完全護憲の会ニュース No.27 2016年3月10日

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        目次 ① 第26回例会の報告             1p
           ② 次の例会・勉強会のご案内 2p
            
        別紙 1 政治現況報告                3p
        別紙 2 事務局報告(緊急警告 006号~010号を含む)  4p
          
            第26回 例会の報告

さる2月28日(日)、港区・神明いきいきプラザ集会室で第26回例会を開催、参加者11名。入会者 計50名。

 司会を草野編集委員長が担当し、まず、政治現況報告(別紙1)が、岡部共同代表のご家族法要による欠席のため、届けられた報告を上田氏が代読。
ついで事務局報告(別紙2)を福田事務局担当が報告。
以上2つの報告に対する質疑と討論では、まず政治現況報告中の、米国最高裁判決「政府が放送の編集権に介入するのは表現の自由を認めた憲法修正第1条に違反する」をめぐって意見が交わされ、その衆院予算委員会における山尾議員(民主党)の「表現の自由は経済の自由に優先する」との提起を、緊急提言006号(高市総務相言及の「停波」問題)に、付言するようにとの要望あった。また現憲法押し付け論と公務員の憲法擁護義務についても論議が交わされた。このうち「表現の自由の優越的地位」と「押しつけ憲法論」について、その詳細な解明が、その後、加東遊民氏によって、当会ブログに投稿された。公務員の「憲法擁護義務」については、緊急警告009号で見解を発信した。
事務局報告の2)共同代表会議の報告については、討議の末、共同代表辞任を表明している野村氏への慰留と復帰への努力を続けるようにとの全員の要望で締めくくられた。
ついで新参加者の紹介として、熊谷在住のK氏の自己紹介があった。
当面の日程については、以下が紹介された。
① 第27回例会 3月27日(日)13:30~ 神明いきいきプラザ(浜松町)
② 第24回編集委員会 4月5日(火)14:00~ 大阪大学東京オフィス
③ 第28回例会 4月24日(日)13:30~  神明いきいきプラザ(浜松町)
④ 第25回編集委員会 4月30日(土)14:00~ 大阪大学東京オフィス

       次の例会・勉強会のご案内

日時 3月27日(日) 13:30~16:30
場所 港区・神明いきいきプラザ・「憲法研究会」
    〒105-0013 港区浜松町1-6-7 電話03-3436-2500
JR 山手線・京浜東北線、浜松町駅北口から徒歩4分
     都営地下鉄、大門駅A2 出口から徒歩4分、B1出口から徒歩3分
報告 1)政治の現況について 岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
2)緊急警告:発信した009号~010号の検討 事務局
議事 質疑・討論
会場費ほか 300円
       
       
6.当面の日程(追加)について
 ① 第29回例会 5月22日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ(田町)
 ② 第26回編集委員会 5月24日(火)14:00~ 大阪大学東京オフィス

<図書紹介>
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<別紙 1>
           政治現況報告 2016年2月28日

              岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)

通常国会と予算委員会で本格審議が始まったが、その中で安倍首相の改憲発言と参院選での争点化が日に日に強まって来ている。出だしこそおとなしかったものの、参院選での改憲勢力2/3確保を打ち出した頃から強気に転じ、2月4日の予算委では、初めて憲法9条2項に言及し、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」という部分は自衛隊を保持している現状に合わない、従ってこれを改正せねばならない、と本末転倒の理論で9条改憲を参院選の争点とすることを明言した。強気発言にも拘わらず内閣支持率が堅調なのが自信につながっているようだ。
自民党も2月16日、憲法改正推進本部を八ヵ月ぶりに開いて、党内の調整に乗り出した。ただ改正項目については異論もあり、公明党の慎重論と相まって意見集約は簡単ではないとの見方もある。
一方野党は、自民党の改憲を阻止するため、民主、共産、維新、社民、生活の五党が、参院選での選挙協力を申し合せ、さらに昨年秋、自民が成立させた、集団的自衛権を認めた安保法案を違憲として「安保法廃止二法案」を19日、衆院に共同提案した。
しかし首相の強気にも拘わらず、TPP交渉を一手に引き受けていた盟友の甘利経済相が秘書の口利きあっせんで辞任、後任に「経済に全く不慣れな」(麻生副総裁)石原伸晃前幹事長が就任。今後の波乱要因になりそうだ。
このスキャンダルを皮切りに、自民党では京都4区の宮崎謙介衆院議員が妻の出産介護で国会を欠席しながら、その実不倫を働いた、と云うので議員辞職。参院憲法審査会では委員の丸山和也参院議員が「アメリカでは黒人の大統領がいる。これは奴隷ですよ」と発言、委員を辞任した。
 さらに丸川珠代環境相は福島第一原発事故の追加被曝線量、年間1ミリシーベルトについて、「何の科学的根拠もない」と失言して、謝罪、取り消し。島尻安伊子北方担当相は担当の北方領土の「歯舞」が読めずに陳謝。溝手顕正参院議員会長は宮崎議員の不倫を「うらやましい」と言って取り消すなど、失言、失態のオンパレードとなった。
さらに問題なのは高市総務相で、「放送局が政治的な公正さを欠くと判断した時は、電波停止を命じることもある」と言論の自由を認めない威嚇を重ねたこと。その違憲性は当会ホ-ムページの違憲性に対する緊急警告006号「高市総務相は辞任に値する」にくわしいが、放送法が現実に合わなくなっているのも事実。昔は電波は数少ない希少なものだから、「国民のために放送は中立、公平が必要」と第1条の“不偏不党”や第4条の“政治的な公平”になった。しかし今や電信、電波は衛星により衛星放送やケーブルテレビ、インターネットで、ほぼ無尽蔵。アメリカでは「電波の希少性がなくなった」と云うことで84年、最高裁が「政府が放送の編集権に介入するのは表現の自由を認めた憲法修正第1条に違反する」との判決を行った。
この判決の結果、放送法の「公平の原則」も見直さざるを得なくなり、レーガン政権下の87年、この公平原則の廃止を決定。2011年には連邦通信委員会の規則から最終的にその「公平原則」が削除された。つまり日本もその方向にゆくのが望ましい。時代遅れな議論を安倍首相や高市総務相が得得とするのはナンセンスだ。

<別紙 2>
          第26回例会 事務局報告 2016年2月28日

                  福田玲三(事務局)

1) 緊急警告006号~010号
 これらの発信文書は例会の討議を経て正式文書とし、一定の号数に達すればリーフレットに集成して発行し、さらに何号かのリーフレットを集成しパンフレットとして発行する予定。

緊急警告006号 放送の自由を威嚇する高市総務相は辞任に値する(2月13日)

 朝日新聞(2月10日)の報道によると、高市早苗総務相は9日、衆院予算委員会で、「憲法9条改正に反対する内容を相当時間にわたって放送した場合、電波停止になる可能性があるのか」との玉木雄一郎議員(民主)の質問に対し、「1回の番組では、まずありえない」が、「将来にわたってまで、……罰則規定を一切適用しないということまでは担保できない」と述べ、放送法4条違反を理由に電波停止を命じる可能性に言及した。
 重大な発言である。放送局が「憲法9条改正反対」、すなわち憲法の尊重を訴える番組を長時間放送すれば、総務大臣が放送法4条違反を理由に電波停止を命じる可能性があると発言したのである。実際に電波を停止するまでもなく、この発言だけで、放送局に対する脅しであって、「表現の自由」(憲法21条)を脅威にさらすものである。しかも、憲法尊重擁護義務(憲法99条)を負う公務員である総務大臣が、憲法擁護を訴える番組を「政治的公平性を欠く」と見なし、それを理由に電波停止命令の可能性を示唆したものであり、憲法に定められた「憲法尊重擁護義務」に違反して「表現の自由」を侵害しようとしたものであって、二重の意味で憲法を蹂躙する重大な発言である。
 放送法4条は、放送事業者の守るべき倫理規範の一つとして第2号で「政治的に公平であること」を掲げているが、それは、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」を放送法の従うべき原則に掲げる同法1条の下で解釈しなければならない。そして同法1条はまた、憲法21条の保障する「表現の自由」を放送において実現することを目的としていることも明らかである。したがって、放送法4条2号の掲げる政治的公平性とは、同条4号に掲げる「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」という規定とあいまって、放送の「不偏不党、真実」を保障しようとするものである。とりわけ、戦時中、放送局が政府の統制下におかれ、大本営発表の宣伝機関と堕して国民を戦争へと駆り立てた苦い反省に立って制定された放送法において、「政治的公平性」とは、何よりも政府からの独立性を意味するものであり、「何人からも干渉され、又は規律されることがない」という番組編集の自由を定めた放送法3条の規定は、とりわけ政府からの干渉・規律の拒否を意味していよう。
 ところが、高市総務相にとっては、「政治的公平性」とは政府方針への親和性のことであり、「政治的公平性を欠く」とは政府の方針を批判する内容を指しているようである。そう考えない限り、「憲法9条改正反対の内容」=憲法擁護の姿勢が、「政治的公平性を欠く」と判断される理由は理解できないであろう。高市総務相が、「政治的公平性」とは政府方針支持のことであると考えているからこそ、憲法擁護の番組が、憲法改定を進めようとしている安倍政権の方針に反して「政治的公平性を欠く」と考えるのである。
 高市総務相は昨年4月28日にも、「クローズアップ現代」の過剰演出問題でNHKに厳重注意の行政指導を行っているが、これに対して、放送倫理・番組向上機構(BPO)は同年11月6日、「放送の自由とこれを支える自律に対する政権党による圧力そのもの」であり、「政府が個別番組の内容に介入することは許されない」と厳しく批判している。
 このように、政権に批判的な報道を「政治的公平性を欠く」として、そうした報道を弾圧しようとする高市総務相の姿勢は、「憲法尊重擁護義務」に著しく違反し、「表現の自由」を抑圧し威嚇するものであり、決して許されない。憲法を無視し続ける高市総務相は直ちに辞任するに値する。
(会員ブログより転載)
 
緊急警告007号 地方議会の憲法改正要求は憲法違反!(2月19日)

 安倍政権が来る参議院選において、憲法「改正」を争点に掲げる姿勢をあらわにしている中、これを先導し後押しするようなかたちで、「日本会議」の主導のもとに、地方議会における「憲法改正の早期実現を求める意見書」採択が全国的に推進されている。
 「日本会議」のホームページによれば、その数は2015年11月21日現在32都府県/55市区町村議会にのぼるという。東京、大阪、京都を筆頭に横浜市、川崎市など首都圏の大都市も軒並み名を連ねている。
 これら地方議会が採択した意見書はすべてが同じ文面ではなく、その表現に濃淡があるものの、典型的には大阪市議会が採択した意見書(「憲法改正の早期実現を求める意見書」)にみるように、「この間、我が国を取り巻く東アジア情勢、軍事技術の進歩や大量破壊兵器の拡散などによる外交安全保障上の問題、大規模災害時などの緊急事態に対応できる国の在り方の問題、環境権などの新しい権利、地方分権・地方自治の進展など、我が国を巡る内外の諸情勢は劇的な変化を遂げ、現行憲法施行時には想定できなかった課題や新たな時代に対応できる憲法が求められている。」というものである。
 一体全体、こうした「憲法改正を求める意見書」を採択した地方議会の議員諸氏は、自分たちがどのような存在なのかを自覚しているのであろうか。地方議員が特別職としての公務員であるとの自覚が少しでもあれば、現憲法が内外情勢の「劇的な変化」に対応できなくなっているので新たな憲法に変えろなどと、現憲法をこのように軽んじることはできないはずである。
 憲法第99条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官、その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と、明確に公務員の憲法「尊重擁護義務」を定めているのである。地方議会におけるこのような「憲法改正」要求は憲法違反と言わねばならない。
 さらに問題なのは、これらの意見書採択が、現憲法をどのような憲法に「改正」しようと意図しているかである。それはこの運動を復古主義的戦前回帰をめざす「日本会議」が主導していることからも明らかであろう。即ち、自民党が2012年に公表した「日本国憲法改正草案」そのものである。
 この自民党「改憲草案」は、現憲法が掲げる国民主権、基本的人権、平和主義の3原理を根底から覆す国家主義、反民主主義の改憲案であることは、その内容を見れば明白である。
 それゆえ、地方議会が採択した「憲法改正を求める意見書」は、国民主権、基本的人権、平和主義に立脚する現憲法を、これとは対極にある国家主義憲法に改めようとするもので、単に憲法尊重擁護義務に反するのみならず、その内容においても現憲法に抵触するものなのである。
 特別職としての公務員である地方議員が現憲法に違反する「意見書」採択を行ってはならず、すでに採択したものは取り下げるべきである。

緊急警告008号 安倍内閣の倒錯した「立憲主義」理解(2月25日)

 安倍首相が年明け以降、改憲への欲望を前面に押し出しにしてきている。年頭記者会見(1月4日)に始まり、衆院予算委(同8日)、NHK番組(同10日)、施政方針演説(同22日)など、ことあるごとに、参院選での改憲の争点化を明言している。これまで安倍首相は、選挙前には改憲という本音の争点を隠し、選挙が終わると特定秘密保護法や集団的自衛権の閣議決定、安保関連法制など、念願の立憲主義破壊活動を着々と進めてきた。その安倍首相が、ここにきて、甘利辞任後も落ちない内閣支持率を見て、本音をむき出しにしてきたのである。国民はいよいよ、敗戦の焦土の中から勝ち得た自由と民主主義を、安倍政権とともにゴミ箱に投げ捨てるのか、それとも安倍政権から守り抜くのかの正念場に立たされたのである。
 2月3日の衆院予算委では、「憲法学者の7割が違憲の疑いを持つ状況をなくすべきだという考え方もある」という暴言を吐いた。安倍首相の側近と言われる自民党の稲田朋美政調会長が、「現実に合わなくなっている9条2項をこのままにしておくことこそが立憲主義の空洞化だ」と述べたのに応じたものである。朝日新聞も6日の社説で「首相の改憲論、あまりの倒錯に驚く」と述べていたが、過去、ここまで憲法を無視し立憲主義を愚弄した政権はない。問題は、ここまで立憲主義を愚弄している安倍政権は、立憲主義の意味を理解したうえで、確信犯としてやっているのか、それとも、立憲主義の「り」の字(意味)も知らずにやっているのか、である。どちらが一層恐ろしいかについては、議論が分かれるかもしれないが、私は後者の方が圧倒的に恐ろしいと思う。前者であれば、「本当は権力者がやってはならないことをしている」という後ろめたさがどこかにあるはずだから、多少の心理的ブレーキがかかるものだが、後者であれば、そもそも罪の意識自体ないため、やりたい放題になる恐れが強いからである。そして、安倍政権が後者であることは、数々の証拠が示している。以下に、いくつかの証拠を挙げる。

(1)自民党は2012年4月、改憲草案を公表したが、それに対して法律家を中心に「立憲主義違反である」との批判が高まると、自民党憲法改正推進本部事務局長として改憲草案の取りまとめの中心的役割を果たした磯崎陽輔はツイッターで、「時々、憲法改正草案に対して、「立憲主義」を理解していないという意味不明の批判を頂きます。……昔からある学説なのでしょうか」と呟き、驚くべき無知を暴露した。ちなみに、磯崎陽輔は自民党の中では「憲法博士」と呼ばれているらしい。
(2)憲法は権力者を名宛人とする権力制限規範であるから、現行憲法99条は、天皇以下公務員の憲法尊重擁護義務を定めているが、国民にはこうした義務はない。このこと自体、憲法とは統治者の権力を制限し被治者の権利を保障することを目的とするという立憲主義の現れである。ところが自民党改憲草案の102条は第1項で、「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」と規定しており、国民の憲法尊重義務を公務員の憲法擁護義務の前に持ってきている。この改正の意味についてジャーナリストの斎藤貴男のインタビューを受けた磯崎陽輔はこう答えている。「当たり前のことを書いただけですよ。……憲法はみんなで守りましょうというのは普通の話だと思います。……立憲主義なんて難しい熟語だけ出してけしからんと言われても、それは違うんじゃないの。まあ、それぐらいの話です」と。こうして再び、立憲主義に対する救いがたい無知を暴露したのである。
(3)安倍首相は2014年2月3日 衆院予算委員会で、「憲法について、考え方の一つとして、いわば国家権力を縛るものだという考え方はありますが、しかし、それはかつて王権が絶対権力を持っていた時代の主流的な考え方であって、今まさに憲法というのは、日本という国の形、そして理想と未来を語るものではないか、このように思います」と発言し、憲法と立憲主義に対する恐ろしいほどの無知・無理解を暴露した。西洋の近世絶対王政時代においても、「国王といえども神の法には従わなければならない」という近世立憲主義思想はあったが、市民革命を経た近代立憲主義は、人権保障を最大の目的として、国民主権に基づく国家権力をも制限しなければならない、という思想に転換したのである。そして、現代においても、人権保障こそ憲法の目的であることにはいささかの変更もないのであって、それを抜きに「国の形や理想と未来を語るもの」など立憲主義憲法とは何の関係もない。
(4)安倍首相は同年2月12日、衆院予算委員会で、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更をめぐり「最高責任者は私」「私が責任を持ち、選挙で審判を受ける」などと発言した。総理大臣が憲法解釈の「最高責任者」であるという、恐るべき思想を吐露したものであり、日本は立憲民主主義国家ではなく、首相独裁国家であるという宣言を行ったに等しい。
(5)衆院憲法審査会で3人の憲法学者が安保法案を違憲と断じた翌日の2015年6月6日、中谷元防衛相は、「現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけばいいのかという議論をふまえ、閣議決定を行った」、「憲法解釈の変更は政府の裁量の範囲内」などと答弁し、憲法が国の最高法規であるという立憲主義に対する無知と、立憲主義を公然と踏みにじる意図とを明言したのである。
(6)同月10日、3人の憲法学者が国会で安保法制を「違憲だ」と指摘したことについて、自民党の高村副総裁は、「60年前に自衛隊ができた時に、ほとんどの憲法学者が『自衛隊は憲法違反だ』と言っていた。憲法学者の言う通りにしていたら、自衛隊は今もない、日米安全保障条約もない。日本の平和と安全が保たれたか極めて疑わしい」と発言、憲法学者の違憲判断を無視して「何が悪い」と開き直った。
(7)同年7月10日、自民党のネット番組に出演した安倍首相は、自衛隊の創設時もPKO法案審議のときも、違憲の批判があったが、後になって国民から評価されていると述べ、違憲の批判を無視することを正当化した。前月の高村発言と同様の開き直り発言である。安倍首相はまた、集団的自衛権行使は許されないとの従来の政府解釈を変更したことについても、「状況が変わった中においては、ちゃんと閣議決定で判断をしているんです。そういう意味においては、立憲主義に沿ったものだと思います」とも発言、憲法学者が違憲と判断する内容でも、閣議決定さえすれば、「立憲主義に沿ったもの」だという、驚くべき倒錯した珍解釈を示した。
(8)同月26日、磯崎陽輔首相補佐官は、安保法案について「(従来の憲法解釈との)法的安定性は関係ない。……政府の憲法解釈だから、時代が変われば必要に応じて変わる」との仰天発言を行った。
(9)そして上記の2月3日の衆院予算委での稲田政調会長と安倍首相の発言である。言うまでもないことだが、ここまで憲法9条と乖離した現実を積み上げてきたのは、歴代自民党政権の解釈改憲である。そのうえ、それまでの政府解釈さえをも変更し、限定された集団的自衛権なら合憲だという、およそ通常の日本語文法からは理解不可能な解釈改憲を行い、安保法制を強行したのは安倍政権である。その責任を棚に上げて、憲法違反の現実を合憲化するために明文改憲が必要だというのである。これが憲法の破壊でなくて何であろうか。

 このように、安倍首相本人はもとより、安倍内閣の主要閣僚も安倍首相の側近も、立憲主義に対する無知と現行憲法に対する敵意を繰り返し表明している。これが安倍政権の本質である。すなわち、立憲主義の「り」の字に対する理解もないまま、ひたすら憲法を憎み、憲法を破壊する意図を公言し、実行する異形の反立憲主義内閣、それが安倍政権である。
(会員ブログより転載)

<以下は例会以後に発信したもの。次の例会での検討の対象>
  
緊急警告009号 憲法擁護義務違反の安倍内閣は総辞職に値する(3月7日)

 首相はかねてから改憲発言を重ねているが、この3月2日、参院予算委員会で「私の在任中に(改憲を)成し遂げたい」と明言した。首相は「自民党の立党当初から党是として憲法改正を掲げている。私は総裁であり、それを目指したい」と、総裁任期の残り2年半のうちに改憲を成し遂げたいとの意欲を示した。
 また、中谷元・防衛相も2月27日、民放のテレビ番組に出演した際、自衛隊を明確に位置づけるために9条改定が必要だとの持論を展開、3月2日の参院予算委でも、改憲の必要性を再び強調した。
 このような、安倍首相や安倍内閣閣僚による度重なる改憲発言は、国務大臣や国会議員をはじめとする公務員の憲法尊重擁護義務を定めた憲法99条に明確に違反するものである。こうした安倍首相以下、閣僚が繰り返し改憲発言を行う背景には、新憲法制定を活動方針に掲げる日本会議国会議員懇談会のメンバーが多数、安倍内閣の閣僚に含まれているという事実がある。
 今から60年前の1956年3月16日、安倍首相の祖父・岸信介らが国会に提出した「憲法調査会法案」の公聴会が衆院内閣委員会で開かれた際、公述人である法学者・戒能通孝都立大教授(当時)は、「内閣が国民を指導して憲法改正を企図するということは、むしろ憲法が禁じているところである」と明快に証言している(注)。
 このような明確な違憲発言を繰り返す安倍内閣は、即刻、総辞職に値する。

(注)このとき戒能通孝氏は、次のような陳述を行っている。
 「憲法の改正は、ご承知のとおり内閣の提案すべき事項ではございません。内閣は憲法の忠実な執行者であり、また憲法のもとにおいて法規をまじめに実行するところの行政機関であります。したがって、内閣が各種の法律を審査いたしまして、憲法に違反するかどうかを調査することは十分できます。しかし憲法を批判し、憲法を検討して、そして憲法を変えるような提案をすることは、内閣にはなんらの権限がないのであります。(……)内閣に憲法改正案の提出権がないということは、内閣が憲法を忠実に実行すべき機関である、憲法を否定したり、あるいはまた批判したりすべき機関ではないという趣旨をあらわしているのだと思うのであります。憲法の改正を論議するのは、本来国民であります。内閣が国民を指導して憲法改正を企図するということは、むしろ憲法が禁じているところであるというふうに私は感じております。(……)元来内閣に憲法の批判権がないということは、憲法そのものの立場から申しまして当然でございます。内閣は、けっして国権の最高機関ではございません。したがって国権の最高機関でないものが、自分のよって立っておるところの憲法を批判したり否定したりするということは、矛盾でございます。こうした憲法擁護の義務を負っているものが憲法を非難する、あるいは批判するということは、論理から申しましてもむしろ矛盾であると言っていいと思います」(1956(昭和31)年3月16日 第24回国会 衆議院内閣委員会公聴会。保阪正康『50年前の憲法第論争』講談社現代新書、2007年より引用)。

緊急警告010号 党利党略の衆院解散は憲法違反!(3月10日)

 安倍首相が、夏の参院選に合わせて衆議院を解散し、衆参同日選挙とするのではないかとの観測がこのところしきりと取り沙汰されている。3月2日付朝日新聞によると、首相周辺は「いまが憲法改正に踏み出す千載一遇のチャンス」と見て、参院選の獲得議席を少しでも底上げするため、政権与党に有利な衆参同日選が検討されている模様である。そして、そのために検討されているのが、消費税増税の再先送り案である。
 朝日新聞によると、首相はこれまで、消費税率の10%への引き上げは、「リーマン・ショックや東日本大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施する」と繰り返していたが、最近、「重大な事態」を「世界経済の大幅な収縮」などと言い換えるようになっている。そして、首相が1日、新たな立ち上げを表明した世界経済を分析する有識者会合は、最近の世界経済の変調を「大幅な収縮」と認定して、消費税の引き上げを再び先送りするための大義名分を整えるためのお膳立てではないかとの見立てなのである。そして、「予定通り消費増税をしたら景気が悪化して、衆院の解散はなかなか難しくなる。先手を打って早めに総選挙をやるのも一つの選択肢だ」という閣僚の言葉を紹介している。
 確かに安倍首相のやりそうなことである。首相は2014年11月18日、前回の衆院選から2年も経っていないにも関わらず、消費税増税の1年半延期と同時に衆院解散を表明した。これは、沖縄知事選で普天間基地の辺野古移転に反対する翁長雄志候補が当選した2日後、同年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が発表され、2期連続でマイナス成長となり、アベノミクスの行き詰まりが明白になった翌日のことであった。そしてそれから1年3カ月経った今日、アベノミクスの失敗はさらに明白となっているが、低所得高齢者への3万円バラマキや口先だけの「同一労働同一賃金」や辺野古工事中断などで目眩ましをし、さらに「消費税増税再先送り」を口実にした同日選突入の可能性は高いと見ておかねばなるまい。

 しかし、このような全くの党利党略に基づく衆議院解散は憲法違反である。
 憲法は第7条で、天皇の国事行為の一つとして「衆議院を解散すること」を挙げ、第3条で、天皇の国事に関するすべての行為は「内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ」と定めている。しかし、内閣が衆議院を解散できる場合を具体的に定めているのは69条だけであり、同条は、内閣が衆議院で不信任決議案を可決、または信任決議案を否決したときは、衆議院を解散するか総辞職するかを選ばなければならないと規定している。したがって、当会では、内閣が衆議院を解散できるのは69条所定の場合だけであり、同条に基づかない解散はすべて違憲であると考える(解散権の69条限定説)。
 ただし、実務や判例や最近の憲法学界の通説は、69条限定説を採っておらず、7条の「衆議院を解散する」天皇の国事行為に対する「内閣の助言と承認」に実質的な解散権を読み込むことにより、69条によらない解散も合憲と解している(69条非限定説=7条解散合憲説)。ただし、その場合でも、有力な憲法学説は、内閣がいかなる解散も自由になしうるとは解釈していない。むしろ、「解散は国民に対して内閣が信を問う制度であるから、それにふさわしい理由が存在しなければなら」ず、「内閣の一方的な都合や党利党略で行われる解散は、不当である」(芦部信喜『憲法』)とか、(国民の意思を問うような)「必然性が全然ないのに政権党の党利党略で解散するなどのことは許されない、とすべきである」(浦部法穂『憲法学教室』)などと説かれている。
 したがって、参院選での獲得議席増を目論む安倍首相が、同日選のために衆院解散を行うならば、69条限定説からはもちろん、69条非限定説に立ったとしても、権限濫用により憲法違反と言わざるを得ない。

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