緊急警告015号 自白のみによる無期懲役有罪判決は憲法違反!

 2005年の栃木県今市市(現日光市)小1女児殺害事件の犯人として殺人罪に問われた被告(33歳)の裁判員裁判で、さる4月8日、宇都宮地裁は、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。
 この裁判では、直接証拠はなく、取り調べの録音・録画が7時間以上にわたって法廷で再生された。松原里美裁判長は判決文において「被告人が犯人でないとしたなら説明できない事実関係が含まれているとまではいえず、客観的な事実のみからは被告人の犯人性を認定することはできない」と述べつつ、商標法違反での逮捕後に行なった取り調べに違法性はなく、取り調べの録音・録画などからも、取調官により恫喝や暴行が加えられた事実はなかったと判断。
 その上で、捜査段階での自白について「取調官の誘導に合う内容もある」としながらも、録音・録画を根拠にして「取調官による誘導を受けた形跡がない」「あらぬ疑いをかけられた者の態度としては極めて不自然」「被告は処罰について強い関心を示し、処罰の重さに対する恐れから自白するかどうか逡巡、葛藤している様子がうかがえる」とまで述べている。
 裁判長の認定のほとんどは、別件の商標法違反での逮捕から約5カ月間拘束、その「代用監獄」でとった自白調書を前提にしている。有罪にした根拠は、法廷で再生した録音・録画での心証だ。裁判官と裁判員が物証のないことを認めた上で、想像、推測で判示したのは自白について規定した憲法38条に違反していると言わねばならない。何故なら、同条は次のように定めているからである。
 第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
 2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
 3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。
 
 まさにこの無期懲役判決は、第38条の3項目すべてに絵に描いたように違反しているのである。また、取り調べの一部可視化の危険性も示している。
 弁護人の一木明弁護士らは閉廷後、記者団に対し「自白で判決を書くのは危険だと言われているのに、自白を重視した判決を書かれたことが一番納得できない」と批判した。また、「録画のないところで圧倒的な権力関係を利用して被告人を自白に追い込んだ。取り調べが全面的に録画されていればこのような判決にはならなかった」と語った。
 弁護団(国選)によると、被告は控訴する意向を示している、ということだが、控訴審においては憲法第38条に違反しない裁判を行わなければならない。

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です