三権分立を破壊する検察庁法改悪を許してはならない

新型コロナ禍で国民生活が大打撃を受ける最中、安倍政権がとんでもない法案を強引に成立させようとしています。

国家公務員の定年延長に関する法改正案が10本の束ね法案として国会に提出されましたが、その中に検察庁法の改悪案が含まれており、内閣委員会で審議されることになりました。政府は検察官も一般職の公務員であることを唯一の理由に束ねたと言っていますが、まさに火事場泥棒的な姿勢に他なりません。

検察官は被告人を起訴できるという特別な権限を有し、一般公務員とは全く違う存在。だからこそ、検察庁法という特別法でその身分を定めているのであり、他法案と束ねること自体がおかしいのに加え、委員会への法務大臣の出席なしの審議。これでまともな審議ができるわけがありません。

この法案ができた端緒は、東京高検黒川検事長の定年延長が1月末に突然閣議決定されたこと。2月8日が退官日で、直前に送別会も予定されていたとのこと。こんな人事を法務省が決められるはずがなく、官邸が無理筋を通したのは間違いありません。国家公務員法の定年延長規定を検察官にも適用したという無理筋がゆえに、定年延長決定過程を明らかにする文書もなかなか出てこず、ようやく出てきた文書には日付もない。作成日のわかる記録(プロパティ)も出せないと言い張り、挙句に法務省内の決裁は口頭で行ったというのです。したがって黒川検事長の定年延長は違法状態にあり、彼の決裁事項はすべて無効となる可能性もあります。

この定年延長を後付けで正当化しようとするのが、今回提出された検察庁法改悪案。その内容は次の通り。

1.検察官の定年を65歳とする。(検事総長は既に65歳となっているためそのまま)

2.63歳で役職定年とする。ただし、検事総長、次長検事、検事長は内閣、検事正は法務大臣が必要と認めたときは最長3年間、当該役職にとどまれる。

現在の検察官の定年は63歳なので、65歳にするのは時代の趨勢で全く問題ありませんが、2番目の項目が極めて問題です。検察官は、政権の汚職事件等に向き合うことがままあります。ロッキード事件では闇将軍と言われた田中角栄元首相の逮捕、リクルート事件では竹下内閣総辞職を招くなど、検察捜査が政権に大きな打撃を与えることもありました。これを可能としたのは、検察官が政治権力に拘束ざれず、独立性が保たれていたからにほかなりません。

その独立性を損なう恐れがあるのがこの改悪案です。高齢化社会となり、人間誰でもより長く高待遇で働きたいのは本能のようなもの。時の権力者に気に入られて、恣意的に同役職で定年延長されれば、その権力者に対してある種忖度が生まれるのは人間の性(さが)。官僚の幹部人事権を官邸が一手に握り、その結果忖度官僚がはびこっている現状を見れば一目瞭然でしょう。

この改悪案に対しては、検事総長を経験した松尾邦弘氏をはじめ検察OB14名が改悪反対の意見書を提出したほか、弁護士会も反対表明しています。中でも検察OBの意見書には、安倍政権の勝手な法解釈変更や国会軽視の姿勢を、フランスのルイ14世の言葉として伝えられる「朕は国家なり」との中世独裁国家にたとえ、近代国家の基本理念である三権分立主義の否定にもつながりかねない危険性をはらんでいると危惧しています。

まともな常識を備えているならば、当然にこの法案への危機感を持つと思うのですが、与党で反対表明しているのは自民党の石破茂氏ほか数名の議員のみ。政権に全く逆らえない与党の病巣もまた深刻。

コロナ禍の最中、街頭デモや集会ができない中で、数百万人の国民がツイッターで反対の声を上げ、法案を批判しています。心ある議員はこの国民の声を真摯に受け止め、不要不急の検察庁法改悪案に反対していただきたい。

2020.05.16 柳澤

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