完全護憲の会ニュース No.8 2014年08月10日

さる7月27日(日)、神田・学士会館で会合、参加者16名。入会者 計 19名。

まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏から政治の現況について次のような報告があった。

政治現況報告(要旨)

6月の例会の直後、集団的自衛権の最終案を公明党が呑んで、7月1日、安倍内閣は同案を閣議決定した。自衛権を発動するのは「わが國の存立が脅かされ、国民の生命、幸福の追及が根底からくつがえされる場合」と“おそれ”を削除したが、それを判断するのが首相か内閣であるのは変わらず、国民や国会は無視されたままだ。日本に帰化したドナルド・キーンさんは、この問題を「戦後日本人は一人も戦死していない。素晴らしいことだ。不戦を誓う憲法9条のおかげであり、世界が見習うべき精神である。日本は解釈改憲で“理想の國”から“普通の國”になろうとしている。戦後、憲法によって守られて来た日本を、少しでも戦前に戻そうとする動きに、私は抵抗を感じている」(7月6日朝刊、東京新聞)と心配している。

公明党はこれまで平和と弱者救済を立党の精神として掲げ、自民党との選挙協力でも優位にあるにもかかわらず、平和の旗をおろし、自民党との連立維持を選んだ。政権のうまみには替えられぬということだろう。今回の決定は自民党に屈服しても政府・与党の立場を重視するということであり、来年4月の統一地方選も含め、自公のワク組みは変わらぬということだ。

みんなの党や維新の会のすり寄りもあり、当面は自民党の優位が続くことになる。

今回の閣議決定は、日本がアメリカを守る戦争ができると云うことだが、これは日本の外務省の考え方だ。外務省は戦後ずっとアメリカ中心の外交を進めてきたが、安倍首相も安保法制懇の座長や内閣法制局長官に外務省のタカ派官僚を抜てきしてきた。安倍首相の戦前回帰、右派路線も外務省のアメリカ中心路線と軌を一にしている。

首相が説明で述べたアメリカの軍艦に日本人のお母さんや子供が乗っている、という説明も外務省の入れ知恵だ。集団的自衛権の発動は、朝鮮有事を想定したものだが、米軍はその場合、米国人救済に全力をあげ、日本の要請には応じないだろう。事実、過去にも米国は日本の援助を断っている。また朝鮮(韓国)も日本の自衛隊の援助要請はしないと思う。防衛省の考え方は全くちがう。朝鮮有事の場合も、米軍ではなく、自衛隊が直接、日本人を助けにゆく想定である。

また集団的自衛権よりも、国連軍の創設に日本が参加することを優先している。防衛省の考え方を支持しているのは石破幹事長であり、安倍首相は公明党の折衝に石破を外し、外務省よりの高村を起用した。安倍は9月の内閣改造でも石破をはずし、腹心を幹事長に起用することを狙っていると思われる。

ついで野村光司(原案起草者)氏から、7月10日開催の第2回編集委員会について、次のような報告があった。

第2回編集委員会の報告

7月10日、京都大学東京事務所(品川)で行われた編集委員会では、「日本国憲法が求める国家像(7月8日、野村案)」の記述について午後3時から閉室時間の8時まで逐条審議したが終了せず、第27条(勤労の権利……)と第96条(改正の手続……)については草野氏が後でメールで提言することになった。

なおこの日の議論を取り入れて原案を修正した「最高法規である日本国憲法が求める國の形(パンフレット案)」は本例会でお配りする。このパンフ案は本例会後、メール便のネットで会員と支持者に配信し、8月例会で意見を求める予定である。

編集委員会の参加者7人

7月27日例会の討議

引き続いて野村氏が、編集委員会で論議した問題点を例会に報告した。

これに対し、出席者から第1章(天皇)の1条から8条までについては、14条(法の下の平等)に照らしても違和感があるむね発言があり、これに対して、1条「(天皇の)地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」により、国民の総意によってこの条項を廃止する可能性があるとの答弁があった。さらに護憲派が現憲法の個々の条項に異議を唱えれば、改憲派の異議申立てをも認めねばならなくなるので、この際、現憲法を一括して完全護憲の立場をとることの重要性が野村氏から訴えられた。

出席者から特に、「パンフレット案」にある

「(第1章関係)天皇の地位への一定の尊重

護憲派の中には憲法第1章天皇規定の存在が、被差別部落や在日韓国朝鮮人への差別を生んでいるのでこれを違憲として廃止したいと言う意見が根強くあるが、第1章天皇の規定が厳然としてあるので、憲法14条の一般規定に対する特別規定として象徴の限りで尊重されねばならない」

の記述について、「尊重」とか「厳然としてある」とかは言い過ぎではないか、また「被差別部落や在日韓国朝鮮人」への言及は不必要ではないか検討されたいとの意見があった。

その後、福田玲三氏(事務局)から、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を違憲として訴訟を検討していると報道された松阪市の山中光茂市長、提訴に踏み切った三重の珍道世直氏に連絡をとり当会ニュース7号を送り、珍道氏から感謝の返信があったむねの報告があった。

ついで編集委員会を8月6日に、例会を8月20日(水)に開くことを決めた。

8月の例会・勉強会ご案内

日時:8月20日(水)14:00~16:30

場所:虎の門・大阪大学東京オフィス多目的室 TEL 03―6205―7743

報告:政治の現況について

岡部太郎(F語・1955年卒、元『東京新聞』政治部長)

「日本国憲法が求める国の形(パンフレット案)」について

野村光司(原案起草者)

参加費:無料

申込み:メール:rohken@netlaputa.ne.jp

でお申込みください。

(注)神田・学士会館が補修で使用できないため今回に限り場所を変更しました。ご注意下さい。

場所:東京都千代田区霞ケ関1-4-1 日土地ビル10階

アクセス:「虎の門」駅7番出口から北へ徒歩1分

「霞ケ関」駅A12号出口から南へ徒歩3分

地図:大阪大学ホームページ

http://www.osaka-u.ac.jp/ja/academics/facilities/tokyo/off

例会終了後、8月6日(水)15時から京大東京事務所(品川)で第3回編集委員会が行なわれた。出席者6人。

第3回 編集委員会の報告

第3回編集委員会は8月6日(水)15時から京大東京事務所で行われ、編集委員全員が出席した。

まず、委員から7月13日にメールで送信した27条と96条関係の提言(別紙添付)について討議し、27条関係では、労働法制の緩和によって、過酷な労働と低賃金にあえぐ非正規労働者と女性が爆発的にふえている現実を反映した切実な提言としてパンフ案に採り入れることとした。また96条関係の提言では、憲法改正の「国民投票法」と公務員の憲法尊重義務との関係について議論を深めるとともに、同投票法における最低投票率については、同法付帯決議の趣旨をパンフ案に盛りこむこととした。

ついで『週刊金曜日』(7月18日号)に掲載された案内広告で、締切時間が切迫して同誌編集部に一任したため文案の一部が削除され誤解を生じた件で福田氏から説明があり、次の会合から新しい参加者に「『完全護憲の会』設立趣意書(案)」を配り会の理念を把握してもらうこととした。

そのあと再びパンフ案の逐条審議に移り、前文からはじめて9条2項関係では自衛隊の違憲を確認した。そのうえで、自衛隊をどのような合憲の組織に転換するかについて論議中に退室の時間となり、後日に審議を継続することになった。
なお、「パンフレット案」にこれまでの議論を取り入れ、8月例会の参加者に配付できるよう野村氏に起草を委任した。まだ論議継続中のため配信ネットには、7月例会の予定を変更して、今回はまだ載せないこととした。▲

2014年8月10日