発行:完全護憲の会
〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312
電話・FAX :03-3772-5095
Eメール:kanzengoken@gmail.com
ホームページ:https://kanzengoken.com/
目 次
第74回 例会・勉強会の報告
別紙1 事務局報告
別紙2 政治の現況について
別紙3 緊急警告037号 安倍内閣の違法・脱法行為は憲法第73条違反!
別紙4 緊急警告038号 日本にとって真の国難とは P.7
第75回 運営委員会の報告
___________________________________________________________
第74回 例会・勉強会の報告
2月23 日、港区三田いきいきプラザにて第74回例会を開催した(参加者4名;会員71名)。
例会では鹿島委員が座長となり、福田共同代表が欠席のため事務局報告(別紙1)は草野委員が代読、引き続き政治の現況(別紙2)を草野委員が報告した。さらに草野委員より提案されていた緊急警告037号「安倍内閣の違法・脱法行為は憲法第73条違反!」(別紙3)を受け、順次項目を追って討議した。
事務局報告では、山岡聴子氏の『未来への小さな礎(いしずえ)――戦争の惨禍を見つめて』について「再度読み返し、改めてきわめて高度な論考であると思った」といった評価が全体で確認された。また、「あえて注文を付けるなら冒頭の<はじめに>をもう少し平易な記述にしてほしかった」との意見も出された。
政治の現況報告は(別紙2)、①新型コロナウイルス問題、②東電・福島第一原発の汚染水「海洋放出」の動き、③東京高検検事長の定年延長と緊急警告の3点に絞り、勉強会のテーマとして10分の休憩をはさみ約2時間にわたって以下の議論を展開した。
①新型コロナウイルス問題については、「クルーズ船内の新型コロナウイルスの対応に安倍政権の場当たり的な姿が現れている」「インバウンド経済(来日観光客などによる増収)のために感染の危険性を甘く見て中国からの入国を許していた」「これを機に緊急事態条項を設置しようとする動きには最大限の注意を払わなければならない」「今回のコロナウイルスの出処は明確になっていない。武漢の市場に本当の原因があったのか」「中国からの入国制限をするべきではない。デマや煽りがないようにすべきだ」「習近平来日には賛成しかねるがこの問題で日中の国民が友好的になっているのは評価すべきだ」などの意見が出され、今後の対策と安倍内閣の動向に注視していくことが強調された。
②東電・福島第一原発の汚染水「海洋放出」の動きについては、「朝日新聞の社説は東電・福島第一原発の汚染水の海洋放出の動きを批判していない」「非常に中途半端な社説となっている」「大気放出と海洋放出を比較し、風評被害のみを取り上げて判断は地元に委ねている」など、専門家の意見を聞くことなく原発事故汚染水処理の安易な道を選択する動きが、マスメディアを含めて強くなっていることが問題視された。
③東京高検検事長の定年延長と緊急警告については、「法律を閣議で解釈して変更できるのか」「今やリベラルと言われた報道メディアさえ良心的なスタッフを解雇し、安倍政治寄りの番組作りをするようになっている」「安倍内閣の好き勝手放題で日本の三権分立は崩壊し、民主主義は危機的状況である」などの意見が出され、安倍政治の違憲・違法・脱法行為をこれ以上許してはならないという認識の下、当会は微力ではあるが今回、緊急警告037号を発信することが再確認された。
なお、3月の勉強会は後藤富士子弁護士(東京弁護士会)に、「日本国憲法が求める司法改革」について講演をお願いする予定であるが、新型肺炎問題もあり確定はしていない。
1回目のテーマは「司法制度――戦前と戦後」、2回目のテーマは「憲法と裁判所法が描く司法・裁判官」を予定している。
※追記1:後藤富士子弁護士の講演は新型感染症の影響を考慮して延期、3月の勉強会は中止と決定した。
※追記2:3月始めに緊急警告038号の文案が整ったため、本号に掲載することとした。(別紙4)
________________________________________
<別紙1> 事務局報告 福田玲三(事務局)
1)当会ニュース読者からの来信
*小久保和孝氏(北海道)より
「今ではとても口に出せない酷いことを中国でやってきた」「しかしこの我々兵隊が中国でして来たことは誰かに話しておかなくてはならない」「書き留めておかなくてはとは思っているが」「思い出すのも恐ろしく今は何もできない」「いずれ伝えます」と私に云っていた。
これらは、拙宅から100mほどの所に住む地域活動に熱心な南京攻略戦に参加した元日本軍兵士の共産党員の言葉である。この彼の「伝えなくては」と思いつつ亡くなってしまい遂に伝えられなかった、伝えたかった旧日本軍の兵士の状況とはこんなことであったのか、その内容が今回公刊された『日本国憲法が求める国の形』のシリーズ9号『未来への小さな礎――戦争の惨禍を見つめて』「二章 侵略の象徴としての南京」に出ている。
*川村茂樹氏(千葉県)より
(前略)今回お送りいただいた山岡さんの『未来への小さな礎』を読み、とても感動いたしました。とても冷静な筆致でありながら熱い思いが伝わって来る、極めて高度な論考であると感じたからです。広く世に知らしめるべき労作であるものと考えます。(後略)
*珍道世直氏(三重県)より
ニュース74号拝受いたしました。
緊急警告036号「緊迫する中東への自衛隊派遣は、違憲・違法!」の警告は、問題点を的確にとらえられ大変勉強になりました。有難うございました。また、花岡しげる著『自衛隊も米軍も、日本にはいらない!「災害救助即応隊」構想で日本を真の平和国家に』を新刊紹介いただき嬉しく思います。花伝社から取り寄せたいと存じます。
私は、最近、つくづくと「憲法九条と日米安保条約は矛盾する」と考えるようになり、自衛隊を「国際緊急災害支援隊」に改組し、毎年5兆円(防衛予算相当)をそのために使えば、どんなにか日本は世界から信頼され、日本及び世界の安全保障に貢献することになると、九条の会・津の勉強会などで意見を述べたりしております。
花岡氏の提言が広がっていくことを、心から切望しております。
2)反戦・平和川柳の投稿サイトを開設
当会の緊急警告で紹介した川柳による政治批判の訴求力が注目され、とりわけ、戦前、川柳で反戦を訴え、治安維持法違反の疑いで検挙され、若くして獄死した鶴彬(つるあきら)の紹介が衝撃だった。その結果、当会で反戦・平和川柳の投稿サイトを設けることとし、近く開設される。平和には日常生活も含まれるため身の回りの明るい川柳も歓迎。気軽に投稿されたい。
<参考>
胎内の動きを知るころ骨がつき 【鶴彬】
手と足をもいだ丸太にしてかえし 【鶴彬】
3)集会の案内
※中止や延期のイベントが増えているため、事前確認をお奨めします。
*「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議 3・1発足集会
日時:3月1日(日)13:40~16:40
場所:日比谷図書館文化館(B1F)日比谷コンベンションホール
資料代:500円
主催:「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議
*「三鷹事件の真相を究明し語り継ぐ会」定期総会
(※追記:開催延期に変更されました)
日時:3月14日(土)14:00~16:30
場所:三鷹市市民協働センター(三鷹市下連雀4-17-23) 電話0422-46-0048
内容:弁護団報告と講演:何故冤罪事件は起きる
資料代:500円
連絡先:国民救援会三多摩総支部 電話0425-24-1532
*「ローカルとグローバルをつなぐ日本軍戦時性暴力被害者支援 ~中国における歴史的経緯と現状から」
日時:2020年3月15日(日)12時開場 13時開始~18時30分終了(予定)
会場:早稲田大学戸山キャンパス38号館AV-1
入場料:一般1000円、学生無料
戦前戦中の太平洋・アジア全域で、日本軍による無差別殺戮、略奪、強制労働などの犠牲になった多くの人々。中でも多様な戦時性暴力を受けた女性たちは、半世紀以上もの時を経て沈黙を破り、日本政府の謝罪と賠償を求めて立ち上がった。現在なお家族にも地元村落にも負の影響を残す中国の例や、国境を超えた支援がもたらした変化などをテーマに、被害女性を支えてきた研究者、遺族、また中国での現地調査や日本での裁判支援に関わった日本の研究者などが報告。
(詳細はレイバーネットカレンダー参照: http://www.labornetjp.org/EventItem/1580263915480staff01 )
*『週刊金曜日』東京南部読者会
日時:3月27日(金) 18:30~20:30
参加費:会場費を均等負担
場所:大田区消費者生活センター第4集会室(JR蒲田駅・東口5分)
*沖縄連帯コンサート 池辺晋一郎指揮による 混声合唱組曲「沖縄の雲へ」
日時:5月30日(土)14:00~16:30
場所:サンパール荒川大ホール
参加費:全席自由2,000円
主催:「悪魔の飽食」をうたう東京合唱団
4)当面の日程について
(※「会場入り口の消毒液で手を消毒して下さい」とのことです)
第75回例会
3月22日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
(※追記:勉強会は中止)
第76回運営委員会
3月25日(水)13:00~ 三田いきいきプラザ
第76回例会・勉強会
4月26日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
第77回運営委員会
4月29日(水)13:00~ 三田いきいきプラザ
________________________________________
<別紙2> 政治の現況について
(1)主なニュース一覧(2020/1/21-20/2/20)
①WHO(世界保健機構)、新型コロナウイルスで緊急事態を宣言(2020/1/30)
②武漢の邦人206人、政府チャーター機で帰国(2020/1/29)
③福島第1原発処理水、政府小委海洋放出提言(2020/1/31)
④東京高検検事長の定年延長を閣議決定(2020/1/31)
⑤英、EU離脱(2020/2/1)
⑥海上自衛隊護衛艦「たかなみ」(200人)、中東へ出航(2020/2/2)
⑦クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号(乗客乗員約3700人)横浜港に。
接岸・上陸認めず(2020/2/3)
⑧新型肺炎、国内初の死者。神奈川県80代女性、海外渡航歴なし(2020/2/13)
(2)新聞社説、ニュース記事
(※議論の活発化のため、あえて意見の異なる主張も掲載)
①朝日新聞(2020.01.31)
【ニュース】新型肺炎、WHOが「緊急事態」を宣言
中国で集団発生し、感染が中国国外に広がっている新型コロナウイルスについて、世界保健機関(WHO、本部スイス・ジュネーブ)は30日に専門家委員会による緊急会合を開き、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
緊急事態は、感染が国境を越えて広がり、感染拡大防止に国際的な対応が必要な場合に、専門家委の判断を踏まえWHOの事務局長が宣言する。緊急事態宣言は、アフリカのコンゴ民主共和国で発生したエボラ出血熱について昨年7月に出されて以来、6例目。
30日夜(日本時間31日未明)に記者会見したテドロス・アダノム事務局長は、中国国外での感染例や、感染が確認された国が増えていると指摘。「中国国内ではなく、国外の状況を見て判断した」と宣言した理由について述べた。一方、人の移動や貿易の制限は、WHOとして勧告はしないとしている。
新型肺炎をめぐっては、専門家委が22、23日に緊急会合を開いて緊急事態にあたるか検討。この時点では「中国国外でのヒトからヒトへの感染が確認されておらず、時期尚早だ」として、宣言を見送った。だがその後、日本やベトナムでヒトからヒトへの感染が確認されるなど、中国国外での感染が急速に広がったため、再度緊急会合を開いた。(ジュネーブ=河原田慎一)
②東京新聞(2020.2.2)
【ニュース】海自護衛艦、中東へ出航 首相「大きな意義」
中東海域での日本関係船舶の安全確保に向け、情報収集に当たる海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が2日、海自横須賀基地(神奈川県)を出港した。司令部要員を含め約200人が搭乗。今月下旬に現地に到着する予定で、1月から任務に就いたP3C哨戒機とともに本格的な活動が始まる。
安倍晋三首相は2日、横須賀基地で開かれた出国行事で「情報収集任務は、国民の生活に直結する極めて大きな意義を有するものだ」と訓示。護衛艦が活動するオマーン湾などの海域について「日本で消費する原油の約9割が通過する。日本国民の生活を支える大動脈、命綱と言える海域だ」と述べた。(共同)
③沖縄タイムス(2020.2.2)
【社説】[新型肺炎と改憲]節操なさすぎるのでは
国民の不安に乗じた発言で不謹慎というほかない。発言を撤回し猛省を促したい。
中国湖北省武漢市で発生し感染拡大が続いている新型コロナウイルスによる肺炎に絡み、伊吹文明元衆院議長が憲法改正案の緊急事態条項の新設に結び付けた発言をした。
共同通信の配信によると、1月30日の党会合で「緊急事態に個人の権限をどう制限するか。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」などと言及した。改憲しないと対策ができないというのはまやかしである。国民の危機感を利用して憲法改正を持ち出すのはとうてい看過できない。
国民の生命・健康を「実験台」と呼んだのも極めて不適切と言わざるを得ない。
政府は1日、新型コロナウイルスによる肺炎などの病気を感染症法の「指定感染症」と検疫法上の「検疫感染症」とするための政令を前倒しして施行した。
感染拡大を防ぐために患者を強制的に入院させたり、就業を制限したりできる。
空港や港の検疫では、感染が疑われる人が見つかれば検査や診察を指示できる。感染が確認されれば受け入れ態勢が整った感染症指定医療機関に入院するよう勧告できる。従わなければ強制的に入院させることができる。
政府は入国申請時から14日以内に中国湖北省に滞在歴がある外国人の入国を拒否する措置も取る。入管難民法5条に基づく異例の対応である。
現行法で新型肺炎の拡大を抑えるための対策は取れるのである。どさくさに紛れた伊吹氏の発言は悪質である。
■ ■
閣僚を含む自民党議員、日本維新の会からも同じ考えが出ている。「憲法に緊急事態条項があれば! 一部野党も逃げずに憲法改正の議論をすべき」などとツイートした自民党議員もいた。公明党は反発している。
新型肺炎と憲法改正は何も関係がない。既存の法律の運用の問題なのである。
自民党が掲げる改憲4項目の一つが緊急事態条項だ。「外部からの武力攻撃」「内乱等による社会秩序の混乱」「地震等による大規模な自然災害」などが発生した場合、首相は緊急事態を宣言することができるというものだ。
宣言すると内閣は法律と同じ効力を持つ政令を制定、地方自治体の長に指示することができる。国民は国や公の機関に従わなければならない。
国会のコントロールを排除し権力を内閣に集中させる。三権分立を否定し、基本的人権を制限する危険な条項だ。
■ ■
安倍晋三首相は最近、「私の手で改憲を成し遂げたい」と前のめりの姿勢が際立っている。憲法の発議権は首相にはないにもかかわらずである。伊吹氏の発言は改憲論議を進めたい狙いがあったはずである。背景にはチャーター機で帰国した1便の206人のうち、ウイルス検査に2人が応じなかったことがあったのかもしれない。しかし2人は後に検査を受けている。
国内では症状がない人の感染が確認されている。今やるべきなのは感染拡大に備えた医療態勢の強化である。
④朝日新聞(2020.2.16)
【社説】検察官の定年 法の支配の否定またも
法の支配の何たるかをわきまえず、国会を軽んずる政権の体質がまたもあらわになった。
東京高検検事長の定年延長問題をめぐり、安倍首相は13日の衆院本会議で、従来の政府の見解を変更し、延長が許されると「(法律を)解釈することとした」と答弁した。
政府は、唯一の立法機関である国会が定めた法律に基づき、行政を運営する責務を負う。詳しい説明もないまま、内閣の一存で法律を事実上書き換える行為が許されるはずがない。
先月末、異例の定年延長が閣議決定されると、検察の首脳人事を思いのままにしようとする政権の暴挙との批判が巻き起こった。あわせて、検察官の定年年齢は検察庁法に明記されており、閣議決定は違法だとの声が国会の内外で上がった。
政府は、定年延長の規定がある国家公務員法を持ちだして、問題はないと主張した。だが、その規定が導入された1981年の国会審議で、政府自身が「検察官には適用されない」と説明していたことが、野党議員の指摘で明らかになった。
衆院予算委員会でこの点を問われた森雅子法相は「詳細は知らない」と驚くべき発言をし、それでも延長できると言い張った。人事院の幹部が、現在も81年当時と同じ解釈だと答弁しても、姿勢を変えなかった。さすがにこのままでは通らないと思ったのか、首相は過去の政府見解を認めたうえで、今回、解釈を変更したと言い出した。ドタバタ劇も極まれりだ。
制定経緯を含め、法律の詳細を検討した上での閣議決定だったのか。人事院や内閣法制局から疑義は呈されなかったのか。機能不全を疑う事態だ。
何のために国会で手間ひまをかけて法案を審査するか、政権は理解しているのだろうか。
法案提出者の説明を通じて、国民の代表がその必要性や趣旨を点検し、あいまいな点があれば解釈の確定に努め、場合によっては修正する。質疑の中で示された見解は条文と一体となって人々や行政機関を縛り、行動の指針になる。裁判で判断を導き出す際にも参考にされる。
ましていま問題になっているのは、強大な権限をもつ検察官の資格や職務を規定し、国民の統制の下に置くために設けられた検察庁法である。定年延長を実施しなければならない事情があるのなら、当然、法改正の手続きを踏むべきものだ。
安倍政権には、積み重ねてきた憲法解釈を一片の閣議決定で覆し、集団的自衛権の行使に道を開いた過去がある。今回の乱暴な振る舞いも本質は同じだ。民主主義の根幹を揺るがす行いを、認めることはできない。
⑤朝日新聞 (2020.2.1)
【社説】トリチウム水 福島の声を聴かねば
東京電力・福島第一原発の汚染水を浄化処理した後、放射性物質トリチウムが残留する水をどう処分するのか。経済産業省の小委員会が、とりまとめの提言を大筋で了承した。
薄めて海に流す「海洋放出」を事実上、最も重視する内容になっている。
これを参考に、政府はトリチウムを含む処理水の処分方法や時期を判断する。環境中に放出すれば、風評被害が生じる恐れがある。拙速な判断は厳に慎まねばならない。
小委は2016年から、経産省の作業部会が示した5案について、技術的な側面に加えて、風評被害など社会的な影響も含めて検討してきた。
とりまとめの提言は5案のうち、海洋放出と、蒸発させて排出する「大気放出」の2案に前例があることから、現実的な選択肢と位置づけた。そのうえで、両者の長所と短所を検討する形をとっている。
通常の原発で実績がある▽設備が簡易で取り扱いのノウハウがある▽放出後に拡散の予測やモニタリングをしやすい▽想定外の事態が起こりにくい……。こうした技術的なメリットを踏まえて、「海洋放出の方が確実に実施できる」と評価した。
社会的な観点から見た場合、影響の大小を比較するのは難しいという。ただ、大気放出をすると、海洋放出に比べて幅広い産業に風評被害が広がる恐れがあると指摘した。
明言こそ避けたものの、海洋放出に優位性があることを示唆している。
とはいえ政府は、これをもって安易に海洋放出を決断してはならない。「地元の自治体や農林水産業者など幅広い意見を聴いて方針を決めることを期待する」。この小委の要請を、重く受け止めるべきだ。
地元との対話に、政府が海洋放出ありきの姿勢で臨めば反発を呼ぶだろう。自治体や事業者のほか、地域住民らの声を誠実かつ丁寧に聴いてほしい。
忘れてならないのは、小委が一連のプロセスをガラス張りにするよう求めている点だ。密室で議論しても、政府の最終判断に国民の理解は得られまい。情報公開が肝要である。
東電は「22年夏ごろに敷地内の貯蔵タンクが満杯になる」として早期の判断を望むが、小委は提言の中で、政府決定や処分開始の時期を明示しなかった。期限を切って意思決定の手続きを進めるようでは困る。
仮に処分方法が決まっても、準備に年単位の時間がかかる。処分を終えるまでには、さらに長い年月が必要だ。息の長い取り組みになることを、政府は肝に銘じなければならない。
________________________________________
<別紙3> 緊急警告第037号 安倍内閣の違法・脱法行為は憲法第73条違反!
安倍内閣の違法・脱法行為が目に余る。
安倍内閣は1月31日、東京高検の黒川弘務検事長の定年を半年ほど延長する異例の人事を閣議決定した。安倍官邸寄りと評される黒川氏を次期検事総長に就けんがためとの疑念が指摘されている。
折しも、IR(統合リゾート)問題で自民党国会議員の秋元司衆院議員(前内閣府副大臣)が収賄容疑で逮捕され、これが政権中枢にも及ぶのではないか、との観測が流れたり、安倍事務所が主催した桜を見る会「前夜祭」では政治資金収支報告書に記載がなく、安倍首相が政治資金規正法違反に問われかねない事態が続いているだけに、あり得る疑念であろう。
「首相を逮捕するかもしれない機関に、官邸が介入するだなんて、法治国家としての破壊行為だ」(立憲民主党枝野代表)と言うのもうなずける。
国家公務員法第81条3(定年による退職の特例)「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、……一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。」を適用しての措置だと言う。
だが、検察庁法第22条は「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する。」と明確に定めている。これは明らかな検察庁法第22条違反である。
しかも、国家公務員法第81条2項は「職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは……退職する。」(傍点引用者)となっている。ここに言う「法律に別段の定め」とは検察庁法第22条がその一つであることはまぎれもない。とするならば、内閣が適用したとする国家公務員法それ自体にも違反していることになるのだ。
国会審議においてこうした違法性が追及され、さらに2月13日の衆議院本会議において、国家公務員法の定年規定が「検察官には適用されない」としてきた従来の政府見解の矛盾を突かれた安倍首相は、「今般……検察官の勤務(定年)延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」(傍点引用者 朝日新聞2月14日付)という驚くべき答弁を行った。
こんなことが許されていいはずがない。これでは内閣が国会抜きに既存の法律を変更したり、新たな法律を制定するに等しいからである。
安倍内閣には順法精神が欠落している。森友・加計問題から始まって、公文書の改竄・隠蔽・廃棄、虚偽答弁、内閣の好き勝手放題、「閣議決定」で何でもできるかのようである。過去の事例からしてとっくに特捜が動いていてもおかしくない事態である。
憲法73条(内閣の職務権限)1項は、「法律を誠実に執行し、国務を総理すること」としており、内閣が「法律を誠実に執行」することを求めている。安倍内閣はまさにこの「法律の誠実な執行」とは正反対の内閣であり、憲法73条に違反する憲法違反内閣である、と言わなければならない。
冒頭の桜を見る会「前夜祭」の収支報告書不記載問題も同様である。安倍事務所が主催していながら、800人もの参加者が一人ひとりホテル側と契約し、参加費はそれぞれ個人がホテル側に支払ったなどという言い訳が成り立つはずがないのである。これを立憲民主党の辻元議員が「安倍方式」と命名し、政治資金規正法をすり抜ける「脱法行為」と糾弾したのは当然である。
安倍内閣の違憲・違法・脱法行為をこれ以上許してはならない。
(2020年2月15日)
________________________________________
<別紙4> 緊急警告038号 日本にとって真の国難とは
新聞各紙によると、2月17日午前の衆院予算委員会で、「桜を見る会」前夜の安倍首相支援者の夕食会について、立憲民主党の辻元清美衆院議員が調査の結果を紹介した。ANAインターナショナルコンチネンタルホテル東京に、「見積書や請求明細書を主催者側に発行しないケースがあったか」など問い合わせたところ、「ない。主催者には見積書や請求明細書を発行する。宛名が空欄のままの領収書は発行しない」といった回答を書面で受けたことが明らかになった。
午後の同委員会で安倍首相は、ホテル側の回答は「一般論で答えたもの」で自身の夕食会は例外扱いだったとの趣旨の反論をしたが、報道各社の取材にホテル側は、「一般論であっても、例外扱いはない」と再度回答した。首相の言い逃れはもう無理だ、と各紙は書く。
今から35年前、ロッキード事件の一審判決を受けて、衆参両院で議決した「政治倫理綱領」は5項目から成る。その第1と第4項目は次の通り。
第1「われわれは、国民の信頼に値するより高い倫理的義務に徹し、政治不信を招く公私混淆を断ち、清廉を持し、かりそめにも国民の非難を受けないよう政治腐敗の根絶と政治倫理の向上に努めなければならない」
第4「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない」
昨年の10月、菅原一秀経済産業相と河井克行法相が公職選挙法違反疑惑で相次いで辞任した際、安倍首相は「政治家として自ら説明責任を果たすべきだ」と語った。その首相が、森友・加計問題や「桜を見る会」をめぐって常に詭弁と欺瞞に満ちた弁解に終始し、「自ら説明責任を果た」しているとはとうてい言えない。
ついで安倍首相は、さる2月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためとして、全国すべての小中高校などに、3月2日から春休みまで、一律に休校するよう要請した。この突然の発表が全国の児童、教職員、保護者や医療関係者に与えた衝撃は大きく、特に子どもを抱えて働く母親は困惑の極にある。
各種世論調査で政権支持率が急落し、検事の定年延長問題でも批判の渦中にある政権にとって、新型肺炎の出現は渡りに船、神風になるはずだった。現に一部の識者は「ある種の国難」として首相の方針に理解を示している。
しかし、2017年にも安倍首相は、森友学園問題などで支持率が記録的に下がったとき、北朝鮮の核・ミサイル実験をチャンスとばかりに危機感をあおり、「国難突破」を名目に衆院を解散、総選挙で圧勝した。選挙が終われば「国難」はシャボン玉のように消えた。
今回の発表も政権の浮揚策であることは見え透いている。前川喜平氏(現代教育行政研究会代表、元文部科学事務次官)は、「学校の臨時休業は国の権限ではない」(学校保健安全法 第二十条 学校の設置者は、感染症の予防上必要があるときは、臨時に、学校の全部又は一部の休業を行うことができる。)、「国がすべきことは、各自治体が最適の方策を見つけられるよう……正確で網羅的な情報を提供することだ。全校休校の号令より、万全の検査・治療体制を整えることこそ、国の最優先課題だろう」(『東京新聞』3月1日「本音のコラム」)と指摘している。
安倍首相は、この唐突な号令が国民に与えた不安と動揺の大きさに反応し、翌28日には「(この要請は)基本的な考え方として示した。各学校、地域で柔軟にご判断いただきたい」と前日の発言を大幅に後退させた。法律も、優先順位も、現場も理解しない政権であることが、また露呈したかっこうだ。
これを反面教師として、われわれは国の理不尽な指示に従う前に、まず各人が各所でしっかりと状況判断し、賢明な選択をしなければならない。国民は「教育を受ける権利」と「受けさせる義務」があるのだから(憲法26条)、学校は、一般家庭同等かそれ以上に、子どもの安全を守れる教育環境作りに知恵を絞ることが重要だ。島根、兵庫、群馬、栃木、岡山、沖縄の各県には、同調圧力に屈せず授業を続けている自治体もある。
そもそもこの新型感染症拡大は、安倍政権の杜撰な対応が招いた結果であり、経済も社会もいつ立ち直れるのか深刻な影響が続いている。しかし首相は真摯に謝罪するどころか、3月2日の参院予算委員会冒頭では、緊急事態宣言を首相が発令できる法整備を早急に検討するよう呼びかけた。
これが、「国難騒動」の重要な狙いのひとつである。安倍首相が執着しているのは自衛隊の軍隊化と緊急事態発令の権能であるから、改憲を実現できなければ法整備で、というのが本音だろう。
(2020年3月5日)
________________________________________
第75回運営委員会の報告
2月26日(水)三田いきいきプラザ
出席: 大西、草野、福田
1.第74回例会・勉強会開催結果について
新型コロナウィルスによる肺炎の広がりを警戒し、高齢で術後間もない福田代表には自重を強く勧め、例会と運営委員会ともに欠席となった。このため例会・勉強会の状況を草野委員が報告した。例会参加者は4名と少なかったが、継続が大事と集中して会議と勉強会を行った。
緊急警告037号についても検討・議論した。結果、誤植を修正して承認された。
2.新冊子シリーズ9『未来への小さな礎――戦争の惨禍を見つめて』について
本委員会に先立ち福田代表より、新冊子シリーズ9の評判について報告があった。新冊子はこれまでになく10冊、20冊単位での注文があり、多くは勉強会で使いたいとのこと。内容の良さが受け止められたようだ。
3.前号ニュース№74で紹介(福田)した新刊『自衛隊も米軍も、日本にはいらない!』(花岡しげる 花伝社)について
平易でわかりやすく、政策が緻密に展開されていて優れた内容である。護憲派が大いに活用すべき本と言える。当会としてもいずれ著者に講演をお願いし、勉強会で取り上げたい、との確認を行った。
4.次回勉強会について
次回3月の勉強会は、後藤富士子弁護士(当会会員)が講師を引き受けてくださった。テーマはもっか「司法改革」(法曹一元化――日本国憲法が定める司法と裁判官)としているが、次回1回で終わるのか連続講座となるかも含め、詳細は未定である。(担当 草野)
5.緊急警告発信について
政治情勢に対応した緊急警告036号、037号を発信することができた。引き続いて緊急警告のテーマとして、今から35年前のロッキード事件の一審判決を受けて衆参両院で議決した「政治倫理綱領」を鑑み、現在の安倍政権の恐るべき問題性について発信したい、との案が福田委員から出された。
6.共同代表の補充について
前回の運営委員会で福田代表が提案した元某新聞編集委員のA氏については、福田代表がお願いしたところ、現在取り組んでいる執筆活動に専念したいので共同代表をお引き受けすることはできない、との丁重なご返事をいただいたとの報告を受けた。
7.今期運営委員長の選任について
毎年、総会で選出された運営委員の中で、互選による運営委員長を選出してきたが、今期はこれまで運営委員長を務めてきた草野委員が健康上の理由で引き受けられないとの申し出があり、新たに鹿島委員が運営委員長を引き受けることを決定した。
8.当面の会議日程
新型コロナウイルスの関係で、今後、運営委員会の開催時間を1時間早めて13時開催にすることとした。(帰宅ラッシュに巻き込まれないようにするため)