いまこそ自民党政治に「ノー」を突きつけなければならないときだ

「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」

日本国憲法前文には、先の大戦で自国民300万人以上の人命を奪い、アジア太平洋諸国・地域に対しては、それ以上の甚大な人命を奪ったことを深く反省する意味で、冒頭の文言を謳(うた)い、憲法9条で非武装・戦争放棄を高らかに掲げている。戦後60数年間は、東西冷戦期にありながら、曲がりなりにもこの平和憲法の下、戦火にまみえることなく、平和国家としての地位を保ってきた。

しかし、戦前回帰的な思考が強い安倍晋三が首相をつとめた2006年~2007年の第一次、2012年~2020年の第二次安倍政権は、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認を可能とする安保法制、愛国心などを教育目標に掲げ、加害の歴史を消し去る歴史教育を進めるための教育基本法などの改悪を行い、更には未達に終わったものの、憲法9条改悪による戦争放棄条項削除までも画策するなど、戦争のできる国へと、強引な政策を推し進めた。

そして現政権を率いる岸田文雄は、安倍政権を踏襲して右翼的思考を強め、敵基地攻撃能力の保有、防衛費のGDP2%以上への引き上げ、武器輸出の緩和など、憲法9条を蔑(ないがし)ろにする政策を次々に打ち出し、より戦争のできる国へと突き進んでいる。長期間外務大臣を経験したにもかかわらず、外交はアメリカ一辺倒で、地政学的に最も重要な中国との友好的な関係を築こうとする気配も見えない。アメリカと一緒になって「台湾有事」を煽り、中国を仮想敵国とみなす愚策は、「政府の行為によって再び戦争の惨禍」を起こしかねない環境を作り出しており、正に「新しい戦前」になってきている。

岸田の思考回路には、未だに安倍晋三の影が付きまとい、代表も決められない自民党内最大右派で、最大派閥の安倍派の力も影響している。

こうした状況下、岸田政権を襲ったのが、その安倍派の裏金問題である。二階派、岸田派からも裏金問題が発覚し、岸田は自らが率いた岸田派を解散し、安倍派、二階派も解散。この問題の根源が派閥の存在にあるかのようなすり替えを行った。検察捜査も国民の期待に反して、安倍派を中心とした派閥の幹部議員は誰も立件されず、逆に開き直りとも思われる発言も相次ぐ有様である。岸田も「丁寧な説明」を「促す」と繰り返すばかりで、自ら進んで指導力を発揮する姿勢が全く見られない。もはや自民党には自浄能力は期待できず、このような党に政治を任せることは、これ以上許されない。

折から2月16日から税金の確定申告が始まったが、裏金を作り、それを使っていた、あるいは貯めこんでいた議員には、その分の税金を課されることもなく、ただ政治資金収支報告書を訂正するだけである。裏金を作った罪、税金を払わない罪は免除されてしまう。企業や個人が裏金を作って脱税したら、税務署が黙っていないのとは対照的である。

岸田政権の支持率が20%を割り込む中、自民党に代わる政権を樹立しないと、平和国家日本は風前の灯火となる。国民は平和を守っていくために、自民党政治に一日も早く「ノー」を突きつける決断をしなければならない。

2024年2月19日  柳澤 修