さる9月28日(日)、神保町・学士会館地下1階京都大学連絡室で会合、参加者13名。入会者 計 19名。
まず、岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)氏から政治の現況について次のような報告があった。
政治現況報告(要旨)
安倍内閣は9月3日(水)内閣発足後、1年10ヵ月で初の内閣改造を行った。通常は1年で改造だが、民主党から政権を奪取したあと、外交問題や消費税8%増税などで経済も落ち着かず、一次内閣で2年近く過ごしてしまった。この改造は、地方創生と女性活用を目玉ということで、地方創生担当相には石破幹事長、女性大臣には小泉第一次内閣と同じ最多の五人を登用した。しかし真の狙いは来年4月の統一地方選に勝ち、来年9月の自民党総裁選で安倍再選を果たすことにある。
そのため最大のライバルとなるとみられる石破氏を閣内に取り込み、集団的自衛権法制の担当大臣にしようと画策したが、石破氏が安保への姿勢が異なるとして、断られたため、急拠、地方担当相を提示、石破氏も一年間無職では、党内の求心力がなくなるのを恐れ、入閣を最終的に了承した。また同じように、ハト派代表として、総裁選に出る可能性のある谷垣法務大臣も、党幹事長に就任を要請し、内閣・党の共同責任体制の形で取り込んだ。
しかし、内閣の中核、麻生財務、岸田外務、下村文部、菅官房、甘利経済、公明の太田国交の主要閣僚はそのまま留任させたので、基本姿勢は変わらない。
一方、女性は党総務会長の高市早苗を総務相、松島みどりを法務、山谷えり子を国家公安、有村治子を女性活躍相と、いずれも党内の右派“タカ女”を登用した。また党側でも行政改革相だった稲田朋美を政調会長に起用した。秘密保護法案、集団的自衛権関連法案など、安倍の戦前復活路線の先頭に立つことになる。そのほか二度目入閣の小淵優子は経済産業相で、原子力発電の再稼働を担当する。
ただ表面は9月29日召集した臨時国会を、地方創生と女性登用の二つにしぼって対応、そのまま地方選になだれ込むという作戦だ。従って本来の目標である秘密保護法や集団的自衛権の法案審議は地方選後の来年の通常国会後半に持ち越すハラだ。その他、年内の最大の焦点である消費税10%の再値上げでは、慎重に判断するとしており、現在のような円安や停滞が続けば、これは先へ延期する可能性が強い。
また福島や沖縄知事選、中国、韓国、北朝鮮など東アジアの外交も年内一つのヤマ場を迎える。とりあえずは11月北京でのAPEC会議で、日中、日韓首脳会議が行われるか注目される。
国内的には来春の地方選まで、野党も含め大きな動きはないとみられる。
9月28日例会の討議
本例会には野村光司(日本国憲法が求める国の形―「パンフレット案」起草者)が会議が重なって欠席したため、「パンフレット案」の条項に代案を提出した草野、加藤両氏から、さる9月3日、虎の門・阪大東京オフィス会議室で行われた第4回編集委員会の報告が、それぞれ関係条項について行われた。
草野氏は別途配付済みの「8・6編集会議時間不足で討議できなかった条項についての疑問・意見」(2014/8/9/)について、加藤氏は「第25条関係 生活環境の改善」(2014/9/3)について、編集委員会での討議の模様を説明し、報告した。
これらの各条項は討議の結果、いずれの代案も大筋で取り入れられることになり、その成果は、「パンフレット案」に収められることになった。
この報告の後、要旨、以下のような討議がおこなわれた。
「第1章天皇の第1条から8条までは不用だ。天皇は伊勢神宮の神主にでもなればよい」「現憲法そのものが保守の側から改廃されようとしている。この貴重な条項に満ちている民主憲法全体を維持するためには、実害のない天皇条項は容認してもよいのではないか。『この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく』と、現憲法を擁護しながら、本条項を廃止する道も開かれている」「今の天皇は人気がある。天皇も皇后も平和主義者のようだ」
「ヒトラーも選挙で選ばれながら独裁者になった。今の日本も独裁に向うのではないか」
「戦後の民主教育がある程度普及しており、選挙のルールもまだ残っている。これが最後の保障になろう」「憲法前文の理想は現実に追い抜かれたと言う人もいるが、憲法は現実に追随するだけでなく、崇高な理想を掲げてよいと思う」
「内需は国民総生産の80%を占めている。円安による輸出の一方的な重視は誤りだ。消費税値上げによる5兆円の増収分のうち社会保障に回されているのは1割だけで、あとは企業向けだ。円安と消費税による物価の値上げには買い控えで対抗したい」「私たち中小企業は買い控えされ売れ行きが落ちると首を締められる。労働法制改悪による非正規労働や低賃金労働者の拡大こそ問題だ」
「私は公務員として仕事に追われ憲法について考えないで過ごして来た。今後、人権について幸福について考えてみたい」
「完全護憲の会という名称は戦略的に入口で排除している感じがある。『護憲の会』だけでよいのではないか。マルクス主義の現状は何ともだらしない。動態経済を追及すべきだろう」
7月例会の際に配付された「日本国憲法が求める国の形―パンフレット案」とその後提起された代案については特に疑問、意見はなく、7月以降の討議を織り込んだ「パンフレット第2次案」を次の例会までに配付し、さらに検討してもらうことになった。
第5回 編集委員会の論議
第5回編集委員会が10月8日、虎の門・阪大東京オフィスの会議室で、午後2時30分から6時30分まで行われた。出席者は野村、草野、大西、加藤、福田。
討議は「日本国憲法が求める国の形(パンフレット案)」7月27日付とその後提起された代案を巡って行われ、まず第9条(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)については、代案のなかで在日米軍が「明白な違憲ではない」根拠に最高裁判決(昭34.12.16)が挙げられているが、この砂川判決については最高裁田中耕太郎長官が裁判情報を事前に米側に伝えていたことが判明している以上、この疑義のある判決に依拠できないとして、関係する3段落の削除を決めた。
ついで第24条(家庭生活における個人の尊厳と両性の合意)関係では、話題の「夫婦別姓を認める」を挿入することとした。
第25条(生存権、国の社会的使命)関係では、地震や噴火などの自然災害や自動車や放射能などの人為災害の脅威を科学的に計量し、被害量の大きいものから順次、制御、廃棄に努めるべきであろうとの意見などがだされた後、「文化的な最低限度の生活」への草野代案の併記と「生活環境の改善」につての加藤代案の追加が行われた。
第96条(改正の手続、その公布)関連では、「国民投票法」における公務員や最低投票率の扱いをめぐって、安倍首相の「河野談話」継承の言明に見られるように、現政権の超反動政策は国際世論の前にじょじょに後退しており、憲法改正まで進むことは不可能と思われるので、この項目で論議を深める必要はないとする意見と、迫りくる憲法改正の危険を直視する必要があるとの意見の間で論議が交わされ、意見は一致しなかったが、とりあえず「国民投票法」をめぐる草野代案は取り下げることとした。
主として以上のような論議をへて、「パンフレット第2次案」を決定し、ニュース10号とともに、これを読者に配信、配送し、会員、読者からの意見を求めることとなった。
次の例会・勉強会のご案内
日時 11月 2日(日) 14:00~16:30
場所 東京・神田 学士会館地下1階 京都大学連絡室
(地下鉄・神田神保町駅 A9 出口から徒歩1分)
報告 政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
「日本国憲法が求める国の形(パンフレット第2次案)」の討議経過
野村光司(「パンフレット」起草者)
今後の日程 事務局
討議 報告および提案への質疑、意見
次の例会について その他
参加費 無料(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 福田玲三
電話03-3772-5095 メール:rohken@netlaputa.ne.jp
なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。
本ニュースには「日本国憲法が求める国の形―パンフレット第2次案」を添付します。同案に対する意見を次の例会、その他でお聞かせ下さい。