完全護憲の会ニュース No.22  2015年10月15日

 さる9月22日(日)、港区・神明いきいきプラザ集会室で9月例会を開催、参加者16名。入会者 計44名。

            第21回  例会の報告

 草野編集委員長が司会し、まず岡部太郎共同代表(元『東京新聞』政治部長)からの政治現況報告(別紙1)があった。
ついで野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)からパンフレット「補遺(一試案)」(別紙2-2)についての報告(別紙2―1)があった。
 そのあと福田玲三共同代表(事務局担当)から事務局報告(別紙3)があった。

 これらの報告にたいする質疑応答は要旨次のとおり。
 ●後藤弁護士「S氏と回答側の双方に深刻な間違った見解がある。『憲法読本』(杉原泰雄)P225「象徴天皇制について」学んで欲しい。天皇の行為は「国事行為」に限定されているが、国会での「おことば」などはどうなのか? 私人としての行為、拡大される危険性。 天皇(皇族)には戸籍がない。氏(ウヂ)がない。選挙権がない。天皇はお飾りで、象徴天皇制を理解すべきだ」●野村共同代表「天皇の身分と職務、つまり私人と公務は分けて考えるべきだ。選挙もできる(参政権はある)。それは手続きの問題だ」● N「違憲の安保法案が強行採決で成立した。公布にあたっては天皇の署名がなされると思うが(4条、7条)、99条の憲法尊重・擁護義務に従って、署名を拒否できるのではないか?」●後藤弁護士「できない」●K「天皇は内閣の助言と承認に基づかなければならず、これを拒否できない?」●野村共同代表「署名を拒否したことある。日本政府が東京大空襲や広島・長崎への原爆投下を指揮したルメイ米軍指揮官に勲章を授けようとしたとき、これを拒否し、代理人がこれを行った」
●S「共産党が来年の参議院選に向けて選挙協力を打ち出した。評価できるか?」●野村共同代表「これまで共産党が全選挙区に候補者を立てるため、与党候補を利してきた。小選挙区制の場合、過半数獲得できないときは本来決選投票をすべき。外国にその例がある」●岡部共同代表「過去の社共共闘など、選挙協力の例はある。岡田民主党は選挙協力はやりたいはず。しかし、連合政権はあり得ない」●K「共産党の連合政府提起に括目した。民主党が政権交代した選挙では、共産党は300候補を半数にした。その結果の政権交代だった。共産党はこれまで、沖縄以外の選挙協力はやらないと言ってきた。今回、やっとめざめてくれたという感じ」●川本「共産党の今回の提起が実現すれば、現在連立与党の公明党のような役割を共産党がはたせるのではないか」●N「強行成立させた安保法制を廃止し、安倍政権打倒の国民戦線を作るべきだ。参院特別委員会の『採決』は存在せず無効。クーデターだ」

ついで例会初参加者二人が自己紹介。

 その後、後藤弁護士から「立憲主義の保障―憲法の番人はだれか?」について要旨(別紙4)に基づいて報告があり、最後にこれからの国民運動として①小選挙区制の変更(すぐには難しが)②衆参両院とも立候補に必要とされる供託金、小選挙区300万円、比例代表600万円の引下げ③特定候補の落選運動と押し出す運動、などが紹介された。

 この報告に要旨次の意見が出された。
 ●野村共同代表「供託金には立候補を制限する悪意がある」●K「供託金にはもともと人材を出させない意図がある。小選挙区制のもとでは選挙協力が必要だ」後藤弁護士「違憲審査では、具体的な案件がなければ判断を下さないとしている今の裁判所に頼るのは疑問だ」●T「初めてこの会に参加したが、集会やデモに参加したいと思っていても、電車賃もなくて参加できない下層の民衆がいること知って欲しい」●K「『フライデー』9月25日号に福島原発事故後の甲状腺ガン多発が報じられている。『週刊金曜日』9月11日号に沖縄基地を本土に引き取る運動が紹介されている」●N「9・19参院特別委採決はクーデタであり、無効だ」●T「8・30は国会に行けず地元藤沢の集会に参加した。最初10人くらい。最後は40人ぐらい集まって道行く人々に訴えたが、圧倒的に無関心の人々が多かった。この現状をどうしたら変えていけるのか教えて欲しい。」
 時間の制約で討議は以上で終了した。

       第17回編集委員会の報告      2015年10月1日

<出席>野村、O、K、S、草野、福田の6人

1.オブザーバーとして初参加のSさんからの3点の問題提起を受けて議論
 A 補遺(一試案)第99条について
 B ニュース21号(事務局報告)への意見、龍さんの問いに関して思うこと
 C S氏意見書への回答について

 Aについて
 ・補遺(一試案)第99条に「憲法が国の最高存在」とあるが「最高法規」とすべき。
 ※「最高法規」とすることに賛成多。起草者の野村共同代表もほぼ同意。
 Bについて
 ・龍平四郎氏の安保法案賛成を唱える人に「即答できる言葉がありますでしょうか」「教えて欲しい」との問いに対する、Sさんとしての回答。
 ・戦争は一度始まると簡単には終えられない。戦争は必ず、防衛、平和の名目で始まる事を知るべきだ。防衛力を高めるというが、その防衛戦には負ける可能性もある訳で、負けないためには抑止力どころか際限ない軍事装備が必要になり、かえって緊張は高まる。最後は核武装、核戦争、世界の破滅だ。
 ・憲法前文の平和の誓いを世界に広める事こそが世界平和を維持するのであり、過去の戦争惨禍の事実を真摯に受け止められないのであれば再び同じ惨禍を繰り返す事になるだろう、と憲法前文は言っているように思える。
 Cについて
 ・4条1項の国政に関する権能とは、旧憲法1章に定められるような立法権や陸海軍の統帥など政治を執り行う権能を有しないということである。
 ・国政に関する権能をもたないことは旧憲法との違いであって、人権の問題とは別であり、国民より地位が下だと言うことはできないのではないか。
 ・皇室には内廷費、皇族費などの私的活動に関わる予算もかなりの額であることも考えると、差別があるとしても、国民より下とは言えない。

 ※上記につき、この問題でのこの間の編集委員会内部の意見も交え、かなりの時間を費やして議論。「天皇は基本的人権が奪われた存在」であるとしてS氏見解に同意する草野編集委員長以外の全編集委員がほぼ上記Sさん見解に賛意。
この結果、先に提案した「草野回答案」は棚上げし、改めてK編集委員が回答書を執筆することとなった。(K委員多忙のため、後に福田委員に交代)

2.パンフレット配布活動について
 ① 各国大使館への配布活動について
  ・先に在京大使館をリストアップし、そのすべてとするか、一部選別とするかの作業にとりかかるとしたが、遅れているので早急に結論を出   し、選別は野村共同代表に一任する。発送は事務局が担う。
   http://www.plazahomes.co.jp/info/embassy/
  ・在京大使館への配布に伴って、パンフレットの「発表にあたってのごあいさつ」を英文化し、その翻訳をT氏に依頼した。(編集委員会後   の10月2日、T氏から出来上がったとのメールあり。)
 ② 先に大学各部局関係への送付はしばらく見合わせる、としたが、パンフの残部がかなりあるので、これを有効に活用するため、あらためて大  学各部局送付先を選択する。(担当決めるに至らず)

3.「パンフ補遺(一試案)」(野村試案)とパンフ追補版について
 ① 「パンフ補遺(一試案)」を第21回例会・勉強会に提示したので、今後は編集委員会のみの議論とせず、広く会員を含めた検討を加えるものとする。会員の皆様の積極的な参加を期待したい。
 ② 「パンフ補遺(一試案)」は全般にわたっているので、先に提案した「追補版」(時宜に適したテーマにしぼった、単価100円以内の集会でも無料配布できるような薄い冊子形式)にはおさまらない。
 ③ パンフ追補版に取り入れるテーマは、「パンフ補遺(一試案)」の検討を通じて抽出することと、併せて、会員からの新たな提起も含めて検討し、取り入れることとする。

4.次回例会における福田共同代表の戦争体験報告について
 ・福田共同代表から、次回例会報告に関しての考えが提起された。
 ・自分の戦争体験はあまりドラマチックではないので、治安維持法の犠牲になった若者の事例を紹介したいとのこと。
 ・これに対して、その紹介もあっていいが、やはり福田さん本人の実体験を語っていただくべきとの意見が出された。

5.その他
 ・財政問題に関連して、来年の1月総会で決めることだが、年会費を集めるようにしてはどうかとの意見出された。(たとえば年会費1~2千円程度の)
 ・例会・勉強会の参加会場費を100円程度いただいているが、会場によっては不足する。カンパ形式にしてはどうか、などの意見も。
 ・ボスニヤ・ヘルツェコビナ大使館からパンフ代300円が届いた。(野村共同代表が関係者にパンフ届けた結果)

6.当面の日程について
 ① 第22回例会 11月1日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 ② 第18回編集委員会 11月2日(月)14:00~ 大阪大学東京オフィス
 ③ 第23回例会 11月22日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 ④ 第19回編集委員会 11月25日(水)14:00~ 大阪大学東京オフィス
 ⑤ 第24回例会 12月20日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
 ⑥ 第20回編集委員会 12月21日(月)14:00~ 大阪大学東京オフィス

    次の例会・勉強会のご案内

 日時 11月 1日(日) 13:30~16:30
 場所  港区・三田いきいきプラザ・「憲法研究会」
    〒108-0014 港区芝4-1-17    電話03-3452-9421
    JR 山手線・京浜東北線、田町駅西口から徒歩8分
    地下鉄 三田線・浅草線 三田駅 A9 出口から徒歩1分
 報告   政治の現況について   岡部太郎(元『東京新聞』政治部長)
 違憲の現状について   野村光司(「パンフレット」原案起草者)
 事務局報告           福田玲三(事務局担当)
 戦前・戦時の回想     同上
 討議  報告および提案への質疑、意見
 会場費  100円(できれば、ご参加の予定をメール、葉書あるいは電話などで予めお知らせください。)
 (連絡先 〒140-0015 東京都品川区西大井4-21-10-312 完全護憲の会
  電話03-3772-5095 メール:kanzengoken@gmail.com
 なお本配信ご不用の方は恐れ入りますが、その旨ご返信ください。)

<別紙 1>
       政治現況報告   2015年9月27日

                   岡部太郎共同代表(「東京新聞」元政治部長)

 2015年9月19日は、日本現代史の中で特筆される日になろう。戦後70年続いた専守防衛、外国に軍隊を送らない、と云う平和の誓いが破られ、世界中のどこででも米軍や友好国のために、集団的自衛権を行使できる普通の国になったのだから。安倍首相の強引で独善的な安保法制の改定は、憲法調査会で三人の参考人全員が違憲の判断をしたところから、様相がかわった。それまでは国会に提出された安保十二法案の条文解釈など矮小化されていたものが、集団的自衛権は憲法違反と参考人の三人の学者全員が発言、根本の本質論になったのだから。
 それでも安倍首相は憲法の範囲内と終始強弁。法曹界ほとんどの反対や、世論調査で国民の6割が反対、8割が理解できないと云う状況の中で、衆参両院で強行採決、90日と云う最長の会期延長の中で成立させてしまった。
 国会の回りに自然発生的に集まった市民のデモや全国に広がる反対の中で、「専守防衛はいささかも変更ない」「戦争に巻き込まれることは絶対にない」と断言、安保法制が国民に十分理解されていないことを自ら認めながら、「国民には今後も説明し、解ってもらえる」と全くの無責任発言。法案審議の初めに、「国民にはよく説明する」といいながら、結局、最後まで納得のゆく説明はできなかった。
 集団的自衛権発動の具体例として、「米軍艦に日本人の老人や婦人、子供が乗っている時の援助」と「ホルムズ海峡の機雷除去」をあげていたが、野党の追及で、どちらも現実にはあり得ないことと自ら認め、根拠にならないことをさらけだした。 最後には具体例を説明できず、「諸状況を政府が総合判断する」白紙委任せよと言わんばかり。根拠のない安保法制が必要なわけがない。全くの欠陥商品であることを暴露した。
 採決直後の世論調査(共同通信)で①安保法制、反対53%、賛成34% ②審議が尽されたと思うか、思わない79%、思う14% ③安倍首相は国民に十分説明したと思うか、思わない81・6%、思う13% ④憲法違反と思うか、思う50・02%、思わない31・8% ⑤自衛隊のリスクが高くなると思うか、思う68%、思わない27%――この結果安倍内閣の支持率は、支持38・9%、不支持50.2%と、どちらも最低、最高になった。
 この間、安倍首相は9月8日、無投票で自民党総裁に再選された。野田聖子さんが立候補を表明したが、造反者を締め付け20人が集まらずに断念した。特に宏池会(旧池田派)自民党の良心、絶滅危惧種は、前代表古賀氏が若手を応援に出そうとしたが、現代表の岸田氏が前夜若手をカン詰めにして造反を食い止めた。無投票にこだわった安倍が岸田に次期総裁を約束して、説得したとの情報がある。男はだらしない。
 さて二期目の安倍政権だが、月末には国連演説(当然オバマ米大統領に会って慰労されるだろう)がある。米国は国防省と国務省右派、アーミティジ元次官補などが今回の日米安保法制を推進し、それに安倍が乗った。帰国すれば党役員、内閣改造で基本は変えないと云っているので谷垣幹事長、二階総務会長、麻生副総理、岸田外相、菅官房長官らは残留だろう。当面は経済問題に全力をあげるだろう。しかし沖縄問題、TPP、消費税減額要求の公明党、原発問題などの難問があり、安保反対勢力のデモは、今後機会あるごとに表面化しそうだ。
 今国会は初めは護憲、議会制立憲主義が問題にされ、終りの方では民主主義の危機という基本・根幹に戻った。後藤弁護士は憲法の運用で日本人は落第と言われているが、たしかに政治部45年をふくめて外から60年近く見て、日本の民主主義はまだまだの感がある。50年前パリ特派員として、その国の政治は国民の民度の上でも下でもないことを知った。権利は自分たちで勝ち取ったものという意識がフランスの庶民一人一人に染み込んでいる。フランスで国民議会選挙は2回投票制で、単独過半数がない場合、上位2候補で決戦投票が行われる。フランス人は最初から本命には投票しない。権力がおごり腐敗することを知っているからだ。
 国会閉会後の会見で、「安保法制は『戦争法』だとのデマや悪意のレッテルが張られた。しかしアジアでも欧米でも評価されている」と安倍首相は強調した。しかし、かんじんの日本で8割が理解していない。日本国民の民度をそんなに低いと思っているのか。一体どこの国の総理大臣か、一日も早く退陣させたい。

<別紙 2―1>
   パンフレット「補遺(一試案)」について  2015年10月7日

                 野村光司(パンフ『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)

 多くの国民の反対と憲法学者の違憲批判の中で、現政権は戦争法案を強行採決によって可決成立させたことは「完全護憲の会」の立場からは遺憾の極みである。しかしこれは決定的な最後ではない。日本国憲法は厳然として一字も改悪されることなく、そのまま存在し、闇の世界に煌々と光を投げかけて、現国政の非を照らし出している。
 この間で思い起こす首相の言葉がある。「多くの学者の批判があることは承知している。しかし、かって(祖父岸首相の時代に)日米安保が猛烈な批判を浴びたけれども今や、これは日本国内の殆どが支持しています。」、「私は最高責任者(権力者)だ。総理大臣の私は、合憲だと確信しています」と。憲法学者や元最高裁判事、法制局長官が何と言おうと彼らは野にある人、総理大臣の私の意見がそれに優先するのだ」と云うのである。
 事実、野党も国民も政権の暴走を攻めあぐねている。安倍首相は天才的政治家ではない。かって小泉首相も、参議院で郵政法案が否決されて衆議院を解散する暴挙を行った。複数件の訴訟が起こされたものの、いずれも上告棄却となり、首相になった「権力者」は、憲法に何ら考慮を払うことなく安心して暴走できる体制になっている。ヒトラーの「条約も憲法も一片の紙切れ。民族が優先する」や、東条首相(?)の「黒であっても白と言って断行すれば、国民は付いてくる」を思い起こす。
その原点は、われわれもパンフレットで指摘したように、1960年田中耕太郎最高裁長官の「統治行為論」である。田中最高裁は砂川判決で、米国政府や外務大臣と事前に協議して、東京地裁の違憲判決を超越上告させて、全裁判官一致で「首相の統治行為については、国民の誰が違憲、違法として裁判所に訴えても、裁判所は受理しない」との趣旨の判決をし、これが確定した判例として維持されていることにある。
 何の地位もない国民も、権力の違法、違憲にあったとき、これを裁判所に訴え、筋が通れば一市民で権力の行為を否定して救済されるのが、憲法が求める司法権の作用である。憲法32条の「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」の条文も、81条の「最高裁判所は、一切の法律・・処分が、憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」の条文を最高裁自らが無視して、行政権にべったりと追随した判例を作ったのであった。
 更に本件では裁判前に、日米の政府と事前に協議しており憲法76条の、「すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」との規定にも反する。つまり最高裁が、行政権を憲法、法律に優越する地位に置き、司法権自らの司法作用を放棄し、行政権にひれ伏した悪例を作ったのである。
 先にわれわれは、憲法7条の「栄典授与」が「国民のために」とあるのに、戦争中、全国民生命、住宅を塵芥の如く焼き尽くす作戦を立案し、指揮したカーティス・ルメイに勲一等旭日大綬章を授けた政権の非を挙げたが、この憲法破壊、行政追随、国民無視の判例を作り、憲法擁護、人権尊重の最高使命を持つ最高裁が、その大使命に背き、憲法を無視して行政に奉仕した田中耕太郎長官には、裁判官では唯一、最高の勲章「大勲位菊花大綬章」が授けられていることに注意を払いたい。
 この憲法破壊のA級戦犯ともいうべき田中法廷が遺した「統治行為論」に対し、すべての裁判官、弁護士の法曹は、是非、蹶起して司法の良心に戻ってこの悪判例を変更して呉れれば、既に成立した戦争・違憲の法律も、憲法98条で「違憲無効」として雲散霧消させられるべきものである。
その答えは、われわれが3月に発行した「パンフレット」に殆どすべて記載されている。われわれの会がこれからなすべきことは、全力を挙げてこれを世の人々に周知することである。顧みると、左翼、革新、護憲勢力と言われる多くの人々の献身的努力に関らず、政権の画策で違憲の国政が着実に進行し、護憲勢力は衰退の一途をたどらされている。われわれはその反省で、安倍政権の「(戦前)日本を取り戻す」のではなく、憲法制定時の「日本国憲法の求める国の形」を「一切の政治勢力とは独立して、ひたすら憲法の条文、否、前文にある理想のすべてを最高の権威」として、しかもシングルイッシュ―に偏らず全国政において、人々が権力に虐げられているすべての問題を提起して、その憲法的解答を示すことである。
 パンフレット発行後も、政権は続々反憲法的政治を打ち出している。本日、当方でキャッチしている  「日本国憲法が求める国の形」補遺(一試案)を配布したがこれは当方で感じた仮の問題であり、これを誘い水として会員諸氏から遠慮なく問題の提起をして頂き、全員の討議を経て、取捨選択の上、会の意見を順次確定し、世間に発表し、国民の期待に応えて行きたいと考えている。
 なおこの際、例えば二重国籍問題など、関係者が少数だから、これをマイナーな問題として排除するのではなく、個々の人権が侵されており、或いは、権力の越権があれば悉く取り上げて、人々の信頼に応えて行きたい。
 政治による人民への侵害の問題が新たに起きている。これらにも対処して行きたい。例えば今、沖縄では、知事が非常な決意で沖縄のために政権と闘っている。沖縄は400年間ヤマトの植民地的な待遇を受けており、独立によってのみ国連憲章の「民族自決権」が獲得できるだろうことも、われわれの考察から排除しないことにしたいと考えている。

<別紙 2-2>
「日本国憲法が求める国の形」補遺(一試案)2015年9月6日

野村光司共同代表(『日本国憲法が求める国の形』原案起草者)

憲法前文
 第1項「日本国民は、・・国会における代表者を通じて行動し、・・政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることの無いように決意する」
国政権力の源泉は、国民が選挙した代表者よりなる国会に発するものであり(第41条参照)、かっての悲惨な戦争が、すべて行政府のみによって引き起こされたことを銘記し、政府独自に国民を縛る権能を決して与えてはなるまい。行政権において法律の根拠なく、国民の権利を制約することがあれば、憲法第12条が「自由及び権利は、国民の不断の闘争によって維持する義務がある」とするよう、国民はこれに抵抗する義務がある。

第2項「人間関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」
(現行建国記念日の改定)
 憲法は個人の「人間関係の崇高な理想」(high ideals controlling human relationship)と国家間の理想とを区別していないが、この理想は「心の中に人間愛、口に出す言葉にウソがない」ことに集約されよう。我が国の国家・社会の生活には偽装が充ち満ちており、その代表として建国記念日がある。全くの架空である紀元前660年2月11日を建国とすることは「(偽装国家日本の)建国記念日」としているので、これは改めねばならない。

同項「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの生存と安全を保持しようと決意した」
(永世中立宣言)
 われわれが既に国連軍の存在に希望を掛けたところであるが、なお敗戦当時に国民の多くが考え、連合国からも示唆された「永世中立宣言」も考えるべきだと思う。スイスは 1815年に、オーストリアは1955年に、トルクメニスタンは1995年に、それぞれ周辺諸国との間で永世中立宣言をして、それぞれ200年間、60年間、20年間の全き平和を維持している。このためには先ず周辺諸国との間で国境問題と歴史問題とをクリアして、これらの国を我が国との関係で「平和を愛する国」としなければならないが、我が憲法はすでにその解決を用意している。なお、このためには米軍駐留の問題もクリアしなければならないだろう。

同項「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
(難民受け入れへの努力)
われら日本国民は先の大戦で、ほとんどすべての国民が殺戮の戦場に動員され、たとえ国内に残っても爆撃で肉親を失い、恐怖にさいなまされ、飢えに苦しみ、家を焼かれ、山野に逃れ、困苦のなかに生き延びた経験を持つ。現在、中東に、アフリカに、アジアに、為政者たちの権力闘争の故に、国内、国外に難民となって流浪する無数の人々を見ている。これらの為政者の戦いを止め、平和をもたらす努力をするとともに、不幸にして難民となった人々をその恐怖と欠乏から救う努力をせねばならない。日本はこれらの難民を受け入れることに極端に消極的であることを国際社会から非難されていることに鑑み、その政策を抜本的に改め、戦乱が収まるまで安息の地を提供しなければならない。    (参考)ドイツ憲法16条2項「政治的に迫害された者は、庇護権 (Azylrecht) を有する」

(武器の製造、輸出の廃絶)
 警察は国民を救うため犯罪者を検挙し、裁判にかけるのを目的とするが、軍隊の兵器はひたすら人間を殺すために用いられる物である。これを製造し、販売し、輸出することは、いわゆる「死の商人」であって、どこの国民をも恐怖に追い込む武器は、製造し、販売し、輸出してはならない。

第3項「「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」
(敵味方慰霊)
 日本が周辺諸国を侵略したことは間違いない歴史的事実であり、1974年の国連総会決議「侵略の定義」からもそれは言える。われわれは侵略された側に立ってその気持ちを察しなければならない。例えばわが国が韓国に行った数々の非行、皇后を殺害し、総督政治を布き、政治的権利を全面的に奪い、日本語を強制し、日本名に創始改名を強いたことを反転して、日本の皇后が殺害され、韓国軍人を日本総督と仰ぎ、朝鮮語を強制され、朝鮮風に創始改名させられ、日本女性を韓国軍人の慰安婦に動員された屈辱を思いやらねばならないだろう。ドイツがやったように首相が被害者の記念碑に跪いて謝罪し、被害者に十分な補償をすべきことである。また戦争被害者の慰霊については、我が国には日本軍人の慰霊のみならず、日本軍に殺された敵方についても慰霊する「敵味方慰霊」の風習の多くの例を持つ。最近は沖縄の「平和の礎」に見るのみである。日本の戦争によって死んだ敵方の犠牲に対しても、併せて慰霊する行事が無くてはならない。

憲法本文
第7条第7号「国民のために栄典の授与を行う」
 佐藤内閣のとき、カーティス・ルメイ米空軍将軍に勲一等旭日大綬章を授与した。ルメイは、45年の東京大空襲等、それまで軍事施設を中心に爆撃していたのを全国諸都市に無差別焦土作戦を建言し実行、数十万の同朋を殺害し、家屋を消滅させた敵将軍である。これに最高級の叙勲をしたことは、栄典法の制定が政権の恣意ではなく国民的見地からいかに必要かを示している。
 文化勲章、国民栄誉賞、いずれも政権の恣意で行われている。文化も国民的栄誉も、その優劣を国家権力が判断すべきものかどうかも疑問がある。すべからく民間に任せて政府としては内閣賞勲局の存廃を含めて抜本的に整理すべきものであろう。

第9条第1項「武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
(集団的安全保障は明白に違憲)
 外国軍と共に国外で行使される武力は、国内事件ではなくすべて国際紛争に対処するものであって当然に本項違反である。現政権が目論む米軍との集団的安全保障は、ほぼ米軍日本人部隊として参戦するものと言える。フランス外人部隊、インドネシア兵補、米軍二世部隊などは、外国主力部隊に「植民地兵」として参戦するのであって、自衛隊員の生命と日本国の血税を米軍に無償で提供する現政権の政策は、米議会ではスタンディングオベーションを得るのは当然で、一種の「売国的行為」と言える。

第10条「日本国民たる要件は法律で定める」
(国際結婚の子は当然二重国籍を認められる)
 国籍取得の条件は法律で定められるが、その法律は第13条の規定によってすべての人に個人としての尊重が払われねばならない。国際結婚は益々増加しておりいわゆる混血児も多く存在するに至っている。これらの子供にとって、両親それぞれの国籍は本人のアイデンティティにとして尊重されねばならない。往時は国家間の戦争によってどちら側で戦うかで重要な意味を持ったが、戦争を廃絶した日本国憲法下のわが国ではこの配慮は殆ど必要が無い。双方の国を愛し、両国の平和を求める気持を尊重して二重国籍を認めても不都合なことは殆ど無いと思われる。

第14条「法の下に平等」
(賭博場経営における平等)
 刑法では賭博場経営を犯罪として禁圧するが官僚立法によって経営される賭博は、競馬、競輪、競艇など当該官庁の利権として許されている。更にパチンコは当該犯罪取締り当局の協力によって、法的根拠もなく巨大賭博産業として成立している。「法の下の平等」は、法律さえ作れば回避できるのではなく法律自体も平等でなければならない。賭博関連の政治はカジノ法案を含め混乱を極めている。全体を見直して平等なものにしなければならないが、巨大すぎて改めて禁止するのは困難である。一旦、すべての賭博を自由化して、国論の統一を見てから新たに取締法を制定するのも一案であろう。

「性別により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」
(女子クォーター制は違憲)
 女子を男子に比べて不利に差別する事案があれば国はこれに制裁を加えて是正さるべきであるし、月経、出産など現実の不利があるときもこれを救済することは必要である。しかし「女子」であることだけで、これを男子より優遇するのは違憲である。

第15条第1項
「公務員を罷免することは、国民固有の権利である」
(公務員弾劾法の制定)
 裁判官の身分は、憲法78条により、その身分は一般行政公務員より遙かに厳重に保障されている。しかし最高裁判所裁判官は憲法79条第2項以下で国民の審査によって罷免されることが規定され、また一般裁判官も裁判官弾劾法第15条によって「何人も、裁判官について弾劾による罷免の理由があると思料する時は、訴追委員会に対し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる」として憲法15条に定める「国民固有の権利」に配慮されている。しかるに行政官僚については国家公務員法に基づき任命権者が懲戒処分として免職の処分もできるが、一般国民からの罷免の請求は国家公務員制定当初は「公務員の弾劾については別に法律で定める」としていたものを、やがて官僚起案の法律でこの条文は削除された。官僚は永く「お上」として人民に君臨し、人民からの批判は往々これに報復を加えて来た国情から削除されたものである。立法権は国会に専属し、国会は国民が有する官僚に対する固有の罷免権が適切に行使できるよう立法措置を講じなければならない。

同条3項「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」
(選挙権は公権であり、義務を含む)
 例えば国会議員の選挙で投票する場合、個々の有権者は、自らの私益のために投票するのではなく、国民の代表者たるに適した国会議員の任命に参画する公権である。従って権利であるとともに、公益のために賢く選ぶ義務がある。若し常に自分の都合で常に棄権する者があるとすれば彼は「全体の奉仕者たるべき公務員」になる資格が無い。投票したかどうかは選挙管理員会において把握されているので、中央、地方の公務員の採用に当たっては、棄権常習者を受験資格から排除すべきである。公務員が棄権しなければ一般国民も棄権をしなくなる。

同条第4項「投票の秘密は、これを侵してはならない」
(出口調査)
 マスコミが出口調査と称して、誰に投票したかを聞きただすことは本条に反する行為であるし、開票早々に候補者の当落を発表することは、公の選挙機関の多大な労力を侮辱するものであるから出口調査は禁止すべきである。

第20条第1項第1文「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」
(A級戦犯の分祀を求めることはできない)
 宗教団体である靖国神社がA級戦犯も神と崇めるのは自由であり、国や第三者が「分祀」を求めることはできない。近隣諸国との関係では、首相その他の公務員が本条第3項により、参拝しさえしなければ済むことである。

(植民地兵の分祀も求められない)
 宗教団体などが何を神として尊崇するかはその宗教団体の自由である。宗教はそれを信じない者にとっては何の効果もない。「丑の刻参り」が秘かに行われる限り何らの犯罪も構成しないと同じく、他人はこれを放任する他ない。悪魔扱いを公然とされれば名誉棄損罪などの犯罪を構成すると思われる。

第21条第1項「一切の表現の自由は、これを保障する」
(公の施設の利用に当たって思想上の制限を加えてはならない)
 自治体の公民館の利用について政権批判の集会に対して「政治的」を理由にこれを拒否する例が散見されるが、地方自治法10条2項の定める通り、住民は自治体の「役務の提供をひとしく受ける権利を有する」のであって、思想の内容によって制約を受けることはない。
(参考)ドイツ基本法第8条「すべてのドイツ人は、届け出又は許可なしに平穏に、かつ、武器を携帯しないで集会をする権利を有する。屋外の集会については、・・法律の根拠に基づいてこれを制限することができる」

(政府は外国での民間人の言論に非難を加えるべきではない)
 言論の自由は、日本国民に対してのみならず外国人に対しても尊重しなければならない。外国の民間人が慰安婦像を建てようが、領有権を主張しようが、彼らの言論に対して我が政府機関が居丈高に非難することは、却って日本の道徳的権威を落すだけである。
ロシアの高官が北方四島に、韓国高官が竹島に上陸しても、彼らがある程度の領土権を持ち、かつ、実効支配中である限り、領域侵犯と非難すべきではない。無益な非難よりは速やかに領域確定の外交交渉をなすべきである。国連事務総長の中国パレードへの出席に抗議を申し入れるのも事務総長に対する云われなき非難である。

(教科書検定は検閲に当たる)
 検閲とは出版物を発行する前に当局に審査され発行の是非を決められるもので、教科書会社が当局の検定を受け、結果によって販売が差し止められることは本条が禁止する検閲に当たる。この検閲制度により若者が日本の正しい近代史が教えられず、近隣諸国との平和が破壊されている現実がある。最高裁の判例では、検定が通らなくとも第三者にで売れるから合憲とするようであるが、正に情報の受け手である学校への販売を許されないのであれば、本条が禁止する検閲に当然該当する。

第22条第1項「何人も職業選択(営業)の自由を有する」
(経済制裁はしない)
 北朝鮮との間で交通、貿易の制限が厳しいが、善意の中小事業者の営業権を阻害することが大きく、政治的効果も見ていない。自由に貿易させて、日本海側の経済の沈滞を止めねばならない。

第2項「何人も外国に移住する (move to a foreign country) 自由を侵されない」
(出国の制限をしてはならない)
 本項は、住居を永久的に移転する移住のみならず、外国への旅行を含めてその自由を保証したものである。ジャーナリストが取材のためシリアに出国しようとしたところ、政府はその旅券を返納する命令を出して阻止したが、外国人の入国は一定の制限があっても、出国は完全に自由とすべきである。政府は本人の危険を慮り、かつ、外国で人質になった場合、その救出に多大の困難が伴うことを配慮するものであろうが、外国で犯罪に遭った場合、自衛隊を派遣するなど直接的な救出はできず、自己責任の原則を維持する他は無い。「政府が危険と考えれば、いつでも国民の自由を制限できる」とすることは、政府が政治上危険と判断する人物もまた自由に拘束できることになる。
 北朝鮮拉致被害者が日本に来て再び北に帰って向こうの家族と落ち着き先を相談するときに、政府間の約束に反して「本人の意思に関らず出国させない」措置を取ったことは当時の官房副長官の権力取得の契機とはなったが、政府間の約束をこちらが破ったことになり、その後の交渉を困難ならしめている。すべからず被害者には両国往来の自由が確保されるべきものであった。

第23条「学問の自由はこれを保障する」
 大學の自治は不可侵?
 現政権は、大学に対し、行事ごとに日の丸を掲げ、君が代を斉唱することを求めた。学問の自由が大学の自治に直結するかどうかは検討の余地はあるが、大学における研究活動と教育活動ともに無条件に干渉を控えるべきである。

(文系予算の削減)
 文科省から大学に文系学部の縮小、予算削減の通達があった。太平洋戦争が終盤近くなって、文系学徒の徴兵猶予が取り消されて学徒出陣となり、理系学生は兵器の開発に向ったのと同じ時代を招来しようとしているように見える。政治、哲学、社会の真実を究める学問は政治を批判するものとして削減を図っているようであるが、国民の文科的基礎を破壊する政治と思われ、これは阻止すべきである。

第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 国は、すべての生活部面において社会福祉、社会保障、及び公衆衛生の向上及び増進に努めねばならない。」
(地球温暖化対策)
 夏の猛暑は年々激しさを増して、異常気象による災害が多発し、多くの人が熱中症に苦しんでいる。その原因は二酸化炭素を主とする地球温暖化ガスの排出であることは明らかになっている。火力発電所の抑制、過度の自動車優遇措置の排除、そして充分抑止するに足る炭素税を課するなど、抜本的な措置を必要としている。

第26条「すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。すべて国民は、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う」
(政治教育)
 選挙年齢が18才に引き下げられ、学校教育において良き有権者を養成する必要性は高まった。政権筋からはこの教育に当たり偏向教育をする教員を処罰すべき旨の意向が示されている。教育は権力が望むところを国民に教え込むのではなく、生徒本人の幸福の為の権利として規定されている。従って政治教育も憲法第12条で定めるよう、その権利を不断の努力で保持させ、また97条で人類が獲得した基本的人権を日本国民に永久の権利として信託されたとし、また国の公務に服する場合もこの憲法99条で憲法を尊重し擁護する義務を学ぶものでなければならない。従って憲法を正しく教えることは学校の政治教育でも必須のことであり偏向教育として罰せられるものではない。憲法を曲げて人権を否定するような教育こそ、偏向教育として罰せられねばならないのである。日本でもアメリカでもその国民となる帰化の許可にあたっての宣誓は、「日本国憲法及びその他の法律を遵守する」となっている通りである。
(いじめの撲滅)
 いじめは学校現場で広く存在し、被害者個人の人格の尊厳を根底から破壊し、しばしば死に至らしめる重大な犯罪行為であり、教育現場にとっても、国民に必要な教育を授ける施設たり得なくなる。学校はしばしば被害者に対して転校を勧めたり強くなれと教訓を与えるが、国家権力は先ず強制力を用いて加害者の加害行為を鎮圧して被害者を救済し教育の場を回復する責任がある。すなわち学校当局に懲戒権を認め、懲戒を担当する教員を指定し、或いは専担の警備員を置いて、苛めの探索と加害者の矯正に当たらせねばならない。
またいじめは、「村八分」と同じく、加害者・被害者の関係を解消させ難い閉鎖社会で起るものであり、この閉鎖性を打破することも重要である。すなわち憲法が求める「普通教育を受けさせる義務」とは、必ずしも一定地域の生徒をすべて同じ学校に行かせることではなく、一定の学習基準を充たす学習指導要領を遵守すれば、公私立を通じて複数の学校のいずれかに就学する自由を与えるべきである。

第29条「私有財産は正当な補償の下にこれを公共の為に用いることができる」
(領土を譲歩して平和が回復させる場合の補償)
 択捉・国後や竹島は、ロシアや韓国の領有と認めて平和を回復した方が、公共の利益は遙かに大きいが、これに損害ありとする者は、本条を準用して補償すれば、僅かな譲歩で大きな平和を獲得する国益に適うことを知るべきである。石橋湛山は大正デモクラシーの頃、朝鮮・満州の植民地は放棄した方が遙かに国益に適うと論じたものであるが、これに倣うべきである。

第31条「何人も、法律の定める手続きによらなければ刑罰を科されない」
(被疑者呼ばわりの禁止)
 対日平和条約で我が国が遵守を約した世界人権宣言では「公開の裁判で有罪の立証があるまでは無罪と推定される権利」を定めている。捜査段階で検挙されても無罪になる事件も多々あり、警察の捜査で直ちに「容疑者呼ばわり」をされるのは、法定外の制裁を受けていることになる。肩書がある人に対しては有罪が確定するまではその肩書を用いるべきである。また軽微な行政規則違反で名前をマスコミに公表するのも、法定されざる刑罰となり違憲であろう。

第66条第2項「国務大臣は、文民でなければならない」
 「自衛官を大臣にしてはならない」
 現政権には自衛官出身の防衛大臣が戦争法案成立に努力しており、本条の合理性を示ししているところである。

第73条「内閣は、左の事務を行う」
(官房長官の記者会見)
内閣官房長官が記者会見で、国会における審議状況、政治状況について語ることは越権である。

第80条「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれ任命する」
(裁判員は裁判に関与できない)
 アメリカ憲法第3章第3条で「すべての犯罪の審理は陪審員をもってする」との規定があるが、日本の裁判員は憲法に規定が無く、法廷を構成することができない。

第81条関係
「最高裁判所は、一切の法律・・・又は処分が、憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」
(「統治行為論」を許さない)
 田中耕太郎を長官とする最高裁判所は、1960年「統治行為論」を持ち出し、政権が統治行為として判断する行為に対する訴訟は、裁判所がこれを受理しないという、国民の権利を確保する裁判所の司法権を全面的に抹殺する恐るべき判決を出し、以後、これが踏襲されている。よって現首相の集団的安全保障論を殆どの憲法学者、最高裁長官、法制局長官が違憲と断じても「私が国の最高責任者(最高権力者)、総理大臣の私が合憲と信ずる」と称しても何人もこれを司法の場で覆すことはないとの安心感によって暴走を重ねている。すべての裁判官、弁護士は、国民の権利を守るためこの判例を覆す最大限の努力を傾けるべきである。

第84条「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには法律によることを必要とする」
(租税特別措置法は全廃)
 憲法14条は「すべて国民は法の下に平等」たるべきことを要求している。たとえ法律で規定した税法であっても、他の者と平等の条件で税が定められていないとなれば「法の下に平等」とは言えない。所得税法、法人税法など基本税法は、原則として課税要件、税率などが規定されているが、租税特別法にはこれを大きく離れて政治家や官僚の「お友達」の業界、企業には様々な免税を施し、日本一の儲け頭も殆ど課税されていない不公平が多々ある。すべからく租税特別措置法は全廃すべきものである。

第90条「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査・・しなければならない」
(官房機密費も検査すべし)
 首相、官房長官が支出する「官房機密費」は、領収書も不要、検査もしない慣例が続いているようであるが、これは「内閣から独立の地位を有する」(会計検査院法第1条)立場からも会計検査院は厳正に検査し、国民の血税の使い方について国民全体の立場から不適正なものがあれば、すべてを外部に公表するかどうかは別として矯正の措置を講じなければならない。トップの税金に対する姿勢は全行政機構に影響するからである。

第95条「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、・・その地方公共団体の住民の投票に於いてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することはできない。」
(沖縄関連諸法には改めて住民投票に付する)
 沖縄は1609年、薩摩の侵攻を受けて以来400年間、常に本土から植民地的な待遇に甘んじてきたところ、米軍基地を辺野古に新たに建設されるに至って県民も本土政府から独立して自己を主張するようになった。沖縄には沖縄振興開発特別措置法や米軍用地特別措置法など、沖縄にのみ適用される特別法が数個存在する。これらは憲法の本条に従って住民投票に掛け、全住民が納得できる特別法かどうかを確かめる必要がある。
条約についても内容が沖縄のみに過重な負担を掛けるものであれば、国会承認の前に沖縄県民の住民投票に付すべきものと思われる。

第98条2項「日本国が締結した条約は、これを誠実に遵守することを必要とする」
(政府間協定も尊重すべし)
 国会で承認され批准された条約でなくとも首脳間で約束された協定は、政府間においては特段の事情がなければこれを遵守すべきものと準用されねばならない。日朝平壌宣言などは、棚ざらしなっているが復活して国交を回復すべきものと考える。

第99条「天皇、大臣、議員、裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う」
(「憲法不敬罪」)
 かつての帝国憲法では「天皇は神聖にして侵すべからず」と規定され、最高存在たる天皇に対する不敬は、死刑をも含む「不敬罪」が規定されていた。日本国憲法下では、この憲法が国の最高存在であり、96条による国会議員の職務以外で、総理大臣その他のすべての公務員において憲法を公然と誹謗し改悪を主張する場合は当然、第15条で一般国民からも罷免の請求を受け、或いは懲戒処分を受けるべきものである。

<別紙 3>
          第21回例会  事務局報告

                               福田玲三(事務局)
1)ニュース21号への意見など
龍平四郎氏
 今回も、ニュースの配信ありがとうございました。
 9月18日付け 東京新聞朝刊で法案賛成派の小さい記事を見つけました。
 政治に関心がある人には、それなりの説明して議論にもなりますが、多くの人は、添付したような意識です。
 添付した記事のような問いに、「即答できる言葉がありますでしょうか」
 みなさんは、どのように応えておられるか教えていただければと思います。
 <添付>
 安保賛成派も官邸前で集会
 参加者の声として「戦争をしないための必要な法案」と訴えていた。
 「いくら「戦争はしません」と言っていても向うから攻められたらどうするのか。 国の抑止力を高めるためにも必要だと思う」と話している。
 「防衛力を高めての日本を守る体制をつくらないと、子供や孫が心配で仕方がない」
 「九条を守れと言うけれど平和を守れるならこんな楽なことはない」

珍道世直氏
 「ニュースNo21」をお届けいただき有難うございました。事務局報告の中で、私の「最高裁決定」の報告について多くの紙面をお取りくださり、報告いただきましたこと、心から感謝をいたしております。
 この戦いは、今後も継続しなければと、心いたしております。
 どうか今後ともご指導をお願いいたします。誠にありがとうございました。

2)S氏(『週刊金曜日』徳島読者会)意見書への回答について
 ① S氏意見書(要旨)
 「日本国憲法によれば『天皇』は第4条第1項で『国政に関する権能』を認められておりません。一方、国民は第1条において「主権の存する」存在だとされていて、参政権を初めとする数々の権利が認められています。
私の考えでは、主権を凌駕する法的存在を認めることは出来ません。ところで『天皇』は、国政に関する権能を認められていないのですから、主権の存する国民と同等の法的地位を有する存在ではあり得ません。上でもあり得ないのですから、残るところは下だけではありませんか?すると、『天皇』は国民の権利をしのぐ特権的存在では到底あり得ません。」
 ② 野村回答  「天皇の憲法上の地位」(要旨)
 「天皇は人間であり、外国人では無い日本国民の一人であることに疑問の余地は無い。」
 「天皇は憲法の特別規定から14条とは別に生まれによって特別の地位を与えられた公務員の一人と解される。」
 「天皇は国民統合の象徴として、すべてを包摂した義務を負っているので、国会議員、国務大臣その他、特定の職務を持った公職に就くことはできないが、国民すべてが持っている選挙権についてはこれを奪われる憲法規定は存在しないので、皇族も選挙権は否定されないと考える。」
 ③ S氏再意見書(要旨)
 「お送りいただいた『天皇の憲法上の地位』は、先の手紙で私が指摘した問題に対して、直接応じる内容にはなっておりません。」
 「『天皇』をして『日本国民の一人』だとみなす貴会のご見解には同意できません。なぜなら日本国憲法に言う日本国民は主権の存する存在のことだからです。そして先の手紙で『天皇』は日本国民とは別の法的地位にあると言っているのですから。そして、その法的地位は『国民』の地位より低いということを、日本国憲法の規定を論拠にして明確に示しています。」

これに対する草野、K、O、野村、福田の回答案、見解(省略)

3)戦争法案廃案!安倍政権退陣!国会行動
 8・30国会10万人行動、9.14~9.18国会前行動に会員および支持者はそれぞれ積極的に参加した。

4)今後の日程
 11月  1日(日)13:30~16:30 例会。港区・三田いきいきプラザ集会室。
 11月  2日(月)14:00~17:00 編集委員会。虎ノ門・大阪大学東京オフイス。
 11月22日(日)13:30~16:30 例会。港区・三田いきいきプラザ。

5)『日本会議の実態、そのめざすもの』入手希望
 『週刊金曜日』種子島読書会W氏から表記パンフ入手の希望が事務局に寄せられ、手持ちのものを郵送。

6)青年劇場公演「真珠の首飾り」観劇
 1946年2月、皇居前の第1生命ビルの1室でGHQ民政局のメンバーが極秘裡に日本国憲法草案を準備した。「真珠の首飾り」とはこの作戦行動の暗号だ。そこで行われた議論、そしてベアテ・シロタの果たした役割……作者・ジェームス三木がこの難題に取り組み、見事にひとつのドラマを作っていた。(9月24日、大田区民プラザでの公演)

<別紙 4>
     立憲主義の保障―憲法の番人は誰か?

                    (2015年9月27日  弁護士 後藤富士子)

1)立憲主義をどのようにして保障するか  ★「憲法の番人」の問題
 権力担当者は立憲主義のもとでも権力を濫用しがち
 人権や民主主義が憲法で定められていても、その侵害に対する救済手段が用意されなければ画餅
 A.ハミルトン:違憲立法審査は裁判所がその権限と義務をもつ(1788年「ザ・フェデラリスト」)
 E.J.シェイエス:違憲立法審査権をもつ憲法陪審制度(1795年共和暦3年憲法制定時)
 ☆番人が番人としてうまく機能するか(番人が狼に変身しないか)
 ☆誰が番人に適しているか、誰が番人の番をするか
 ☆うまく機能するための条件は何か

2)近代市民憲法と違憲立法審査制度
 A.アメリカにおける導入
  連邦議会制定法が連邦憲法に適合するかどうかの審査
  1803年マーベリーVSマディソン事件連邦最高裁判決
 「なにが法であるかを明らかにするのは、司法部の権限に属し、且つその義務である。特定の事件に対して法規範を適用する者は、必然的にその法規範を解明し解釈しなければならない。」「憲法が立法府の制定するすべての通常法に優越するものであるならば、憲法と通常法がともにあてはまるような事件を規律するのは、通常法ではなく、憲法でなければならない」
☆ ゲルマン法思想に由来する「司法権の優越」の思想
  cf. イギリス:名誉革命で議会主権が樹立、硬性憲法が樹立されなかった→司法権の優越及ばず
B.フランスにおける排除
 議会のみに、国政の基準となる法律(一般意思)を形成表示する「国民代表」の地位を認めた
  =裁判所に、「国民代表」府が法律として表示した一般意思に干渉することが禁止された
☆ 「司法権の優越」の観念が成立しない背景事情
 ・立法権の優越 → 司法権の劣位
 ・革命期における裁判官(専門技術的知識が不可欠)に対する不信
 ・裁判所の判例でも裁判所による違憲立法審査は認められないとしている
★ 差異:議会と裁判所のいずれが立憲主義の擁護に適合的であるかの問題

3)現代市民憲法と違憲立法審査制度
 現代市民憲法の際立った現象の一つ  違憲立法審査制度の一般化
 審査機関  裁判所と政治機関  cf.フランス・・・憲法評議会(憲法院)
 A.通常裁判所型(アメリカ、日本)
  司法作用の一環:具体的事件を解決するために、当事者の主張により、審査する
下級審裁判所も審査権をもつ。当該事件についての個別的効力。
 B.憲法裁判所型(ドイツ、韓国)
  具体的な事件を前提とすることなく抽象的な憲法適合性の判断を目的とする「1審にして終審」
違憲と判断された法律は一般的に無効  ☆司法作用ではない

4)違憲立法審査制度の限界
 ① 制度上の限界  憲法問題の大部分は違憲立法審査の対象とならない
 ② マイナス機能への期待  憲法についての最高の有権解釈(国家機関による解釈)を認める(最高裁)
独裁のための手段として悪用 cf.ナポレオン1世、3世
 ③ 「憲法の番人」の番をどのようにするか
 イ.構成員(裁判官)の任免について公平な人事  cf.グリシャム『ペリカン文書』
 ロ.国民による統制制度  cf.リコール権=国民審査(憲法79条2項)
 ハ.提訴権者を広くする
 ニ.複数度の公開審査の保障
 ホ.〈国民―国会〉のルートが正常に機能
   国民の多数意思・利益が法律に反映されていることを前提として、少数者が憲法や憲法上の人権の名において争う制度。〈国民―国会〉のルートを機能マヒの状況にしておきながら、社会的多数者が政治的少数者として違憲立法審査制度によって民意を反映しない法律を争っていくことは、民主主義の観点からみて病理的かつ非能率。

★日本の現実・・・マイナス機能が目立つ
 イ、ロ、ホの条件を充足させることが必要  ☆法律の改廃によって可能
 違憲立法審査制度の機能は、国民代表制のあり方によって規定される。

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