一代限りの退位でいいのか

自民党による「天皇の退位等についての懇談会」が6日開かれ、退位について、政府が目指している現在の陛下に限って可能とする特別立法で対応すべきだとの意見で一致したそうだ。会合では 「一代限りの特別立法が望ましい」との全員一致の見解が表明され、恒久措置を推す声はなかったとのこと。(毎日新聞2017.2.7)
この自民党の意見には釈然としないものが感じられる。さて天皇は本当に退位を望んでいるのだろうか、恒久措置をこそ望んでいるのではなかろうかと今更ながら疑問が沸いてくるのである。
そこで昨年8月の天皇のお言葉を読み直すと、全く「退位」については触れられていないことが改めてわかる。天皇がただ退位そのもののみを望んでいるとは、到底読み取ることはできず、それよりもむしろ、《日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方》《伝統の継承者として,これを守り続ける責任》《常に国民と共にある》《天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。しかし,この場合も,天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま,生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。》《我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ,これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり,相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう,そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく,安定的に続いていくことをひとえに念じ,ここに私の気持ちをお話しいたしました。》といったお話から考えると、国民と共に象徴天皇の務めが安定して続いていくこと望んでおられることがわかる。
摂政であれ、一代限りの退位であれ、安定して続くための措置とは言い得ないことに変わりはない。更に今回検討されているような特別法による退位に至っては、退位の意思の無い天皇を政府が退けて退位させるのではないかという疑問が生まれさえする。恒久法では天皇の退位への意思などについて明確な基準を定めるのは困難と言われるが、特別法においてもその疑念が払拭されるわけではないことに注意したい。

憲法に則り、皇室典範に照らして考えれば、国民や国会議員が天皇の退位の可能性を探り、法改正を行うことはありえることだろう。ただ、その場合にも当事者である天皇のお気持ちを顧慮することは、人が人を尊重するという意味においてごく当然のことであるため、改めて昨年8月の天皇のお言葉を読んだ次第である。

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2017年2月12日 | カテゴリー : ①憲法 | 投稿者 : きくこ