さる8月20日(日)、虎の門・大阪大学東京オフィス会議室で会合、参加者13名。入会者 計 19名。
まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏から政治の現況について次のような報告があった。
政治現況報告(要旨)
防衛庁幹部が安倍首相の解釈改憲による集団的自衛権よりも、国連平和維持軍への参加を重視しているという背景について説明する。
現実の国連平和維持軍というのは、イラク戦争の折のように、国連における米国の要請に対して、各国が個別に参加し、多国籍軍を形成するということだった。日本もブッシュ大統領の小泉首相への要請、またアーミテージ国務次官補の「旗を立てろ」「戦地に靴で立て」などのアジに外務省が参加を強く希望、最終的に小泉首相が決断して、自衛隊のイラク派兵が決りまった。その第一の理由は米国の「イラクは核をもっている」という挑発によるものだったが、後にこれが虚偽の情報とわかり、英国でも大問題となって、今でも真相究明が行われている。日本は小泉の責任は一切追及されていない。
防衛庁は、基本的に自衛隊の多国籍軍参加に消極的だったが、小泉の要請に最大限の安全策をとった。専主防衛を基本とし、外国へ自衛隊が出ることに戦後教育を受けた幹部が慎重だったからだ。
そこで①自衛隊は後方支援とし、一切戦闘地域に出ない②役割はイラクの民生支援、現地の土木建設に限る。重火器は持たず、最小限の自衛、大規模攻撃には外国軍の援助を求める③多国籍軍の仕事は連合軍の輸送、空・陸・海の補給活動のみとする――などとし、交戦は禁ずるとした。全く苦しい妥協の産物で、陣地の回りに塹壕を掘り、鉄条網を張って、穴熊・もぐら戦術をとった。自衛隊が外国で戦うことには反対が強く、その結果、隊員に一人の戦死者も出さなかった。
戦後の民主(平和)教育を受けた幹部には、専主防衛は絶対的なものであり、安倍の今回の内閣による解釈改憲、集団的自衛権の行使には、小手先の手段、ドサクサまぎれの卑怯な手法との批判が強い。これでは、いつまでたっても自衛隊は表に出られぬ、影の軍隊に留まってしまう。自衛隊はあくまで正面・表玄関から日本の防衛を考えるべきだとし、国会および国民の支持を得て、安全保障基本法、日本防衛基本法を策定し、法に基づく自衛隊にする。これは防衛庁長官を歴任した石波自民党幹事長の考えでもある。安倍首相は来秋の総裁選のライバルとなる石波氏を内閣改造で、新設の集団的自衛権担当大臣に取り込もうとしたが、石波氏は集団的自衛権での安倍首相との考え方がちがうと正式に要請を断った。この問題は来年の通常国会で本格的な論戦が始まる。
8月20日例会の討議
「完全護憲の会」設立趣意書を決定
ついで「完全護憲の会」設立趣意書(別紙添付)について野村光司氏(起草者)から、ながらく案のままに止まっていた同案を決定したいと提案され、討議に移り、「完全護憲」の名称について、最初から間口を狭くしている感じがするので「護憲の会」でよいのではないか、との意見があり、これに対して後発のわれわれの会の特色を出すためには「完全」をつける必要がある、また規約案には略称「護憲の会」とあるので、「完全」で差し障りのある場合は略称を使うことができるなどの意見があり、とりあえず試行ということで原案どうり採択された。
「第2章 戦争の放棄」――自衛隊の転換で論議
そのあと第3回編集委員会(8月6日)で行われた27条(勤労の権利その他)と96条(憲法改正の手続き、その他)をめぐる――草野編集委員が提言していた(ニュース8号に添付)――討議と、逐条審議の模様が野村氏から報告された。
逐条審議では9条(戦争の放棄、その他)まで進み、その2項(戦力)に関連して現自衛隊の違憲を編集委員会の全員で確認、その転換の具体策の討議が行われた。
例会ではその報告を受けて、引き続き9条2項をめぐる論議が行われ――
「憲法は守りたい、しかし自衛隊は残したいというのが今の一般的な世論だ。将来自衛隊を廃止するとしても、当面は自衛隊による国内外の貢献を維持しながら、次第に縮小すべきだ。そうでなければ護憲運動はつぶれる」「戦争放棄の憲法と自衛隊の存在には矛盾を感じるが、自衛隊の災害救助活動は感謝されており、雇用面でも逐次、国家警察に含めて行くべきではないか」「自衛隊員自身が平和部隊としての役割を希望している。災害救助に次第にシフト行くなど、自衛隊の転換に夢を描くことが必要だ」などの意見が出され、討議はさらに編集委員会で煮詰めることとされた。
なお岡部氏から、参加者の質問に答え、自衛隊の一部幹部に、国連軍を創設して日本の防衛を任せ、これに自衛隊は参加できないが、自衛隊員の自発的な参加を認めるという構想がある、との説明があった。
この討議に関係する資料として、「パンフレット案(9条関係)」「9条2項関係」(いずれも別紙添付)が席上配付された。
第4回 編集委員会の論議
第4回編集委員会が9月3日、虎の門・阪大東京オフィスの会議室で、編集委員の全員が出席し、午後2時から7時まで開かれた。
討議は「日本国憲法が求める国の形(パンフレット案)」7月27日付――原案は「日本国憲法が求める政治(全)」4月10日発信および「日本国憲法が求める国政(中間案・追加案)」5月19日発信―― に基づいて要旨、次のように行われた。
(第20条関係)
宗教団体の政治活動、選挙活動についての草野提言(「未討議部分の疑問・意見(草野)」別紙添付)をめぐって論議し、宗教団体の政治活動をめぐる違憲と合憲をどこで線引きするかを明確にして「パンフレット案」に記述する。
(第21条関係)
特定秘密保護法は憲法違反と明記する。
勤務時間外に自己の信念によって行う政治活動などには大幅な自由が与えられねばならず、現人事院規則は憲法の定めを著しく超えて公務員の政治的行為を禁止するもので違憲と明記する。
(25条関係)
地球環境、生活困窮者問題などの具体的な事例を指摘する。
大飯原発運転差し止めを命じた福井地裁判決の論理をパンフレット案に展開する。
福島第一原発の巨大事故後における国の対応は怠慢の域をはるかに越えた25条違反を指摘する。(別紙添付参照)
(26条関係)
教育環境に対する国の支配・介入の現実を指摘する。
(第30条関係)
納税者の訴訟が当事者適格に欠けるとして却下されているのは第81条最高裁の法令審査権放棄として違憲を強調する。
(43条関係)
「パンフレット案」の記述は小選挙区制の批判にとどめる。
(92条関係)
「パンフレット案」の記述は地方自治の本旨を明確にするにとどめる。(以上)
9月の例会・勉強会のご案内
日時 9月 28日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 京都大学連絡用室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
「日本国憲法が求める国の形(パンフレット案)」の討議経過 編集委員会
経過報告と今後の日程 事務局
討議 報告および提案への質疑、意見
10月例会について その他
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三
電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。
本ニュースには次の資料5点を添付します。① 「完全護憲の会」設立趣意書(決定)
② 野村(パンフレット案―9条関係)③草野(9条2項と完全護憲)④草野 未討議条項についての疑問・意見 ⑤加藤(第25条関係)生活環境の改善
「日本国憲法が求める政治(全)」を中心に既発表文書に対する意見をお聞かせ下さい。