常としている者には「公務員になる資格」を否定すべきではなかろうか。
(会員の安全確保)
われわれは日本国憲法のみを最高権威として一切の国政をここから批判している。
現パンフレットの中にも右翼勢力をいたく刺激する意見を述べており、代表のところにも2、3の「右翼跳ね上がりによる暗殺に注意」と云う忠告もある。「代表は犠牲になっても惜しくない年齢、甘受すべきだ」の冗談的意見もあったが、われわれはパンフレット冒頭に「どこの政党政派にも属せず、誰にも隷属せず、誰をも憎むものでもありません」とうたい、闘争する考えはなく、不偏不党、何処からか攻撃を受けても「私たちの意見ではなく、憲法にはそう書いてありますね」と答えることにしている。闘争を旨とする政治活動はせず、会員にも求めず、仲間の安全も図っている。
そこで会員についても自ら会員を名乗るのは差支えないが、他の人が会員であるとは暴露しない配慮をしているつもりである。
<別紙3>
事務局報告
福田玲三(事務局)
1) ニュース18号への意見など
珍道世直氏
岡部太郎様の政治現況報告(安保法制)について、「これらは日米同盟や日米安保の
質的転換であり、戦争放棄の憲法9条の違反を改憲なしに一内閣の閣議決定で実現 しようという暴挙。提案権のない内閣が、国会の立法権を犯す国民への挑戦と言える」
としておられますが、正にその通りだと思います。
日米同盟のガイドラインの改定内容は、日米安全保障条約の変更手順を 経ずして合意
することは許されない内容と考えております。
「護憲の現状報告」の今後の検討課題に掲げられました、「集団的自衛権」をはじめとする各項目は、正にご主張のとおりであると、共感いたしております。
大切なご提言等 ありがとうございました。
龍 平四郎氏
今回も勉強になる内容でありがたいです。
別紙1 政治現況報告。岡部太郎氏の6月のまとめを楽しみにしております。
別紙3 護憲の現状報告。日本の司法の崩壊、安倍政権誕生の帰結、田中耕太郎氏の件 初めて知りました。沖縄問題、以前はまったく書かれた記事のとおり、でも、今は少し変化しているように思う。知事の渡米、ヘノコ基金などで本土の人間に変化あり。
提案。「ヘノコ基金」「5・3憲法集会」のように カンパをゆうちょ振込ができれば いいなーと思っております。
Tさん
東京新聞の取材にお答えするため、中日新聞東京本社にいってまいりました。記事は、7月中になるようです。
平正和氏
私の裁判記録を近々出版する運びとなりました。ご参考になればと思い、ご迷惑でなければ、一冊贈呈いたしたく存じます。
(護憲の会ニュースを確かに受け取りました。ありがとうございました。私も珍道さんと同様に昨年7月の閣議決定の無効確認訴訟を起こしています。私のほうは、先月18日付で、東京高裁によって口頭弁論も開かれずに却下されました。その後上告して、現在上告理由書を作成しているところです。私は、どの政治団体、どの宗教団体、その他何の団体にも属していません。個人で活動しています。)
『週刊金曜日』杉並・世田谷 読者会
ご連絡いただき、ありがとうございます。『週刊金曜日』5月29日号「金曜日で逢いましょう」をあらためて読み直してみました。興味深い試みと思いますが、今ひとつよくわからないことも事実です。パンフ「日本国憲法が求める国の形」を下記宛てにお送りください。
T氏
先日は、17号で私のことを紹介してくださり、ありがとうございました。東京新聞記者 M様が、昨日取材してくださり、私の拙い話を約2時間に亘って聞いてくださいました。
7月中旬から下旬にかけて、私の講談を発表する機会があり、そちらにお来しくださるご意向です。
T氏
此度東京新聞の記事に接し「完全護憲の会」に入会出来ました事嬉しく存じます。日本の有るべき姿を真摯に模索、追及する皆様の運動に敬意を表します。毎回、恵送戴く議事録、会員の皆様の意見を拝聴するに、日本の未来を案ずる方々が多く居る事に意を強くした次第です。憲法をないがしろにする為政者との闘いは続きます。頑張りたいと思います。
『週刊金曜日』N読者会I氏
「日本国憲法が求める国の形」ご送付頂きまことに有り難うございました。「発表のごあいさつ」拝読しましたが、同感いたしますこと多く感動いたしました。早速入会の手続きをとらせて頂くことにしましたが、他にも賛同者の一人でも増えますことを念願し、冊子数冊を、お願いいたしましたのでよろしくお願い申し上げます。
2) パンフの普及などについて
① 研究会。6月13日、主催・労働運動研究所、於・大阪経済法科大学会議室、川副詔三著「憲法闘争およびこれからの日本労働運動の基本思想と基本路線」について、参加者11名、日本労働運動の再建をめざす画期的な構想をめぐって熱心な議論、本会から野村、福田ほか1名参加。
② 集会。6月12日。「日本政治の劣化を食い止めよう」講演会、於・衆議院第1議員会館会議室。弁士・森田実、孫崎享、天木直人、植草一秀、主催者・辻恵、伊東章氏を初め参加者にパンフ約170冊を配付、参加者約220名、本会から真田、川本、福田ほか1名参加。
6月14日。主催・日本民主青年同盟ほか、於・世田谷区民会館、若者憲法集会、パンフ約200冊を配付、参加者約1300名、本会から真田、川本、福田ほか2名参加。
③ 目玉を10~15項目に絞った普及版の作成を準備、担当K。
④ ホームページを新設中、担当・川本。
3) 今後の日程
7月1日(水)14:00~17:00 編集委員会(会員の参加自由)於・大阪大学東京オフイス(虎ノ門)
7月26日(日)14:00~16:30 例会。於・学士会館地下1階大阪大学連絡室。
7月30日(木)14:00~17:00 編集委員会(会員の参加自由)於・大阪大学東京オフイス
8月23日(日)14:00~16:30 例会。於・三田いきいきプラザ(地下鉄三田駅A9番出口より徒歩1分)会場費支払のため参加費100~200円の予定。
9月以降、例会会場は神明いきいきプラザ(JR浜松町駅から徒歩5分弱)の予定。
完全護憲の会ニュース №18 2015年6月10日
さる5月31日(日)、神保町・学士会館地下1階北海道大学連絡室で5月例会を開催、参加者20名。入会者 計 36名。
第17回 例会の報告
草野好文(編集委員会・委員長)が司会し、まず岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)が政治現況報告(別紙2)を行った。なお政治現況報告(別紙1)は時間の関係で紙面での報告とした。
ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が岡部報告および最近の事例にかかわる護憲上の問題点を説明(別紙3)した。別紙3には会場で出された意見への回答を含む。
その後、福田玲三共同代表(事務局担当)が事務局報告(別紙4)を行った。
これらの報告と討議のあと、新しい例会参加者の自己紹介では、「私が小学校に入ったとき、新しい憲法の話は、もう教えられていませんでした。私は専主防衛の自衛権はあると思い、北朝鮮による拉致事件や小笠原のサンゴ密漁事件などを考えると警察や海上保安庁の部隊だけでは足りないと考え、戦争体験のある皆さんの思いを理解したく入会しました」という感想が一人の人から述べられ、ついで、その他の参加者全員から簡単な自己紹介。
それから、パンフ『日本国憲法が求める国の形』を読んだ後の感想または意見が司会者から求められ、20ページ、第15条「国民による公務員罷免の権利」をめぐって、安倍総理ほか閣僚から繰り返される違憲発言問題が提起され、あわせて「統治行為論」によって違憲政治行為の免責をはかる最高裁判所に対して今行っている批判運動の経験が紹介された。
司会者から、今後さらにパンフの内容に対する意見や疑問を出してほしいという要望があって会を閉じた。
編集委員会の報告
第17回例会後の編集委員会が6月3日、大阪大学東京オフイス会議室で開かれた。出席者は8名。以下の議題について討議、決定した。
1.6月諸集会への対応
1)若者憲法集会 6月14日(日)世田谷区民会館 全体集会(13:30~15:30)
主催者に断ったうえ(スタッフに配布)、会場入り口で参加者にパンフ配布(目標:300部)。カンパ募るが無料配布。行動参加者:4人
2)国会内集会 6月12日(金)主催者及び挨拶・講演者にパンフ
行動参加者:3人
3)例会会場の変更について(参加者増に対応するため)
6月は学士会館、7月から公共施設
2.村山談話支持の院内集会 7月7日(火)(衆議院会館) 対応、次回会議で検討
3.パンフ普及版の制作について(初心者向け=凖若者向け)
担当:KT 福田(10項目ほど選定)
4.週刊金曜日読者会へのパンフ配布→リストアップする。
5.労働運動研究所研究会 6月13日(土)川副論文「憲法闘争およびこれからの日本労働運動の基本思想と基本路線」をめぐって参加要請。
6.「完全護憲の会」ホームページ開設について
次回例会の確認を経て開設することを確認。担当:KM(事務局員として)
7.パンフ第2版について
逐次、検討・議論する。そのための素材を提供する。担当:野村
8.パンフの配布のありかたについて(有料か、無料か)
原則:無料配布とする。カンパを要請する。
9.「完全護憲の会」の名刺作成について
作成する。(共同代表、編集委員など)
10.当面の会議日程について
例 会: 6月28日(日)、7月26日(日)
編集委: 7月1日(水)、7月30日(木)
次の例会・勉強会のご案内
日時 6月28日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 北海道大学連絡室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
護憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
事務局報告 福田玲三(事務局担当)
討議 報告および提案への質疑、意見
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
次の編集委員会のご案内
日時 7月1日(水)14時~17時半
場所 大阪大学東京オフイス多目的室
東京都千代田区霞ケ関1-4-1 日土地ビル10階
アクセス:「虎の門」駅7番出口から北へ徒歩1分
「霞ケ関」駅A12号出口から南へ徒歩3分
(編集委員会には編集委員のほか、会員希望者はだれでも参加できます)
< ニュース>当会員のひとり吉田英夫氏(85歳)の活動が「朝日新聞」(島根版)5月29日付に写真入りで紹介された。「A4判『かまきり通信』月2回発行10年」という小見出で、政治・社会を批評する通信が毎回「50人の読者にファックスで送」られているという。
<別紙 1>
政治現況報告(大阪住民投票)
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
5月17日に大阪市を大阪都にして5区に編成する初めての住民投票が行われた。
維新の党の橋下市長の公約の一番目玉で、大阪府と市の二重行政の解消を目指し、自民・公明・共が反対に回った。結果は70万4千票が反対、賛成は69万4千票とわずか1万票の僅差で否決された。220万有権者で1万票差の接戦は、実際には勝敗はつかなかったに等しい。しかし、この勝敗の意味は非常に大きかった。橋下市長は負けたら政治家をやめると公言していたが、その夜のうちに任期の12月で市長はもちろん、政治から身を引くと会見で引退表明。
維新の党の共同代表江田氏も敗北の責任を取って辞任。翌日の18日には議員による投票で幹事長の松野頼久氏が党代表に、柿沢政調会長が幹事長に選出された。
国政にも大きな影響がある。自民大阪府連は大阪都に反対だが、安倍首相や菅官房長官は、むしろ橋下が勝ことを大いに期待していた。もともと橋下に政治家になるよう最初に勧めたのは菅だし、大阪府知事・大阪市長の橋下と安倍は何度も会っている。基本的にタカ派的政治姿勢で安倍と橋下は話が合ったからだ。安倍官邸は橋下が勝って維新の党内での求心力が強くなれば、これからの安保法制の審議や憲法改正で協力を要求できると期待していたからだ。
安倍にとって憲法改正の発議に必要な衆参での2/3の議席確保には野党第2党の維新の会の協力が欠かせない。衆院は自公で何とかギリギリ2/3議席だが、参院ではまるで足りず、維新の議席でやっと三分の二に到達する。また選挙協力のために、自公連立政権は手を結んで来たが、安保法制や集団的自衛権問題では、公明党に厳しくチェックされ、かなり危機感を持っていた。そこで維新との協力関係をチラつかせ、強気の公明党を牽(けん)制してきた経緯がある。そのはったりが利かなくなり、来年度の参院選後の憲法改正発議にも赤信号がともった。
さらに江田の推薦で元民主党の松野が代表となり、反自民・野党共闘・民主党への接近が現実のものとなって来た。今後の国会運営にも影響が出そうだ。代表選出の翌19日には今年初めての党首討論があったが、松野は安倍公約である議員定数の削減がまだ未実行だと鋭く迫った。維新の党は、もともとの国会議員の多い東京関東勢と橋本子飼いの大阪議員勢とに分裂する可能性もあるので、橋下任期の今年末まで見届ける必要がある。
なお、この党首討論で共産党の志位委員長がポツダム宣言について「太平洋戦争は日本の世界征服のための戦争だったと定義している、どう思うか」と質問したのに対し、安倍は「まだ、その部分はつまびらかに読んでいないので、直ちに論評するのは差し控えたい」と答弁した。ポツダム宣言を読んでもいないのに「戦後レジーム(体制)からの脱却」という安倍のキャッチフレーズは無責任極まるといえそうだ。
今国会の最大の対決法案である安保法制も国会に法案が提出され、22日から特別委員会も始まった。六月にはこの問題をまとめたい。
<別紙 2>
政治現況報告(安保法制)
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
安倍は4月21日、訪米、オバマ大統領と会談、上下両院議員への演説で、日本の集団的自衛権を可能にする安保法制を今年夏までに成立させると約束、5月11日の自公協議で新しい安全保障法制を構成する11法案の内容を合意した。14日に閣議決定、15日に国会提出、28日から衆院安保特別委員会で審議を始めた。11法案は自衛隊の海外派遣の恒久新法「国際平和支援法案」と自衛隊の海外活動など現行法10本を一括して改正する「平和安全法整備法案」の二本立て。改正案10本は一括して委員会での審議を早めるため①「日本の平和と安全」と②「世界の平和と安全」に寄与、の二つに分れる。
日本については、従来の個別的自衛権に昨年閣議決定の集団的自衛権が可能な「存立危機事態」が設定される。歯止めの三要件は①日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生、日本の存立が脅かされ、国民の生命・自由・幸福追及の権利が根底から覆される明白な危険がある②この状況を排除し日本の存立を全うし、国民を守るため、他に適当な手段がない時③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと――そして例外なく、国会の事前承認を必要とする。(この点は公明党が強く要請、自民党が歩み寄った)
専守防衛の憲法を逸脱し、他国への攻撃でも日本が武力行使できることになる。自衛隊は米艦の防衛や機雷掃海、米への弾道ミサイル防衛、戦闘現場での米軍支援を実施する、など米国の戦争への参戦可能。さらに米軍支援は「日本周辺」「極東の範囲」という地理的ワクを撤廃、世界中どこでも米軍支援できることになる。「重要影響事態」の新設(米軍だけでなく他国軍支援も可)さらに「国際社会の平和と安全」で海外の他国軍の戦闘支援も可(国際平和共同対処事態)。
そのほかPKO(国連平和維持軍)以外にも自衛隊を海外での復興支援活動を可能にする「PKO協力法改正案」、在外邦人の救出や米艦護衛を可能にする「自衛隊法改正案」、米軍や他国軍への協力や役務提供を追加する「米軍等行動円滑法案」など、米軍や他国軍への支援や協力が大幅に拡大された。
これらは日米同盟や日米安保の質的転換であり、戦争放棄の憲法九条の違反を改憲なしに一内閣の閣議決定で実現しようという暴挙。提案権のない内閣が、国会の立法権を侵す国民への挑戦といえる。
28日から衆院安保特別委で本格的な論戦が始まったが、野党各党の追及に対し、安倍らはあいまいな答弁を繰り返し、また首相・外相・防衛相の発言が食いちがうなど、政府内部での統一解釈も出来ていない。とくに首相は答弁を長々と繰り返し、質問にない答弁をするなど、意識的に論点をずらして正面から答えていない。最後は多数決でといった結論ありきの答弁は民主主義のカケラもない。あまりにも仮定の多い政府答弁、判断規準がないといわれても釈明の余地がない。
灯油不足で凍死者がバタバタでる(ホルムズ海峡封鎖)とか、根本的な世界情勢の変化(集団的自衛権)とか現状認識に疑問が多い。なぜ東アジアから出てアラブまでゆくのかも疑問だ。
<別紙 3>
護憲の現状報告
野村光司(パンフ『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)
1.当面の作業
3月パンフは当分の間、わが会の基本文書として維持し、世間にこれを周知して貰う努力をし、これに対するあらゆるコメントは誠実に検討し、新たに統一した見解を獲得して行くことになる。
同時に日々の政治から、その違憲性も明らかになると思われるので、会員一同でその題材をキャッチし、それに対する模範の解答を共同で準備し、理解し合わねばならない。
本日、岡部代表からあった政治報告の中でも、幾つか新たな憲法問題が提供されていると考えられる。それを例示すると次のようなものがある。これは暫定的な意見を提供するもので、正式に新たなパンフレットに今後掲載する項目とするかどうかは、会員一般からの問題提起を優先しながら編集委員会、例会で徹底的に論議して、最終的に決定されることになろう。相互に真摯な勉強をして行かねばならないであろう。
2.今後の検討課題
集団的自衛権
現政権は、集団的安全保障で、「鬼面人を驚かす」長文の改正法律案を提案しているが、憲法9条1項の「国権の発動たる戦争と・・武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」条項が正しく適用されれば、国外に軍隊(自衛隊)を戦争参加のために送るなど絶対にできず膨大な法律案は雲散霧消されてしかるべきものである。同条2項第2文「国の交戦権は認めない」ことからも、あるべき武力行使に備えて自衛隊を海外派遣することは絶対にできない。憲法に違反して自衛隊を送る政権の行為は国の行為としては無効で(98条)、これを推進した為政者は「私闘」をさせたものとして刑事、民事、行政の全責任を負わねばならない。
また現在、自衛隊出身者が防衛大臣を務め、盛んに戦争法案を推進しているのは、正に憲法66条2項が懸念したところである。
首相のアメリカ議会演説
首相がアメリカ議会の場で、即ち米国に対して、集団的安全保障の法律改正達成の時期までを約束したが、「国会は、国権の最高機関であって唯一の立法機関である」(41条)のに一行政官の身分で、この権威を侵したことは、日本国の憲法よりも国会よりも、アメリカの要求に応えた一種のクーデター(中南米諸国ではアメリカ指導のクーデターが多発した)であり、憲法上許されることではない。
議会でスタンディング・オベーション(立ち上がって拍手)を得たことも、自衛隊を挙げて米軍指揮下におくようなことは、日本も占領地で、例えば、満州国で関東軍の指揮下に満州国軍を置き、インドネシア等では現地人を日本軍指揮下で「兵補」に編成した歴史に鑑みても、自衛隊を「米軍の兵補」として、しかもその費用を日本で賄えばアメリカ議会がスタンディング・オベーションで酬いることは当然である。いわばこれは、自衛隊員をアメリカに売る(進呈する)行為といえるかも知れない。
「国の存立に重大な影響がある」、「密接な関係がある」
法律とは、一定の条件が起れば、国が国民にその意志に反しても強制できるもので、その条件は明確なものでなければならない。「重大な」とか、「密接な」とかの人によって異なる感覚的な条件は、法の世界では通常、執行不可能なことである。民間人の判定など通用することは決してなく、為政者の権力有利、人権不利の判断で、国民の権利が自由に否定されて来た。現政権ではすべて「安倍首相御一人」の判断で決まることになる。小泉首相もイラク派兵で、「(私によって)自衛隊が送られた場所が非戦闘地域だ」と言ったことがある。
自衛戦争しかないとして自衛隊に入隊したものは当然、外国への派兵は拒否できる。憲法18条は「何人もその意に反する苦役に服させられない」とあり、徴兵されて戦場に送られることは最悪の苦役であり、現行憲法上は決して徴兵はあり得ない。そこで自民党の改憲案では18条は「社会的、経済的関係において、苦役に服させられない」とし、外交上、国政上では、国民を徴兵の強制的苦役に服させ、「政府の行為により、再び戦争の惨禍を起こす」(前文第一文)ことができるように準備している。
勤労者の立候補障害
日本の国会は、山口県の岸、佐藤、安倍一族に見るような「地盤、看板、かばん」の確立した世襲議員で占められている。憲法44条は「議員の資格は収入および財産によって差別されてはならない」としているが、労働をもって生計を維持しなければならない勤労者の立候補を困難にする、高額な立候補補償金や、立候補するには職を止めねばならない制度は、「収入および財産による差別」と解して、すべて改めねばならないだろう。
日本の司法の崩壊
憲法76条3項は、「裁判官はすべて・・独立して職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」とあるが、法曹界では、憲法無視、人権軽視、行政追随、権力追随との声がかまびすしいが、司法の中でも最も司法の独立と憲法の遵守に責任がある最高裁こそが、最も問題である。「完全護憲の会」は、この最高裁にその良心を呼び戻して欲しいささやかな声となっている。
最高裁を退廃させた第一の責任者(「A級戦犯」)は、1950年から60年まで最高裁長官の職に在った田中耕太郎氏と思われる。氏は59年12月判決の砂川事件ではアメリカと連絡を取りつつ15人の裁判官一致で米軍駐留合憲の判決をしたし、退官直前の60年6月には苫米地事件について、いわゆる「統治行為論」、すなわち政権がおやりになることは、如何に憲法、法律に反しようとも、これに関する国民の提訴は受け付けないとしたのである。憲法の制約を全く気にしない安倍政権の誕生もその帰結である。
われわれは、全裁判官が、統治行為論を脱却して、憲法76条3項に復帰して頂くことを心から願っている次第である。
「大阪都」問題
大阪市長の政治姿勢は、基本的にわれわれの理念と一致しないが、府県と市町村の二重行政に問題があることは肯定できる。憲法92条以下では中央政府に対して「地方公共団体」とのみあり、都道府県、市町村との組織は憲法を変えずに現行法律の改変だけでできる。
現在国の行政は、中央政府と都道府県と市町村と三段建てになっており、その間の事務分配原則も不分明であり、これがそれぞれの責任範囲を曖昧にして、すべて中央の采配で動かされる弊害がある。狭い日本では中央政府と、やや大規模な市町村で充分であろう。これらの市町村は、所掌すべき事務範囲を明確にし、厳格に「地方自治の本旨」、すなわち分掌事務を明確にして、これには国の支配、指導を一切否定して、市町村の創意と工夫に任せるべきであろう。現政権の「地方創生」は、更に地方自治の本旨を否定し、地方を中央の支配下に置くようになることが心配される。
沖縄問題
沖縄は薩摩の「琉球征伐」以来、ずっとヤマトから武力支配を受け、自らの意思が尊重されず、ヤマトの犠牲を強いられて来た歴史と現状とがある。少なくとも憲法95条により、沖縄のみに適用される法律、条約は、すべて住民投票を経なければ法律となり得ないはずであるが、これが全く実行されず、本土の意思で支配されて来た。軍用土地の地主を優遇したり公共事業予算を投下するだけで、軍事基地の殆どを引き受けることが、沖縄県民全体の希望かどうか、住民投票を経なければそれらの法律は無効とされなければならない。
軍事基地を完全撤廃するには、沖縄が独立すればすべて解決できようが、どこの国も独立のための憲法条項は用意されていない。しかし国連憲章第1条で民族自決の原則があるので、沖縄県民がヤマト民族とは独立の一民族と意識できるか、それに向けての胆力があるかを問われる。英国におけるスコットランド、スペインにおけるカタルーニャ、カナダにおけるケベック州、中国におけるチベットの動向も研究すべきものである。ヤマトンチュウに沖縄をことさら苛めようとする意志はなかろうが、沖縄がどんなにヤマトの犠牲を強いられていても、殆ど罪の意識がないことに問題の根源にある。
<別紙 4>
事務局報告
福田玲三共同代表(事務局担当)
1)ニュース17号へのご意見
R氏
添付 読ませていただきました。
特に質問への返答、適切であると思います。
平和に持っていくための接点を見出す努力がお互いしないといけないと思います。
特に質問者へ努力がほしいように感じております。
現首相には戦争をしない(平和)への外交努力をもっと、もっとすべきと思っております。
いい内容のニュースで勉強になりました。
ありがとうございました。
C氏
より良い国の形を目指してお元気でお取組みの事、心から敬意を表します。
第16回例会のご報告誠にありがとうございました。
お送りいただいた資料を心をこめて拝読いたしておりますが、一つ一つ大切なものばかりで、学ばせていただいております。
事務局報告では、私のことをお取上げいただき有難うございました。
どうか、どうか今後ともご指導、ご支援よろしくお願い申し上げます。
感謝をこめて。
Yさん
いつもお世話になっております。ニュース17号BCCの為開示できないとありましたので、見られませんでした。会のお知らせありがとうございます。集会の件ですが、夫婦の考えがくい違い、お前に何ができるんだなどと言われ、また私も車椅子のためと難聴の為に参加できません。申し訳ありません。妹の知り合いの七十代の方も東京新聞で記事を見て完全護憲の会の会に入会されたそうです。憲法記念日の前日2日の日改憲反対の集会が横浜であり、大江健三郎、沢地久代、雨宮かりん、落合恵子さんらも来て30000人の大集会、これからも、漫画、うたなんでも分かりやすく、取っ付き易くして、みんなの理解を得られるよう運動していくと新聞に記載されていました。完全護憲の会でも前回のニュースで、冊子を平易なものにしようと考えておられると、会員数も増加しますように、祈っております。
S氏
過日会則などの冊子ありがとうございました。
病気の会ですので、少ない人数ですが細く長くの交流会などで活用させていただく所存です。6月14日(調布福祉センター)、7月15日(祖師谷地区会館)予定しています。
K炎の会
Tさん
種々の、資料有難うございました。
昨日、Tさんの、講談を聞きに行ってまいりました。東大の五月祭もやっていたようですが、Tさんの、護憲に根差した、講談はなかなか面白うございました。5月31日は又、勉強に伺うつもりでおります。有難うございます。
T氏
いつもご親切な資料をありがとうございます。
プリントしてじっくり読んで勉強いたします。
すでにご存知かと思いますが神奈川新聞の「時代の正体」を面白く読んでいます。
今日の内田樹さんの解説がとても解りやすく参考になりました。
http://www.kanaloco.jp/
31日の例会に出席させてもらいます。よろしくお願いいたします。
Yさん
いつもお世話になっております。17号ニュース携帯で送信してくださり、お手数をおかけして申し訳ありません。早速見させて頂きました。会の役員の方々お世話になります。東京新聞の記事やテレビで一時も今回の安保法案に関する問題で目が離せません。何か報道陣としての矜持は、東京新聞素晴らしく感じています。妹にも勧めました。完全護憲の会の活動これから、一日一分一秒惜しんで一生懸命後進の為に頑張って下さっている事に感謝致します。宜しくお願い致します。
2)パンフの普及について
① 5月3日、みなとみらい臨港パークで行われた憲法集会で大江健三郎氏を初めとする主催者と来賓に計10人に各1冊を贈呈。
② 5月18日、都内全水道会館大会議室で行われた総評OB会主催の「村山元首相講演会」で参加者全員約170人に各1冊配付。
③ 5月2日付け「朝日新聞」に「理想でも遺物でもない現実的指針」「改憲すれば全て失う」という優れた護憲論を寄稿した作家島田雅彦氏に1冊郵送。
④ 増補版(2000部印刷)への取り組み
第1刷500部印刷費の約2倍を回収、これを増補版2000部印刷費、封筒作成費、ニュース郵送費などに充当。
パンフ普及の課題
イ)無料配付(振替用紙付き)か、有料配付か
ロ)6月14日(日)13:30~15:30 若者憲法集会、世田谷区民ホール
ハ)衆参国会議員、議員会館、約700冊、紹介議員が必要
ニ)法務省、外務省などの省庁へ
ホ)大学図書館、市町区立図書館などへ
ヘ)明日の自由を守る若手弁護士の会http://www.asuno-jiyu.com/ 労働弁護団ほかへ
ト)インターネット政党「新党憲法9条」http://new-party-9.net/へ
チ)当会ニュースのe-メール便発信先、約100箇所(郵送先約50箇所には配付済み)
リ)憲法擁護闘争の緊急性、第一義性を訴えた「地域と労働運動」誌の読者リストへの配付要請
ヌ)会員による普及活動
⑤ 目玉条項を10~15項目に絞り、解説を平易にした普及版の作成
⑥ ホームページの新設
3)今後の日程
6月3日 (水)14:00~17:00 編集委員会(会員参加自由)於・大阪大学東京オフイス
6月13日(土)14:00~16:30 研究会・主催労働運動研究所(参加自由・無料)<緊急提言>「憲法闘争およびこれからの日本労働運動の基本思想と基本路線」(「地域と労働運動」176特別号)於・大阪経済法科大学(港区麻布台1-11-5、地下鉄神谷町)6階会議室
6月28日(日) 14:00~16:30 例会。於・
完全護憲の会ニュース №17 2015年5月15日
さる4月26日(日)、神保町・学士会館地下1階北海道大学連絡室で4月例会を開催、参加者17名。入会者 計 31名。
第16回 例会の報告
まず草野好文司会者(編集委員会・委員長)の求めにより、岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)が政治現況報告(別紙1)を行った。
ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が「パンフ第2版に向けた活動方針案」(別紙2)を提出し、また岡部氏の政治現況報告にかかわる護憲上の問題点を説明(別紙3)を行った。
その後、福田玲三共同代表(事務局担当)が事務局報告(別紙4)を行った。
最後に草野編集長から、当会に届いた意見2通と、それへの返信(資料5)が報告された。
討議は「パンフ第2版に向けた活動方針案」について行い、若干の不必要な記述を削除した。
これらの報告のあと、『東京新聞』の報道などによる新参加者の自己紹介が行われた。
昨年末に米国から帰国されて親子で参加された方は「帰国したばかりで様子がまだ分からぬが護憲活動に参加したい。息子は英語が堪能なので、その仕事があれば手伝いたい」。
藤沢市から参加された70歳の方は「数年来、憲法について疑問に思っていたことが、この冊子で裏付られてうれしい。ただ国連軍の日本駐留については釈然としない。現天皇については3・11大地震以後、尊敬している」。
42歳の婦人の方からは「戦争反対の一致点で行動したい。『原爆の子』や『きけわだつみの声』でしか戦争を知らないので、今後、みなさんの戦争体験を共有したい」。
「通勤でこの近くを往復しているが、終戦を迎えたのは中学4年生のときで、それを機に授業内容が一転したのに驚いた。戦前復帰の風潮を危惧している」。
などの心情が吐露された。また講談師の修業をしている若い男性からは「現憲法の全文を完全に暗記している」として、憲法を最高法規と定めた第97条、天皇の世襲を定めた第2条、納税の義務を定めた第30条などについての意見が披露された。
そのあと出席者全員の簡単な自己紹介があり、ついで事務局から次の日程が報告されて閉会した。
<strong次の例会・勉強会のご案内
日時 5月31日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 北海道大学連絡室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
護憲の現状について 野村光司(「パンフレット」原案起草者)
事務局報告 福田玲三(事務局担当)
討議 報告および提案への質疑、意見
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)
編集委員会の報告
第16回後の編集委員会が4月30日(木)14時から大阪大学東京オフイス会議室で開かれた。出席者、5人。
まず「当面の憲法問題意見」(別紙6)が野村委員から提出された後、パンフ第2版の作成は今後のこととし、とりあえず今のパンフに「完全護憲の会 設立趣意書」「会則」「入会申込書」を加えて、印刷に都合の良い80頁建てで、直ちに2000部増刷することにし、その配付先を検討した。
自民党が予定している2年後の改憲国民投票を前にして、1日、1分、1秒を惜しんで現憲法擁護の運動拡大に役立つよう、『日本国憲法が求める国の形』普及に全力を挙げることとし、まず会員や支持者による普及活動のほか、全国の各大学法学部、護憲派弁護士、国の省庁(法務省、外務省、宮内庁など)、衆参の全国会議員などを配付対象にあげたが、さらに例会で参加者の提案を求めることとした。
次回編集委員会のご案内
日時 6月3日(水)14時~16時半
場所 大阪大学東京オフイス多目的室
東京都千代田区霞ケ関1-4-1 日土地ビル10階
アクセス:「虎の門」駅7番出口から北へ徒歩1分
「霞ケ関」駅A12号出口から南へ徒歩3分
地図:大阪大学ホームページ
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/academics/facilities/tokyo/off
(編集委員会には編集委員のほか、会員はだれでも参加できます)
横浜市のみなとみらい5・3憲法集会に参加
5月3日、横浜市のみなとみらい臨港パークで行われた5・3憲法集会に福田他2名が参加、舞台裏の通路で主催者と来賓の計10名(下記)にパンフを贈呈した。
大江健三郎、澤地久枝、樋口陽一、佐高信、落合恵子、鎌田慧、山口二郎、山本太郎、吉田忠智(社民党委員長)、木内みどり(順不同)
なお草野は神奈川県護憲グループの1員として、この集会に参加した。参加者3万人。
<別紙 1>
政治現況報告
岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)
前回の例会から1ヵ月の間に、ずい分政治に動きがあった。みな今後の政局に影響のある出来事なので、触れておく。
まず平成27年度予算が年度内には決らず、4月10日に成立した。長期債務残高が1000兆円の大台を超え、世界的に見ても膨大な借金で、格付けでもAプラスからAに落ちた。しかも公共事業や防衛費が増額になったのに、老齢年金や福祉関連予算は減額された。減税も大企業にあつく、贈与税の減額など金持優遇策が目立った。
株価も17年ぶりに2万円台を回復したが、これも積立て年金の中から大幅に株式に投資したため。もし、中国のバブルがはじけ、日本経済に影響が出ると、将来の年金が大幅に減る危険性があるなど、綱渡りのアベノミクスの経済運営だ。
原発問題では、福井地裁が高浜原発の差しとめ判決を出し、原子力安全委員会の安全規準が甘いとの判断をくだした。そのあと鹿児島地裁が川内原発について再開同意の判断を出した。この原発訴訟は全国で行われており、今後その行方が注目される。
インドネシアのバンドンで開かれた首脳会談では初めて日中首脳会談が本格的に行われた。安倍・習会談は昨年12月に顔合せはあったが、今回は30分にわたって両国の和解と将来が形式だけ話し合われた。このバンドン会議での安倍は「先の大戦には深い反省」はしたものの、植民地支配や侵略の“お詫び”はなかった。
また3月末までに、中国のアジア投資開発銀行(AIIB)が設立され、英独仏やインド、豪州、ブラジルなど世界の57カ国が参加した。主要国では日米だけが不参加で、今後の折衝が注目される。
沖縄県知事当選以来、一年以上会談のなかった翁長・安倍会談が20日、首相官邸で行われた。その前に菅官房長官が5日、沖縄を訪問、翁長知事と会って下相談。これは安倍首相が27日訪米、28日オバマ大統領と日米首脳会談をするため、急きょ実現したもの。日米防衛指針の改訂もあり、さすが現地の沖縄知事と会わないのはまずいと思ったか。しかし、かんじんの辺野古基地移転問題など、双方、平行線のままで終った。
菅官房長官や政府は、辺野古移転の根拠を、1999年、時の稲嶺知事(選挙は自民党支持)と「普天間から辺野古移転を合意」したことに置いていた。しかし稲嶺氏は、このあと、さる4月21日の記者会見で「基地の軍民共用化と辺野古の15年間の使用期間とする暫定的な米軍施設にすることが、当時の決定の条件だった。その条件が2つとも無視されて15年間が経ったのだから、同意の前提が崩れた以上、合意は「無効」と語った。今後安倍内閣にとって沖縄はアキレス腱になりそう。
また自公による安保の法制化協議は自民党が次の五法制を提示。
①「武力攻撃事態法」集団的自衛権の行使
②「国際平和支援法」世界の平和と安全のため他国軍の戦闘を支援
③「周辺事態法」「重要影響事態安全確保法」日本の安全確保のため、世界で他国軍の戦闘を支援
④「PKO協力法改正」PKO以外の国際平和協力活動に参加
⑤「自衛隊法改正」平時の米軍などの防護
自民は五月以降、国会に提出、今国会で成立を狙っているが、公明は自衛隊の海外活動の“戦闘支援”には否定的で、また他国支援にも国会の事前承認を求めている。この問題は、なお流動的なので、今後まとめる。
<別紙 2>
パンフ第2版に向けた活動方針案(不必要な記述を削除したもの)/strong> 2015年5月14日
フレット宣伝活動
3月発行のパンフレットは、中間製作物とは言え、その提言の斬新性と包括性の故に、心ある人に読まれさえすれば、現政権の日本国憲法全否定の政治が白日の下に理解され、必ずや大きな政治変革の資と成り得ると信ずる。それ故に我らは、あらゆる機会を捉えて、同じ志を持つ人々に広め、検討し理解を得る努力をする。
3月パンフレットの問題点の研究
このパンフレットは会の内部で真摯に検討されたとは言え、未だ、少数の会員の間で到達した仮の結論である。よって宣伝活動の間に寄せられた外部からのコメントは、すべて会の組織に還流して、その是非を検討し、次なるパンフレットの完成に資する。
今後、同志の参加も広く求めて、わが会のすべての会合は真剣な憲法の勉強会となる。
新規憲法問題の発掘
現政権とそれに追随する国内諸政治勢力は、近隣アジア諸国を挑発し、国民を再び軍事国家へと誘導し、またアメリカをはじめ諸国を勧誘して「遠交近攻」の政策(近隣諸国を侵略、併呑する秦の始皇帝に到る秦の政策)を実行しつつ、戦前日本を復活すべく精力的に種々の政策を発動している。わが会もこれを検討し、日本国憲法に違反するものを逐次、明らかにしてゆかねばならない。
3月パンフレット発効後に探知された憲法問題で仮に用意したものは、別紙のごときものであるが、会員から広く、考えられる憲法問題を集積し、会の組織(例会、編集委員会)に上せて、厳格な検討を加え、回答を得て行かねばならない。これは同時に3月パンフレット宣伝の過程でも外部から指摘される問題点に対して賢明に対応する理論武装となろう。
改定パンフレットの編集方針
以上の作業を終えた適当な時点で、これらを集大成した改訂版を出すことになろうが、補足分を発行するか、3月版に統合した決定版を出すか、の選択がある。
違憲国政追加検討事項(参考)
憲法前文
第2項
「人間相互の関係を支配する崇高な理想」
人類愛と言葉の神聖 対日平和条約1条、世界人権宣言1条
国政から虚偽を徹底的に排除
「建国記念の日」は「(偽装大国)日本の建国記念の日」
(参考)ロシアは11月7日の「10月革命記念日」を止め
11月4日の「民族統一記念日」に変更(1612年同日のポーランド軍撃退)
「全世界の人民 (all peoples of the world) が恐怖と欠乏から免れ平和に生存する権利」
(恐怖)戦争、内戦は人民の最大の恐怖
「死の商人」(武器輸出)とならない
政治的迫害を受ける亡命者の難民受け入れ
(欠乏)諸国難民の人道的救済に努める
財界支援のひも付き援助を止める
第3項
「他国を無視しない」
旧敵国の戦争犠牲者にも慰霊・謝罪・補償に留意
円覚寺、蒙古塚、興亜観音(松井石根)等々
「平和の礎」、ブータン国王、天皇・皇后慰霊の旅
議員を含めすべての公務員の靖国神社参拝禁止
A級戦犯に拝礼する被害国国民感情の無視(20条3項違反と「併合罪」)
憲法本文
第1条
「天皇の地位は国民総意に基づく」
「天皇」とは天皇制か、特定天皇の地位か
第4条
「天皇は国政権能を有しない」
「君が代」は、時間、国土、国民を支配する天皇の統治を寿ぐ違憲の歌詞
(悪しき例) 国歌法に強制規定なし
強制する教育委員会こそ職権乱用で処罰さるべし
第7条
「国民のために栄典を授与」
(悪しき例)
都市絨毯爆撃のCurtis LeMayに勲一等旭日大綬章授与(佐藤栄作政権)
空襲被害の国民に補償なし
以後の航空自衛隊に莫大な血税
米の軍需産業に奉仕
第9条
「国際紛争を解決する手段」
国外での武力行使はすべて「国際紛争」対応
米軍のための後方支援
実質、米軍日本人部隊としての参戦
経費を日本国民の血税で賄う
国外に参戦するなら基地を貸せない
(参考例)日本占領地で現地人を「補兵」として戦わす
台湾、朝鮮の植民地兵
第14条
「法の下に平等」
カジノ法 巨大な利権対象
本質刑法犯罪:公営賭博(官僚利権)、パチンコ(取締官憲共犯)の無原則
第15条
「公務員選定の固有の権利」
有権者の投票権は重要な公権:権利であるとともに義務
棄権者常習者は、公務員になる資格はない
全体(the whole community)の奉仕者に成り得る者を選ぶ義務
国家公務員は国政選挙で、地方公務員は地方選挙で
第18条
「奴隷的拘束」
徴兵は最も過酷な奴隷的拘束
(悪しき例)自民党改憲案「社会的又は経済的関係において」と限定
政権の政治的利益で国民を徴兵
(参考)ローマの奴隷 剣闘士 (gladiator) の死闘を楽しむ貴族
改憲案関係者は誰も徴兵されない確信
第20条
「信教の自由の保障」
何人もA級戦犯の分祀を求め得ない
何人を神と崇めるかは当該宗教の自由
(参考)「悪魔」として外部に宣伝すれば名誉棄損罪
議員を含めすべての公務員は、公職を表示して参拝できない
第21条
「集会の自由」
公民館などの借用に目的などの条件を付けられない
(参考)地方自治法10条
ドイツ基本法(憲法)第8条
「(屋内の)集会に届出、許可制を課し得ない」
「出版その他一切の表現の自由」
言論機関への圧力・干渉は一切許されない
「検閲はしてならない」
教科書検定制度は違憲
「通信の秘密は侵せない」
盗聴はテロリストなど人命に重大な危険が差し迫った場合のみ
第22条
「出国の自由」
拉致被害者の自由往来の権利
ジャーナリストの出国に危険が予測されても制限できない
拘束されても外交的交渉はするが救出作戦はない
第23条
「学問の自由」
大學に自治には、一切干渉できない
君が代の強制はもっての外(法的根拠なし)
第24条
「婚姻に関して個人の尊重と両性の平等」
女子のみの再婚禁止期間
親子鑑定は完璧に可能
同性婚 表面上同性であっても実質両性か?
第25条
「最低限度の生活権の確保」
生活破壊危険の化学的評価
危険の深刻度(死亡数)と発生率との積を考慮
原発、地球温暖化ガス、航空機、自動車等
第26条
「能力に従って教育を受ける権利」
国は教育を受ける環境の整備
能力別教育の導入
中学校からの能力別教育
英才教育は或る程度必要では?
旧制高校の教養教育
職業別高等教育
再チャレンジの可能性は確保
国は、勉学阻害要因の除去義務
「虐めっ子」の隔離教育
第27条
「勤労の権利」
完全雇用をいかに達成するか
第29条
「正当な補償の下に公共の用に」
領土問題への適用
第31条
「法定の手続きによる刑罰」
「無罪の推定」(世界人権宣言11条、憲法98条2項)
有罪の確定まで「被疑者」呼ばわりしない
第36条
「残虐な刑罰は絶対に禁止」
(良き例) 日本も818年(嵯峨天皇)~1156年(保元の乱)死刑停止
韓国は20年近く執行停止中
第43条
「全国民を代表する」
当選者の得票が投票有権者の過半数を超えることを要す
決選投票の多用
(参考)共産党立候補による革新候補落選の例多し
立候補の制限はできない(香港の「雨傘革命」)
第44条
「財産又は収入による差別」
立候補供託金の廃止
立候補による退職制度を許さない
第51条
「議員の議院での発言責任」
他党から責任を問えない。国会内の討論で対抗するのみ
第58条
「院内の秩序をみだした議員」
暴力行使、長時間演説等ではあり得るが発言内容で懲罰されない
第66条
「大臣は文民」
自衛官出身大臣の弊害既にあり(civilian controlの否定、辺野古推進)
第76条
「裁判官はその良心に従い独立してその職権を行い憲法と法律にのみ拘束される」
最高裁以下が「護憲」に徹すればすべての違憲国政は忽ち雲散霧消
第84 条
「課税における平等」
累進所得税の格差是正効果
租税特別措置法の全廃
すべてが「お友達免税」、政治献金疑惑(補助金で証明済)
「法三章」:複雑税法は伏魔殿
「法の下の平等」は、立法においても
第90条
「国の決算はすべて検査」
官房機密費の会計検査
年数十億の血税の支出が、領収書不要、検査なし、とされる
遠交近攻外交の経費
違憲政治の予算支出はすべて否定
第92条
「地方自治の本旨」
自治の確立がなければ地方選挙に関心湧かず
無投票当選、低投票率、地方消滅
地方事務仕分け
地方に固定される政治はすべて地方へ
都市計画、公園、
小中学校教育
中央政府から地方への通達、訓令の廃止
財源の配布
消費税(付加価値税)は地方に(シャウプ勧告)
第95条
「一の地方に適用される特別法」
「沖縄」を冠した法律はすべて住民投票が無ければ違憲無効
日本の米軍基地の大半を負担させる制度はすべて住民投票必要
(参考)「琉球民族」独立の法制
憲法に規定されることは通常ない
権力は権力の空白を許さない
国連憲章にあり(1条2項)
沖縄県民に別民族の意識があるか?
400年余の「植民地」沖縄県民に気力ありや ▲
<別紙 3>
「政治情勢報告」に関連する憲法問題
現政権の集団的安全保障論の憲法問題
現政権の「集団的安全保障論」は、自衛隊が随伴する米軍が第三国軍と戦闘状態になったら自衛隊も米軍と共にこの第三国軍と戦闘をさせようとするものである。自衛隊は決して国内暴力団などと対決する警察ではなく、他国との戦争を行い得る戦力を持つ軍隊である。これが日本が保持する戦力であれば憲法9条2項が明確に禁ずる違憲の存在である。しかしその創設の事情や米軍との関係の実質を考えると、発足当初から米国の強い要求ににより米軍の装備と米軍の教官と米軍の教程によって活動を始めたもので、「米軍日本人部隊」であったと言える。創設当初はその目的や兵器の名称など種々偽装して「警察予備隊」と称した。しかしこれが軍隊であることを隠し切れず、やがて憲法9条の解釈を変更して、侵略の軍隊は持てないが他国から侵略を受けた場合の自衛の軍隊の保持は禁じないという新たな詭弁を設けて陸海空の「自衛隊」となった。
国内でも各人の正当防衛権はあるが、それは現在所持を許され、また行使を許される範囲で行われるべきもので、自宅に盗賊が侵入した場合、これを追い払ったり、自力での逮捕は許されるが、直ちに殺害するのは過剰防衛となるし、自衛のためと称すれば日本の法律で所持を許されていないピストルを各人が備えられるわけではない。アイスランドは日本と同じく軍隊を持たないことを国是としているが、1958年から20年近く、イギリスの間で沿岸漁業権を巡りいわゆる「タラ戦争 (Cold WarならぬCod War)と称せられる紛争が起きた。イギリスは軍艦を差し向けたが、アイスランドは沿岸警備隊がこれに対決して、結局アイスランドの主張を、英国も国際社会も承認した。
また国家を組織することは、個人が自ら用心棒や警備会社を雇うのではなく国が警察を創設し、人民はその費用を負担し、或いは自ら警察官に応募して共同の武力によって安全を保障することである。日本国憲法は第9条で日本国が保持する軍隊を廃絶し、前文「平和を愛好する諸国民の公正と信義 (justice and faith:法と執行力と価値観) に信頼して我らの安全と生存を保持する決意」をしたのである。これは当時既に国連が加盟国の安全保障を担当するものとして設立されており、日本は国連に資金、職員、隊員の協力をして安全保障を確保するのが日本国憲法の立場である。
なお日本軍としての自衛隊のまま、現地軍だけの判断で第三国と戦闘を開始することは、戦前の陸軍刑法も「司令官、外国に対し故なく戦闘を開始したるときは死刑に処す」(35条)としていたように、現地軍の判断で外国と戦争を開始する行為は、現地軍の一存で日本国全体を新たな戦争に投入することで、最も許されざる行為である。満州事変は関東軍の謀略で開始され、朝鮮軍司令官の判断で日本国(朝鮮)から満州国に越境した。司令官は死刑に処せらるべきものを黙認されてその後の軍部の独走を許し、内外2千万人を犠牲にする人類の大悲劇となった。現政権の考える「日本の軍隊としての自衛隊」を残したままでの「集団的自衛権」は絶対に認められてはならない。
<別紙 4>
第16回例会 事務局報告
2015年4月26日
1)パンフ代収支
パンフ代実費とカンパをあわせてパンフ500冊印刷代金を越え、次期増刷代金に充当の予定。
なお振替通信蘭には返信を必要とする論議風のもの2件を除き、すべて歓迎と激励。
2)新規入会者 10名 従来会員21名 計31名
3)珍道氏による違憲訴訟、東京高裁で控訴棄却
集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の閣議決定は憲法9条に違反するとして、元三重県職員珍道世直さんが、安倍普三首相と当時の閣僚18人に閣議決定の無効確認などを求めた訴訟の控訴判決が4月21日、東京高裁であった。大段裁判長は一審同様「閣議決定がただちに原告の権利を侵害するわけではない。具体的な法律関係の争いがなく、訴えは不適法」と判断し、この控訴を棄却した。法廷で判決主文以外の朗読を省略したため、公判はわずかに一分だった。その後、珍道さんは全国の正義派弁護士の協力を得て、来る5月1日、最高裁に上告すると語った。
なお昨年同時期同じく提訴を伝えられた松坂市長は現在その準備を終えて近く提訴するとのこと。
4)長坂氏が違憲提訴の準備
いつも例会に参加していただいている長坂伝八氏が、この度、以下の「訴状」案を作成、五月提訴を予定している。
原告人 長坂伝八、他 被告人 内閣総理大臣 安倍普三
第1, 請求の趣旨
安倍普三内閣が2014年7月1日の「集団的自衛権」に関する閣議決定は、日本国憲法(前文、9条、99条、98条、97条、15条、13条および゙25条)に相反する。
よって当該閣議決定の憲法違反宣告および無効確認を求める。次いで、安倍普三内閣総理大臣に憲法16条にもとづいて罷免勧告を行うことを求める。(前文、81条)
第2, 請求の原因および要点
1,安倍普三内閣総理大臣は、2014年7月1日、上記の閣議決定の強行に拠って、従来の政府解釈を逸脱し、日本国憲法前文および9条に反して、海外に無制限に自衛隊を派遣して、武力行使をさせ、軍隊化し、戦争(交戦)=違憲の私戦を行わせることを可能にする、との国家意志を決定した。それを上位概念に掲げ、法=「具体化」へ襲いかかろうとしている。
これは、日本の帝国主義侵略戦争とアジアへの植民地支配・軍事占領の敗北と否定の結果としての「8.15革命」が、やがて人類史・世界史の達成として結実した日本国憲法への反革命クーデターである。(中略)珍道世直氏の後塵を拝して――。
5)「ベアテ 若き日のエポック」大盛況
さる4月18、19日に都内・内幸町ホールで行われた朗読とピアノで語る「ベアテ(日本国憲法の起草に関わった) 若き日のエポック」に19日11時開演に行ってみると心配をよそに大盛況でキャンセルを待って入場した。戦前、都内の乃木坂で子供時代を過ごしたベアテさんの日本への郷愁がよくでていた。
<別紙 5>
1941年1月生まれO氏のご意見。(神奈川県伊勢原市在住)
終戦の年は四歳で、暫くは空襲警報のサイレンの音が耳にのこり工場の昼時のサイレンが怖かった経験があります。
3歳位の時に戦死した短剣姿の叔父のことも今に鮮明に覚えています。
照明弾や低空で飛ぶB29も見たこともあります。
日本国憲法にはいろいろと意見がありますが、ご意見をお聞かせ下さい。
安倍総理は集団的自衛権を進めていますが、私の想像では現在中国共産党が蹂躙しているチベット、南沙西沙諸島のことや、日本国固有の領土である尖閣が脅かされている現在これらを念頭にあるのではないかと思いもいます。
中国潜水艦が日本の領海に進入し悠々と航行したり、尖閣でも同様の状態です。
中国は中華思想の基に太平洋を米国と2分割して支配をしようとしています。
中国共産党が解体されない限り日本にとっても一番危険な国と私は常日頃思っています。
中国共産党は狡猾的で彼等の主張は絶対に引き下げません。
韓国、朝鮮人の不正確な歴史を日本に一方的に押しつけている現在では話し合いにはならないと思います。
韓国では日本を仮想敵国としていますし、この様なキチガイ民族の隣国を安倍総理は念頭に置いて集団的自衛権を発議したそもそもの理由だと私は思っています。
最危険国中国共産党、北朝鮮の特定アジア2ヶ国、安倍総理は繰り返しますがこれ等を危険しし、防衛力を
考えていると思っています。
ついては、これ等についてご意見をお聞かせ下さい。
O氏への返信
ご丁寧なメールをいただきましたのに、事情がありましてご返事が遅れましたこと、誠に申し訳ありません。ご容赦ください。
さて、ご質問の内容はこのメールでお答えするには大変難しい内容を含んでいまして、簡単ではありません。また、意見交換するにしても、議論の土台となるある程度の共通認識も必要かと思います。
私ども「完全護憲の会」は、現日本国憲法について約1年間の議論を重ね、それをまとめたパンフレット「日本国憲法が求める国の形」を発表いたしました。ここには現憲法全体、及び各条項に関する私どもの共通(すべてが一致しているわけではありませんが)の考えが記されています。
それゆえ、ご質問の提起に直ちにお答えするより、私どもの基本的な考え方がどのようなものかを知っていただいたうえで意見交換した方が、お互いの理解が得やすいのではないかと考えます。
差し支えなければO様のご住所をお知らせ下さい。パンフレットをお送りいたします。このパンフレットをお読みいただいたうえで、再度、ご提起いただければ幸いです。
私どもは、このパンフレットに対してさまざまな意見が寄せられることを歓迎します。そして、お互いの議論をとおして、その内容が新たにパンフレットに追加され、豊富化されてゆくことを期待しています。
ご返信が遅れたことを重ねてお詫びしまして、ご返事にかえさせていただきます。
2015年3月26日
パンフレット編集担当 草野好文
会社員 61歳 W氏のご意見。(千葉県八千代市)
日本国憲法を是として、その制定の思想に鑑み詳細に研究され国の形に言及されたことの努力と、結果としての成果に先ずは敬意を表したいと存じます。
これに対する当方の見解を以下、申し述べさせていただきます。
1>近接諸国や諸民族とは何れを指すのか不明ですが、中国・韓国・北朝鮮は「和解と友好」の気持は無いものと存じます。
従って、「和解や友好」が無い相手に、日本国憲法が求める国の形を追及することは亡国に至らしめるものであります。
会の思想は、敗戦後の「東京裁判史観」に基づくもので、2600年に亘る天皇を中心とする我が国の歴史、伝統を否定するものです。P23日本国家の最高存在は天皇でもなくヤマト民族でもなく、ましてや首相ではなく、憲法という「法」としていますが、「法」の前に我が国が出来、我が国民が存在しています。「法」の前に「国」「国民」であります。
貴会の見解は、「左翼」思想、「お花畑」思想に終始しています。
2>p9アジア国民に戦いを挑む p10アジア全域に侵略の軍 p14紛れもない侵略戦争
P17中国、韓国初めアジア諸国に侵略の軍を進めた
以上の表現がございます。確かに中国とは戦争状態にありましたが、これを侵略と謂える根拠は何でしょうか。又、韓国とは併合であり、戦争も特にございません。それ以外の国々は殆ど白人支配の植民地で、これも侵略では無く、白人と戦い結果として植民地から解放の一助となっております。
3>p10いたずらに諸国を挑発 中略 好戦的な政策を推進 p12周辺国諸国の反日感情を挑発 p14異民族に対するヘイトスピーチに始まる民族憎悪 相応の謝罪と補償をしなければ周辺諸国と 中略 友好の確立は覚束ない p15在日韓国朝鮮人への差別
P40現政権は周辺国との 中略 好戦的意図をにじませている。
以上の表現がございますが、話は逆であります。日韓基本条約で国家予算の数倍の援助を受けた韓国。日中国交正常化の後、日本からの援助を受け高倉健の人気に見られたように友好関係を演出していた中国。何れも国内事情により反日に転じた両国であり、我が国又は安倍政権が対立を煽っているものではありません。事実誤認も甚だしいと存じます。
4>p14A級戦犯 という言葉がありますが、A級戦犯とはそもそも何でしょうか。A級とは「平和に対する罪」と承知していますが、これは国際法のどこに規定がありますか。要件が「戦争をしたこと」とすれば、各国の政治指導者は遍く問われなければなりません。
5>以上述べました通り、基本的な認識に誤りがあるため、P26特定秘密保護法、P29夫婦別姓、P42内閣法制局、P48外国人の地方参政権、P50領土問題に於いて左翼思想による偏波な結論に陥っています。
W氏への返信
当会のパンフレット『日本国憲法が求める国の形』作成に労いのお言葉をいただきましてありがとうございます。また、併せて貴重なご意見もいただきましたこと、重ねてお礼申し上げる次第です。
さて、パンフレットの内容を読み込んだうえで、大きくは5項目に及ぶご批判をいただきました。W様の認識では当会パンフレットに「基本的な認識に誤りがある」こと、「左翼思想による偏頗な結論に陥っている」とのことでした。
確かにW様のご意見と当会の認識には「基本的な認識の違い」があるようです。それゆえ、ここでご指摘の個々の問題に反論するのは生産的ではないように思われます。とは言え、なぜにこれほどに見解が異なるのか、どこかで共通する一致点はないものか、との思いは強くあります。
これは私どもにも言えることではありますが、「固定観念」の問題があります。例えば今回、W様は私どもの主張を「左翼」思想と断じられました。私どもからすると、W様の思想は旧来の「右翼」思想ではないかと思い込んでしまいます。
でも、右翼とか左翼とか言っても、その内容は明確ではありません。問題とすべきはその内実なのだと思います。
今回の当会パンフレットの起草者は旧来の意味での「左翼」などではありません。近代の普遍的価値と言える「民主主義」思想なのです。そして、現日本国憲法がこの民主主義思想を体現している、という立場からの提起なのです。
W様が指摘されている個々の事実が真実か否かの議論の余地はありますが、基本的立場が違うということで、お互いの主張を切り捨てたり否定しあうことは避けたいと思っています。
W様の個々のご指摘にこのメールでお答えするのは至難のわざです。ですが、ご意見は何らかの形で検討し、私どもの今後の活動に活かしていきたいと思っています。
まことに不十分なご返事しかできませんが、私どもの意を汲んでいただきご容赦いただきたいと存じます。
W様のご健勝を祈念いたします。
2015年3月31日
パンフレット編集担当 草野好文
<別紙 6>
当面の憲法問題野村意見
2015年4月28日
我が会は、最近の政権による危険な政治状況について、完全護憲の見地から常に批判的に見て世間に発表できるよう準備しておかねばならない。既に同代表はその幾つかを別に提示しているが、本日の岡部共同代表の政治報告に即して次の点が指摘している。今後の編集委や例会における自由な討論を経て今後の「パンフレット宣伝活動」、またはその改定における参考とすることを望んでいる。
大衆負担の増加と金持ち優遇制度
昨今、地方議員の政治調査費の配分で杜撰な使用ぶりが問題になったが、憲法上、注意すべきものに、年間数十億に上るらしい官房機密費である。この使用については慣例として領収書不要、会計検査院の検査も行われないこととなっているが、機密費も国民の血税であり、憲法90条が「国の収入支出の決算はすべて毎年会計検査院がこれを検査・・しなければならない」との規定に明らかに違反する。
現政権の党利党略(首相の私利私欲かも知れない)に基づく違憲の衆議院議員解散で数百億円の血税が使われ、いたずらに中国を敵視する「地球を俯瞰する」巨額な外遊費用なども、納税者全体から見て妥当なものかどうか、内閣から独立する立場を法定さらている会計検査院の検査と報告があってしかるべきものと考える。
また税法における「法の下の平等」とは、担税力、負担感の平等であって累進課税を原則としなければならない。血税による補助金の交付が、権力の「お友達」企業に渡り、それが権力者に黒い献金として還流していることが判明したが、更に注目すべきものは租税特別措置法である。この法律は膨大な条文をなしており、巨利を博している「お友達」大企業に対して巨額な免税をし、庶民には数々の負担を増大させ、関係政治家への還流も広くあるだろうことも推測できる。租税特別措置法は全廃して税法の簡易、透明化を図らねばならない。
天皇皇后への護憲、戦争反省の熱意
天皇皇后はさきにサイパン、沖縄などの訪問その他数々の会見で、現政権と対置して憲法尊重の精神、先の大戦への反省、敵兵をも含む戦争犠牲者への誠実な弔意が認められ、大部分のマスコミを含めて称賛されている。天皇の地位は憲法第14条の「門地による差別」ではあるけれども、特別規定の「憲法第1条の特別規定」の故に違憲ではない。しかし同時に第1条には「その地位は国民の総意に基づく」とあり、「天皇制廃止国民投票法」が制定され、その結果、退位乃至廃止を求める者が多ければ、憲法改正を経ないで廃止できる憲法解釈は成り立つ。しかしこれを会として正式に主張することは、現天皇一家が我々と同じ護憲の立場を取っていることが明らかな間は、これを外部に対して主張することは、我が会への結集を図る上からは得策でないとも考えられる。なお共産党は2004年の第23回党大会で「将来天皇制の廃止の気運が熟するまでは」この天皇制の廃止を論議しないとした。これで共産党に対する一般のアレルギーは減殺されて今日、党勢が拡大している一因をなしていることも考慮すべきであろう。
原発仮処分の決定と裁判所人事
最高裁判所は、これまで政権の意向に沿わない裁判を行う裁判官に対して不利益人事を発する傾向が認められる。裁判官の間で裁判官独立の精神に反して最高裁の意向を忖度する「ヒラメ裁判官」と言われる現象が心配され、また大胆な政権批判の裁判は定年間際の裁判官によって出される状況も観察される。砂川事件の東京地裁裁判官がいわゆる「ドサ周り」を強いられたことも記憶されるが、今回の異なる裁判をしたそれぞれの裁判官の今後の人事が注目されるところである。
政権与党の公明党
公明党は創価学会を基盤とするが、政権与党の道を選んでから本来の平和の精神がどこかに行「第二自民党」となって戦争への暴走を抑える役割を果たせなくなっている。自民党が10、戦争への道を進むのに対し僅か2、3の抑えはあるが、結局は7、3、自民党の暴走を進める役割を果たしている。これは公明党幹部個人の悪徳を意味せず、誰でも権力の魔物的魅力に勝てないことを証明している。それ故にこそ権力を抑制する憲法を十二分に働かせる努力がなされねばならない。
集団的安全保障
憲法9条1項の「戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」の「国際紛争を解決する」とは、国内紛争には警察力などで武力を用いることはあっても国外の国際間の紛争に乗じて武力を行使することは絶対に無いものと解釈される。「我が軍」(自衛隊)の武力が外国での戦争に直接にも間接にも参加することは憲法上、絶対に認められない。「後方支援」と言うが、暴力団の抗争の一方に機関銃を届ける行為は全くの共犯で刑事責任を負わなければならないと同じ理屈である。
我が国土が攻撃を受けた時は国際紛争ではなく我が国での危険であって9条1項は免責されるかも知れないが、9条2項で「(我が軍)自衛隊を保持することができない」ことも当然である。
福島議員「戦争法」発言と自民党物議
憲法51条は「議員が議員で行った演説は院外で責任を問われない」とされ、憲法に規定のない自民党議員の集団から圧力、詰問をされることがあってはならない。自民党議員は議場で反対討論をすることはできるが、圧力団体自民党から責任を問われることがあってはならない。又58条は「院内の秩序をみだした議員」とは、暴力を揮うとか、演説時間を議長の制止があっても止めず長広舌をふるうことについては懲罰できるが、議員の演説内容について懲罰されることは絶対にあってはならない。
沖縄問題
沖縄は「琉球征伐」以来400年間、ヤマトの一方的支配とヤマトのための犠牲を強いられてきた。現行憲法でも、沖縄についての特別法規があればすべて住民投票を経なければすべて違憲無効として処理されるべきである。法律と条約はもちろん、行政的に沖縄だけに過大に負担を課する制度は、憲法の類推解釈で住民投票を経なければならないであろう。
沖縄(琉球)独立の気運があるが、我が憲法は独立の手続きを定めていない。権力は権力の空白を認めたくないからである。デモ等でヤマト政府に圧力を掛けるのは自由であるが暴力を用いると刑法77条によって「首謀者は死刑又は無期懲役の刑」を科せられるので注意を要する。
しかし国連憲章第1条には「人民の同権及び自決の原則の尊重」が規定されているので、若し沖縄県民が「ヤマトの人と異なる人民であると自認し、かつ多数民族から不利益措置を受けている」と自覚できるならば、憲法98条2項によってヤマト政府はそれを尊重しなければならなくなると考える。 ▲
完全護憲の会ニュース No.16 2015年04月10日
本紙前号記載のとおり、さる3月20日14時から日本プレスセンタービル(都内千代田区内幸町)9階大会議室で、パンフレット発表記者会見を行った。マスコミ関係の出席者は「東京新聞」「社会新報」「IWJ」の3社で、参加者は総計16人だった。
パンフ発表記者会見
翌21日付け「東京新聞」31面は横1段「戦争体験 だから護憲」縦4段抜き「『次世代のために』会結成」の大見出しで要旨次のように伝えた。
集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制の大枠に自民、公明両党が合意した二十日、八十代以上の戦争体験者らが東京都内で記者会見し、反対の声を上げた。自ら作成した護憲の小冊子を手に、憲法が掲げる理想と懸け離れた政治を批判し、戦争を知る人間として「そのとき何をしていたの、と言われたくない」と危機感を募らせた。
第二次安倍政権が発足し、集団的自衛権の行使容認などの動きが出てきた昨年一月、首都圏に住む戦争体験者や、憲法を守りたいと願う人たちが、護憲の会を立ち上げた。社会の変化に合せて憲法を変えるのではなく、憲法の理想に沿った社会の実現を目指す、その名も「完全護憲の会」だ。
「今、組織を作って動かなければ、後悔することになる。次世代のために種をまいておきたい」と月一回の勉強会を続け、小冊子「日本国憲法が求める国の形」にまとめた。その発表が与党合意の日と重なった。
A5判七十五ページの冊子には、憲法と今の政治、社会状況との隔たりを列挙した。例えば、憲法前文には「国政は国民の厳粛な信託による」とあり、政府が得た情報はすべて国民の財産で、特定秘密保護法は国民への反逆だと指摘。また、「諸国民との協和」を求める憲法に反し、現政権は平和への外交努力が見られないとし、憲法の理念を厳格に守る政治を、と訴える。法的根拠のない行政手続きで流通が滞る問題では「法治主義なんだから、好き嫌いなく完全に(憲法通りに)やれと主張したい」と。(後略)
東京新聞の記事全文はネット版で:
戦争体験 だから護憲 「次世代のために」会結成 安保法制合意
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015032102000168.html
会見では「集団的自衛権の最近の動きをどう思うか」「日本を元に戻すとあいさつで言われたが、敗戦直後か、憲法発布時か、どこに戻そうとするのか」「今後運動をどう進めるのか」などの質問があった。
また参加者の中から「第1章天皇条項は民主主義に反する」「第9条関係で集団的自衛権を拒否した伊達判決支持を貫きたい」などの意見があった。
3月例会の討議
その2日後、3月22に開かれた3月例会には、「東京新聞」による記者会見報道のお陰で、新参加者5人を含め、これまで最高の19人が出席し、まず記者会見の感想など語りあった。そのなかで墨田区の元教師の方から「高校1年のときに習った教科書」で忘れられない頁として、次の箇所が朗読された。
現にそういうふうにして日本も無謀きわまる戦争を始め、その戦争は最も悲惨な敗北に終り、国民のすべてが独裁政治によってもたらされた塗炭の苦しみを骨身にしみて味わった。これからの日本では、そういうことは二度と再び起こらないと思うかもしれない。しかし、そう言って安心していることはできない。独裁主義は、民主化されたはずの今後の日本にも、いつ、どこから忍びこんで来るかわからないのである。独裁政治を利用しようとする者は、今後はまたやり方を変えて、もっとじょうずになるだろう。
今度は、だれも反対できない民主主義という一番美しい名まえを借りて、こうするのがみんなのためだと言って、人々を操ろうとするだろう。弁舌でおだてたり、金力で誘惑したり、世の中をわざと混乱におとしいれ、その混乱に乗じてじょうずに宣伝したり、手を変え、品を変えて、自分たちの野望をなんとか物にしようとする者が出て来ないとは限らない。そういう野望を打ち破るにはどうしたらいいであろうか。
それを打ち破る方法は、ただ一つある。それは、国民のみんなが政治的に賢明になることである。人に言われて、その通りに動くのではなく、自分の判断で、正しいものと、正しくないものとをかみ分けることができるようになることである。民主主義は「国民のための政治」であるが、何が、「国民のための政治」であるかを自分で判断できないようでは民主国家の国民とはいわれない。
国民のひとりひとりが自分で考え、自分たちの意志で物事を決めて行く。もちろん、みんなの意見が一致することは、なかなか望めないから、その場合には多数の意見に従う。国民はみんな忙しい仕事を持っているから、自分たちがこれはと思う人を代表者に選んで、その代表者に政治をやらせる。しかし、あくまで他人任せではなく、自分たちの信念が政治のうえに反映するように努める。そうすれば、ボスも、独裁者もはいりこむすきはない。
これは1948年、つまり新憲法が施行された翌年に文部省が作成した『民主主義』という中3と高1あて教科書の部分であると聞いて、その素晴らしさに参加者一同は驚嘆した。
そのほとぼりのなかで、このパンフを広める方法を討議したあと、岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)が次の報告を行った。
政治現況報告
日本にとって3月は8月と共に問題のある重要な年だ。古い方からいうと、3月10日は70年前の敗戦の年に、米軍東京大空襲で20万人が焼け死んだ。20年前はオウム真理教のサリン事件で東京地下鉄での無差別殺人があり、いまだに苦しむ人がいる。そして4年前の東北大地震と大津波、フクシマの原発事故で、まだ故郷へ帰れない人がたくさんいる。また今月の20日には70年前の平和憲法から離れ、安倍政権と自民党は、米軍支援の名のもとに、自衛隊の海外派遣を可能にする安保法制を閣議決定するために、自公両党だけで憲法解釈変更に同意した。初めは派兵歯止めを強く要望していた公明党も、最終的には自民案を了承した。
しかし一番問題になっていた海外派遣のための①国連決議②国会の事前承認③自衛隊の安全――については両党で結論を先送りしたので、中途半端なものになった。この問題は国会論戦などを通じて再終結論が出てから改めて検証したい。
またこの3月9日は7年ぶりにドイツのメルケル首相が来日した。ドイツは日本と第二次大戦中、日独伊同盟で共に戦い、同じように廃墟の中で敗戦を迎えるなど、似たところが多い。そして戦後復興と経済繁栄では似たような道を歩いたが、現状ではかなりの違いも出てきている。
その一番の違いは、第二次大戦の侵略に対する総括・反省にあるように思う。ドイツは戦後にワイツゼツカー大統領が、欧州各国を回り、反省だけでなく、謝罪をして回った。特に長年の戦争の相手、隣国のフランスとは、歴代の大統領・首相がひんぱんに訪問、共同歩調をとることを約束、この両国を中心に欧州の経済はもちろん、外交・防衛・政治も統一するEC(欧州共同体)にまで発展させた。
これに対し、日本は戦後の自民党は言を左右にして公式の謝罪はせず、形のうえでもかつての植民地支配と侵略を初めて遺憾としたのは、戦後50年の村山談話(社会党)である。その後60年には小泉首相が、これを踏襲して形だけでも謝った。
しかし今の安倍首相は靖国神社を参拝し、後ろ向きの発言や行動を繰り返し、中国や韓国と摩擦を起こし、東アジアの平和を不安定にしている。メルケル首相は保守党首だが安倍首相に過去の総括と正しい歴史認識が地域の和平に不可欠だと訴えた。しかし安倍首相は、この問題で何も答えなかった。いやなことには答えない首相には、国民や野党の疑問に答えて説得する民主政治家としての素質が全くないようだ。この差は原発問題でも一緒だった。
この報告を受けた討議では、自民党が来夏の参院選後に憲法改悪国民投票を予定しており、これに的を絞った活動を行うこと、とくに1年後の参院選で改憲勢力3分の2を阻止する取り組みが焦眉の急であることなどの意見がつづき、緊張のうちに討議を終えた。
ついで事務局から以下の日程が紹介された。
次の例会・勉強会のご案内
日時 4月26日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 北海道大学連絡室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について …………岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
日本国憲法の現状について ……野村光司(「パンフレット」起草者)
報告への質疑、意見、パンフ普及について
今後の日程について 事務局
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
3月例会から3日後の3月25日14時から、虎ノ門大阪大学東京オフイス会議室で編集委員会が開かれた。
編集委員会の討議
編集委員会には5人の各委員が出席、パンフ発表記者会見以後殺到したパンフ注文と入会希望についての報告がされた後、今後の活動方針として野村委員から要旨次の提案があった。
今後の活動方針
現「パンフレット」についての解釈の統一
しばらくは今回のパンフレットが会の基本文書となる。今後、読者から多くの疑問点が出て来るものと考えられるので、「想定問答」を用意しなければならない。
部外者からの当初処理例
丁重ながら画一的に処理できる案文を用意する。
改訂版の編集方針
(文体)
文章が難し過ぎると言う意見がある。今回は政党、マスコミ等知識層を対象にして憲法についての法律論を展開したものであるが、今後、並行して優しい言葉で書かれた「解説版」を用意することを考える。
(増補)
今回のパンフレットに時々刻々に発生する政治問題に関連して、更に改訂増補を行って、日本の憲法政治の全貌を示す決定版を世間に提供する。それに備えてこれから発生する種々の政治問題に関連した憲法問題を順次、蓄積する。
(例)
前文第2項関係
「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」
架空・虚偽の建国記念日
「人間関係を支配する崇高な理想」とは世界文明諸国で共通している倫理は、「人を愛する。言葉の神聖を自覚してウソをつかない」ことである。現在の我が国の「建国記念日」は、諸外国のそれと異なり架空の(虚偽)の「神武天皇即位の年月日」を用い、「(偽装国家日本の)建国記念日」となっている。現行の建国記念日を廃止し、「憲法記念日」に吸収するか、日本歴史学会などの答申を得て新しい建国記念日を制定すべきである。
前文第3項関係
「いずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」
首相は「侵略については定義が無い」と発言しているが1974年12月の国連総会決議「侵略の定義」が出ており、戦前の日本のアジア侵攻の事実はすべてこの侵略の定義に当てはまる。
第22条関係
「何人も、外国に移住する (to move to a foreign country) 自由を侵されない」
政府はシリア渡航のジャーナリストの出国を禁止したが、これは憲法22条の規定に違反する。政府が単に「危険である」と判断するだけで国民の自由権利を侵し得るなら今後、「この人間は危険だ」と政府が判断すれば容易に国民の権利を侵害されることになる。
第66条関係
「国務大臣は文民でなければならない」
沖縄県辺野古に米軍基地を建設するにあたり元自衛隊幹部であった防衛大臣が、沖縄県民を罵倒し軍事基地建設に邁進しているが、これはまさに本条が憂慮したことである。
第90条関係
「国の収入支出の決算はすべて毎年、会計検査院がこれを検査し」
最近、地方議会の政務活動費の不当経理が問題になっているが、政府の官房機密費は毎年、数十億が支出されながら「領収書不要、会計検査は行わない」こととしている。
国の経費は国民の血税で支出されており、また会計検査院法では、「検査院は内閣から独立の機関」と規定されており、内閣であろうと総理大臣であろうと「上官」の経理に容喙するとの遠慮があってはならない。真に国民全体の利益のために運用されているかどうかを検査して内閣を指導しなければならない。
今後の会の活動方針
政治活動との関連
会員は所属または関係を持つ諸団体とともに自由に活動できると言う会則に従って、「完全護憲の会」としては政治活動を行わないが、会員はそれぞれの縁を活用してパンフレットを宣伝し、各団体にパンフレットを参照して活動して貰うのが、当面の「政治活動」である。
各種団体等に働きかけてパンフレットの勉強会を開催して貰い(既に「労働運動研究所」で行われることになっている)、会から編集委員を中心に講師を派遣することとしたい。
これに対して福田委員から口頭で、来る6月末までに、①会員を100名に拡大、②パンフを500冊増刷し、その配付を完了する、などの提案があった。
討議の結果、「完全護憲の会」は当面、政治活動は行わず、会員・パンフの拡大目標は設けず、会員・支持者の自発的協力によってパンフの普及に努めることを決めた。また事務局多忙のため、例会の司会は福田委員に草野編集長が代わることなどを了承した。
パンフ研究会のご案内
労働運動研究所主催のパンフレット『日本国憲法が求める国の形』研究会が、4月18日(土)14:00~16:30、大阪経済法科大学東京セミナーハウス(港区麻布台1-11-5、地下鉄神谷町)6階B会議室で行われますので、ご都合のつく方はご参加下さい。
朗読とピアノで語る ベアテ、若き日のエポック
日本に男女平等の夜明けをもたらした女性 主催 NPO日本朗読文化協会
4月18日(土)13:00,17:30/4月19日(日)11:00,14:30/千代田区立 内幸町ホール/チケット 2500円(全席自由)
パンフ『日本国憲法が求める国の形』お求めの方はご連絡ください。振替用紙を付けて郵送します。
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。