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目 次
第54回例会・勉強会の報告 P.1
別紙1 米朝首脳会談後の北東アジア P.1
別紙2 第54回事務局報告 P.4
第52回 運営・編集委員会の報告(略) P.5
第54回例会・勉強会の報告
6月24日(日)、三田いきいきプラザ会議室で開催。参加者6名、会員67名
司会は草野運営・編集委員長が担当。まず大畑龍次氏より6月12日にシンガポールで開催された「米朝首脳会談後の北東アジア」(別紙1)が報告された。
この報告に対して以下の意見が交換された。
「まず何よりも朝鮮と付き合いを始めるべきだ」「(大畑)拉致問題は基本的に解決済みと朝鮮側は言っている。そのうえで何を解決するのか?まず植民地支配に対する賠償から始めなければならない。両国の関係改善が最大の安全保障だ」「安倍政権は朝鮮の核武装を利用しているだけだ。本気で安全保障を考えるのであれば、まず原子力発電を止めなければならない」「安倍政権はこれまで北の崩壊を前提にしていた」「(大畑)2000年6月15日の南北共同宣言で『吸収統一』はしないことを明らかにしている」「安倍政権のいう『国難』がなくなれば、改憲の必要は遠のく。安倍政権は危機に陥る」「今回の米中首脳会談の開催に貢献したのは、韓国のキャンドル革命による政権交代だという説と、北の核開発だという説がある」「韓国から日本にキャンドル8000個と電池が贈られたそうだ」「日本の国会周辺の過剰警備に韓国の人は驚いているという」「(大畑)韓国民は軍事政権と闘って勝利した経験があり、闘争に命をかけている」「日本政府の対朝鮮対応はトランプ大統領の動向に左右され自主性がない」「拉致被害者家族会もトランプ大統領が一時首脳会談中止を述べたとき、それに賛成していた」「朝鮮との国交回復はまず朝鮮高校への補助再開から始めるべきだ」「9月の自民党総裁選前に国交回復はできないだろう」
ついで「事務局報告」(別紙2)が福田共同代表から提出され、了解された。
<別紙 1>
米朝首脳会談後の北東アジア
大畑龍次(アジア問題研究者) 6月24日
6月12日、歴史的な米朝首脳会談がシンガポールで持たれた。会談は両首脳だけの会談後、拡大会合、昼食会、合意文書署名、トランプ大統領の記者会見と続いた。今年は朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の建国から70周年にあたるが、その節目に敵対関係を続けてきた米朝両国の首脳会談が開かれたことは歴史的なことであり、その成功を心から歓迎したい。合意文書の要点は次の通り。
1 平和と繁栄を願う両国人民の念願に基づいて新たな米朝関係を樹立していくことにした。
2 朝鮮半島で恒久的で強固な平和体制を構築するために共に努力する。
3 朝鮮民主主義人民共和国は2018年4月27日に採択された板門店宣言を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを確約した。
4 戦争捕虜および行方不明者の遺骨発掘を行い、すでに身元が確認された遺骨を即時送還することを確約した。
第4項以外には具体的な言及はなく、全体として包括的な内容となっている。第一項の「新たな米朝関係を樹立」の確認からは、今後米朝国交交渉へ向かうことが期待される。当面は連絡事務所の設置などが糸口になるだろうと思われる。第二項の「恒久的で強固な平和体制を構築」は、終戦宣言から平和協定締結へと向かうかが焦点だろう。第三項は、朝鮮が「朝鮮半島の完全な非核化に努力する」ことを表明したものである。これはこれまでも表明していたことの再確認といえる。なお、前文にトランプが朝鮮に「安全の保障を提供すると確言」したとあるが、これはいわゆる「体制保証」とまでは言えない。
日米のマスコミの反応は、「金正恩にやられた」という論調が大勢のようだ。会談以前にトランプ政権がCVID(完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄)を声高に主張していただけに、その落差が大きすぎるというところか。米議会も「不満」を表明しているし、金正恩に軍配というのがおおかたの評価。今後もトランプ政権は、朝鮮の非核化を要求することは明らかで、その進展に合わせて「新たな米朝関係」と「恒久的で強固な平和体制」の協議に応じるものと思われる。関係改善の具体化はこれからだが、敵対関係を転換して関係改善に向かうことに合意したのは大きな成果であろう。
その後、6・12首脳会談の具体化の動きも見られる。この夏の米韓合同軍事演習の中止が決定されたのは、「恒久的で強固な平和体制」の第一歩であり、朝鮮がロケットエンジンの発射施設の廃棄を打ち出したのも朝鮮半島の非核化にむけた行動と評価できる。また、第4項の「戦争捕虜および行方不明者の遺骨発掘」では朝鮮が早くも実施しており、200柱からの遺骨が身分証などとともに引き渡されるという。
6・12首脳会談の波紋
米朝首脳会談の波紋が広がっている。
第一に、南北の板門店宣言推進の環境が整ったことだ。6・12米朝首脳会談によって米朝の関係改善が行われたため、南北は大手を振って南北の関係改善に向かうことができる。すでに高位級会談と将官級会談が開催され、板門店宣言の具体化が進んでいる。南北の合同連絡事務所を開城公団内に設置することが合意され、韓国側は現地視察を行った。アジア・スポーツ大会への合同選手団による参加、8月の金剛山での離散家族再会事業が決まった。京義線と東海線を連結するための会談も行われ、事前の調査活動を共同で実施するという。秋には南北首脳会談が行われることから、それまでにはより具体的な成果が期待される。特に、終戦宣言と停戦協定締結が実現するかが注目される。6月中旬の統一地方選挙で文在寅政権は圧勝したばかりであり、政権への支持と期待は広がっている。
第二に、安倍政権が日朝首脳会談に言及しはじめたこと。6・12米朝首脳会談によって安倍政権は対朝鮮政策の変更を余儀なくされた。「いまは圧力のとき」という情勢認識ではもはや通用しないことがはっきりした。しかし、朝鮮は安倍政権の「豹変」ぶりには批判的であり、「拉致問題は基本的に解決済」なる公式見解を改めて明らかにしている。安倍政権もまた、拉致問題の解決の見通しの「感触」がなければ首脳会談には応じられないという。
日朝平壌宣言時の朝鮮の状況とは雲泥の差がある。その頃、朝鮮は八方ふさがりの状況のなか、日朝関係改善に情勢の好転をかけた側面がある。そのためにそれまで否定していた拉致問題の関与を認め、朝鮮の植民地支配にも賠償から経済協力方式という、思い切った要求ダウンに応じた。しかし、現時点は朝鮮側が追いつめられた状況はない。日本以外の関係諸国とは良好な関係にあり、南北関係も板門店宣言の履行過程にある。いわゆる「朝鮮専門家」が主張していたように「朝鮮は日本の経済支援が必要」という状況ではないのである。中韓ロからの経済的支援が期待できるし、米国が動く可能性もある。したがって、日朝交渉の必要性は日本側にこそあっても、朝鮮側は差し迫ってはいない。もちろん、日朝対話は喜ばしいことだが、その主導権は朝鮮側にある以上、安倍政権は思い切った政策変更が必要だろう。
第三に、中朝ロ関係の前進。金正恩委員長は6月19日、本人3度目となる中朝首脳会談のため北京を訪問した。米朝首脳会談の報告を兼ねながら、①朝鮮半島の非核化の段階的解決、②経済協力を確認したと思われる。朝鮮からは経済視察団がすでに中国を訪問し、金正恩自身も経済関連施設を訪問している。中国はかねてから朝鮮に「改革開放」路線を勧めてきたが、一層拍車がかかるとみられる。中朝国境では経済交流の進展を見込んで不動産価格が値上がりを始めたという。また、ロシアはウラジオストックで9月に開かれる東方経済フォーラムに金正恩委員長を招待していると伝えられる。この間の朝鮮外交の展開から見ると、朝ロ首脳会談に進むことは容易に理解しうる。ここでも朝鮮半島の非核化の段階的解決と経済的連携の確認が行われるだろう。ロシアを訪問した文在寅は韓国、朝鮮、そしてロシアに繋がる経済連携の推進を呼びかけた。南北間では東海線の鉄道・道路連結が板門店宣言によって合意されていることを念頭にした発言である。これまでもパイプラインをロシア、朝鮮、韓国へと伸ばす構想が語られてきたので、一層の具体化に進むだろう。朝鮮の羅津地区の経済特区への投資推進の可能性もある。
日本は北東アジアの阻害要因か
このように歴史的な米朝首脳会談によって北東アジアは、友好的な関係が作り出されつつあり、平和に向かっている。このような融和的なムードのなか、関係改善が見られないのは日朝関係だけである。これまでは日本が「蚊帳の外」にあるといわれてきたが、いまや阻害要因と認識すべきなのではないだろうか。安倍政権は「圧力一辺倒」から「対話を模索する」姿勢に変わりつつあるが、いまだとして対話は実現していない。日本は核・ミサイル開発と拉致問題の解決なしに国交交渉に進まないという姿勢を崩していない。核・ミサイル開発は基本的には米朝間で解決されるべき問題であるから、個別問題としては拉致問題の前進がネックとなるだろう。日朝双方が関係改善へのプロセス合意したものに「ストックホルム合意」(2014年5月)がある。この合意にしたがって朝鮮は特別調査委員会を立ち上げ、在朝日本人の調査に着手した。しかし、日本が朝鮮の核・ミサイル開発に対して独自制裁に踏み切ったため、朝鮮は合意に反するとして調査委員会を解散して店晒し状態にある。これまでの経過から考えると、ストックホルム合意の再稼働が必要だろう。そのためには店晒しの原因となった独自制裁を解除すべきだ。米朝首脳会談の成果を尊重するならば、制裁解除は可能だろう。さらに、ストックホルム合意を再稼働するとすれば、朝鮮側の調査報告書を受け入れることが必要だ。朝鮮国内の調査は主権にかかわる問題であり、日本には限界がある以上、基本的には朝鮮の調査を受け入れる姿勢が必要だ。さらに、よりドラスチックに関係改善に向かおうとするなら、懸案事項の解決→国交交渉再開という基本姿勢を改めることだ。「国交正常化ありき」を先行させ、そのなかで懸案事項を解決することだ。これはオバマ政権がキューバとの国交正常化でとった手法であり、学ぶべき価値がある。
安倍政権はマスコミ各社に拉致問題の優先的報道を要請している。その結果、国民世論は「拉致被害者は生きている」、「北朝鮮は拉致被害者を返せ」という認識になっている。したがって、安倍政権はこの期待に応えられないとき、政権維持の危機に陥る可能性がある。事前の秘密接触によって確かな「感触」を得ることがなければ、前進できない。この数年、そうした努力をせずに時間だけが流れたのではないか。これでは拉致問題の政治的利用と言われてもしかたがない。
安倍政権は拉致問題の偏重をやめ、日朝関係改善と北東アジの平和のために大局的な政策転換をしなくてはならない。日本の朝鮮侵略の過去を清算するために国交交渉に向かうことを声高に訴える必要がある。そうした声をあげることが求められている。北東アジアが敵対から友好へと好転するなか、日本は阻害要因になってはならない。いま一度、日本の朝鮮侵略の清算と国交交渉の再開を求めるときだ。
<別紙 2>
第54回例会 事務局報告
福田玲三(事務局)2018.6.24
1) 来信
自民党(改憲)草案の社会を描いた「未来のダイアリー」や日弁連の「こども憲法カレンダー」を30人ほどの友人・知人に送り、私からのメッセージを伝えて来ました。日弁連からのポストカードも分けていただき、国民投票になったときの準備としています。「平和に向けて活用したい道徳」の冊子も、私からのメッセージにしたいと思っています。ありがとうございます。全部読んだらまた連絡させていただきます。
今の平和を次の世代にも! 戦争から1ミリでも遠ざかるように!(埼玉県・N氏)
2) シリーズNo.6『朝鮮半島をめぐる情勢と私たち――北東アジアの平和と繁栄のために』(仮)
さる6月12日、シンガポールで開催された米朝首脳会談の論評と今後の展望を加えたテキストが、大畑龍次氏より6月15日到着、仮綴じ本として6月例会で検討した後、成文を作成し、月末に刊行の予定。
3) 岡部共同代表の後任要請
さる6月12日、運営・編集委員会の大西・福田が国会議員会館にK議員を訪ね、5月に逝去された岡部共同代表の後任について相談したが、議員活動が多忙なため、就任要請を受けたことを光栄とするものの、と辞退された。
4) 集会の案内
①盧溝橋事件81周年 明治150年徹底批判!
侵略と植民地支配の歴史を直視し、アジアに平和をつくる集い
日時:2018年7月5日(木)18時~
会場:文京区民センター3階・3-A会議室
文京区本郷4-15-14 03-3814-6731
主催:村山首相談話の会
資料代:800円
②報告会:朝鮮半島情勢について 講師:大畑龍次
日時:7月8日(日)13:30~
場所:松戸市民会館101号室
主催:市民自治をめざす1000人の会
連絡先:090-4606-9634 吉野
③被爆者の声をうけつぐ映画祭2018
7月14日 武蔵大学江古田キャンパス大講堂 18:00から吉永小百合さん登場。
15日 8号館8階8802
https://hikakueiga.exblog.jp/
④第14回平和学習会
「レ・ミゼラブル」から読み解く憲法 報告者:王道貫
7月22日13:30~16:30 東京ボランティア市民活動センターC会議室(飯田橋)
資料代:200円
⑤『週刊金曜日』東京南部読者会
7月27日(金) 18:30~20:00 大田区生活センター 会議室(JR蒲田駅徒歩5分)
当面の日程について
1)第55回例会・勉強会 7月22日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
勉強会:伊藤真弁護士語りおろしDVD『憲法ってなあに?憲法改正ってどういうこと?』の上映 (55分)、ついで意見交換。
三田いきいきプラザ(地下鉄三田線・三田駅出口A9より徒歩1分、JR山手線・田町駅西口より徒歩10分)
港区芝4-1-17
http://shiba-ikiiki.com/mita/access/
会場費 300円
2)第53回運営・編集委員会 7月25日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ
3)第56回例会・勉強会 8月26日(日)13:30~ 三田いきいきプラザ
4)第54回運営・編集委員会 8月29日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ