完全護憲の会ニュース No.65    2019年5月10日

完全護憲の会ニュース No.65       2019年5月10日

発行:完全護憲の会
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【目  次】

第64回 例会・勉強会の報告
別紙1 第64回 事務局報告
別紙2 『日本がおこなった戦争をこころに刻む11章』の4章5章を読む
別紙3 広瀬隆氏の最新著作『テレビ報道の深刻な事態』より抜粋
第63回 運営・編集委員会の報告

 

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第64回 例会・勉強会の報告

4月28日、港区三田いきいきプラザで例会を開催。最初に事務局より報告(別紙1)のあと、勉強会に移った。まず山岡聴子氏より、小冊子『日本がおこなった戦争をこころに刻む11章』(「映画『侵略』上映委員会」製作)の4章と5章について報告(別紙2)が行なわれ、次の論議があった。
「(山岡氏の概要資料の)『おわりに』で『国民皆兵の終着点』とあるが、どういう意味か」「戦前の日本では『国民皆兵』、つまり、国民のすべてが兵役に服する義務を負うとされた。すると敵も皆兵だとして、罪のない住民にたいして細菌兵器が使われた」など。
ついで、映画『語られなかった戦争・侵略2 南京』(50分)を上映。南京城内外の生々しい虐殺や、それを実証する当時の兵士の証言が映し出され、日本による加害の歴史が国民にほとんど知られていない危険があらためて痛感された。
最後に、「事実を集め、後世に伝える」ことの重要性を確認し合った。
(上記の小冊子『日本がおこなった戦争をこころに刻む11章』をご希望の方は、当会にご連絡ください。1冊200円、郵送料205円)

※本ニュースは、例会・勉強会で配布した資料を一部編集し、情報を更新・追加した。
※長年、原発に警鐘を鳴らし続けてきた作家・広瀬隆氏が最近、『テレビ報道の深刻な事態』という大部の原稿ファイルを公開された。貴重な情報が豊富に記録されており、広瀬氏は拡散を希望されているので、本ニュースでは5月3日付改訂版より抜粋を<別紙3>に掲載させていただく。
(全文155ページのファイルサイズは初版が約2.5MBです。メール添付でご希望の方はご一報下さい。0503改訂版ファイルは初版の12倍以上と大きいため、メール添付はできません)

<別紙1>   第64回例会・勉強会 事務局報告

1) 当会ニュース読者からの来信 (愛知県・大久保敏明氏より)

ニュース64号の「元徴用工・韓国大法院判決確定についての覚書」(田中宏)」を読み、改めて「日本の品性」の下劣さ、醜悪さを思い知らされました。
自分に不利益、不都合なことから目をそらし、棚に上げ、頬かむりし、相手を一方的に責めてよしとし、相手に向き合い、自らをかえりみようとしない、そんな心のありように、品性などあるはずもないと思います。
2007年の西松建設最高裁判決で個人の請求権は消滅しないと確定していることを、もっともっと声を大にして言うべきだと思います。
朝日新聞の社説は、「政府見解」に追随していたけれど、社会面の記事では、西松建設の判決に触れていたと思います。
4月23日に「外交青書」が出たが、韓国の項目では「日韓関係は非常に厳しい状況に直面した」と言っておしまい。
田中宏氏は「『すべて解決ずみ』といくら念仏を唱えても、それでは歴史の歯車は前に進まない」と言っています。
「厳しい状況」を打開するにはどうしたらいいか、ヒントは、田中氏のこの覚書にある…「個人の請求権は消滅しない」ということをしっかり受けとめることだと思います。
実は、この覚書を読んだ直後に、『ジャーナリズム』(no.347)(朝日新聞社)で尹健次(ユン・コォンチャ)氏の天皇論を読んでビックリ。田中氏と全く同じ視点で日本政府の見解を厳しく批判しています。尹氏は「どんなに時間がかかっても、双方の溝を埋め、歴史的事実を確認する方向で努力していくしかない。」と締めくくっていました。
尹氏にも、寄稿を依頼してみてもいいのではないでしょうか。

2)法律家6団体が憲法審査会開催に反対
さる3月28日に召集された衆院憲法審査会は、立憲、共産など主要野党の欠席で意見交換会に切り換えられ、4月3日に設定された審査会も同じ結果になった。
こうしたなか4月12日、弁護士や法学者らでつくる「改憲問題対策法律家6団体連絡会」は、衆参両院での憲法審査会開催に反対する緊急声明を発表した。
声明では、改憲について「国民の中から憲法改正を求める意見が大きく発せられ、世論が成熟した場合に限り、行われるべきもの。近時の世論調査で首相に期待する政策として憲法改正を挙げた割合は1割程度にすぎず、国民世論という大前提を欠いた現在の状況で憲法審査会を開催すべきではない」と指摘。「森友学園」など一連の問題で「事実を軽視し、事実をゆがめて議論を強引に進める安倍首相や政府与党の姿勢に鑑みれば、現時点で憲法審査会を開催した場合、事実に基づく慎重な議論は期待できない」と批判している。

3)世論調査で改憲反対54%
共同通信社が4月10日にまとめた世論調査で「安倍政権下での改憲」には反対54%、賛成42%だった。また、9条改正について、戦力不所持と交戦権否認を定めた2項を維持したまま自衛隊を明記する安倍首相案を支持したのは40%にとどまった。

4) 朝日新聞「ひと」欄に紹介
「『憲法が語るのは、あなたのこと』と伝え続ける水野スウさん(72)」が朝日新聞5月3日付朝刊2面の「ひと」欄に紹介された。

5)前号の「集会の案内」で紹介した2件のイベントに関する追加情報

◆ビザ拒否の裁判報告会(4月18日)の録画公開
「ビザ発給拒否 国賠裁判」の裁判報告会の録画が、動画サイトyoutubeで公開されている(1時間37分)。登壇者はゲストの森田実氏(政治評論家)、原告の高鋒(ガオ フォン)氏(湖南省)、田中宏氏(一橋大学名誉教授)、高嶋伸欣氏(琉球大学名誉教授)、藤田高景(村山首相談話の会・理事長)ほか。動画の最後には配付資料の画像も。
20190418 UPLAN「中国人戦争被害者へのビザ発給拒否国賠裁判」報告会

※田中宏氏の言葉:日本に強制連行されて亡くなった人の息子である中国人が、一度日本の人に考えを聞いてみたいことがあると言った。「我々中国人は、日本に何をしましたか?日本のどこかに爆弾を落としましたか?占領しましたか?」

◆ 前川喜平氏による講演「教育勅語と道徳教育」(5月9日)の録画公開
「オルタナティブな日本をめざして(第27回)」での講演録(2時間10分)。前川喜平氏がユーモラスな語り口で、日本の教育政策の変遷をたどり、具体的でわかりやすく、ズバリ明快に解説する。現代には「通用」し得ない教育勅語の構造と時代背景、教育に必要な普遍の考え方、道徳の教科化で危ぶまれる今後のポイントなど、改めて深く考えさせられる。
20190509 UPLAN 前川喜平「教育勅語と道徳教育」

6) 集会の案内

① 『週刊金曜日』東京南部読者会
5月24日(金) 18:30~20:30 大田区消費者生活センター 会議室(JR蒲田駅東口徒歩3分)

② 憲法記念行事シンポジウム「あなたは憲法の意味を知っていますか――憲法教育の過去と未来」
5月25日(土)13:00~16:30 弁護士会館2階 講堂クレオ(千代田区霞が関1-1-3)
基調報告「今、憲法を歴史から考える」加藤陽子氏(東京大学文学部教授)
パネルディスカッション:加藤陽子氏、石川健治氏(東大法学部教授)、佐藤学氏(学習院大特任教授・東京大学名誉教授)  主催:日本弁護士会、東京弁護士会他 入場無料 予約不要

③ 第13回 公正な税制を求める市民連絡会学習会「日本財政の未来はどうなるのか」
5月31日(金) 18:30~(開場 18:00) 資料代500円(経済的に困難な方は無料)
講師 明石順平さん(弁護士。ブラック企業被害対策弁護団所属)
「GDPが伸びた」「株価が上がった」「雇用が改善した」と安倍首相は豪語しますが、はたしてそれは本当なのでしょうか?実質賃金は大幅に落ちながら、日銀の金融緩和によって円安になると、輸入にお金がかかるようになり、物価が上がり、その中で本年10月には消費税増税が予定されて国民の暮らしは圧迫されています。日銀に出口戦略はあるのか、膨大な政府債務は通貨崩壊をもたらさないのか、どのような未来が待っているのでしょうか。
会場:主婦連合会会議室(主婦会館プラザエフ3階) 地下鉄南北線・丸の内線 四ツ谷駅歩3分
主催:公正な税制を求める市民連絡会

※参考:「統計法」が定める「基幹統計」は国内の経済政策のみならずGDPなど国際比較の土台ともなる「特に重要な統計」だが、56統計中24統計(42.9%)に「不適切処理」があったと所轄の総務省が2月1日に認めた。「信用」は世界中、政治・社会すべてのインフラである。内閣の大前提は「法律を誠実に執行し、国務を総理すること」(憲法73条1項)。
明石弁護士は早くから統計かさ上げ疑惑を指摘してきた。(近著『国家の統計破壊』)
・アベノミクスによる戦後最大の消費低迷!人口減少と債務累積を無視した楽観論は「アベ政治」を助長!岩上安身による弁護士・『データが語る日本財政の未来』著者 明石順平氏インタビュー(その1) 2019.3.1

・アベノミクス偽装 明石
2019/02/25 https://www.youtube.com/watch?v=M3m-uc3-sJE

④ STOP! HENOKO 本土からの辺野古埋め立て用の土砂搬出計画を止めよう
防衛省・環境省交渉、請願署名提出、報告集会
6月10日(月)15時15分~19時30分 衆議院第2議員会館・多目的会議室(地下鉄「国会議事堂前」「永田町」)
通行証は1Fロビーで配布:①14時45分~ ②17時~ 資料代:500円
◆防衛省・環境省交渉~17:00 (記者会見)
◆17:30~18:00 請願署名提出 *5野党1会派の皆さんから連帯あいさつ
◆報告集会~19:30 *防衛省・環境省交渉報告
*埋め立て土砂搬出現地からの報告
*土砂・海砂搬出の問題点と今後の取り組み
*総がかり行動実行委員会からアピール

辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会(辺野古土砂全協)は2015年5月設立以来、「西日本各地からの辺野古埋め立て用土砂採取計画の撤回」を求める署名を全国に呼びかけ、昨年3月まで11万7310筆を首相・安倍晋三あてに提出してきました。その後も1万5000筆余りが寄せられています。
昨年9月、私たちが新たに作成・提起した「STOP! HENOKO」請願署名運動に、総がかり行動実行委員会から連帯のお申し出をいただき、この度これまで3年間で私たちが集めた署名をはるかに上回る約50万筆もの署名が寄せられました。

私たちは驚嘆と敬意をもって、取り組まれた全国各地の皆さんへの感謝と共に、「本土から辺野古への土砂の搬出」の問題が、皆さんのご努力によって多くの市民に理解され、どこに住んでも「辺野古問題は当事者」の思いが浸透、広がっていると実感しています。 ⇒http://sogakari.com/?p=4150
主催:辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

※レイバーネット日本のイベントカレンダー参照:http://www.labornetjp.org/EventItem

7)草野運営・編集委員長の近況
さる4月20日、横浜市戸塚区で友人グループ恒例の竹の子掘りとバーべキューの集いに、闘病中の草野委員長が参加、掘りたての竹の子を賞味し、驚くほどの元気で病状を報告、参加者一同と午後4時近くまで歓談した。5月の連休明けに主治医から今後の治療方針案が示されるとのこと。

8)当面の日程

65回例会・勉強会
5月26日(日)13:30~16:30
三田いきいきプラザ・A集会室

第64回運営・編集委員会
5月29日(水)14:00~
三田いきいきプラザ講習室

第66回例会・勉強会
6月23日(日) 13:30~16:30
三田いきいきプラザ A集会室

第65回運営・編集委員会
6月26日(水) 14:00~
三田いきいきプラザ 講習室

<別紙 2> 『日本がおこなった戦争をこころに刻む11章』の4章5章を読む
(概要資料)
4章 731部隊
0.登戸研究所
(陸軍科学研究所登戸実験場1937.11→陸軍科学研究所登戸出張所1939→陸軍技術本部第九研究所→第九陸軍技術研究所1942.10→長野県伊那地方などへ分散・疎開)
*勅令第110号(1919(大正8)年、大正天皇による勅令)に基づく陸軍科学研究所(新宿戸山ヶ原)の設立に始まる
*秘密戦(防諜・諜報・謀略・宣伝)のための研究
細菌兵器(家畜・穀物用)、毒物合成、偽札の印刷(1939.8~)、風船爆弾(1943~)など
*陸軍中野学校(後方勤務要員養成所)
研究所はその他にも、北京の北支那防疫給水部(甲1855部隊)、南京の中支那防疫給水部(栄1644部隊)、広東の南支那防疫給水部(波8604部隊)、シンガポールの南方軍防疫給水部(岡9420部隊)、朝鮮総督府家畜衛生研究所など

1.「政界ジープ」細菌戦の必要性を提唱(1952年)
2.1937年「加茂部隊」「東郷部隊」
1938年 部隊の本拠地構築
1939年ノモンハン事件「石井部隊」「関東軍防疫給水部」東京大学と同規模予算
1941年「731部隊」
ドイツの強制収容所
「マルタ」風土病・伝染病研究、凍傷実験、生体解剖、性病(梅毒)観察、出産と子供

3.東京裁判(1946年5月3日~48年11月12日)と帝銀事件(1948年1月、平沢貞通1955年死刑判決確定)
日本ブラッドバンクからミドリ十字
朝鮮戦争(1950年6月~1953年7月)とベトナム戦争(1964年トンキン湾事件・1965年北ベトナム爆撃)

5章 従軍慰安婦
日清戦争  私娼の検梅(梅毒検査)
日露戦争  日本軍公認の娼妓屋、軍医による検梅  美人絵葉書
1932年上海事変の直後  軍隊慰安所の設置「従軍慰安婦」
目的:性病対策、強姦防止
日本人の娼妓 身売りと前借金の返済
自由廃業運動 1900年 娼妓・坂井フタ、勝訴
これらの動きに対し楼主は暴力団を使って対抗、公娼制度は一般婦女子の「性の防波堤」

全国の娼妓
1884年 28,432人
1924年 52,256人
(内務省警保局)毎年5,000人規模で増加

海外の日本人娼婦
1914年 22,362人「からゆきさん」

おわりに
※改めて侵略とは
正しい戦争はあるか
南京事件の否定派の守備位置の変化
国民皆兵の終着点

※被害者としての平和への強い思い ⇒ 憲法制定(1946年11月3日公布、47年5月3日施行)
加害者としての意識 ⇒ 憲法にどう生かすか、憲法をどう生かすか。
ニュルンベルク裁判(1945年11月~46年10月)
=(アウシュビッツの終焉から半年後) 敗戦から間もない
アメリカ軍によるドイツ国民の「再教育」
収容所写真のポスター掲示
裁判の進捗状況を新聞・ラジオで逐一報道
東京裁判(1946年5月3日~48年11月12日)=南京(1937年末~翌年3月)のおよそ9年後
アメリカ軍による「再教育」は不徹底。冷戦の影響
新聞報道はほぼ弁護側の主張のみ。裁判の証言記録の公表も主導せず。

※実行の原動力(自治会やPTA活動を例に)

参考事項
小林多喜二、特別高等警察の拷問により虐殺 1933年
ヒトラー…1933年1月 帝国宰相、3月全権委任法
強制収容所…ダッハウ1933年
アウシュビッツ1940年4月
ヒトラー自殺1945年4月30日
ドイツ無条件降伏5月8日/警察予備隊1950年)

参考文献
ヒトは「いじめ」をやめられない(中野信子、小学館新書)
登戸研究所から考える戦争と平和(山田朗・渡辺賢二・齋藤一晴、芙蓉書房出版)
731部隊と戦後日本(加藤哲郎、花伝社)
増補 南京事件論争史(笠原十九司、平凡社ライブラリー)
南京事件 京都師団関係資料集(青木書店)
「いのち」と帝国日本(小学館)
サンダカン八番娼館(山崎朋子、文春文庫)
(2019.4.28報告 山岡)

 

<別紙 3>  広瀬隆氏の最新著作『テレビ報道の深刻な事態』より抜粋

※以下「0503改訂版」の目次全てと、P.34~35の項のみ抜粋。ルビはすべて行内の()に移した。

目次
◆物語の始まり──回顧譚 P2

  • 第一話 韓国と北朝鮮の民衆が体験させられた苦難の歴史
  • 米朝首脳会談によって南北朝鮮に平和が訪れた P5
  • 南北首脳会談によって朝鮮戦争が事実上の終戦宣言 P8
  • 朝鮮半島に生まれた南北朝鮮の歩みと歴史のミステリー P13
  • 韓国の強制徴用被害者(徴用工)に対する賠償命令判決の正しい解説 P22
  • 朴槿恵(パク・クネ)を退陣させた韓国民のロウソク・デモ P27
  • 韓国人が実行しようとしている歴史の清算とは何か P29
  • 韓国に独裁者を君臨させ、朝鮮戦争を引き起こしたアメリカ軍政と大日本帝国の売国奴 P34
  • 南朝鮮の民衆が起こしたアメリカ軍政に対する反乱 P35
  • 南北朝鮮で二つの独立国家が成立し、朝鮮戦争の開戦に向かった P38
  • 北朝鮮の日本人がたどった地獄の逃避行 P41
  • 北朝鮮に朝鮮民主主義人民共和国が成立した経過 P44
  • 北朝鮮に比べて韓国の生活水準と経済力はひどく劣っていた P46
  • 日本で進められた軍国化 P47
  • 朝鮮戦争が勃発した P50
  • サンフランシスコ講和条約によって日本が独立した P54
  • 日本と韓国は独立国家ではなかった P58

◆第二話 韓国ドラマと韓国映画が教える人間の気概

  • 反政府活動を展開した韓国の文化人ブラックリストと、記録映画『共犯者たち』 P61
  • 朝鮮王朝の歴史を描いた時代劇 P67
  • 日本の植民地統治時代を描いたドラマ P68
  • 戦後の韓国を描いたドキュメンタリー・ドラマ P70
  • 韓国人の現代生活を描くドラマ P76
  • 日本と韓国が崩さなければならない壁は何か P78
  • 韓国の財閥問題 P80
  • 南北朝鮮を貫く天然ガス・パイプラインと交通網 P81

◆第三話 ノーベル賞・東京オリンピック・大阪万博・異常気象

  • ノーベル賞騒ぎと、学歴・肩書社会にはびこる無知 P84
  • 東京オリンピック騒ぎで、福島原発事故を忘れろって? P93
  • 大阪万博騒ぎで、おそろしいファミリーが再び動き出したぞ P105
  • 二酸化炭素温暖化説の嘘が警告する地球の危機 P107

◆第四話 先人の行動と、残された資料を受け継ぐ人間はいないか? P121

  • 日本のテレビ番組はプロの域に達しているか? P122
  • 編集者の気概と読書人の気概があって初めて、書籍を売ることが可能になる P129
  • ジャマル・カショーギ惨殺事件とダイアナ妃黄金伝説 P132
  • 実業史観をもって海外の人脈を調査しなければならない P142
  • 次世代に受け継いでもらわなければならない資料が秘蔵されている P143
  • ナチスが略奪した絵画の行方 P148
  • 広瀬隆文庫 P153

・韓国に独裁者を君臨させ、朝鮮戦争を引き起こしたアメリカ軍政と大日本帝国の売国奴 P34

次に本稿で解き明かさなければならないのは、朝鮮半島で、なぜ同じ民族のあいだで〝朝鮮戦争〟が引き起こされたか、という歴史のミステリーである。たった今、この朝鮮戦争を完全に終結させようとしているのが、現在の文在寅と金正恩の南北首脳であるから、以下に述べるこの戦争の正確な歴史を知らずに、テレビ報道のコメンテイターが、目の前で進行している朝鮮半島問題に対する意見を語ることはできないはずである。

初代の韓国大統領・李承晩(イ・スンマン)から、実質的に彼を継いだ軍人大統領・朴正熙(パク・チョンヒ)と、さらに彼に続く軍人大統領の全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)たちが、長い間、韓国で強権を握って独裁者になることができたのは、なぜであろうか?
その理由もまた、日本が降伏した時代、1945年に戻ってみれば分る。

日本の植民地統治時代の売国奴であった〝親日派〟の朝鮮人たちは、南朝鮮に乗りこんできた米軍の意を受けて、いきなり「共産主義反対!」と叫んで〝反共スローガン〟を掲げ始め、その行動によって〝南朝鮮の愛国者〟に化けたのである。朝鮮民族の反逆者を愛国者に変身させる魔法となったのが、共産主義者を攻撃する運動であった。彼らは、日本の植民地・朝鮮統治時代に特高警察が完成した残忍無比の電気拷問などの技術を日本人から受け継いだあと、それにさらに磨きをかけ、長期間にわたって韓国の独裁政権を支える主柱のひとつとなって、韓国民に襲いかかる恐怖の組織となった。

その時、軍事独裁政権を育てたのが、ほかならぬ、光復節後に南朝鮮に進駐した米軍だったのである。その経過を、日本敗戦の年から振り返ってみよう。

1945年、ソ連が日本を占領することをおそれていたアメリカは、日本領土の代りに、朝鮮領土の北半分を与えてソ連を黙らせた。その結果、ソ連兵が進駐した北朝鮮では、共産党思想の確たる素地がなく、ソ連が頼るべき指導者もいなかったので、ソ連軍部は、朝鮮人民革命軍の指導者と称する金日成(キム・イルソン)を引き立てて、この男をソ連の操り人形として指導者に据えることにし、金日成は自分の郷里の平壌(ピョンヤン)に帰り、最高指導者に成り上がっていった(この経過はのちにくわしく述べる)。

占領軍である南朝鮮の「米軍」と、北朝鮮の「ソ連軍」は、いずれも朝鮮人の行動に深い関心を持たず、日本の植民地統治時代についても理解していなかったので、自分たちの朝鮮分割・占領行政だけに心を砕いた。本来であれば、分割されるべきは、朝鮮ではなく、ドイツと同じように敗戦国の日本であるべきだったが、南北に分断されて、占領されたのは、理不尽にも朝鮮半島の民衆であった。

日本降伏から2ヶ月後、こうした時期の1945年10月16日に、民族主義者と自称する李承晩(イ・スンマン/り・しょうばん)なる人物が、亡命先のアメリカ・ハワイから米軍の特別軍用機でソウルの金浦(キンポ)空港に連れて来られて、朝鮮に帰国した。ところが彼は、記者会見で朝鮮語をまともに話せない男であり、1875年生まれの彼はすでに70歳の高齢であった。それまでアメリカ政府は、「李承晩は朝鮮で人気が高い」と聞いていたので、政界が李承晩に握られるのを阻止しようと、アメリカで足止めしていた。ところが李承晩が、実際の朝鮮独立運動とまったく関係のない人物であり、やがて「李承晩がモルガン財閥と結びつきのある親米勢力で、反共主義者である」と判断して帰国を許したのである。この人選の過ちが、後年までアメリカ最大の失政となった。

このあと、李承晩が南朝鮮で政治的実権を握って、初代大統領に就任するまでには、国連を舞台にしたアメリカとソ連の数々の政治的駆け引きと、朝鮮人のさまざまな組織の対立があった。それは歴史的には面白いが、非常に複雑なので、本稿ではその経過を省略して、5年後に最悪の「朝鮮戦争」を招いたアメリカ軍政の動きを中心に述べる。

日本敗北の翌年1946年に入ると、1月15日にアメリカ軍政が南朝鮮に「国防警備隊」と名づけた朝鮮人の軍隊を創立し、この朝鮮軍をアメリカの傭兵(ようへい)とした。新設したこの国防警備隊の幹部に就いた朝鮮人は、英語を流暢(りゅうちょう)に話せる人間が米軍にとって利用しやすかったので、前年1945年12月5日にアメリカ軍政が設立した「軍事英語学校」の卒業生であった。ところが同校出身者110人のうち、植民地統治時代の「日本軍」出身の朝鮮人が87人で、実に79%の大半を占め、さらに日本軍の支配下にあった「満州国軍」の出身者が21人、その他が2人であった。つまりほとんど全員が大日本帝国軍の出身者という朝鮮売国奴の〝親日派〟で占められたのだ。そうした軍人の一人が、のちの韓国大統領・朴正熙(パク・チョンヒ)であり、「満州国軍」出身の彼は、日本敗戦後に朝鮮警備士官学校に入学し、その後、色々と紆余曲折の苦難の時代はあったが、すべて大日本帝国時代の〝親日派〟先輩軍人が彼を出世の道に導き、軍事クーデターで権力のトップに立つと、やがて大統領のポストを手に入れた。そして朴正熙の部下だった全斗煥と盧泰愚が、朴の後を継いで軍人大統領となったのである。

こうしてアメリカは、朝鮮を大日本帝国の支配から解放したのではなく、日本の植民地統治時代の朝鮮人売国奴を軍の幹部に引き戻す主役を演じていたのだ。

加えて、この南朝鮮史の初期の過渡期に、軍人ではない李承晩も、米軍に従って「共産主義に反対する親日勢力」を味方につけようとしたため、かつて朝鮮を植民地にしようと日本に協力した〝親日勢力の売国奴〟の戦争犯罪者が、李承晩政権を支える資産家のパトロンとして、続々と有利な立場に復帰し、李承晩政権は事実上の軍事政権となった。このようなアメリカ軍政と李承晩の反共政策のため、「朝鮮人が自力で朝鮮半島全土を統治する朝鮮政府を樹立する」という夢が完全に消え去って、北緯38度線による南北朝鮮の分断が確定してしまったのである。


第63回 運営・編集委員会の報告
5月1日 14:00~ 出席:大西、福田

1.5月3日、有明防災公園の憲法集会は、それぞれの都合に合わせて参加することとした。

2.今夏の刊行物について
・「戦争体験記」(福田玲三)、田中宏先生や大畑龍次氏の論考への要望があり、実現性について検討した。
・神奈川大学・尹健次(ユン・コンチャ)名誉教授の「天皇論」(『ジャーナリズム』347号)を学習する。

3.次回のDVD上映について
映画『語られなかった戦争・侵略4 旧満州』(42分)を取り寄せる。
必要な場合は講師・山岡聴子氏とともに、事前の試写を行う。

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2019年5月19日