完全護憲の会ニュース No.63   2019年3月10日

完全護憲の会ニュース No.63   2019年3月10日

<例会参加の方は本ニュ―スをご持参ください>
発行:完全護憲の会
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目  次

第62回 例会の報告     P1
別紙1 第62回例会 事務局報告  P1
別紙2 韓国の文喜相・国会議長の天皇発言に接し、思い起こすこと
田中宏(一橋大学名誉教授) P2
別紙3 ハノイ米朝首脳会談の波紋
大畑龍次(アジア問題研究者) P3
第61回 運営・編集委員会の報告  P5


第62回 例会の報告

2月24日例会を開催。まず事務局報告(別紙1)が提出された。ついで田中宏・一橋大学名誉教授から寄せられた論考「韓国の文喜相・国会議長の天皇発言に接し、思い起こすこと」(別紙2)が代読され、田中氏の論考について、次の論議があった。
「この論考は素晴らしい」「韓国の文・国会議長が自分では言わず、だれかに代弁させればよいと、私は本音では思っていたが、この論考で目が覚めた」「確かに、日本赤軍の要求は、仲間の解放だけだ。日本の左翼って一体何なのだろう」「天皇が謝るだけで、それで許すのか。『天皇様にお願いしたい』とは、皮肉ではないのか」「戦後サハリンに残された韓国女性の発言は皮肉ではない、素直な肉声だと思う。一方、韓国世論はかねて責任者の謝罪を求めていることから、文・議長の発言は当然の要求だと思う」「天皇について私たちは議論を避ける傾向にある。多くの人の誤った思考を正すために、ぜひ田中先生にこの論考の公表をお願いしたい」
ついで勉強会に移り、山岡聴子氏の報告を受け、DVD「語られなかった戦争・侵略1」の上映準備にかかったが、機械の不具合により、上映は改めて次回に行うこととし、16:30に終了した。
なお後日、大畑龍次氏よりブログ更新のお知らせをいただき、下記の別紙3に掲載させていただく。

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<別紙1> 第62回例会 事務局報告

1) 草野運営・編集委員長は引き続き療養中のため、担当していた例会資料「政治の現況について」はしばらく休載します。

2) 新入会者からの便り
立春を過ぎ暦の上では春。日本も世界も戦争から1ミリでも離れる春を迎えたいです。
定年より2年早く退職し(目の患いで)再雇用として余裕のある分、気になるのは国のこと。社会のこと。自民党草案の社会を弁護士の方が描いた小説風の「未来ダイアリー」を読んだのが始まりでした。巻末の憲法の対比表で「戦争放棄」が草案では「安全保障」になっていることに私は疑問を感じました。ここ2年半、少しずつ勉強してきて安全保障も大切だと思いますが、まずは「戦争放棄」だと思います。
笑われても、丸腰、非武装中立を志向していきたいと思います。
特定機密で1ミリ、安保法案で1ミリ、共謀罪で1ミリ、あわせて3ミリ戦争に近づいたと感じています。この上改憲なったら一気にさらに3ミリ、戦争に近づくと思っています。
私が過ごしてきた平和な時代を、次の世代にもと思っています。その思いでやって来る中で「完全護憲の会」とも出会いました。「日弁連」にも。
戦争体験のない私ですが、戦争から1ミリでも離れること、平和のバトンタッチをすること、私ができることは、ほんのわずかなことですが、これからもやっていきます。
ーP1ー

私は学童保育、児童館で働いています。いろいろ問題や課題はあります。大切にしたいのは子どもの笑顔、保護者(大人)の安心。そのためにコツコツやっています。(埼玉県)

3)当面の日程

第63回例会・勉強会 3月24日(日)13:30~16:30 三田いきいきプラザ・A集会室
第62回運営・編集委員会 3月27日(水)14:00~ 三田いきいきプラザ・講習室
第64回例会・勉強会 4月28日(日)13:30~16:30 三田いきいきプラザ・A集会室

4) 集会の案内

① 日本反戦平和記憶国際シンポジウム
3月8日(金)16:00~19:30 衆議院議員会館B1 大会議室
※要予約 090-8808-5000
主催・「村山首相談話を継承し発展させる会」
murayamadanwa1995@@ybb.ne.jp

② 沖縄戦の真実に迫ったドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』上映会
3月19日(火) 19:00~(18:30開場)
大竹財団・会議室 中央区京橋1-1-5 セントラルビル11階
主催:一般財団法人 大竹財団 ℡:03-3272-3900
※料金や予約方法などは主催者までお問合せください。
※『沖縄スパイ戦史』ホームページ:http://www.spy-senshi.com/
・共同監督:★三上智恵(映画『標的の村』『戦場ぬ止み』『標的の島 風かたか』で現代の闘いを描き続ける) ★大矢英代(琉球朝日放送記者を経て新進気鋭のフリージャーナリスト)
・協力:琉球新報社、沖縄タイムス社、沖縄記録映画製作を応援する会
民間人を含む24万人余りが死亡した沖縄戦。第32軍・牛島満司令官が降伏する1945年6月23日までが「表の戦争」なら、北部ではゲリラ戦やスパイ戦など「裏の戦争」が続いた。米兵たちを翻弄したのはまだ10代半ばの少年たち。彼らを「護郷隊」として組織し、「秘密戦」のスキルを仕込んだのが日本軍の特務機関、あの「陸軍中野学校」出身のエリート青年将校たちだった…。映画は、まさに今、南西諸島で進められている自衛隊増強とミサイル基地配備、さらに日本軍の残滓を孕んだままの「自衛隊法」や「野外令」「特定秘密保護法」の危険性へと深く斬り込んでいく。

③ 『週刊金曜日』東京南部読者会
3月22日(金)18:30~20:30
大田区消費者生活センター 第3集会室(JR蒲田駅徒歩3分)

④ ビザ発給拒否国賠裁判 2名の原告本人を尋問(最大の山場)
4月18日(木)13:30~ 東京地裁103号・大法廷
13:30~ 原告・高鋒さん(中国湖南省の細菌戦被害者)
15:30~ 原告・田中宏さん(一橋大学名誉教授)
18:00~ 裁判報告会 衆議院第1議員会館B1 大会議室(17時半~ロビーにて入館カード配布)
特別ゲスト:森田実さん(政治評論家)
原告からの発言:高鋒さん(湖南省)、田中宏さん、高嶋伸欣さん
私たちは、2015年11月に安倍政権・外務省が強行した ①中国人戦争被害者へのビザ発給拒否、
②戦争法廃止を求める「集会の自由」侵害、という重大な人権侵害の責任を追及し、国家賠償請求裁判を提訴して闘っています。憲法を蹂躙し、民主主義を破壊する、安倍政権による国家権力の乱用は、絶対に許されません!
原告団は、この集会の主催者、およびビザ発給を拒否された中国の細菌戦被害者です。
*日本人原告:田中宏(一橋大学名誉教授)、高嶋伸欣(琉球大学名誉教授)、藤田高景(村山首相談話の会・理事長) *中国人原告:高鋒(湖南省)、胡鼎陽(浙江省)、郭承豪(浙江省)
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<別紙2> 「韓国の文喜相・国会議長の天皇発言に接し、思い起こすこと」
田中 宏(一橋大学名誉教授)
第一報聞いた時、「やはりね…」というのが私の感想だった。その感想には、それなりの経緯があるので、ここに書き留めておきたい。
1960年の「安保闘争」の直後、私は、一橋大の指導教授から、北京大学での留学を終え、帰国途中で日本に寄るインド人青年の世話を仰せつかった。中国語を話すインド青年とひと夏を過ごすことになる。岡山の郷里に一緒に帰った時、村の公民館でのインド青年を囲んでの懇談の席での会話を思い出す。村人が「日本にきて一番驚いたことは何ですか」と問うと、インド青年は「天皇が健在で、東京のど真ん中に大きな居を構えていたことです。すでに退位して、どこか遠くに隠居していると思っていました」。
-P2-

村人:声なし。彼はつづけて「あの大戦では、おびただしい人が犠牲になり、皆さんにも大きな苦難をもたらしたのではないですか」。再び、村人:声なし。要するに、話はかみ合わなかった。通訳をした私も、大きな衝撃を受けたことは言うまでもない。
戦時中、サハリンに送られた韓国人について、戦後、日本政府が、すでに「外国人」であることを口実に、日本人の引揚げから除外し、サハリンに置き去りにした問題は、朝鮮植民地統治が残した問題の一つだった。かつて テレビ朝日の深夜番組「トゥナイト」(司会:利根川裕)が、この問題を取り上げた時のことは忘れられない。ブラウン管に登場した年配の女性の発言は、鮮明に覚えている。「日本政府が何もしないのなら、天皇さまにお願いしたいです、私たちを助けてください」と。利根川氏の番組は1980~94年までであるが、残念ながら、いつの放送かは確認できない。

1977年9月の日本赤軍によるダッカ事件に関して、アジア人留学生からの意外なコメントを思い出す。パリ発東京行きの日航機が、インド上空で日本赤軍にハイジャックされ、バングラデシュのダッカ空港に強行着陸(乗員14名、乗客142人=5人の犯人クループ含む)。日本赤軍は、「身代金600万ドル=当時約16億円、日本で服役・拘留中の9人の釈放と日本赤軍への参加」を要求。拒否された場合は人質を順次殺害するという。
日本政府は、時の福田赳夫首相が、「一人の生命は地球より重い」として、身代金の支払いと「超法規的措置」により収監メンバーの引き渡しを決定。赤軍参加を拒否した3人を除く6人が釈放され、運輸政務次官を長とする派遣団が、日航特別機で身代金ともどもダッカに向かい、人質は全員救助された。
この時、東南アジア出身の華人系留学生が、次のようにコメントしたのが忘れられない。「日本赤軍、自分たちの仲間を得るために、日本政府に『超法規的措置』を取らせることに成功したが、『天皇に戦争責任を取って退位させる』ことを条件としたら、どうなっただろう、その方が『東アジア反日武装戦線』の名にふさわしいように思うのだが…」。日本人とアジアの人びととの間に、「天皇」についての見方に大きな開きがあることは間違いなさそうだ。
戦後に放置された問題の一つに、台湾人元日本兵の補償問題があった。インドネシアのモロタイ島で「中村輝夫」名を持つ台湾人元日本兵が「発見」されたのは、1974年12月のこと。その少し前に「発見」された横井庄一さんと小野田寛郎さんには、恩給法などにより応分の戦後補償がなされたが、「中村さん」には何もなされなかった。日本の恩給法をはじめとする戦争犠牲者援護法令にはいずれも「国籍条項」が設けられ、旧植民地出身者を悉く除外していたのである。そんなことから、1977年8月、台湾在住の13人の元日本兵又は遺族が、日本政府を相手に国家賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。台湾人元日本兵の問題を、TBSの「報道特集」が取り上げ、台湾現地を取材して当事者の肉声などを紹介してくれた。その時、一人の傷痍軍属が発した言葉も、やはり私の脳裏に焼き付いている。「私たちは、天皇の赤子として、お国のために尽くしたわけでしょう。日本政府は放置しても、『一視同仁』を説かれた天皇が、そんなことを許すはずがないでしょう」と。
いずれにしても、日本では、凡そ登場しない「天皇」が、アジアの人々が「日本の過去」に言及するとき、こうした形で登場することに、私は遭遇してきた。今回の文議長の天皇発言もその一つではないだろうかと、私は思った。
2016年5月、伊勢志摩サミットの後、オバマ米大統領が広島を訪問し、生存被爆者のお二人に言葉をかけるシーンは印象的だった。原爆投下は、戦争の早期終結のための正しい選択だったとする戦勝国アメリカの大統領が、その被害者と直接対面したのである。その脇に立つ日本の安倍晋三首相は、「米大統領がそこまでされるのなら、自分は韓国のナヌムの家に元慰安婦のハルモニを訪ねよう」と思わないのだろうか。テレビを見ながら、私は、そう感じた。なぜなら、安倍首相は、前年の戦後70年「安倍談話」で、「私たちは、…戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続けます。だからこそ、わが国は、そうした女性たちの心に、常に寄り添う国でありたい」と述べたのである。
このように見てくると、文喜相議長の今回の天皇発言に、私はさほど違和感を感じなかったのである。
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<別紙 3> ハノイ米朝首脳会談の波紋  大畑龍次(アジア問題研究者)

ベトナム・ハノイで行われた米朝首脳会談は合意に至らなかった。一部には「決裂」との表現になっているが、今後米朝関係が緊張するとの指摘はない。トランプ大統領による記者会見
ーP3ー

でも、金正恩国務委員長が核・ミサイルの新たな開発はしないと言及したとされ、トランプもまた緊張を高める発言をしなかったからだ。その後、米韓両軍は春の大規模な合同軍事演習はしないと発表している。トランプも後日、「継続協議する」とつぶやいている。したがって、「決裂」ではなく、「継続協議」というところだろう。相撲用語でいえば、「仕切り直し」。しかし、次回の首脳会談の時期については未定であることから、両者による3回目の会談があるどうかは見通せない。
それでは、どこまで合意され、何がネックだったのだろうか。幻となった合意文書には、①米兵遺骨の追加返還、②双方の連絡事務所設置、③平和宣言などでは合意されていたとされる。ネックとなったのは、朝鮮の非核化措置とそれに相応する米国の制裁緩和の規模についてだった。朝鮮は、寧辺(ニョンビョン)核施設の廃棄の見返りとして2016年から2017年に実施された制裁5件のうち、民需経済と人民生活にかかわる制裁の解除を主張。朝鮮にかけられている制裁は11件あり、11分の5だという。
2016~2017年は、朝鮮が本格的な核・ミサイル開発を実施して核武力の完成を宣言した時期であり、それにかけられた制裁は核心的なものであり、「全面解除」に等しいというのが米国の主張。トランプはこの「取引」に納得できず、さらなる非核措置を要求したものの、合意に至らなかったという。ちなみに、朝日新聞によると、「寧辺の核施設は、東京ドーム166個分にあたる7・8平方キロの敷地に、原子炉や核燃料の製造工場など300以上の関連施設が並ぶ巨大なものだ」という。

なぜ合意できなかったのか
合意できなかった理由として指摘されているのは次のようなものだ。
第一に、事前実務協議の準備不足。首脳会談というものは、通常は事前協議によってほぼ輪郭が確定され、当日はつつがなく終わるものだ。こうした常識からみると、今回は異常事態といえるだろう。ポンペオ・金英哲(キム・ヨンチョル)、ビーガン・金赫哲(キム・ヒョクチョル)などのチャンネルで事前実務協議は進められてきたものの、今回ネックとなった非核措置と制裁緩和のレベルについて首脳間の最終判断となり、「気まぐれ」トランプの「卓袱台返し」によって合意できなかったというところだろう。対朝鮮強硬派のボルトンあたりが追加の非核措置を要求したとの観測もある。
第二に、トランプ大統領の国内政治事情である。米朝首脳会議と同時期に「ロシア疑惑」の核心的な調査として元顧問弁護士のコーエン氏への公聴会が行われ、「ペテン師、人種差別主義者」などと口汚くトランプを非難する証言を行った。首脳会談に臨んだトランプは、ずっとコーエン氏の議会証言をフォローしていたし、記者会見でも質問を受けた。まもなく「ロシア疑惑」の調査結果が出され、野党民主党は大統領弾劾に踏み込むとも言われている。アメリカでは米朝首脳会談以上の関心事だった。したがってトランプとしては、昨年のシンガポール米朝首脳会談合意でも弱腰を指摘されていたこともあり、対朝鮮強硬姿勢を見せる必要があったのだろう。トランプは国境での壁建設問題や米中貿易戦争など難題を抱えており、強硬姿勢を見せるのが得策と判断したと思われる。

今後の朝鮮半島情勢
それでは、今後どのような展開が予想されるのだろうか。まず、三度目の米朝首脳会談はありえるだろうか。トランプ政権は苦境に立たされており、外交的な成果もないなかで大統領選挙モードに突入することから、朝鮮半島問題での「成果」がほしいところだろう。しかし、朝鮮側はどうだろうか。
1日未明に朝鮮は李容浩(イ・ヨンホ)外相と崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官がトランプの記者会見内容への反論を行った。崔善姫外務次官はその場で次のように述べた。「われわれの国務委員長同志は、米国でやるような米国式の計算方式を理解しにくかったのではないか、よく理解されなかったのではないかという感じを受けました。(今後、このような)過去になかったような寧辺核団地をまるごと破棄する、そんな提案をしたにもかかわらず、民需用の制裁決議の部分的決議すら解除できないという米国側の反応を見ていて、われわれの国務委員長同志が今後の米朝の取引について、意欲を失われてしまったのではないかという感じさえ受けました」。
この発言は、トランプが記者会見で朝鮮が全面解除を要求したと述べたことへの反論であり、朝鮮側が米国の交渉姿勢に疑問を投げかけたものだ。もし、次回首脳会談が行われる場合、合意文書は欠かせない。十分な事前協議が必要だろう。選挙戦を前にしたトランプ政権が対応できるだろうか。
米朝協議が不調に終わった以上、朝鮮は中国、ロシア、韓国への接近を図るものと思われる。中ロは朝鮮の段階的非核化を支持し、制裁緩和を主張している。とりわけ中国は朝鮮貿易の90%以上を占めていることから、その影響力は大きい。数度にわたる金正恩・習近平首脳会談において、中国は朝鮮の段階的非核化を支持し、経済協力の推進を確認している。
韓国との間では、昨年9月の首脳会談における「軍事分野合意書」にしたがって平和体制の構築が進んでいる。南北は「平和」から「繁栄」へと向かう途上にある。その突破口は金剛山観光事業と開城公団の再開であることが確認されている。ハノイ米朝首脳会談が合意に至っていれば、すぐにでも再開されるはずであった。文在寅政権が制裁維持の米国の意向を忖度しながら、南北協力事業の進展にためらいをみせてきた。したがって、今後文在寅政権の本気度が試されることになるだろう。昨年9月の南北首脳会談では金正恩のソウル訪問が合意されており、
ーP4ー

その時期が注目される。朝鮮はしばらく対米交渉よりも、多極化交渉を重視すると思われる。今回のハノイ会談の挫折は、金正恩政権にも痛手であることは間違いない。情勢を見極め、動き出すには時間がかかるかもしれない。

許し難い安倍政権の対応
 ハノイ会談の「物別れ」をもっとも喜んでいるのは安倍政権である。安倍は「トランプの決断を全面的に支持する」との立場を明らかにした。安倍政権は昨年6月のシンガポール米朝首脳会談以降、日朝首脳会談を目指すことを強調する一方、対朝鮮対応では強硬姿勢を貫いてきた。その結果、日朝間での単発的な協議は開かれたものの、日朝対話の糸口は見出し得ていない。朝鮮もまた、安倍政権の対朝鮮姿勢を強く批判し、対話を急がない意向を明らかにしている。安倍は、ハノイ会談を前にしたトランプに対し、「安易な妥協をするな」「拉致問題を取り上げろ」と要請するばかりで、政権の最優先課題である拉致問題を前進させる道は閉ざされたままである。北東アジアの平和構築について役割を果たす意図はみられない。
このところ安倍政権は、強硬姿勢の対朝鮮政策だけでなく、韓国との間でも対立を深めている。元徴用工問題、慰安婦合意問題、レーダー照射問題(韓国の立場からすると、日本・哨戒機の異常な低空威嚇行為)、そして韓国国会議長による安倍あるいは天皇の謝罪要求である。両海軍の摩擦以外は、いずれも日本の朝鮮半島の植民地支配にかかわる問題である。日本はこれらの問題が65年の日韓条約時に解決したとしている。しかし、日韓条約には謝罪も賠償も書いていないし、日本政府は個人の請求権を認めてきた。共産党の文書によれば、「1991年8月27日の衆院予算委員会で、当時の柳井俊二外務省条約局長は、日韓請求権協定の第2条で両国の請求権の問題が『完全かつ最終的に解決』されたと述べていることの意味について、『これは日韓両国が国家として持っている外交保護権を相互に放棄したということであり、個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない』と明言している」としている。また、最高裁判決については、2007年4月27日、中国の強制連行被害者が西松建設を相手に起こした裁判で「日中共同声明によって『(個人が)裁判上請求する権能を失った』としながらも、『(個人の)請求権を実体的に消滅させることを意味するものではない』と判断」したとしている。その結果、西松建設は被害者との和解を成立させ、謝罪して和解金を支払っている。安倍政権は、こうした政府姿勢に基づいて真摯に解決すべきである。
文在寅政権は、「キャンドル革命」によって生まれた政権であり、朴槿恵前政権の積幣を清算することが運命づけられている。それは韓国国民の民意にほかならない。韓国の最近の世論調査では8割ほどが嫌日姿勢だという。日本政府は韓国の民意を尊重した政治姿勢を見せなくてはならない。歴史修正主義者である安倍は、侵略をこころから反省していない。また、南北による「平和」、「繁栄」、そして「統一」に向かおうとする現下の情勢の歴史的転換を理解せず、北東アジアの平和の敵対物になっている。その姿はハノイ会談の結果に快哉を上げる姿勢にも見られる。こうした安倍政権批判の声をあげなくてはならない。 (2019年3月5日)


第61回 運営・編集委員会の報告
2月27日 14:00~ 出席:鹿島、大西、福田

1.映画「侵略」シリーズ上映の際の報告について
 上映に先立ち山岡聴子さんに報告していただいたが、今後、シリーズ上映の度に報告をお願いし、シリーズ終了の際に、報告集の発行を検討したい。

2・田中宏先生の論考公表について
先生に公表をお願いし、ご快諾を得、あわせて、徴用工問題についての論考もいただいたので、両論考を当会ブログに掲載する。

3・辺野古の埋め立て反対、県民投票の結果を受けて
反対票が有権者の4割をこえる大成果を収めたので、現地闘争に参加しているH氏に現地状況についての短信をお願いしたい。

4・鹿島孝夫氏の運営・編集委員会参加について
第5回総会で言及された鹿島氏の運営・編集委員会参加につき、ご本人から快諾をいただいた。今後の会合に出席して下さることになり、第6回総会で改めて追認することとした。

5.夏の冊子発行予定
夏に発行を予定する冊子として、「戦争体験記」(福田玲三)を検討する。

ーP5ー

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