完全護憲の会ニュース No.21 2015年 9月10日

 さる8月23日(日)、港区・三田いきいきプラザ集会室で8月例会を開催、参加者18名。入会者 計43名。

          第20回  例会の報告

 O編集委員が司会し、怪我のため欠席した岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)からの政治現況報告(別紙1)を、宮崎会計監査が代読した。
 ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)が都合により欠席のため、福田玲三共同代表(事務局担当)が事務局報告(別紙2)を行った。
 その後、後藤富士子弁護士が「立憲主義と戦争放棄」の報告(別紙3)を行った。
 これらの報告にたいする質疑応答は要旨次のとおり。

 「岡部報告にある従軍慰安婦の強制連行については韓国に謝罪して解決すべきだ」
 「従軍慰安婦は多くの場合仲介業者を経ている。ただ命にかかわる戦地に連れて行かれたのは問題だ」「騙されて慰安所に行かされた例が多い」「連行の契機・経緯だけを論ずることは妥当ではない。『慰安所』で、毎日、十数人を超える兵士の相手を次々にさせられたことを思うと身の毛がよだつ。これこそ性奴隷だ」(後藤弁護士)
 「女性に対してだけではなく、男性に対する戦時の強制(徴兵)も考えるべきだ」「戦前は国民皆兵を疑うことができなかった。疑うとしたら非国民として一家一族が指弾された」「帝国軍隊は、兵站無しの片道切符で兵を海外に送った。また戦陣訓で『生きて虜囚の辱めを受けず』と、捕虜になることが許されなかった。捕虜の口から軍事機密の漏れるのを恐れたのだ」。

 「当会の『設立趣意書』にある『日本国憲法の理念』の要約について、問題提起者のI氏と原案筆者のN氏との間で編集委員会の際に討議されたが、合意には至らなかった。本日はN氏欠席されているので、I氏から討議の感想を伺いたい」(福田共同代表)
 「『理念』には立憲主義を明示的に掲げられていないので、立憲主義を加えたうえでの概念整理を提案したい。立憲主義を理念として掲げれば、『行政権の制限』『議会主義』などの他の理念は自ずから導出される。筆者本人のご体験は尊重されるべきとしても、万人が会の趣旨に賛同しやすくするためには、パンフの次期改版の際に見直しも必要ではないか」(I氏)
 「第三者の立場で見て、I氏に分がある。憲法全文を暗記している私から見れば、『平和主義』『議会主義』『法治主義』というネーミングに、感心しない。またその列挙の仕方に、整合性・網羅性が見られない。憲法の骨格は、一言で言い尽くせる。『人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し擁護することは、全ての国家権力の義務である』ということだ。
 これはドイツ連邦共和国基本法(憲法)第1条だ。第2条以下は、全て、この第1条から導出される。他国の憲法だからと言ってこれを無視してはいけない。日本国憲法も、この『①人権尊重→②国家権力はそのための手段』という『二段構え』である。第十章最高法規の97条→98条→99条と、憲法前文『そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来する』に、それは端的に示されている」
 「『完全護憲の会』の名称通り、天皇条項も含めて全条項を守らせるようにしよう、でいいではないか。現状で政治参加は投票だけになっている。権利闘争によって国民は幸福を追求すべきだ」(後藤弁護士)
 「今、多くの人はそこそこ裕福だから、権利闘争といっても実感が湧かない。政治に関心がなく、選挙しないでも生きて行ける。ブラック企業で働かざるを得ないと言っても、家賃を払えてスマホを持てるくらいには裕福だ」
 「私には、今が豊かだという実感はない。寧ろ、私が学生だった1968年頃の方が豊かだったように思う。公営住宅の家賃1万5000円滞納を理由に立ち退きを迫られた母親が、思い余って娘を絞め殺し、係員が踏み込んだときに、娘の生前のビデオを茫然と見ていた、という先般の事件を想起してほしい。現時点では職にあり付けている人も、いつ職を失うかわからない状態にしているのが、現下の法律と経済環境だ」(後藤弁護士)
 「消費増税分はすべて社会保障に使うと首相は断言したが、消費税創設以来の増収分は220兆円以上、その間の法人税減税は200兆以上。消費税の9割が大企業の減税と同額だ」
 「私は『立憲フォーラム』に所属している。この『フォーラム』で、日本最大の右派組織『日本会議の実態、そのめざすもの』という冊子を作成した。希望者には配付したい。政治に関与するには地元の都議や区議に電話するのが非常に有効だ」

 「フランス革命当時、サンジュストという議員が言っている。『我々はこの国で、貧しい人、苦しんでいる人を、一人でも放置してはいけない。そのような人が居なくなって初めて我々は、フランス革命を達成したと言えるのだ』この発言は、後藤弁護士が本日推薦された岩波ジュニア新書シリーズで紹介されている。(遅塚忠窮著『フランス革命』)。このサンジュストは、『ベルサイユのばら』にも出てくる。遅塚忠窮著『フランス革命』や『ベルサイユのばら』を読まれることを、強くお勧めしたい」
 「後藤弁護士は、日本人がGHQから良い憲法を与えられても、それをキチンと運用できない要因として、『革命を経験していない』ことを挙げられた。しかしそれでは、『今後も日本では、革命などできっこない。だから日本人は今後も憲法を充分に使えない』という結論につながってしまう。だから私は、日本人が革命を経験していないことを論う(あげつらう)のは間違いだと思う。戦後日本には、水俣病裁判、八幡製鉄政治献金訴訟、自衛官合祀違憲訴訟で闘ってきた人たちがいる。今のフランス人だって、実際に革命の場に居合わせたわけではなく、言葉や文化的表象(祝祭など)を通じてフランス革命を繰り返し擬似体験してきたからこそ、フランス革命の精神を体現した人権宣言をわが身のこととして捉えることが出来るのだ。それなら、日本の人々だって、時間的にも空間的にも離れていていても、後藤弁護士の紹介された岩波ジュニア新書等を勉強し、本日のご報告で怒りを新たにして、日本国憲法をその精神通りに実現するよう行動することが出来るはずだ。イェーリングという法学者は、『権利のための闘争』という古典でこう述べている。『何の苦労も無しに獲得された権利などというものは、コウノトリが持ってきた赤ん坊のようなものだ。コウノトリが持ってきただけならば、それはいつ、ハゲタカに持って行かれるか分からない。しかし、生命の危険を冒してまでわが子を産んだ母親は、ハゲタカがこれを奪うことを、断じて許さない。権利とは正にこれと同じだ』。この観点から、後藤弁護士の本日のレジュメには、モンテスキューなどの先達に加えて是非、イェーリングも挙げていただきたい」
 「『完全護憲の会』が貴重なことは、明治憲法下の現実を体験された方々が実感していらっしゃると思う。だからこそ私は、『完全護憲』という言葉が大切だと思っている。しかし、『完全護憲の会』を掲げているのに、憲法が理解されていない現状には、泣きたくなる。(後藤弁護士)

  次の例会・勉強会のご案内

日時 9月27日(日) 13:30~16:30
場所 港区・神明いきいきプラザ・集会室「憲法研究会」
   〒105-0013 港区浜松町1-6-7    電話03-3436-2500
   JR 山手線・京浜東北線、浜松町駅北口から徒歩4分
   都営地下鉄、大門駅A2 出口から徒歩4分、B1出口から徒歩3分
報告 政治の現況について   岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
   違憲の現状について   野村光司(「パンフレット」原案起草者)
   事務局報告           福田玲三(事務局担当)
   未定                後藤富士子(弁護士)
討議 報告および提案への質疑、意見
会場費 100円(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
(連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
電話 03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)

   次の編集委員会のご案内

日時 10月1日(木)14時~17時半
場所 大阪大学東京オフイス多目的室
    東京都千代田区霞ケ関1-4-1 日土地ビル10階
    アクセス:「虎の門」駅7番出口から北へ徒歩1分
    「霞ケ関」駅A12号出口から南へ徒歩3分
 (編集委員会に、ご都合のつく会員もご参加ください)

       編集委員会(8月)の報告

 第20回例会後の編集委員会が8月26日、大阪大学東京オフイス会議室で開かれた。出席者は草野、福田ほかO委員とK委員の4名で、以下の議題について討議し、合意した。

1.パンフレット配布活動について
 ① 諸集会における配布活動について
 ・集会参加者への無差別配布は反応少なく、財政上の問題もあり在庫の確保も必要なので当分見合わせる。
 ・集会主催者・講演者などの特定者への配布は継続する。
 ・上記特定者へのパンフ費用は「完全護憲の会」の負担とする。
 ・日本弁護士連合会主催の安保法制反対8・26日比谷集会(18:00~)にはK委員が参加対応する。
 ② 大使館など配布先リスト
  ◆在京大使館のリスト(住所・電話・ホームページURL付き)
   http://www.plazahomes.co.jp/info/embassy/
   USA・英・仏・独・露・中・韓・台湾・インドネシア・マレーシア・フィリピン・タイ・ベトナム・トルコ
 ・上記リストのすべてを配布対象とするか、選択するか、野村共同代表に一任する。実際の送付は事務局が担当する。
 ・大学各部局関係への送付はしばらく見合わせる。
 ③ 在京大使館への配布に伴って、パンフレットの「発表にあたってのごあいさつ」を英文化する。翻訳依頼をTさんに依頼。了承いただいた。

2.今後のパンフ制作活動について
 ① パンフ普及版の制作は中断し、当面先送りとする。
 ・普及版の原案作成を一任されていたK委員から、内容を詰めることの難しさと、現下の憲法情勢にそぐわないとの提起を受け、議論の結  果、中断・先送りを確認。
 ② 上記に代わって、野村共同代表の「第2版への活動」の提起も踏まえ、時宜に適した憲法問題を取り上げ、パンフ原本の「追補版第1集」「第2集」などとして適時制作・発行する(集会などでも無料配布できるように原価100円未満のもの)。これらを集約した形で原本の「第2版」発行につなげる。

3.例会における後藤弁護士の報告(講演)について
① 法律の専門家からの意欲的・刺激的な提起をいただき、大いに勉強になった。
② 8月23日の例会では、今後の3回にわたる報告テーマも構想されているが、当初、2回の予定でお願いした経過もあり、他の企画(福田共同代表の戦争体験報告や田中伸氏の憲法講談、パンフ追補版の内容検討など)もあるので、それら三回のテーマについては機会をあらためてお願いするとして、次回例会では後藤弁護士が現時点で最も提起したいテーマに絞っていただき(三つのうちの一つでも可)、報告をお願いすることとする。(担当:草野)

4.S氏の再回答要請・再意見書について
 ① S氏の最初の意見書に対して、野村共同代表が回答した内容に対する再回答要請を受け再回答が必要である。
 ② 憲法の法理論上の問題提起であり、難しい内容を含んでいる。私たちがこれに回答をなしうるかどうか議論。難しいがなんらかの回答をすべきとの結論。
 ③ 回答は最初の回答者でもある野村共同代表にお願いすべきだが、同代表の現在の健康状態を考慮すると無理させてはならない。代わりに草野編集委員長が原案を作成し、Eメールにて各編集委員に配付し、議論・検討の上、回答書を作成することとする。

5.完全護憲の会のホームページについて
 ① 8月20日付で「工事中」の表示を削除し、正式公開とした。会員の皆さんも随時閲覧できるので、周知する。(例会日程、会場案内なども把握できる)
 ② ホームページ管理担当者をO委員とする。

6.当面の日程について
 ① 9月第21回例会 9月27日(日)港区・神明(しんめい)いきいきプラザ
 ② 9月第17回編集委員会 9月30日(水)を10月1日(木)に変更
 ③ 10月第22回例会 10月25日(日)を11月1日(日)に変更
 ④ 10月第18回編集委員会 10月27日(火)を11月2日(月)に変更

     ご案内

 青年劇場創立50周年記念公演。ジェームス三木=作「真珠の首飾り」(国民主権・戦争放棄・基本的人権の尊重)9月11日~20日(紀伊國屋ホール)、9月24日(大田区民プラザ)、9月25日(かめありリオホール)。前売り=一般5150円、30歳以下3100円、高校生2000円。青年劇場チケットサービス(03-3352-7200)

 

<別紙 1>
        政治現況報告  2015年8月23日
            岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)

 敗戦後70年のこの夏は過去や今後を改めて考える夏だった。6月の沖縄玉砕、8月6日、9日の広島・長崎の原爆忌。そして8月15日の敗戦記念日。政府は戦後70年の安倍首相談話を14日に閣議決定した。終戦記念日の談話は戦後50年の村山首相談話、60年の小泉首相談話の2回あった。特に村山首相談話は日本の侵略と植民地支配の誤りを初めて公式に認め、「痛切な反省」と「心からのお詫び」を表明する画期的なもの。この点は小泉談話も完全に踏襲した。
 ところで安倍首相は昨年から「70年談話」にこだわっていた。かねてから「戦後レジーム」(体制)の刷新を旗印にしていた安倍は、機会あるごとに、従来の談話とは違う未来型の談話にすると表明。村山談話には批判的で、内閣に自分の考えに近い有識者を集めた「21世紀懇談会」を設け、談話内容を検討させていた。
 恐らく、この70年間で、日本は平和を守ったのだから、戦後に一区切りをつけ、将来の「積極的平和主義」転換を約束、米軍あるいは友好国の平和戦略を「日本が支援する」との安倍流、集団的自衛権構想を表明する計画だった。じかし、閣議決定された談話は、この思惑に反し、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫び」の4つのキーワードを従来通り使ったものになった。しかも「私は」の主語ではない「我々は」とか「国は」とか間接話法を使った抽象的表現で、本当の反省やお詫びにはほど遠い。これは意に反して懇談会の答申が、侵略や反省を入れろというものであったり、公明党の山口委員長から「村山談話を明確に踏襲を」と迫られたため、初めの意図とちがうものに。自民党の幹部や側近から「わざわざ談話を出す意味がなかった」とまで言われた。
 これなら潔く侵略の歴史認識を明言し、はっきり謝罪をし、70年を機会に、これからは前向きに付き合おうと明言した方がよかった。また韓国の従軍慰安婦問題も「女性の人権侵害問題」とあいまいにした。「次の世代に謝罪を続ける宿命を負わせてはならない」というのなら、自ら日韓首脳会談で従軍慰安婦賠償にケリをつけ、日韓の懸案を無くすべきだろう。その事は中国との歴史問題の決着についても云える。
 自ら解決の意欲なく、口先だけの談話なら、まさに必要なかった。談話の翌日、全国戦没者慰霊祭での天皇のお言葉「過去の大戦への深い反省」と「戦後70年、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、日本は今日の平和と繁栄を築いて来た」の方が、ずっと心に染みる平和への発言だった。

<別紙 2>
         第20回例会  事務局報告
                      福田玲三(事務局)
1)ニュース20号への意見など
龍平四郎氏
 今回も読んで勉強させていただきました。
 岡部太郎氏の政治現況報告は、おさらいとして状況の再確認ができました。
 野村代表よりの憲法問題(案)はすこし理解しにくかったです。
 稲田氏意見(別紙5)は、会の理念などがすこし理解しやすい内容(文章)に近づいたかなと思います。今後検討されるようですので、方向性としてはいいのではないでしょうか。
 弁護士 後藤富士子氏(別紙4)について。読ませていただくと、お話の内容はそのとおりだと思います。大筋の記事が、重箱の隅をほじくるように思えてなりません。
 「法律主義」は合憲か?の最後の下り、「事実婚」擁護の場面で近親者や重婚でも、当事者の自治に任せればいい。「個人の尊厳」は国家が付与してくれるものではなく、人が実現するものである。 私は思う。個人の尊厳も秩序のうえに成立するのではないでしょうか。
 今回もたいへん勉強になり、ありがとうございました。(後略)
『週刊金曜日』倉敷読書会(堀井進)
 先日は『日本国憲法が求める国の形』10冊を確かに受け取りました。読書会で話し合ったところ、今後1年間、テキストとしてみんなで討論、学習してみようということになりました。昨日(7/29)、5000円を送金しましたので再度(前回と同じく)10冊送付して下されば幸いです。(後略)
『週刊金曜日』東濃読者会
 ぎふ東濃読者会のTです。昨日(ニュース20号が)届きました。今週末の読者会にて紹介させて頂きます。
S・K氏(東京)
 いつも(例会の)案内をいただきましてありがとうございます。申し遅れましたが、会のニュースはあらためて身のひきしまる思いで拝読させていただきました。(後略)

2)珍道世直氏からの最高裁決定についてのご報告
 「完全護憲の会」におかれましては、本件訴訟についてご注視賜り、心から感謝いたしております。
 ご承知のように私は、平成26年7月1日、安倍内閣が行った「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定(正式名称-国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について)」の「3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置」は、憲法第9条に違反する決定であり、無効であることの確認を求める請求を行って参りました。
 このたび、最高裁判所第二小法廷(裁判長 山本庸幸)から、調書(決定)が送達(7月30日)されましたので、ご報告いたします。
 決定の内容は、「本件上告を棄却する。」とし、理由として、「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、 本件上告の理由は、違憲をいうが、その実質は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。」とされております。
  本件上告は、民訴法312条1項に基づき、「憲法の違反があることを理由として」行ったものでありますが、裁判所は、「違憲をいうが、その実質は単なる法令違反を主張するものであって、」として、「違憲の主張」を「法令違反の主張」ととらえて、「違憲」か「合憲」かの憲法判断を回避したものと推量されます。
 「違憲な閣議決定」から「違憲な安全保障法制案」が発出され、国会で違憲、合憲が激しく対決し、多くの憲法学者や弁護士らが違憲と表明し、300を超える地方議会から、国会や政府に意見書が提出されている中、今この時にこそ、最高裁は国家・国民の為に、司法としての使命を果されるべきであります。
本件訴訟を通じて、このことを示されなかったことは、最高裁は「違憲審査権」を放棄したに等しく、「三権分立の原則」の崩壊につながる憂慮すべき事態であると考えます。最高裁が、速やかに「安全保障法制」について、憲法判断を下されるよう切望する処です。
本件訴訟が、このような形で終審しましたことは、誠に無念であります。
しかし、最高裁に対しては「抗告」手続きがないとのことですので、本件については終結せざるを得ないと考えております。
 「完全護憲の会」におかれましては、本件訴訟を進めるに当って、大きなお支えとお励ましを賜りました。ご厚情に心から感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。謹んで、ご報告申し上げます。(太字は原文のまま)

3)パンフの普及
 ①野村光司氏が8月15日、プロテスタント教会主催「平和を祈る憲法研究会」で講演、質疑を受け、受講者に当会パンフを紹介。
 ②『週刊金曜日』奈良五条読者会より5冊受注。
 ③『週刊金曜日』札幌西読者会より2冊受注。
 ④『週刊金曜日』東三河読者会より13冊受注。
 ⑤『週刊金曜日』徳島読者会より10冊受注。
 ⑥『週刊金曜日』足利読者会より22冊受注。
 ⑦『週刊金曜日』京都読者会より5冊受注。
 ⑧『週刊金曜日』倉敷読者会より20冊受注。
 ⑨名古屋市S・S氏より10冊受注。

4)今後の日程
  9月27日(日)13:30~16:30 例会。港区・神明いきいきプラザ集会室。
 10月  1日(木)14:00~17:00 編集委員会。虎の門・大阪大学東京オフイス。
 11月  1日(日)13:30~16:30 例会。港区・三田いきいきプラザ集会室。
 11月  2日(月)14:00~17:00 編集委員会。虎ノ門・大阪大学東京オフイス。
 11月22日(日)13:30~16:30 例会。港区・三田いきいきプラザ。

<別紙  3>
       立憲主義と戦争放棄(要旨)2015年8月23日
                      弁護士 後藤富士子

1)近代立憲主義の特色
 米仏で市民革命の結果導入された立憲主義
  政治の基本的ルールを憲法で定め、それに反する権力の組織と行使を排除しようとする
  ①人権の目的性と権力の手段性
  ②国民主権と権力分立制  ☆権力は国民の所有物
 1789年仏人権宣言16条
 「権利の保障が確保されず、権力の分立が規定されない社会は、すべて憲法をもたない」
 ☆「憲法による政治」・・権力担当者は、憲法で国民から明示的に授権されていることしかできない
   憲法=授権規範  cf. 立憲主義・・「憲法は権力者を縛るもの」(憲法の拘束力)

2)「外見的立憲主義」・・「上からの近代化」=旧特権階級のイニシアチブによる資本主義化
 ①人権の観念の否認
 ②国民主権の排除
 ③権力分立の外見性
 ☆「憲法による政治」・・権力者は、憲法で明示的に禁止されていないことは全て行うことができる
    憲法=禁止規範  cf. 立憲主義・・「憲法は権力者を縛るもの」(憲法の拘束力)

3)日本国憲法と立憲主義
 明治憲法から日本国憲法への移行  法的には革命
  ①基本的人権の観念
  ②国民主権の原理
  ③権力分立制
  ④立憲主義の宣言  99条、98条1項、81条
  ⑤憲法の拘束力  国会・内閣・裁判所等は憲法上明示的に授権されていることしかできない
 憲法を運用する現実の政治は、明治憲法的な運用の仕方を多面で継承し、立憲主義の実行に消極的
  ①憲法の拘束力  憲法上明示的に禁止されていないことはできる
  ②「解釈改憲」の手法  cf.「立法」概念、「戦力」概念
  ③違憲立法審査による正当化  cf.「砂川判決」、戸別訪問禁止
 政治が憲法の規制から解放される状況をもたらしている要因
  ①市民革命の実体を欠いた日本国憲法の制定
  ②憲法から離脱する政治を求めてやまない日米安保体制
  ③憲法改正を党是とする自民党の長期政権独占  ☆政権交代・・・
 立憲主義のために
  ①国民が憲法を自己のものとして、憲法によって政治を監視し、批判し、抵抗すること
  ②立憲主義の創始者たちの視点の再確認
    モンテスキュー「権力を担当する者は、権力を濫用しがちである」
    ヴァレル「人間は本来傲慢に創られており、高位につくと必然的に専制に向かっていく」
    ジェファーソン「信頼はどこでも専制の親である」「憲法の鎖によって非行を行わないように拘束する必要がある」

4)戦争の放棄
(1)「戦争の放棄」を「国民の権利及び義務」に先行させたのは何故?
 ・市民憲法・・人権の保障が政治の目的であり、政治・統治機構はそのための手段
 ・伝統的な軍隊・戦争観・・外国の侵略から国家の独立と国民の権利・利益を守る手段
 ・その破綻・・国家の独立と人権を守るための戦争そのものがジェノサイド的性格をもつに至る
 ・戦争は基本的人権を破壊する手段であり、平和こそがその享受のための不可欠の前提条件
(2) 第9条の構造
 ①前文の平和主義、②第9条の解釈、③憲法制定時における政府の説明
(3) 第9条の運用
 ①警察予備隊の発足、②旧日米安保条約と米軍の駐留、③保安隊・海上警備隊の発足、④MSA協定の締結と自衛隊の発足、⑤現行日米安保条約の締結、
 ⑥「日米防衛協定のための指針(ガイドライン)」、⑦「指針」後におけるエスカレーション
(4) 現代における「戦争の放棄」の意義
 ①立憲主義の観点から  「解釈改憲」は専制政治の親
 ②軍事の観点から
 ・文明と戦争は両立しない  幣原の指摘
 ・日米安保体制による他律的な核戦争の危険
 ③経済・財政の観点から
 ・ディグラスの指摘  『軍拡と経済衰退』
 ・第9条の経済的効果   cf.軍拡と社会主義  ソ連崩壊
(5) 初心に戻る・・第9条の出番
                                 (以上)
(注・事務局)聴者にとって印象深かった箇所をゴチックにさせていただいた。
なお後藤弁護士は、杉原泰雄著『憲法読本』第4版(岩波ジュニア新書)を、とくに推薦された。

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